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23/3/18 戦闘美少女ラノベ『ゲーミング自殺、16連射アルマゲドン』解説

『ゲーミング自殺、16連射アルマゲドン』解説

自分で書いた戦闘美少女ラノベ『ゲーミング自殺、16連射アルマゲドン(ゲーマゲ)』を自分で解説します。
ネタバレを気にしない人はこの解説だけ読んでも構いません。本編は気になったら読んでください。

表紙イラスト:えすけー様(@sk_kun) 表紙ロゴ:コタツラボ様(@musical_0327)

www.alphapolis.co.jp

『ゲーマゲ』はざっくり以下のような内容です。どれか一つでもピンと来たら読んでもらえたら嬉しいです。

  • エンタメとしては「戦闘美少女異世界転生チート無双もの」で、プロゲーマーの最強美少女主人公が異世界を渡り歩きながら世界を滅ぼしていく話です。
  • メインテーマとして「ゲーマーの哲学」を扱っており、勝ちたがりの戦闘民族ゲーマーの倫理や成長を描いています。
  • テーマのSF的な核心において「オートポイエーシス百合」というアイデアがあり、オートポイエティックな認識が拓く可能性を掘り下げています。
  • 世界観の構築に「分析哲学における可能世界論」を活用しています。
  • 表紙以外の全89話挿絵に「生成AIで作ったイラスト」を利用しています。

最後の生成AIイラストのみ既に記事を書いており、この記事では主にそれ以外について書きます。

saize-lw.hatenablog.com

Ⅰ. ゲーマーの哲学

『ゲーマゲ』のメインテーマは「ゲーマーの哲学」です。

主人公は戦闘民族タイプの対人対戦ヘビーゲーマーであり、彼女が色々な世界をプレイすることを通じて一つのゲーマーの完成形を目指す成長物語です。

 

「戦闘民族のゲーマー」ってどういう人?

まず「ゲーマー」とは一口には言うものの、ゲーマーにも色々なタイプがあります。例えば楽しさを求めてカジュアルに遊ぶライトゲーマー、賞金を目指して真剣に戦うe-sports選手がいますが、『ゲーマゲ』の主人公は勝ちたがりで戦闘民族タイプのゲーマーです。

それは決して架空の人格ではなくどこにでも一定数いるタイプのゲーマーではあって、特にそこそこ真剣にゲームをしたことがある人は「ああいうタイプのやつか」とピンと来ると思います。イメージを明確にするために対比とセットで説明します。

戦闘民族ゲーマーの特徴

戦闘民族のゲーマーはほとんど常にゲームのことしか考えておらず、誰が相手でも「絶対に勝ちたい」という確固たる意志を持ち、人生をオールインしてゲームに取り組み、諦めが悪く勝ちに貪欲です。

ポジティブに見ればエネルギッシュな活力に満ち、外部の評価に惑わされない強烈な自己像を確立しており、金銭を賭けずとも自らのプライドのために戦える理想主義者です。自己鍛錬にも余念がなく、自分に妥協を許しません。

しかしネガティブに見れば、その強烈な負けず嫌い故に紳士的ではない振る舞いが目立ちます。初心者も容赦なく狩り、勝てば相手を煽り倒し、負けを認めたがらず何度も再戦を挑んでくる振る舞いは見ていて気持ちの良いものではないかもしれません。

補足447:特に戦闘民族のマインドを象徴するのが「人生昇竜」、つまり「人生を懸けた昇竜拳」です。ここで言う昇竜拳とは「1000回打てば平均期待値は確実にマイナスになるが、ここぞというときに通せるとものすごく効果的な技」くらいの意味です。大一番で打つには「この昇竜を打ったら負けるかもしれないが、リスクを取ってでも今絶対に勝ちたいからこの一発に命を懸ける」という覚悟を完了したマインドが必要になります。人生昇竜を打てるのは安全圏から統計データでゲームをする理論派ゲーマーではなく、目の前の一戦に命を張れる戦闘民族ゲーマーだけです。

『ゲーマゲ』は主人公がどこまでも戦闘民族タイプのゲーマーとして完成していく話です。幼さを払拭して大人になっていく話ではありません。以後、単に「ゲーマー」と言ったときはこのタイプの勝ちたがりで戦闘民族のゲーマーを含意しています。

このタイプのゲーマーが持つ真剣さは明確に反社会的なものです。ゲームに対して適切な距離を取り、対戦相手を含め周囲を不愉快にしない大人のゲーマーとは相容れません。よって主人公の振る舞いは常に自己中心的で、いわゆる人間的な成長は一切せず、むしろ倫理的なモラルはどんどん低くなっていきます。

ただしカスのゲーマーにもカスのゲーマーなりの矜持があり、何度障害にぶつかろうとも反社会性を絶対に曲げずに追求し続ける姿には美しさがあります。主人公は自分と世界を理解するために苦難の中で足掻きながら課題をクリアし学びを得て、カスのゲーマーとしての自己を確立していきます。

具体的な戦闘民族ゲーマーとしての成長には三つのフェイズがあります。

  1. 前提:ゲームを成立させることを目標とし、ゲームの要件について理解する
  2. 発展:ゲームスキルを磨くことを目標とし、ゲームの成長環境について理解する
  3. 完成:ゲーマーとして自分を確立することを目標とし、ゲームの自己目的性について理解する

それぞれについて具体的な内容と作中での転導を説明します。

 

作中において

彼方はこのタイプのゲーマーであり、キャラの芯にはかなりカスなタイプのゲームへの熱さを持っているというのが造形のコアです。表面的なクールさは見せかけでしかなく、根本的にゲーミングお嬢様亜種です。

実際、作中で彼方に次いで最も熱い戦闘民族のマインドを持っていたキャラは学園編の冒頭に出てきたゲーセンチャンピオンのモブです(個人的にはこういうゲーマーのイメージはカードゲームで培いましたが、一般的にはこのゲーマー像は格ゲーマーと重ねられていることが多いです)。彼方はチャンピオンに対しては珍しく非常に優しく対応して喧嘩に付き合ってあげた上で「頑張っててイイネ」という旨の励ましの言葉さえ送っているのは、常軌を逸して負けず嫌いな精神構造に対して強いシンパシーがあったからです。

また、読者の格ゲーマーから「ジュリエット戦で立夏を殺しながら打った氷結魔法って人生昇竜だよね」と指摘されて確かにそうだなと思いました。いくら覚悟を完了したところでジュリエットは昇竜ぶっぱを通すほど甘くないので余裕のブロッキングが間に合っているのは解釈一致で熱かったらしいです。

 

1. ゲームの要件を理解しよう

ゲーマーであるためには、まず「そもそもゲームとは何ぞや」を知る必要があります。

ゲームの定義はゲーム研究領域で盛んに議論されていますが、今は初歩的でシンプルな以下の定義を採用します。

ゲームは、そのなかでプレイヤーが人工的な争いに従事するシステムである。

それは、ルールによって定義され、量化可能な結果に終わる。

(Salen and Zimmerman 2004)

ゲームとはすなわち「人工的な争い」であり、その具体的な要件としてルールによる定義量化可能な結果が挙げられています。

つまり「ゲームとはルール無用のしばき合いではなく、勝敗は明瞭に決定される」ということは直観的にも明らかです。特に日常的に何らかのゲームを提案するとき、「こういうルールで、こうしたら勝ち」という構文を用いるのは最も標準的な説明方法でしょう。

 

作中において

彼方は当初は既にゲームが普及した世界でプロゲーマーとして活動していたため、ここまで基本的なゲームの要件についてわざわざ意識することはありませんでした。

しかしゲームの無いゼロベースの異世界を渡るにあたって、異世界人をゲーマーである自分の土俵に引きずり込んでゲームを行うために必要な要件を学んでいくことになります。

具体的には「量化可能な結果」はエルフ編のテーマ、「ルールによる定義」はすめうじ編のテーマになっています。

補足448:灰火やジュリエットと戦った世界は過去作『皇白花には蛆が憑いている(すめうじ)』の世界なのですめうじ世界と呼んでいます。

エルフ編で樹にスマホを渡してオークを虐殺させることで彼方が得たのは、結局のところ「スコアはきちんと記録すべきだ」という学びです。もともとエルフは記録も記憶もちゃんとしていないため、オークが来て殺されても勝ったか負けたかがよくわからず事態が一向に進展しないことが問題の核心でした。そこで彼方が記録媒体を用いてスコアを意識させることでゲーマーの土俵に引きずり込むことに成功し、そこで一つゲームの要件を理解して成長しています。

すめうじ編ではルール無用で殺してくる殺し屋のジュリエットがボスであり、VAISや此岸との会話を通じて殺し屋に対抗してゲームを開始するには「ちゃんとルールを立てる」必要があることを学びます。

よってこれ以降はルールと勝利条件には常にこだわるようになり、誰が相手でも必ずきちんと(一方的に)ルールを宣言してからゲームをプレイするように成長しています。

 

2. ゲームの成長環境を理解しよう

ルールと勝敗を伴う争いに従事する以上、ゲーマーは争いで勝利するためのスキルを磨く必要があります。

ここでもやはりゲームの定義であるところの「人工的な争い」がキーワードになります。争いが人工的であるということは、逆に言えばその争いには自然ではない独自のルールや勝利条件が設定されるということです。よって、その中で勝利するためには自然ではないスキルを向上させなければならず、それは自然ではない方法によってのみ可能です。つまり、ゲームに必要なスキルを育むのはゲームをプレイすることによってのみです

「ゲームのスキルは実際にゲームに参加しないと育めない」ということは多少なりとも真剣にゲームをしたことがある人には地に足のついた話として理解してもらえると思います。格ゲーでもカードゲームでも机上の空論でゲームを分析して知識を抽出するやり方には限界があって、理論を踏まえて実際のゲーム中で確かめないことには使い物になりません。実践を通して調整するうちに本当にゲーム中に役立つスキルが醸成されていきます。

また、その際にはゲーム相手が自分と同じか自分以上に強いことも必須要件となります。自分より弱い敵を倒すのにスキルアップは必要ないからです。

こうした「実際にゲームをプレイして相手を超えることで実践的に成長していく」というスキルアップ方式は、一つのタイトル内では「強い戦略が現れるたびにそれに勝てる戦略が現れる」という運動形態をとります。それは「メタゲーム」とか「環境」とかいう言い方で表現され、ゲーマーとして成長したくば自分と同じように上昇志向を持つゲーマーと作る対戦環境が必要になります。

 

作中において

ゲーマゲでは連続的なスキルアップは連続的な世界遡行として表現されています。

彼方の『終末器』は一つ上位にいる者をどんどん倒して上っていくことでどんどん強くなっていくための能力です。彼方がいちいち個々の世界を蹂躙して滅ぼすのは、ゲーマーは実際にゲームと取り組むことによってのみ成長でき、知識だけの吸収は出来ないことに対応しています。

また、彼方以外にも神威や趙のようなクオリティの高いゲーマーは総じて世界を越える能力を持っています。どんな形であれとにかくステージをクリアして敵をどんどん変えていかないと実践的なスキルは向上しないため、世界を越えられること、上昇志向を持っていること、ゲーマー適性が高いことは全てイコールであり、これらが結び付いて貫存在というタイプを構成しています(ただし灰火や此岸などそもそもゲーマー由来ではない貫存在もいます)。

特にこの問題がフィーチャーされたのが魔法学院編です。彼方はより良い成長環境を求めて生徒たちをゲーマーとして育成することを試みますが、結局のところそれは失敗に終わります。生徒たちは「人工的な争いの中で絶対に相手に勝つ」という根本的な上昇志向に欠けているために世界を越えられず、戦闘民族ゲーマーとしての適性がなく、貫存在の水準に到達しません。

それは先天的な才能に属しており後から教えられるものではないことをVAISが指摘していますが、現実的にも根本的に「ゲームをガチれるやつ」と「全然ガチれないやつ」がいるという差異はゲーマーなら経験があるところだと思います。

 

カスのニーチェとしてのゲーマー

どうして彼方はあんなにも邪悪なのか? どうして彼方は平穏に生きている人々にゲームを吹っかけては殺戮して世界を滅ぼして去っていくのかについて補足します。

身も蓋も無いことを言えば「彼方はゲーマーであって人道家ではないから」ですが、それは彼女がたまたま倫理観に欠ける性格だからというわけではなく、ゲーマーとしての上昇志向は最初から日常的な物語を蹂躙する性格を持ちます。つまりゲーマーは弱者に忖度しないし弱者を慈しまないのが正しい態度です。

この「強者は弱者に優しくない」という強者像はニーチェが提示する強者像とかなり重なります。彼方の邪悪さの根源はニーチェ力への意志論を引くとわかりやすいため、少しだけニーチェの話をします。

ニーチェにおいて、強者と対立する弱者は隣人愛に代表されるキリスト教道徳です。

御存知のように、隣人愛を象徴する格言として「右の頬を打たれたら左の頬を差し出せ」というものがあります。これは敵ですら愛をもって接するという美徳を示していますが、ニーチェに言わせれば弱者の生存戦略に過ぎません。本当に強者であれば右の頬を殴られたら相手の頬を殴り返してボコボコにいいだけですが、弱者は腕力がなくそれができないため、「実はこの勝負って返しで左の頬を差し出したら勝ちなんですよ」と訳の分からないルールを新しく作って勝ったことにしようとします。つまり正面からの闘争では勝てない弱者がルールの方を変えて勝てるようにするいじらしい努力が隣人愛です。

しかし、そういう勝ち方は価値観一本だけで戦っていて何ら実体を持ちません。よってキリスト教の権威が失墜して価値観そのものが揺らぐニヒリズムの時代が来ると全く通用しなくなってしまいます。そういう世界で弱者道徳に頼らずに強く生きるにはやっぱり筋トレして右の頬を殴ってきた相手をボコボコにできるようになるしかありません。

こうやって現れるストイックな力への意志は、最初から弱者道徳に対するカウンターとして生まれてきています。優しくなるために生まれた力ではなく、優しさでは生き残れないから生まれた力です。だから「身体を鍛えているから心も優しい」ではなく、「身体を鍛えているから弱者をボコボコにするし別に心は優しくない」にならざるを得ません。

ゲームにもこれと似た構造があります。

まず、ゲーム外の日常的な世界は勝ち負けが全ての世界ではありません。「勝てなくても努力して偉い」とか、「勝ちにこだわりより協力した経験が大事だ」とか、そういう敗者にも優しい正当化の物語はいくらでも流通しています。勝負事に勝てない弱者にも優しい価値観が人間社会における標準的な倫理です。

ただし、ゲームという人工的な争いの空間はそういう日常的な空間とは切断されています。敗者にも優しくあれるのはゲーム結果を吟味するゲーム外の空間に限られ、ゲーム内はあくまでも明瞭な勝敗が全てを決定する空間です。そこではゲーム外の価値観は停止しており、敗者を慰める正当化の物語はゲーム内では失効します。

こういう世界での正義はただ単に勝つことしかありません。本当に勝負に真剣なゲーマーからしたら、ゲームという勝敗が明瞭な世界に参入している以上、努力とか協力とかはどうでもいいから何が何でも勝ち続ける以外に正義はないということです。

こうして生じた勝利への意志は、やはり敗者を慰める正当化の物語と真っ向から対立します。敗者に優しくするために生まれた意志ではなく、敗者への優しさでは戦えない世界を生き抜くために生まれた意志だからです。だから「ゲームに勝てるから敗者にも優しい」ではなく、「ゲームに勝つから敗者をボコボコにするし別に優しくもない」となります。これが彼方の標準的な振る舞いです。

ニーチェや彼方の強者観は「価値観が停止する場=ニヒリズム=人工的な争い」において、「弱き者の価値観=弱者道徳=敗者の正当化の物語」へのカウンターとして成立しています。だから強者は常に弱者を蹂躙します。この意味で戦闘民族ゲーマーの才覚とは根本的に反社会的なものであり、彼方が人や世界を滅ぼすことを何ら躊躇しないのはそのためです。

補足449:永井均はこうして現れた強者の意志もまだ弱者の戦略の変奏に過ぎないことを指摘します。というのも、強者が純粋な意味で強くあることを美徳とするのも、結局のところは「自分が勝てる価値観を擁立しようとしているに過ぎない」という点で弱者の隣人愛と同じ性質を持つからです。それを回避するためには「何の価値にも立脚せず無意志でただひたすら自分の強さを肯定する」という態度を取らざるを得ません。この矛盾はゲームにおいては「ゲームに勝つことを良しとする時点で、ゲームを始める瞬間には『勝てるから始める』というゲーム外部からの利害が混入せざるを得ない」ということとパラレルであり、それを回避するには、やはり「無目的にただひたすらゲームを遊ぶ」という態度を取ることが有効です。そしてこれはすぐ次で説明するゲームの自己目的性そのものです。

 

3. ゲームの自己目的性を理解しよう

人工的な争いに従事するゲーマーは最終的にどこにいくのでしょうか? 人工的な争いには自然な到達点が無いので、最終的には自己目的化せざるを得ません

つまり、日常的な利害に結び付いたゲーム以外の目的を設けることはできず、ゲームそれ自体を目的化するようになるということです。こうした「ゲームの自己目的性」はゲームの性質に関して非常に古典的な議論の一つで、1938年のホイジンガによる『ホモ・ルーデンス』における論が開祖として引かれることが多いです。

ホイジンガ以前では、遊びは自己目的化したものとは見なされていませんでした。遊びは遊び以外の生活に貢献する営みであり、生活で余った欲望の放出や仕事の訓練として行われます。現代的な例を挙げるなら、同じ部署の仲間とフットサルで遊ぶことで普段の業務も円滑に回すことを目指すようなイメージで遊びを捉えることになります。

一方、ホイジンガは遊びは遊び以外の利害を一旦停止したところで発生することを指摘します。例えばオセロなどで遊ぶとき、別にギャンブル漫画のように金銭を賭けてなくてもそれ自体で楽しくて遊ぶモチベーションがあります。「特に生活と関係しなくてもゲームはそれ自体で楽しむ目的になれる」という意味で「ゲームは自己目的的である」と表現でき、これはディープなゲーマーでなくてもただちに頷けるゲームの顕著な性質の一つでしょう。

また、ホイジンガを更に推し進めると、現代的で過激な立場として、遊びと生活の優先順位が逆転したものがあり得ます。すなわち「遊びは遊び以外の生活に貢献する営みだ」を逆転させて「遊び以外の生活こそが遊びに貢献する営みだ」とすることが可能です。この局面では遊びはもはや一切の理由付けを必要としません。人生の基盤に遊びがあることは自明であり、それに奉仕する限りで生活があるという状態です。

現代のゲーマーにおいて、こうしたプレイスタイルはそこまで珍しいものではありません。例えばガチャ課金で生活資金を切り崩している状態、昼夜問わずソシャゲを遊び続けて課金の捻出のためだけに働いているような人生は「生活が遊びに奉仕している状態」と表現できるでしょう。

上記をまとめると、生活と遊びの力関係は以下のような三派閥に整理できます。

  1. 「生活のために遊びありき」派
    生活に貢献する限りで遊びがある
  2. 「遊びと生活が並立」派
    生活と遊びが同程度に両立している
  3. 「遊びのために生活ありき」派
    遊びに貢献する限りで生活がある

これらは遊びそのものの性質の差異というよりは遊びに向き合うゲーマーのスタンスの差異として捉えられ、それぞれ具体的なゲーマー像としてイメージすることもできます。例えば1は程々の距離感を保ってゲームを嗜む大人のゲーマー、2がゲーム歴が浅く1日1時間を守っている子供のゲーマー、3が徹夜discordで生活が崩壊した廃ゲーマーが該当するでしょうか。

戦闘民族ゲーマーの終着点は3の立場を更に推し進めて完全に自己目的化を完了したゲーマーです。

実存的生の最優先事項がゲームプレイであり、何かを目指してゲームプレイしているわけではなく、何もなくても永遠にゲームする存在です。もはや全てが自明にゲームベースで駆動しているので、動機は特にないし、欲望は無限だし、目的も特にありません。毎日徹夜で雀魂を遊んでいるゲーマーに「何のためにやっているのか」と聞いたところで「何のためにじゃねえよ とにかくやるんだよ雀魂をよ……」と返ってくる状態が戦闘民族ゲーマーの理想形です。

なお、この無目的性は上昇志向という目的性と矛盾するものではありません(優先順位の問題です)。戦闘民族としての格が低いゲーマーはあくまでもスキルアップを目的としてプレイを行うのですが、完成化するとプレイが第一の目的でスキルアップの方が必須要件になります。

 

作中において

『ゲーマゲ』最終盤は主人公の彼方がこのような意味でのゲーマーの完成化に到達する、つまりゲームをそれ自体として自己目的化して遊べるようになるまでの話で、魔法学院編あたりから主題化し始め、現代編でようやく解決を見ます。

これは彼方自身のゲームに対するスタンスに関する問題なので、主人公が内面的に苦心するシーンが多いです。具体的な運びとしては、主人公が誤った選択をして困難に直面し、何が間違っていたのかを理解して解決するという典型的な課題と解決のログラインを取ります。

彼方の過ちは「究極の目的を目指してしまったこと」です。魔法学院編あたりから彼方は世界を遡った先にいる「創造の起源」に言及し始めるようになり、個々の世界もそこに到達するための足掛かりと見做すようになっていきます。強敵を求めること自体は悪いことではないのですが、ゲームそのものと直接関係しない形而上学的な外部目的を持ってしまったことが彼女のミスです。ゲームとは自己目的化した状態が究極であり、究極の外部目的は存在しません。

補足450:この言及はミスリーディングとしてのみ配置しており、起源に到達させる予定は全く無かったのですが、この最後の敵が登場することを楽しみにしていた読者から「あの話ってどうなったんですか?」みたいな感想がぼちぼち来てしまいました。

この間違った世界認識のしっぺ返しを受けるのが学園編です。実際には存在しない究極の目的を求めてしまったために、いざそれが実際には存在しないとわかったとき、目の前のゲームを自己目的的に楽しむマインドを忘れてしまった彼方はゲームの意義を見失って惑うことになります(なお、「究極の目的と戦う≒プラットフォームと戦う」という問題設定が現実的なゲーマーの営みとしても著しくリアリティを欠いていることはまた後で改めて取り上げます)。

しかし立夏や神威との会話を通じてゲーマー像を立て直し、最終的にはきちんと眼前のゲームを祝福できるようになります。エピローグに出てきた車椅子の「患者」は「モブのボス」みたいな存在で、黒幕とかでは全然ない、せいぜい彼方や神威と同じくらい強いだけのよくいるボスですが、それでもゲームそのものが楽しいから世界を肯定して戦えるハッピーエンドです。

僕はこういう流れはファンタジーではなく普通によくあることだと思って書いていました。「ちゃんと目の前の試合で相手に勝ちたいっていう精神がないとなんかもう全部駄目だよね」という気付きってゲーマーには覚えがあるものだと思うのですが、どうでしょうか? 例えば僕は今まで格ゲーをあまりやってこなかったので格ゲーの知識が欲しいと思ってGGSTを遊んだのですが、きちんと勝つマインドでやってないとシステムが全然頭に入ってこないし遊び方すらわからなくて全然ダメだったという話を前にnoteに書きました(→)。

 

ゲーマーの哲学まとめ

改めてまとめると、『ゲーマゲ』は

  1. 前提:ゲームを成立させることを目標とし、ゲームの要件について理解する
  2. 発展:ゲームスキルを磨くことを目標とし、ゲームの成長環境について理解する
  3. 感性:ゲーマーの自分を確立することを目標とし、ゲームの自己目的性について理解する

という順序でゲーマーが成長していく話です。

何にせよ、戦闘民族のゲーマーが抱える本質的な困難は「ゲームが成立しないこと」です。「ゲームに勝てないこと」ではありません。このタイプのゲーマーは何度負けてもどうせ何度でもやります。勝てなかったら当然キレますが、そのキレは上昇志向に直結した必要経費であり、むしろ負けてキレなくなったら戦闘民族は終わりです。

では、何故ゲームが成立しないのか? 理由は特になく、解決方法も特にありません。

日常の利害とは無関係に自己目的化した人工的な争いを求めるゲーマーの方こそ説明不能で意味不明な存在であって、ゲームの自然な動機など最初から存在しないからです。ゲーマーではない人を合理的に説得することは不可能です。ゲームは「自己目的化しているために外部に説明できる起源を一切持たない」という意味で、言語や自我と同様に語り得ず示すしかない営みです。

よって辛うじて勧誘が可能であるとすれば、とりあえずゲームに巻き込むしかありません。それでたまたま相手もゲーマーだったらラッキー、ゲーマーじゃなかったら残念でしたと弾くことしか出来ません。ゲーマーの基本姿勢は対話拒否です

 

作中において

彼方が何度も抱える課題も本質的には「ゲームが成立しないこと」です。

「ゲームに勝てないこと」はあまり重要ではなく、最強主人公なのでなんだかんだで割とサクッと勝ちます。「どうやってゲームに勝つか」というベタなゲームというよりはその前段階にある「どうやってゲームを成立させるか」というメタゲームの方が主題であり、彼方は世界を渡るたびにゲームの成立を目指して試行錯誤することになります。

ただし最初のKSD編だけは例外であり、ボスである神威の方から「戦って差し上げましょうか?」と提案してきて自然にゲームが成立します。神威は彼方と同じ戦闘民族のゲーマーで根本的なマインドは同じであるため、再登場したときには意気投合したりすることになります。

続くエルフ編、すめうじ編、魔法学院編、学園編はゲームが自然に成立せず、彼方自身がゲームを成立させるために苦労して要点を理解する話です。具体的なポイントは既に書いた通りです。

また、既に書いたようにゲームへの勧誘行為は根本的に不可能なので、彼方も対話しません。ゲームに参加してもらおうと言葉を尽くして勧誘するのではなく、「まず強制的にゲームに巻き込む、それでゲーマーだったらラッキー、ゲーマーじゃなかったら殺戮」という方法でしかコミュニケーションしません。それを象徴する能力が此岸の世界便です。「何故ゲームをしないといけないのか」という説得は不可能なのでスキップされ、「とりあえずゲームを開始します」という地点から世界との接触が始まります。

ちなみに師匠のVAISは最初から全ての論点を完全に理解しており、初登場した段階でもう最終話に必要なアドバイスまで終えてしまっています。

「切符の取り合い」という人工的なルールと勝利条件を明文化したゲームを彼方に持ちかけ、「補正を切っての新スキル創造」というスキルアップの上昇志向が彼方にあることをきちんと確認した上で、「無目的にゲームそのものを遊ぶ」という体験が彼方に欠けていることを看破して箱庭ゲームを体験させています。彼方自身はあまり意識していませんが、彼方の旅は「VAISが最初に言っていたことはやはり正しかったな」ということを確認する旅でもありました。

 

読者感想と読者アンケートを受けて

『ゲーマゲ』は主人公が目指すべき理想像の類型が明確にあり、師に導かれてそれを目指すという典型的な成長物語のつもりだったのですが、読者感想と読者アンケートによればかなり賛否両論であることは否めません。

まず最初に書いておくべき大前提として、彼方の倫理観が一貫して終わっていることは全て意図通りです。邪悪さはコンセプトから正しく演繹されるものであり、描写や造形のミスではありません。僕も「こいつめっちゃ邪悪だな」と思いながら書いていましたし、「本質的に邪悪なキャラが正しく邪悪に描かれた」というだけで「邪悪ではないキャラが邪悪に見えてしまっている」という事態ではありません。

補足451:一応念のために書いておきますが、テーマとかキャラの意図が伝わらなかったとしてもそれは「読者の読解能力が低くて伝わらなかった」という話では全くありません。別に創作に限ったことでもなく、文章の内容が伝わらないことは原則として書いた側の責任ですし、一度書かれた文章をどう解釈するかは読む側の自由です。存在する軸は「正しいか誤っているか」ではなく「たまたま作者の意図と合致したかしなかったか」だけであり、そこを改善する必要があるとも限りません。実際、彼方のキャラと振る舞いが賛否両論だとしても、もっと人好きのする方向に改善する選択肢は全くありません。

まずアンケートデータ(n=15)から見ると、「主人公の彼方は好きですか?」への回答は概ね半々くらいです。「主人公に抱くイメージ」についても「かっこいい」と「かっこわるい」が拮抗しているものの、「幼い」「自己中心的」「関わりたくない」といったネガティブ票も多いです。ただし「主人公の彼方の悩みや享楽に共感できますか?」には「少しできる」と答えた人が過半数を超えており、完全ではないにせよそれなりの共感を覚えた層が最大勢力であることが伺えます。しかし具体的に好きな・嫌いなキャラを回答する設問では彼方はぶっち切りの最下位になります(各キャラの人気模様はまた最後に触れます)。

賛側としては彼方のゲーマー哲学が伝わった上で共感する人もそれなりにいます。特に彼方を一番好きなキャラとして挙げた人は「可能な自己の在り方(人生哲学)を賭ける瞬間が物語内にある。ビルドゥングスロマンをやってる」と評しており、意図が完全に伝わっていて感動しました。

一方、否側には主に「そもそもゲーマーの哲学が伝わらなかった人」「ゲーマーの哲学を理解した上でそれでも彼方が嫌いな人」の二タイプがあります(もしくはそのグラデーション)。一番嫌いなキャラに彼方を挙げた人の彼方への評価には「他者へのリスペクトがない」「最初から最後までカスのゲーマーであってプロのゲーマーではない」「他者を振り回しといて(各世界単位での)結果に満足することが少ないのが印象に悪い」などがありました。

また、「ゲーム経験がある方が彼方に共感しやすいのではないか?」と思い、読者自身のゲーム経験についてもアンケートで質問しました。「彼方にどのくらい共感するか」と「対人対戦ゲームに真剣に打ち込んだことがあるか」でざっくり相関係数を計算すると0.38とそれなりのスコアであり、また明確に外れ値の回答をしている2人を弾くと0.8まで上がるため、けっこうな相関があるようです。ゲーム大会に海外遠征しておきながら対人対戦ゲームに真剣に打ち込んだ経験が「ほぼない」は嘘だろ

「ゲーマーの哲学」というモチーフそのものが伝わるかどうかということについてはcarbon13さんの感想を読んでいてかなり面白く感じました(面白がっている場合ではないかもしれませんが)。

note.com

ざっくり批判寄りの感想ですが、とにかくめちゃめちゃちゃんと読んでくれていて、彼方というキャラのワンイシュー小説であることを踏まえて諸々について非常に正確に指摘してくれています。多分僕より読んでいると思います。ありがとうございます。

ただ読みが詳しいだけに根本にある「ゲーマーの哲学」という部分が伝わらなかったことが浮き彫りになっていて、「サッカー知らない人にサッカー見せた」みたいな状態になってしまいました。サッカーというカルチャーを知らない状態で試合を見てもボールを籠に入れたいなら手で持って走ったほうが絶対いいのに足で蹴ってて何がしたいのか全然わからんのと同じで、ゲーマーカルチャーを知らない人から見ると全体をまとめる文脈がなくて意味わからん話である可能性があります。

正しく指摘してもらっている難点には全部クリアな回答があるのですが、いずれもゲーマーの精神構造がわかることが前提になっています。

Q1. 彼方が固有の物語を持たないのは何故?
A1. ゲーマーはベタレベルの固有の物語を必要としないから

Q2. 理論面で正しいだけで実践的な意義が伴っていないのでは?
A2. ゲーマーとしては地に足のついた話のつもりだった

Q3. 何故彼方は美少女無罪なのか?
A3. (無罪ではないかもしれないが)ゲーマーとして頑張る姿は美しいから

Q4. この物語に共感するポイントは?
A4. ゲーマーとしてはあるあるだと思ってた

という感じです。

彼方のキャラ自体は意図通りなのでもっと共感しやすい方向に曲げる選択肢はありませんが、ただ反省点があるとすれば、彼方の行動を相対化してきちんと邪悪である旨などを指摘してくれる非戦闘民族ゲーマーで常識人枠のキャラを置いても良かったかもしれません(主人公に水を差す相方ポジションの立夏とか灰火も別ベクトルで頭がおかしいのでツッコミを入れてくれなかった)。一応常識人枠として配置したキャラがツバメとツグミだったのですが、その凡庸さ故に速攻で自殺してしまったためあまり働きませんでした。

 

Ⅱ. オートポイエーシス百合

自己目的化を完成させたゲーマーは最終的にどこに向かうのでしょうか?

『ゲーマゲ』は永久に不定期更新するタイプのWeb小説ではなく完結するタイプのWeb小説なので、どこかに物語的な落としどころを付けなければいけません。

主人公は世界を遡上することでゲーマーとして成長していきますが、世界を遡行する旅はどんな終わりを迎えるのか、そして旅の経路を規定する世界の地図はどんな構造を取っているのか。

ゲーマーの旅の終わりは?

最終的には必要要件を全て満たす世界の地図としてオートポイエーシスシステムによる円環構造が採用されますが、その前にとりあえず棄却した案を検討して要件を洗い出していきます。

 

正しいゲーマーの世界像に必要な要件は?

棄却案1. 創造主との邂逅

始源に行き着く世界遡上

一番安直なオチが全ての世界の始源にある世界で創造主と戦うENDです。双六で言うとStartのS、ゲーム的には全てのゲームステージをリリースしているプラットフォーマー、哲学的な言い方をするならアリストテレスが根本原因とか不動の動者とか呼ぶやつです。

この世界観には彼方が何度か言及しますが、これはミスリーディングとしてのみ配置されており結局この始源は現れないという露骨な踏み台になっています。既に書いた通りそれは究極の目的を目指す姿勢は戦闘民族のゲーマーにはふさわしくないというゲーマーサイドからの事情もありますが、もっと現実的な理由として、単にこういう描像はゲーマーの営みとして著しくリアリティを欠いているというのもあります。

常識的に考えて、ゲーマーがプラットフォーマーと戦うことはまずありません。百歩譲ってナーフ調整とかで運営に文句を言うことはありますが、それはかなり些末な事柄であって、ゲーム文化全体について本質的なことではないです。

確かにゲームをテーマにした作品で最後が「vsプラットフォーマー」になるのは定番のオチではあって、例えば『ソードアートオンライン』とか『バトルロワイアル』がそうですが、あれはデスゲームという極めて特殊なゲーム設定だからです。この世でプレイヤーを殺したいと思ってるプラットフォーマーは存在せず(大事なお客様なので)、プラットフォーマーvsプレイヤーは超例外的なファンタジーでのみ成立する戦いです。

また、これはゲーム会社に勤めてつくづく実感したことですが、ゲーム開発者は別に敵でも神でもなくて普通にただのゲーマー仲間です。もちろん一つのタイトルにおいては開発者は神の如き存在かもしれませんが、ゲーマー文化という粒度で見るなら開発者もプレイヤーも同じような立ち位置でしょう。ゲーマーではない開発者は一人もいないし、ゲーマーの中にたまたまゲーム作る側に回るやつが何人かいるというだけでなんら特権的な位置を占めません。

また、この世界観では創造主が一人で全てのゲームを恣意的に動機付けていることになりますが、ゲームはそのように誰かに決められたからという理由でプレイするものではありません。超越的な他者に命じられたわけではなくともゲーマー自身の方に自己目的的にゲームをプレイするモチベーションがあるという実情ともマッチしていません。

 

棄却案2. 永劫回帰

終端があるモデルは駄目っぽいということで、終端が無いトポロジーとなるとパッと思い浮かぶのは円環かリゾームあたりです。

ニーチェの話も出たので円環状の永劫回帰モデルを検討してみます。全く同じ世界が無限回生起してそれを周回するという世界観です。

無限循環する永劫回帰

これはさっきに比べるとかなり良くて、単一の特権者がプラットフォーマーとして君臨するのではないため、ゲーマーの中からゲームを作る者が現れるというイメージに合っています。また、誰かに動機付けられたわけでもなく自律的に動くイメージがゲーマーの運動とも適合します。

ただ残る問題点は「ゲームはもっと創造的な活動のはずだ」という一点です。ゲーマーには上昇志向があり、全く同じプレイを続けるのではなく、スキルアップの余地がある程度には新規性を必要とします。無限循環では同じステージを同じスキルでクリアできてしまうので、一周したらあとはもうスキルアップする余地がありません。

また、創造主モデルのように外部から動機付けられているわけではないにせよ、ゲーマーとは無関係にシステムが完全に固定されているのもやや気持ち悪いポイントです。この構造をフリーズした外部の超越者みたいなものの気配が感じられなくもないため、この構造ならば最終話は結局「こういう無限周回を仕組んだ人を撃破して抜け出す」という仏教的な輪廻解脱みたいな変則プラットフォーマーオチになってしまう気もします。

 

要件整理

棄却案を二つ見る中で世界のモデルに欲しい要件が浮かび上がってきたので一旦整理しましょう。

まずプラットフォーマーが合目的的に作るのではなく、ゲーマー自身が自律的に形成すること。単線的ではなく円環的なイメージではあるが、全く同じ繰り返しではなくゲーマーの成長余地を表現できるものです。誰に動機付けられてもいないという反外部・反形而上学的な性質を持ちながら、それでいて自発的に立ち上がる創造性を内包しているモデル

これらの要件を全部満たすのがオートポイエーシスシステムのモデルです。

 

オートポイエーシスとは何か

オートポイエーシスは50年前くらいに出来たマイナーなシステム理論ですが、まだ発展途上で統一的な説明が困難です。何しろ論者によって見解が違いすぎて、定義が固まっていないどころか適用領域が経験科学なのか哲学なのかもよくわかっていません。よって今回は必要な範囲でのみ必要な説明をして必要な性質を取り上げます。

補足452:この混乱模様は山下和也『オートポイエーシス論入門』(→)が先行理論の批判書として非常に詳しいです。オートポイエーシス論者三人(ヴァレラ、ルーマン河本英夫)の見解を比較検討した上で整合的な理解が可能な理論を改めて再構築しており、説明が平易かつ明瞭で理解しやすいです。今回の話もこの書籍の内容をベースにしていますが、それでも複雑すぎるためいま必要な話のレベルに合わせて適宜捨象しています。

 

反目的性・反機能・反観察者

オートポイエーシスは元々は生命を扱うために考案されたシステム理論の一つで、反目的・反機能・反観察者という特徴を持ちます。これらの特徴も全て生命の特徴を捉えるためのものなので、例として自動車を扱うときと生命を使うときの視点の違いを比べることで意味するところを理解してみましょう。

まず自動車は明らかに目的に応じて人が作ったもので、システムとして見るときも「これは走って移動するためのオブジェクトである」というように目的ベースでシステムを同定します。また、発火するエンジンや回転する車輪のような各要素も「走る」という機能に向かって統一的に理解されます。そして自動車の外部にいる観察者が「ここからここまでが自動車だ」という境界を定めており、窓一個でも車輪一個でもなくこの塊が自動車だという区切りは外部の視点から恣意的に決まります。

一方、生命は誰かがこのために作ったという目的が決まっているものではありません。特に決まった機能を持っているわけでもなく、外部から恣意的に境界を措定しなくても「ここからここまでが生命である」という自明な区切りは最初から存在しているように感じます。つまり、生命をシステムとして見る場合は、目的を決めなくても自ずから立ち上がるものとして同定でき、「このために存在している」という外的な機能ではなくせいぜい「このように動いている」という自律的な内部作動によって理解でき、更には観察者抜きでも自発的に境界を生成できることが望ましいです。

こうした反目的・反機能・反観察者という特徴を備えたシステムの描像がオートポイエーシスです。

補足453:今は対比がわかりやすいように自動車vs生命としていますが、これはシステムそのものというよりはシステムの見方の問題であるため、生命を自動車のように合目的的なシステムとして捉えることも可能です。実際、生命科学的には生命は繁殖する目的を持ち自己維持機能に向かっているシステムのように捉えることが多いですが、そういう近代科学的な生命像に抵抗があってもっと自律的で自発的なものとして生命システムを扱いたいときにオートポイエーシスが使えるということです。

 

オートポイエーシスの定義

自然科学的なシステムは物理量をベースにして記述しますが、オートポイエーシスシステムは産出概念をベースにして記述されます。より具体的には、産出概念は産出プロセスと産出物を一組にして表現されます。

オートポイエーシスを構築する産出概念

例えば化学実験においては産出プロセスとしての化学反応式によって産出物としての化合物が産出されることは直観的に理解できます。

このとき、化学反応式と化合物はお互いがお互いを動かし合う関係にあるのがポイントです。化合物=産出物が生まれるためにはそのための化学反応式=産出プロセスが必要なので、「産出物は産出プロセスによって産出される」という言い方をします。また、化学反応式=産出プロセスが作動するためには反応元の化合物=産出物が必要であることを指して、「産出プロセスは産出物によって基礎付けられる」という言い方をします。大抵の場合、産出プロセスは概念的なもので実体がないですが、産出物は何らかの実体があります。

産出プロセスと産出物はそれぞれがそれぞれを動かし合う関係にあるので、交互に連鎖して一列になることができます。化学実験で言うと、何かの反応でできた化合物がまた次の化学反応を起こして次の化合物を作って……みたいな反応が連続していくつか起こっていくということです。

補足454:注意点として、「産出」というのは単に物質的な発生だけではなく変形や影響を含めたかなり緩い意味です。「物質的な産出というよりは概念的な産出」と言った方が理解しやすいかもしれませんし、却ってわかりにくいかもしれません。

他の例を挙げると、会話コミュニケーションにおいては会話の機会が生じることでアイデアが産出されたり、人体においては各器官が何らかの活動をして物質的に隣接する器官に何らかの影響を及ぼしたり、自動車はエネルギー変換を行うことで車輪の回転を産出したりすることが産出プロセスと産出物の関係として挙げられます。

かなりこじつけっぽいところもありますが、この世にある大抵の活動はそのようにしてイメージで捉えることができ、一般にはネットワーク構造を取ります。このネットワークは大規模な化学実験における化合物の変化かもしれませんし、ミーティングにおけるブレインストーミングでのアイデアの連鎖かもしれません。

産出概念のネットワーク

図を見ればわかるように、産出プロセスと産出物が一対一対応している必要はありません。二つ以上の産出物が協働して一つの産出プロセスを基礎付けたり、一つの産出物が複数の産出プロセスを基礎付けることもあります。

このようなネットワークにおいて、連鎖が一周して産出プロセスが閉域を成したとき、その部分をオートポイエーシスシステムと呼びます。図の右側でぐるりと円環を描いている部分がオートポイエーシスシステムです。

補足455:正確にはオートポイエーシスシステムに含まれるのは産出プロセスのみで産出物は含まれませんが、今は「一周したらオートポイエーシスシステム」くらいの理解で良いです。

オートポイエーシスの定義

一方、左側にある四角形で囲まれた領域は対比のために示したオートポイエーシスでないシステムです。これは観察者が目的に応じて2入力1出力の機能として一部を恣意的に切り取ってできるシステムです。

この左右のシステムを比較すると、オートポイエーシスシステムは当初生命システムを理解するために欲しかった色々な要件を満たしていることがわかります。

まず、オートポイエーシスの定義を作るのは「一周している」というトポロジカルな条件のみであるため、システムの目的を定めなくても自動的に同定できます。そしてシステムは何らかの機能のために設定されるわけではなく、一周する産出プロセスが今現に作動していることによって理解されます。しかも「ここがシステムである」という境界を観察者が恣意的に切り取らなくても、幾何学的な構造のみから判断できるため、観察者無しで自ずから成立することができます。

総じて、このように立ち上がるオートポイエーシスシステムは反目的・反機能・反観察者という要件を全て備えていることがわかります。

 

オートポイエーシスの特徴

いま定義したシステムの特徴をもう少し掘り下げてみます。

  1. 反目的・反機能・反観察者
    さっき説明した通りですが、本質的には形而上学的な外部を排除して作動するシステムであるということです。現にこのように産出連鎖が作動しているという事実だけで十分なのでそれ以上の原因を想定する必要がありません。

  2. 作動し続けることによってのみ存在できる
    オートポイエーシスシステムは外部にいる誰かが「これがシステムだ」と決めてくれているわけではなく、一周しているという作動にのみ存在の根拠を持っています。よってシステムが存在し続けるためには産出の連鎖が常に動き続けている必要があり、システムが止まったらそのまま消滅してしまいます。
    なお、生命システムとしては作動が終わって消滅した状態は死に対応しています。オートポイエーシスシステムの存在可否は円環が成立しているかしていないかのどちらかのみであり、「少し存在している」というような中間状態を持ちません。

  3. システムを構成する入出力・産出プロセス・産出物は任意に変更可能である
    オートポイエーシスシステムの定義は「周回が動き続けている」というトポロジカルなものでしかないため、円環を構成する具体的な要素は動いてる途中でどんどん差し替えることができます。産出の周回が成立し続ける限りにおいて入力や出力が増減しても良いし、産出物や産出プロセスを別のものに変えても問題ありません。
    これは生命システムとしては成長や変態に対応します。自己同一性を保ったままで人間が相似的に成長したり、昆虫が全く別の姿に変態したりするのはこの性質によって理解できます。
    補足456:入出力については「オートポイエーシスシステムには入力も出力もない」と表現されることが多いですが、「オートポイエーシスは入力も出力も根拠としていない」と言った方がわかりやすい気はします。わざわざ「入力も出力もない」と表現するのはオートポイエーシスでないシステムが入出力を備えたモジュールのように捉えられることと対比したものですが、オートポイエーシスにも常識的に見ていわゆる入出力に相当する要素自体は存在するように思います。
     
  4. 構成要素は最低でも二つ必要
    ネットワークがオートポイエーシスシステムの定義である円環状の閉域を成すためには、最低でも行って帰るための要素が二つずつ必要です。つまり、最小構成のオートポイエーシスシステムは産出物と産出プロセスが二つずつあって行って帰る形になります。
    補足457:「産出物と産出プロセスが一つずつしかない場合でも円環状の閉域は構成可能ではないか」、すなわち「ある産出物が直接的に自分自身を産出するような産出プロセスを基礎付けることは可能ではないか」という指摘があり得ます。論理的には不可能ではありませんが、ただ単独で存在しているだけの要素を「自律的に立ち上がるシステム」と見做す旨味は薄いので、ここでは最小構成要素を二つとしています(一般的なシステムでも入力と出力が完全に一致する自明なシステムを考える旨味が薄いのと同じ)。

 

オートポイエーシスとゲーマー

オートポイエーシスの基礎を説明し終わったので、そろそろゲーマーの話に戻ります。

まず産出概念を「世界創造」に適用し、産出プロセスを「創造」、産出物を「世界」と見做します。世界は創造行為によって産出されることは明らかであり、創造行為は世界内に存在する誰かが遂行するため世界が創造を基礎付けられます。

こうすることで世界の創造関係は産出構造のネットワークとして表現でき、創造が閉域を成した場合は定義によってその領域において世界群のオートポイエーシスシステムが成立します。

こうして現れる世界構造のオートポイエーシスシステムはゲーマーの哲学と完全に符合する性質を持ちます。さっき検討した諸性質をゲーマーと比較してみましょう。

  1. 反目的・反機能・反観察者
    自己目的化を完了したゲーマーは外部にある目的やプラットフォームに動機付けられることなく自律的に活動します。反形而上学的な性質はゲーマー自身が自ずから立ち上げるシステムに適合し、ゲーム文化全体は特権的な開発者によって駆動しているわけではないというイメージも合致します。

  2. 作動し続けることによってのみ存在できる
    自己目的化を完了したゲーマーは特に何を目指すこともなく自発的に走り続けることができますが、逆に言えばその意志を失ったときがゲーマーの終わりです。もっと卑近な言葉で言えば、ゲーマーはゲームをプレイし続けることによってのみゲーマーでいることができ、観客や実況視聴者などプレイしないポジションに移った瞬間に少なくともゲーマーではなくなります。

  3. システムを構成する入出力・産出プロセス・産出物は任意に変更可能である
    この性質によって永劫回帰モデルとは違ってゲームの創造性が表現できるようになります。各世界の具体的な内実はゲーマーの作動に伴っていくらでも変更可能で、常に新しいゲームが提供される世界観が構築できます。
     
  4. 構成要素は最低でも二つ必要
    ゲーマーが成長していくためにはゲーム内で相手を超えるような実践的な運動が常に必要であり、そのサイクルの最小人数は二人です。つまりゲーマーが最低二人いればお互いに相手を超克する意志によって成長し続けるゲーマーのサイクルが成立することと対応します。
    ただしその好敵手は誰でも良いわけではありません。ゲーム戦略を進化させるには仮想敵の深い理解が必須ですから、常にお互いにお互いを一つの世界として正確に創造し、更にその上を行く意志を持つような濃密な敵対関係である必要があります。

 

作中において

結局、作中におけるオートポイエーシスENDとは「プラットフォーム不在でも創造性溢れる円環を二人で自律してずっと走り続ける」という百合ハッピーエンドです。

最終話では彼方と神威はそれまでいた円環を破棄して、自分たちでまた新しく小さなオートポイエーシスシステムを作り出しています。

HAPPY END

元々本編で通ってきたゲーム世界群も一つのオートポイエーシスシステムであり、それ自体も創造性を表現できる円環ではあります。ただしシステムの肥大化に伴って各要素の変化が円環の中で分散して新規性がほとんど吸収されてしまうという劣化が起こっていたので、彼方と神威でもっと小規模で不安定なシステムを新しく再構築してそこでゲーマーをやることがソリューションになります。

そのためには互いに互いを創造できるほど濃密な相互理解が必要になるのですが、無数の世界を戦ってくる中で相手のことを深く理解していたので問題なくクリアできました。終盤で一気に距離が縮まっている百合要素にはそういうゲーマー的な理由があります。

 

Ⅲ. 可能世界論について

ここでは作中で頻出する可能世界のイメージを支える哲学的な基礎について説明しますが、まず最初にはっきり言っておきたいのは「これはそれほど重要な話ではない」ということです。

なまじ小難しい話になるので気合を入れて考えた重要な部分であるような気がするかもしれませんが、それは全く気のせいです。好きな趣味のモチーフを使うのは楽だから借用しているだけです。メインコンセプトの「ゲーマーの哲学」にはそれほど深くかかわらないしウェイトも軽い、あくまでもエンタメ要素です。

補足458:喩えるなら「『テラフォーマーズ』における昆虫図鑑」くらいの温度感です。『テラフォーマーズ』は主人公たちが昆虫改造手術によって特殊能力を得てバトルする漫画なのでいちいち昆虫の生態を詳しく解説しますが、それは能力バトルの味付けくらいの意味しかなく、『テラフォーマーズ』の本質的なテーマとは全然関係ないしそんなに真面目に読まなくてもいいのと同じです。

また、『テラフォーマーズ』の昆虫図鑑と同様、今からする可能世界論は『ゲーマゲ』の設定の話というよりはリアルな世界観の話です。『ゲーマゲ』という小説があろうがなかろうが僕は概ねこのような世界観が正しいかもしれないと思いながら暮らしています。

補足459:個人的に可能世界論が好きでかなりよく擦っているし、今回はさわりだけ簡単に書くので、既視感のある人は適当に読み飛ばしていいです。

可能世界とはいわゆるパラレルワールド、ここではない別のどこかの世界のことです。哲学的なツールとしては使い道がいくつかあり、例えば以下の三つが挙げられます。

  1. 様相の表現としての可能世界
  2. 命題の集合としての可能世界
  3. 虚構の創作としての可能世界

この辺を適当にチャンポンしてゲーマゲの世界観ができており、それぞれどういうことかを軽く説明します。

 

1. 様相の表現としての可能世界

まず様相というのは「事物の判断の仕方」、判断をどのくらい確かと思うかのことです。

例えば「雨が降りそう」とか「人は必ず死ぬ」みたいな言い方は、単に「雨が降る」とか「人は死ぬ」と違って話し手の判断が含まれているので様相的な判断と言えます。もうちょっと堅い言い方をすると、可能性とか必然性の表現です。

そしてかなり直観的なイメージとして、日常的に使う様相は可能世界を使って表現することができます。

例えば「もしかしたら遅れるかもしれない」という様相的な判断は「周辺の可能世界のいくつかでは遅刻していた」とイコールです。つまり「遅れるかもしれない」という予測は、「道を一本間違えた」とか「電車一本間違えた」とか何かを少しミスした近くのパラレルワールドのいくつかでは実際に遅刻しているのだろうな……という別世界の想像によって代替することができます。

必然性についても同じことが言え、「絶対に遅れるに違いない」という予測はちょっと急いだり走ったりして何かが少しずれた近くのパラレルワールドでも遅刻は避けられなかっただろうな……という別世界の想像で置き換えられます。

様相的判断の可能世界による表現

こういう描像はちょっとオシャレでSFチックなイメージであるだけではなく、哲学的なメリットとしては「可能世界を用いることで複雑な様相を分析できるようになる」ということがあります。

様相は日常的によく使われますが、複雑な構文を分析するのはけっこう難しいことがよく知られています。例えば様相が三つ重なった「雨が降るかもしれないことが必然的かもしれないことは必然的だ」という文章の意味が正確に取れる人はなかなかいません。しかし、文法として有効である以上はきちんと分析したい需要があります。

そういうときも上のような世界群のイラストを描いて表現してみると、複雑な様相文が示している状態が具体的に可視化できるようになります。そうやって描いたイラストに対して近くのパラレルワールドがどうなってるのかを調べると、複雑な様相文が結局何を言ってるかがちゃんとわかることになります。

補足460:この説明はかなり端折っており、本当は「周辺の世界」は到達関係を用いて定義するため実際にちゃんと議論するのはけっこう面倒です。今日のところは「こういう見方はSF的に楽しいだけではなく論理的にも良いことが色々ある」ということだけわかってもらえればOKです。

 

作中において

神威の『汎将(様相転移:モダリティシフト)』は様相的可能世界に転移する能力です。相手が「負けているかもしれない」ときは周辺の世界のいくつかでは実際に負けているので、そこに転移することで相手を負かしたり(VAIS戦)、転移を繰り返すことでどこまでも世界を渡っていくことができます(彼方の追跡)。

ただし彼方は神威のような勝敗の見方には反対しており、「勝ちは勝ちだし負けは負けでしかない」として他の可能性が実在していることを認めないのでよく喧嘩になっています(ただしそれは「ゲーマーの哲学」というメインコンセプトに比べれば割と些末な見解の相違ではあります)。

ちなみに本当に様相的可能世界が実在するかどうかは哲学的にも論争の種ですが、概ね彼方の方が普通で神威の方が異端です。つまり可能世界は分析の道具としては便利だけど実在はしないと考える方が一般的です。

 

2. 命題の集合としての可能世界

ある世界における事象は全て真なる命題として表すことができ、その世界は命題の集合と同一視できます。例えば現実世界を構成する命題には「太陽は燃えている」「バナナは黄色い」「人間の寿命は最大で百歳を超える」などがあります(他にも無数にあります)。

補足461:「命題」を厳密に定義するのは実はかなり難しいですが、今は「真偽が決まるようなもの」くらいの理解でOKです。

ただし命題はそのままでは形式的なテーゼでしかないため、実際に世界の在りようと対応しているかチェックする作業は必要になります。一番素朴なチェックのやり方としては、「命題の主語になっているもの」を実際に確認して「命題の述語が実態とあっているかどうか」を調べるという手続きが考えられます。例えば「太陽は燃えている」という命題の真偽を知りたいなら、実際に太陽を調べて、燃えているなら現実世界において正しい命題としてよいことになります。

こういう見方をすると、現実世界以外の可能世界の内実も命題の集合で表現できるため、変えたい部分をちゃっと書き換えるだけで可能世界の内実が得られるのがかなり便利です。例えば太陽が凍っている以外は現実と同じ可能世界を作りたければ、現実世界を構成する命題の集合から「太陽は燃えている」を削除して「太陽は凍っている」を追加すればフリージング・サンのSF世界が得られます。

こういう見方は直観的でかなりわかりやすいですが、本当はクリアすべき課題が色々あって、例えば「非存在命題の扱い」という問題が古典的によく知られています。

「河童は存在しない」という命題はこの現実世界において明らかに正しいですが、「太陽は燃えている」という命題を調べたときのように、河童を調べて「存在するかどうか」を確かめる方法は取れません。何故なら調査対象としての河童はこの現実世界に存在しないからです。つまり調査が行えないのに、何故か存在しない河童に関する命題が真として成立してしまうという意味のわからない事態になってきます。

これはかなり古典的な問題なので解決策はいくつも考えられていて、例えば「存在する・しない」という術語だけは扱いを例外にするとか、河童という生き物それ自体ではなく「河童という伝承」のようにカッコつきの存在についての命題ということにするとか、実は「河童は存在しない」は偽であるとみなすとか、やりようは色々あります。

 

作中において

此岸の『世界便(命題切片:プロポジションセグメント)』は世界の内実を命題の集合とみなし、その一部を任意に書き換える能力です。あらゆる事象を操作できる神に等しい能力なので信仰対象になっていることも多いですが、所詮は単一世界に対するものでしかないため貫存在に対してはそれほど影響しません。

ときどき此岸が「『世界便』で移動するのは面倒くさい」みたいなことを言っているのは存在命題の問題を受けています。此岸は自分自身の存在命題を発行することで世界間を移動しているのですが、ただでさえ面倒な存在命題に加え、論理学的に鬼門とされている自己言及まで絡んできて厳密にやるのがめちゃめちゃ怠いです。よって自分の能力ではなくVAISの次元鉄道に乗ったり鍵を借りたりして移動している……という裏設定があります。

 

3.虚構の創作としての可能世界

物語の舞台である虚構世界は、現実世界と同じようにどこかに実在する可能世界と考えることができます。アニメの世界とか漫画の世界もどこかに実在しているという発想は直観的にもわかりやすいと思います(夢がある!)。

虚構世界の実在を認めた場合、虚構世界は現実世界の外部に同じタイプの存在者として構成され、「現実世界から虚構世界を創造なり発見なりはできるが実際の移動はできない」ということになります。なお対比のために逆に虚構世界の実在を認めない立場について考えてみると、こちらでは虚構世界は本当にあるものではなく、現実世界の内側で紙やメモリに書かれたテキストなりグラフィックのような、現実世界とは違うタイプの存在者ということになります。

虚構世界の実在を認めるメリットは娯楽消費における直観に合いやすいことで、典型的な例として「空白の充填」と言われる現象があります。

我々が普通に小説を読むとき、描写されていない空白部分は勝手に適宜補って読み進めるやり方が一般的です。例えばキャラが自動車に乗ったときにその色とか車種はいちいち書かれるとは限らないですが、我々はそういう空白部分を無と思って読んでるわけではなく、勝手に白とかスバルとかを適当に補完して一つの世界を構成しながら読みます。それは明らかに一つの整合的な世界を構成する見方であり、読書体験としては虚構世界を構成していると考える方が直観に合います。

 

作中において

彼方の『終末器(現実指標:リアルインデックス)』は現実世界から虚構世界を創造するのではなく、虚構世界から現実世界を逆創造する能力です。今いる世界を強制的に虚構世界だったことにして滅ぼし、それを作った上位の現実世界を創造した上でそちらに転移します。

主人公の能力がやたら難解で最近のジョジョのスタンドみたいになっているのですが、やっていることは「現実とゲームを区別しない強制エスケープキー」です。「どんな世界でも勝手にゲーム扱いにして電源を切る」というだけの能力が妙に難解になっている自覚があります。

 

宇宙の全体イメージ

ここまでの話をまとめると、宇宙の全体イメージはだいたいこんな感じになります。

世界群の構造

一つ一つの丸が世界で、その内実は命題リストで表現されます。そしてそれらが様相を定義する可能世界として近距離で固まることで島を作り、その島が様相を備えた一つの現実や虚構を表現します。また、島ごとに創造と被造の関係が結ばれています。

 

作中において

比較的わかりにくいと思われる灰火と趙の能力についてのみ補足します。

灰火と趙の能力

灰火の『蛆刺し(本質寄生:エッセンスパラサイト)』は対象の本質を書き換える能力です。

「本質」は哲学用語で「ある個体が持つ性質のうち、どの可能世界にもよらず不変である必然的な性質」を指します。どんな性質が本質なのかは明確に決まるわけではありませんが、例えばある人が自分は男性であることは必然的でどの可能世界でも自分を男だと思っているのであれば、その人の本質には男性であることが含まれるのかもしれません。

灰火の能力は単なる寄生ではなく本質に寄生するため、この世界だけではなくどの世界でも寄生していることになります。よって宿主の彼方がどの世界で何をしても絶対に分離できず、灰火自身も他人の本質に便乗することで世界を転移します。

趙の『黄泉比良坂(空集合近傍:ファイセットニーバー)』は死の国の縁を渡る能力です。

「どの世界でも生物は死にうる」という様相的判断に対して可能世界的な表現を適用すると「死の国はどの世界の周辺にもある=死の国はどの世界にも隣接している」ということになります。

趙は死の国を経由することでどの世界間でも常に一手で移動でき、また、死の国は何者も存在できず命題の空集合であるため、虹のポータルの向こう=死の国は常に黒く塗り潰されています。

 

付録 i. 前作『すめうじ』との関係について

『ゲーマゲ』は特に企画立ち上げ部分において前作『皇白花には蛆が憑いている(すめうじ)』と意識的に内容を対にしているのでそれについて補足します。

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まず『ゲーマゲ』を考え始めた時点で「とにかく全体的に前作と反対にしたい」という強い気持ちがありました。似たような主人公で似たような話を書いても経験値が溜まらないため、いっそ真逆になるくらい違う話を書きたかったということです。

『すめうじ』は多様性をテーマにしていたため、『ゲーマゲ』は主人公のワンイシューものにしています。全章が徹底して彼方の話であり、他のキャラクターから見た世界を全く描いていないのはそのためです。彼方の視点から離れた瞬間に世界観に矛盾が生じるのも意図的なもので、そういう他者的な整合性はゲーマーとは縁がないということは彼方も作中で言及しています。

また、主人公の性格も『すめうじ』の白花と『ゲーマゲ』の彼方で真逆にひっくり返しています。

逆の性格
  • 自分自身の認識:白花は自我が最弱で軟体動物のような性格だったので、彼方は逆に自我を最強にして絶対に止まらないブルドーザーのような性格にする
  • 他人に対するスタンス:白花は異様に寛容で敵でも友達になれたので、彼方は逆に友達でも敵と見做すほど狭量にする
  • 身体の在り方:白花は殺しても死なない柔軟性を持っていたので、彼方は殺さなくても死ぬ融通の利かなさを与える
  • 社会に対するスタンス:白花は厭世的で社会から距離を置いていたので、彼方は逆に異常に接近して社会を破壊していくような好戦的な態度を取る
  • 人格:白花は好かれやすく女性的で姉で成人済みで悟っているように達観しているところがあったので、彼方は逆に嫌われやすく男性的で妹で未成年という幼くエネルギッシュなイメージにする

主人公のキャラ造形の方向性は表紙ラフ案の選択を見るとわかりやすいです。

表紙ラフ案

発注時に三案頂いた表紙ラフ案のうちで最終的にC案が採用されたのですが、それぞれのキャラ造形との比較検討は以下の通りです。

  • A案:自殺のイメージを首吊りで表現しているが、パッと見たときの被害者感が強く、「このヒロインを救出する話」のように見えてしまいキャライメージに合わないため没
  • B案:自殺のイメージを飛び降りで表現しているが、こちらに向けて身体を広げてスタンスを取っているためにヒロイン感が強く、「このヒロインと一緒に旅に出る話」のように見えてしまいキャラのイメージに合わないため没
  • C案:自殺のイメ―ジを自身の殺害で表現しており、正面から敵対して見下しているのがキャラのイメージに合っていてGOOD

 

付録 ii. キャラ大反省会

キャラクター小説なのでキャラごとの大反省会をします。

なんか今までキャラの意図とか思い入れって「くぅ~疲れましたw」コピペくらいどうでもいい自己満足だからあまり表に出したくないと思っていたのですが、キャラが好きと言ってくれる人も多いし、キャラクター小説をやる以上は逃げてはいけないと思うようになったのでちゃんと書きます。照れ隠しで衒学的な話ばかりをしていてはいけません。

読者アンケートキャラ人気は以下の通りです(ご回答ありがとうございました)。人気順に感想を引用しつつ思うところを書きます。

読者アンケート結果(好きor嫌いキャラを3位まで聞いて加重集計)

ちなみにエピソードについても自由記述形式でアンケートを取ったのですが、人気が高いものはジュリエット戦、立夏の離脱、VAISの過去編あたりでした。賛否両論が激しいのは魔法学院編で、あまり捻じ曲がっていない生徒たちによるワチャワチャした集団戦はエンタメ性が高いという評価がある一方、彼方がのびのびと無双していてなろう系感が最も強いエピソードなのが不愉快であるという声もあります。

 

VAIS

・師匠キャラが好きだから、ビジュアルが好きだから

・生い立ちのエピソードがとても良かったです

・ビジュアルがいい 能力がカッコいい 話し方が面白い エピソードによりキャラが立っている

・やることがド派手で強烈。退場シーンも唐突で強烈。必要な時に必要なだけ仕事をして去っていった良いキャラ。

師匠です。好きなキャラに挙げる人が満遍なく多い上にネガティブ票も少なく、2位以降に大きく差を付けて最人気に君臨しています。

こんなに人気があるのは予想外でした(VAISに限ったことでもなく、僕の人気予測と実際の読者人気は基本的に全然一致しません)。だいたい彼方と同じ思想ですし同じようなムーブをしているはずですが、邪悪な側面がそれほど強調されず要所要所で主人公を導くポジションで登場したのが良かったのかもしれません。実際、VAISは初登場時の時点で彼方が物語全体を通して取り組むことになる問題を全て看破してアドバイスまで済ませていたのはもう書いた通りで、かなり良い師匠です。

また、彼方を差し置いて一人だけオリジンエピソードが描かれたことも大きく人気に貢献していました。彼方に「こういう背景があってゲームが好き」という説明を付けてしまうと「無目的にゲームが好き」というゲーマー像に反するためにバックグラウンドを持たせられなかったので、それを代わりにVAISにやってもらったという事情があります。師匠キャラとバックグラウンド掘り下げの強力さを実感しています。

 

神威

・凛とした感じのツインテール巫女って可愛い

・武器がそのままパーソナリティーに結び付いており、大変かっこいいため。

・思想への納得度が高い。自分と宗派が近い。

・彼方の敵対者に見えて彼方の鏡でしか無い

真ヒロインです。一番好きなキャラに挙げられることが最も多いキャラで、ヒロインらしくかなり好かれています。

固有武装の『汎将』がかなり人気なのと、再登場にインパクトがあった点やボス兼ヒロインとして色々な側面を見せた点などが評価されていました。個人的には彼方と堅物な性格が似通っているのは少し気になっているので、もっと序盤から萌えキャラっぽい挙動があっても良かったかもしれません(彼方に片思いしているとか)。

一応、本質的には彼方と同じくらい邪悪な戦闘民族のゲーマーではあるつもりでした。彼方が嫌いな人のうち、神威も同類であることを看破してネガティブ票を入れている人も少数いました(造形意図としては正しい)。

というのも、「重要なのは常に可能性の多寡です」と神威自身が何度も主張している通り、神威は「世界Aで+200人で世界Bで-100人なら総合収支で+100人だからOK」という計算が出来てしまうタイプの計量主義者だからです。その判断は世界Bの住人からすると堪ったものではありません。世界をいくつもまとめて大局的に捉えることができ、個々の世界への慈しみを欠いている点で彼方と同根の邪悪さを備えています。

全体の動きとしては「当初は正義キャラかと思ったら実は同じ穴の狢」という流れで描写していました。KSD編でボスとして登場したときはまだ世界のスケール感がよくわかっていないために個々の生命を尊重する人道的な発言を見せていたのですが、再登場する頃には無数の世界を渡って世界が膨大な数量存在していることがわかってしまったので、「世界を無限個破壊する彼方を止めることが出来るなら、数百個くらい滅ぼすことは問題が無い」と考えるようになっています。1999年東京戦では戦闘に巻き込んで普通に悪食で盛大に世界を滅ぼしているのはそのためです。

 

ジュリエット

・塵を飛ばして目つぶしとか無茶苦茶な戦い方がよかった。ぜひ映像で見たい

・抵抗者だから

・キャラとしては好きですが前作で強かったキャラがそのまま今作の最強なのは少し寂しいと感じました

最強バトルメイドです。神威と同列の二位で、かなり良いとこどりまくりの立ち回りをしていたので妥当な位置だと思います。

近接戦闘においては彼方やVAISを超える明確な作中最強キャラとして設定しており、それによって「『ゲーマゲ』におけるゲームとは単に生死を巡る殺し合いではない(殺し合いでは最強のジュリエットを殺す以外の方法でクリアできる)」ことを示す役割を担っています。

殺し屋のアナログ戦闘というバトルスタイルもいい感じにゲーマーのデジタル戦闘と対になってくれており、ジュリエット戦は特に高い人気があります。彼方に施した死に際の拷問(右目の封印)が後々まで尾を引いてそのせいで神威に殺されかけたり、彼方に明確な有効打を与えたほとんど唯一の敵として死後も存在感を放っています。

前作人気キャラだったので格が落ちないようにかなり慎重に扱っており、「彼方が頑なに負けを認めないだけで客観的に見たらジュリエットの勝ちじゃね?」という感じは意図したものです。ジュリエットは大物感を保ったまま死んでくれてよかったですが、その分だけ彼方の人気が思った以上に割を食ったという説もあります。

 

立夏

・かわいい。どこまでも合理的に動くのに、根っこのところが植物愛という不条理であるがゆえに、永久に理解できない存在なのが切なくて好き。

・このキャラクターとの会話においては主役がかなり人間臭くなるというか、ちょっと切ない感じがしてよかったです。

・あは、という口癖が気に入ったので。

仮ヒロインで、もともと「親しくない相方」が欲しいと思って造形したキャラです。

彼方は自我と思想が強すぎて一人にすると何でも淡々と独力でこなして誰とも会話せずノータイムで動く超つまらないキャラになってしまうので、「彼方は絶対に一人にしない」ということは最初から決めていました。道中で話し相手になって彼方に茶々を入れるような相方枠が必須です。

ただし相方を彼方の同調者にしてしまうと彼方の邪悪さが目立たなくなってしまうという問題があります。例えば相方が彼方のムーブに同意して称賛してくれるようなキャラだと、彼方の邪悪さが相方の承認由来になってゲーマー由来であることが見えにくくなってしまいます(真の問題がゲーマー精神ではなく相方との共依存関係にあるように見えてしまう可能性が高い)。

とはいえ最初から敵対的なキャラが相方というのも不自然なので、落としどころとして「徹底的に無関心なキャラ」になりました。立夏の離脱シーンはエピソード別でも人気が高く、上手く意図通りに動いてくれたと思います。

 

白花

・前作キャラが出てくると解釈の負担が薄まって安心感がある。

・共感できる。わりに誰の精神にでもある一側面を強調したやつ。

前作主人公です。前回は大卒ニートでしたが今回は女子高生です。

彼方のやや入り組んだ自殺へのスタンスを説明するために最初に出てきてもらいました。特に思想がなくても適当に死ぬ白花に対し、強い信条を持って確信して死ぬ彼方という対比があります。ちなみにゲーマーをやっている世界では蛆絡みの能力は特に持っていません。

 

ツグミ・ツバメ

・かわいい

・最初のエピソードが面白い。

・この作品で比較的目にした割には、思想も力もザコめな印象

「凡人の到達点」みたいなコンセプトのキャラで、ビジュアルが尖ったところのない凡庸な美少女なのも意図通りです。ツグミの方が主人公寄り、ツバメの方がヒロイン寄りなイメージで、そのせいかツグミの方が若干人気です。

一応は腕の立つゲーマーなので一般人ではなく戦闘要員ではあるものの、どの世界でも普通に頑張って普通に能力不足で普通に殺されるような立ち位置です。彼方にとってもあまり眼中になく流れでついでに葬る感じで、ラスボスになっていることは稀です。

 

ローチカ

・創造主的なの印象(登場時)

『すめうじ』のサークロという博士キャラでキャラ造形をめちゃめちゃ失敗したのでそのリベンジとして再び博士キャラを作りました。名前が似ているのはそのせいです。

サークロは博識で落ち着いていて何でも教えてくれるキャラとして作ったのですが、そのせいで設定をバーッと喋るだけの便利解説マシーンみたいな立ち回りになってしまって、三角コーナーみたいなキャラを作ってしまった~とずっと後悔していました。

その反省を活かしてローチカは性格にヤンキー要素を足してかなり感情的な言動をさせるようにしました。自分がやっている研究に対しても葛藤を抱えていてネガティブな本心を吐露したりともっと人間的なキャラになるようにして、僕は上手くリベンジできたと思っています。

 

レイ・ニース・パリラ

・彼方に対する無邪気な生徒としての振る舞いが好きです。

魔法学院編は生徒たちとの団体戦なので生徒側に人数が必要でした。しかし個別にキャラをたくさん出すと読者に認知負荷がかかるし、そこまで大量に紙面を割いて綿密に描写したい枠でもないので、チャンク化してまとめて処理できる三姉妹にしました。まとめて出てきてまとめて殺されるので読むのが楽です。

 

灰火

・捉えどころのなさが良い。

・過去作ファンサで適当に出して適当に便利キャラとして消費するだけじゃなく、ちゃんと物語を動かすキャラなのが嬉しかった。

・だるがらみ感

前作主人公で、すめうじの白花と黒華が融合した存在です。

白花の『蛆憑き(自我を拡散する能力)』と黒華の『蚊柱(傷病を感染させる能力)』がくっ付いた結果、『蛆刺し(自我を感染させる能力)』を発現しています。性格的にも白花の根暗ダウナー感と黒華の根明アッパー感が混ざった結果、テンション低い癖にぐいぐいダル絡みしてきたり、やる気ない割にときどき異様な戦力を発揮したりする躁鬱病みたいな人格になっています。

エルフ編で立夏が離脱したあとも彼方は一人にしたくないので相方枠を新しく補充する必要があり、寄生能力持ってるし都合が良いということで白羽の矢が立ちました。その後も薄暗い立ち回りで裏から話を回してくれてありがたかったです。そこまで自我が強くないキャラなので、彼方を食わずに程々に水を差してくれるのが便利でした。

 

レンラーラ

ブルアカのウイとかミユとか、ポケモンのオカルトマニアみたいなド陰キャラが最近流行ってるので出そうと思ったやつです。

なんか口下手で根暗でモヤモヤしてるけど別に性格悪いわけではなくて、むしろ良い寄りだけどとにかく自信がないみたいなやつです。ただ主張が弱いだけで結局それなりに強い意志は持っていたし、この人のキャラは最後までちょっとよくわかりませんでした。

 

麗華

ロリコン女キャラが個人的に目新しかったところ、自覚的に子供向けの魔法少女として振る舞う割りきりの良さ、ビジュアルの3点です。

・気持ち悪いレベルの濃ゆい設定つけられてる可愛い女だったからとても好き(可愛いとヤバいを組み合わせた女が好きなので)

・出番少ないけど主役みたいな雰囲気ある

・キャラの上っ面はすごく好きだが、詳細が不明すぎて困惑はしている。魔法少女文脈とかを知っていれば理解できるのか?

過去主人公の灰火→現在主人公の彼方→未来主人公の麗華みたいなコンセプトで「未知の主人公格」として出したキャラです。

言動のインパクトとビジュアルで人気はぼちぼちあるのですが、最終盤に出てきて断片的にしか紹介されなかったという立ち位置の都合で「よくわからなかった」とネガティブに挙げる人もいて打ち消されている感じです。

これがマジで正しくて、今回は特に本筋とは関係ない狂人が主人公だったために背後にある麗華と芽愛のストーリーがほとんど開示されていません。小児性愛者になってしまった悲恋の経緯とか魔法少女時代の能力とかも全部決まっていますが、今回は麗華の話ではないので秘密です。

元々10年前くらいに書いたラノベから流用されてきたキャラで、実際に主人公でした。

ただその話を書いたときはまだ若く「女の子の主人公はどこにでもいる普通の女の子がいい」という勘違いをしていたためにもっと地味なキャラでした。今は「主人公は虫食ったり猫殺したりしないと駄目だな」と学んだため、元々の設定と反しない範囲での異常性として小児性愛キャラが急遽足されました。名前の読みも当初は普通にレイカだったのですが、ありきたりすぎて属性負けするのでウルカに変更しました。

 

桜井

頼れるマネージャーです。登場シーンこそ少ないですが、彼方の戦闘の技術部分を支えていた影の立役者としてちょくちょく言及されています。

ジュリエットと同一人物(コスプレイヤーをやっていない世界線のジュリエット)という裏設定があり、「却って無個性なほどの美人」「美少女好き」「サブカルオタク」「肝が座っている」「ミリタリや戦闘への造詣が深い」というような属性がジュリエットと桜井で被っているのは意図的なものです(ジュリエットが最期に自分が別の誰かであることを匂わせているのもこのため)。

ただ別に本編と何も関与しないのでこの設定あってもなくてもいいな~と思っているところです。

 

体制側のキャラです。貴重な常識人枠でもある予定だったのですが、基幹世界もエルフ世界も世界そのものの倫理観が若干狂っており、樹はその世界における倫理観を正しく内面化する人間であるため、世界における平均的な異常者みたいになってしまってそれほど常識を提供してくれませんでした。

書いているときに「ボスに敬語キャラ多すぎ問題(神威、イツキ、ジュリエット、レンラーラが全員敬語)」に気付いてタメ口になっていた時期があったのですが、やはり体制側のキャラが敬語を使わないのが不自然なことと、「社会性に乏しく誰にでもタメ口を利くカスのゲーマーvsきちんと敬語を使う敵キャラ」という構図はわかりやすいので敬語のままになりました。

 

・お金にがめついしお金出せばチョロそうで可愛いと思ってたらお金観をちゃんと持っててしかもかっこいい考え方だから良いなと思いました

・話し方が癪に障る

数少ないネアカ属性の人です。理知的で堅いキャラが多いので一人くらいはエンターテイナーとして軽々と動けるキャラが欲しいと思って投入されました。徹底して彼方と戦わず、本線とは少しズレた場所で話を賑やかす役割を担っています。金の亡者故にいつでも買収されてまともに戦わないムーブはそのあたりを反映しています。

「趙って死んだ?」と聞かれたのですが、神威が再登場したあたりで離脱しただけで最後まで生存しています。

 

芽愛

麗華のカップリングキャラです。

芽愛も麗華と同様に既にヒロインとして活躍するストーリーが存在しているので、時絡みの能力を持っていたり裏稼業の知り合いが多かったりと背景には色々あるのですが、今回は彼方の話なのでちょっとした戦力を持つ真面目系不良娘くらいの感じでした。ちなみに『すめうじ』にも魔神機は一瞬出ています。

 

此岸

・世界便が彼方をカスのままにした

・姉キャラなのに影が薄い

・貫存在の姉妹という貴重な設定なのにふわっと消費された感じがする。「世界便」以外の役割も持たせてあげてほしかった。

主人公姉妹が揃って大差で不人気です。

敵が多い彼方にとってはとても貴重な全肯定味方キャラですが、それはすなわち彼方が邪悪なら此岸も邪悪ということです。此岸は彼方の虐殺の片棒を力強く担いでおり、表面的には気の良い関西人みたいな顔をしておきながら倫理観は彼方と同じかそれ以上に緩いことが嫌われた格好です。

彼方が妹であることと姉キャラをどこかで出すことは確定していたのですが、序盤から彼方に妹っぽい印象が付いてしまうとキャライメージが壊れるのでだいぶ遅れて登場しました。それでも最初に姿くらいは見せておきたいので寝てるか死んでるか狂ってるか捕まってるかあたりの択だったのですが、立夏の義眼花と合わせて植物人間と人間植物って綺麗だよねくらいの理由で昏睡していることになりました。もうちょっと早い段階で出てきて軽いアドバイスくらいしても良かったかもですね。

ちなみに名前は主人公を「彼方」に決めたあと適当に対っぽいものにしたのですが、「病気で昏睡してる人ってどちらかと言うと此岸じゃなくて彼岸じゃね?」というツッコミが入って確かにそうだなと思いました。

 

彼方

・可能な自己の在り方(人生哲学)を賭ける瞬間が物語内にある。ビルドゥングスロマンをやってる。

・結局彼方さんほどガチることができなかったが、共感できる

・他者を振り回しといて(各世界単位での)結果に満足することが少ないのが印象に悪いと感じました。

・他者へのリスペクトがない 最初から最後までカスのゲーマーであってプロのゲーマーではない

・少なくともゲーム成立を試みるフェイズにおいてかなりしょうもないから

ゲーム大好き主人公です。好きなキャラに挙げる人が僅かにいる一方、それを帳消しにする膨大なネガティブ票を集めて無事最下位になりました。

倫理観に欠ける性格や反社会的な振る舞いが全面的に咎められています。彼方が不人気すぎて彼方をボコれるキャラや彼方がボコられるエピソードはそれだけで人気が伸びる傾向があります。

テーマを象徴する主人公なので彼方に関する好き嫌いやイメージも個別に聞いたのですが、「彼方は好きですか?」「彼方に共感できますか?」という個別質問では好き寄り・共感できる寄りの回答をする人の方が多い割に、好きなキャラとしてわざわざ個別に挙げる人はほとんどいないあたりにガチの不人気感があります。イメージ投票では「自己中心的だ」「関わりたくないタイプだ」「倫理観に欠けている」「幼稚だ」あたりが多く選択される一方で、意外にもポジティブ評価のうちで「かっこいい」だけは大きく票が伸びています(ビジュアル要素?)。

彼方のキャラ造形については意図通りである旨を延々と書いてきましたが、この人気の無さは意図通りではありません。つまり僕は「露悪的な主人公はこのくらい邪悪で終わってる方が萌えでしょ」と思っていたのですが、そのライン取りと予測を完全に外していたということです。僕は彼方が一番好きで、特にエルフ編のラストでイツキをエターナルフォースブリザードで葬るシーンがかなり好きなのですが(珍しく冗談の技名を言ってみたりしてすごく楽しそうだから)、そこを好きなシーンに挙げている人はいませんでした。

一応フォローしておくと、ゲームが絡まないか猫が前を通らない限りは彼方は割と友達の多い普通の女の子です。ゲーマー精神が発火したら異常者になるだけで、数少ないゲームが絡まないシーンでは不器用だったり親切だったりと年相応の穏やかなムーブを見せていることも多いです。

例えば敵として眼中にないツグミやツバメには親切心で戦い方を教えてあげようとしていたり、プロゲーマー同士の付き合いを大切にして懇親会には毎回きっちり出席していたり、立夏にクソ適当にあしらわれている割には頑張って不器用なアプローチを続けていたり、魔法学院では先生役として生徒たちへの面倒見がとても良かったり、白花や灰火や麗華のような変なやつとも割とすぐ友達になれたりします。

またゲーム外では意外と精神が脆くナーバスなところもあり、エルフ編でイライラして麻薬に手を出したり、すめうじ編では失恋したショックでしばらく言動が荒れたりもしています。アンケートでも「意外と豆腐メンタル」という感想を貰ったのは性格としては意図通りです。

 

付録 iii. ゲーマゲ批評会について

2023/3/5に木場でゲーマゲ批評会を催しました。ご参加ありがとうございました。

僕は創作仲間がおらず孤独に創作をやっているので、こういう意見を得られる機会は非常に貴重です。

当日出た意見・トピックやアンケートへの回答などについて書きます。

 

戦闘民族ゲーマー像について

彼方みたいなゲーマーは少数派じゃない?

僕も少数派だと思います。これはゲーマー全般の話では無く、ある種の勝ちたがりで戦闘民族であるゲーマーの話です。

ただこのゲーマー類型はそれなりには生息しており、自分自身がそうではないとしても遭遇したことくらいはあって、誰も見たことがない架空の人格というわけではないくらいの肌感覚で想定しています。

「押し付ける・脅迫するやり方でゲームを要求するのではなく、穏当に待つようなやり方もあるのではないか」という意見もあったのですが、実存的にゲームをしている戦闘民族タイプのゲーマーは待っている間にやれることもやりたいこともなく、ゲーム以外に価値を見ていないので待つ理由がありません。

 

相手を見下すプレイヤーは強くなれないのでは?

カードのプロゲーマーから「相手を見下すゲーマーはどこかで頭打ちになってそこまで強くなれない」という意見がありました。というのも、裏目を正しくケア出来るようになるためには相手の能力をそれなりに高く見積もるリスペクト精神が必要だからです。

それはかなり正しい指摘だと思いますが、僕は能力的なリスペクトがあることと相手を実存的に見下すことは両立すると思っています。「相手は強いから手は抜かないけど、それはそれとして勝敗は格付けだから」みたいな感覚です。

とはいえ、勝率を上げたくて自分でスタンスを選択できるのであればリスペクトを心がけた方がいいということには強く同意します(わざわざ自分から戦闘民族を目指すメリットはかなり薄い)。

 

彼方はゲームそのものにはキレてなくない?

確かに彼方が勝てなくてキレることはあまりないです。概ね最強主人公なのでゲームそのものは割とクリアできて、激昂したり困惑したりするのはあくまでもゲームの成立に関わるメタな部分になっています。

別にキレないわけではないのですが、ゲーム中であれば勝ちが最優先だしキレる前にやるべきことがいくらでもあるので、試合中の対処そのものは比較的冷静です。それで勝つので結果的にベタにキレるシーンはなくなってしまい、この手のゲーマーが勝ち続けてしまうと共感しづらいというのはあるかもしれません(ゲーミングお嬢様はキレながら負けていることがよくある)。

 

他のゲームでもいいのではないか?

彼方は実質的な殺人ゲームとしての「ボタン押し競争」にこだわるのではなく、他のゲームを嗜む道もあったのではないかという意見がありました。

論理的には全くその通りです。ゲーマーの哲学というテーマからゲームの種類は演繹されないので、彼方がカードゲームとか将棋とかもっと穏当なゲームで勝ちを目指すストーリーでもキャラ造形やテーマは成立します。

これはエンタメ的な立て付けからの要請があった程度の話で、象徴的には穏当なものも含めたゲーム一般についての内容を、小説設定的な立て付けとしてはビジュアルが華やかな世界の遡上を伴う闘争ゲームに喩えたという感じです。

 

彼方はもうちょっと長く一つのゲームを遊んだ方がいい

特に魔法学院編で顕著ですが、「彼方が一週間とかのかなり短いスパンで見限るのは早すぎない?」「勝利宣言するのが早すぎない?」「それじゃ勝てるものも勝てなくない?」という意見がありました。

これは描写上の比較的些末な問題ではありますが、確かに彼方が中途半端なところでゲームを切り上げているように感じるのはテーマ上でもあまり本意ではないため、もうちょっとリアリティを感じられる程度に長く取っても良かった気もします(でもスピード感が犠牲になるのでこのくらいで良かった気もします)。

 

最終的に多対多のゲームになったのが良かった

一貫してストⅡみたいな一対一の格ゲーの世界観で戦ってきた彼方が、最終的に神威と組んでLoLみたいな多人数ゲームの世界観に移行していたという読みがあって、それはかなり良い読みだと思いました。特に意図したものではありませんが、作者は知らなかったけど読者は知ってる良い話だと思います。VAISが最初の段階で多人数協力ゲームを提案していたことになるのもいいですね。

元々の意図としては、最終的に彼方がゲーマー仲間と協調するようになったのは「攪乱的な創造の余地を確保するためには最低でも二人が必要なので協調した方が有益」というオートポイエーシス的なソリューションの表現です。

ただ確かにゲーマーの成長として見ても複雑度が増して難易度の高いゲームに向かっていく妥当な道筋を辿っていて、ゲーマーの成長としては正しいでしょう。本編後では彼方のスタンスも多人数戦に合わせて変質していくのかもしれません(チームマネジメントとかやるようになるのか?)。

 

可能世界と世界観について

基底世界の世界観が凝ってると思ったらすぐ終わった

基底世界における「捻れたリベラル社会による自殺の容認」という世界観が興味深く、ここから自殺観がどう展開していくのかと思ったら強制終了してもう二度と話題にもならないのが残念だったというような意見がありました。

一応、基底世界が無駄に興味深い世界観なのはエンタメ的には意図通りではあります。最初の世界終了は主人公の不条理な能力が初めて発現する意外で劇的なシーンであってほしく、これからどうなるか気になる世界が強制的に終わってしまうという虚しさを味わってほしかったからです。

逆にそれ以降の世界はどうせ彼方が滅ぼして終わるだろうことが読者にもうっすら伝わっていると思われるため、それほど世界観が入り組んでおらず把握が容易な「どこかで見たような世界」を心がけています(ちなみにエルフ編の世界のモチーフはMinecraftです)。

彼方の自殺フェチ設定自体はその後もずっと生きていて、自殺のやり方がどんどんコンパクトになっていくものの、気持ち的には毎回きちんと自分の首を刎ねるつもりで終末器を押しています。「ゲームクリア時に行う自らと世界の清算という究極の意志決定=自殺と滅亡」という態度は基底世界から彼方が引き継ぎ続けているものでもあります。

 

可能世界は創造されているのか、発見されているのか

彼方の『終末器』は元々あった世界に対して創造関係を結ぶ能力なのか、それとも全く新しく世界を創造する能力なのかという質問がありました。

僕はどっちでもいいと思っていて決まっていません。主人公である彼方の視点を離れた客観的な視点で整合した世界を構築することにあまり関心がないからです。ゲーマーは形而上学的な欲求を断って目の前に見える範囲でゲームに取り組まなければならないというのは大きなテーマでもあるため、大局的な整合性は意図的にオミットしています(彼方も「そんなSF的な裏設定はどうでもいい」みたいなことを定期的に漏らしています)。

 

様相的な可能世界と虚構的な可能世界は同一視できるのか

僕はできる前提で考えています。

「似たような法則が同様に適用できるから」等の理論的な正当化を試みることも可能ですが、ハリーポッターの世界とポケモンの世界は「かもしれない」関係を辿ると到達できると考えることにそれほど違和感はないと思います。ハリーポッターの世界からスタートして、「なんか電気ネズミみたいなやつがいたかもしれない」みたいのを151匹分連鎖したり、「魔法は無かったかもしれない」「ヴォルデモートも別にいなかったかもしれない」とかを繋いでいけばいつかはポケモン世界に辿り着くということです。

神威の能力はこれが肝になっていて、「かもしれない」の連鎖を繋いで彼方の世界を追跡しています。よって彼方や趙なら一手で移動できる距離も神威は地道に一つずつ辿る必要があります。東京タワーで神威が追ってきたときに彼方が「神威が慣れて早くなってるね」みたいな評価をしているのはそのためです。

 

その他

結局立夏との恋愛はどうにもならなかったのか

彼方が立夏に見限られるシーンは人気が高いですが、その後に立夏との関係をどうにかクリアするのかと思ったら完全に諦めたのかという疑問の声がありました。

立夏との関係はそこで詰んで終わったのが意図通りです。彼方はゲーマーでしかないので、ゲーマーの文脈に回収できないものに対しては無力です。

ジュリエット戦でもゲームという狭い土俵では勝っても人間的には負けており、拷問と失明という手痛いペナルティがゲーム外で発生していることは明確に描写しています。『ゲーマゲ』は彼方がゲームで世界を変革する話ではなく、ゲーマーの彼方が成長する話です(ゲーマーとして誠実に頑張る話であって、全てをゲームで解決する話ではない)。

 

萌えキャラに歴史がない

主人公を含めて子供のキャラが多いにも関わらず両親の描写が欠如していることの違和感が指摘されました。「そこは普通は親が出てこない?」という突っ込みは『すめうじ』の頃からちょいちょいあります。

僕は一般に親とか家系を重要なものだと思っていないので、テーマに関与しないのであれば描く必要を感じないというだけです。特にサブカルチャーにおいて親との関係を主題化するのはゼロ年代世代とかに特有の感覚であって、一般には別にどうでもいいことだと思います。

今後の創作でも萌えキャラには親の影は希薄である可能性が高いです。僕は萌えキャラを赤子から少しずつ成長する歴史的な存在ではなく、一番萌える姿でスポーンする無時間的な存在のイメージで捉えています(エルフ編でのエルフの発生みたいな感じ)。

ちなみに設定レベルで聞かれれば彼方の両親は死んでるし、立夏の両親も死んでるし、大抵のキャラの親は死んでいると答えます。

 

格ゲー的な近接戦闘描写が適切かつ順を追ってレベルが高くなっていくのが良かった

近接戦闘描写が概ね高評価なのは良かったです(特にジュリエット戦)。

主人公の彼方が格ゲーマー感覚で戦うにも関わらず僕自身が格ゲーをほとんど通ってきていないという大きな課題があり、格ゲー描写はほぼ全てサイゼミの格ゲー回で得た知見に頼っています。

saize-lw.hatenablog.com

格ゲーマーからエアプ扱いされたらやべえなと思っていたのですが、イツキの風魔法による行動キャンセルやジュリエットのアナログ操作は格ゲーマーなら誰でも一度は考える(というのは盛りだが、少なくとも格ゲーマーの妄想として自然である)というお墨付きがありました。ジュリエットがシームレスに多段攻撃してくる謎の技能も評判がよくて良いです。

 

要所の言い回しがかっこよかった

とてもありがたいです。

『ゲーマゲ』ではボス戦開始時や貫存在登場時などの重要かつ何度も同じシチュエーションが発生するシーンでは同じ言い回しを用いています。これはゲーム的な演出として、ゲームでボスキャラ登場ムービーとかに一定のレギュレーションがあることに合わせています。

具体的には作中で使い回している構文が三種類もあり、「貫存在とエンカウントするシーン」「貫存在が能力の本質を開示するシーン」「ボスが宣戦布告するシーン」では同じ構文の台詞や地の文が使われています。三種類を五回ずつくらいは使っているので全部で十五回くらいは定番フレーズが擦られていると思います。

設定上の演出ではなくメタ演出であるため、全く面識がないはずのキャラも皆同じ言い回しを使っています。暇だったら探してみてください。

 

能力のビジュアルがわからない

終末器や汎将など、印象的なアイテムが多い割には挿絵に登場しないのはAIの限界です。単純な形状であっても、仕様がはっきり決まっているものはプロンプトではなかなか出ません。『ゲーマゲ』はキャラクター小説であって小道具はあまり重要ではないので諦めました。

本当に出したければBlenderとかでモデリングするのが妥当な気がしますが、あれからControlNetとか入ってきてまただいぶ成長した今の生成AIならいけるかもしれません。

 

他の世界のシーンを平行的に取り入れてもいいかなと思った

神威とか趙の別世界エピソードがあってもいいと言えばいいのですが、それは積極的にはやらないことにしていました。VAISの過去編が僅かに一話あるくらいです。

別世界編をやり始めると他のキャラでいくらでも出来てしまって収集が付かなくなるのと、テーマ上でも彼方という一人のゲーマーが下手に他世界を見ようとしないで目の前に見える範囲でやっていくということに大きな意味があって彼方の視点をブレさせたくなかったからです。

 

次は読者が好きになれそうな主人公の物語に挑戦してみて欲しい

今回は主人公を筆頭に尖ったキャラが多い話だったので、次回はあんまり衒学的ではなく比較的常識のあるキャラたちによる普通にエンタメとして面白い長編を書こうと思っています(もう20万字中8万字くらい書き終わっています)。作風みたいなこだわりは特にないので色々やっていきたいところです。

 

付録 iv. 参考文献等

それほど強く参考にしたわけではないですが、各トピックに興味を持ったときに読むと楽しいかもしれない本について軽く挙げておきます。

 

自殺について

タイトルが「ゲーミング自殺」の割には基底世界編以降は主人公がきちんと自殺するシーンが無くなりますが、一応主人公が自殺フェチという設定は常に生きていて、「自殺が示す意味」はサブテーマの一つではあります。

 

タイトル通りの自殺マニュアルです。

様々な自殺手段について「苦痛・手間・見苦しさ・迷惑・インパクト・致死度」を算出し、強みや実現可能性を滔々と解説しています。昔ブームになった本であり、「いつでも死ねると思った方が楽に生きられる」という考え方を提示する実践的な思想書と見做されていることも多いです。

作中では彼方が白花に対して自殺方法を指導するあたりで少し活用されています(彼方の愛読書です)。

 

自殺の様々なトピックについて網羅的にまとめた厚い書籍です。

死に方、ムーブメント、動機、場所、謎等々のトピックが多岐に渡っており、とにかく情報をかき集めることを優先していて話の信憑性が疑わしい三面記事的な内容ではあるものの、とりあえず目を通しておくとざっくり色々な自殺の雰囲気が掴めます。やや古いために「MOMOチャレンジ」「青い鯨」のような近年のネットと結びついた自殺ブームについては全く取り上げられていないのが欠点ではあります。

 

自殺を社会的利害という観点から扱っているのが面白い一冊です。

自殺を道徳的次元に留まる問題ではなく、家・警察・保険会社・遺族・会社・学校などの無数のステークホルダーを巻き込んで規定されていく社会資源の問題とした上で具体的な事例を検討しています。

「自殺という現象をどう捉えるのが社会にとって都合が良いか」という考え方は基底世界編の彼方と樹の会話あたりで少し活用されています。

 

タイトルが若干紛らわしいですが、デュルケム『自殺論』の訳書ではなくその日本語解説書です。解説としてはとても平易なもので原著以上の新しい主張があるわけではありません。

元々の『自殺論』は1897年に発行された社会学の源流の一つで、自殺現象を個人の問題に帰すのではなく社会と相互に影響しているものと考え、分類や分析を加えているところがアプローチとして革新的だったとされています。

「自殺は個人的気質ではなく社会的運動である」と考え方は基底世界編の世界観構築に少し活用されています。

 

死を扱う学問について浅く広く紹介する入門書です。「死をどう捉えるか」という話を割とフワッとやっていてエッセイ調に感じるところもありますが、「自己/他者」や「主観/客観」で死は全く別様であることや、死は常に二重否定でしか捉えられないことなど、死に対する基本的イメージを深める上では役に立ちます。

基底世界編で白花が彼方と会話するシーンで少し活用されているほか、死が視点によって全く異なるものになるという断絶的なイメージは全体でうっすら意識しています。

 

可能世界について

大量にあるので特にオススメのものに絞ります。

 

デイヴィッド・ルイスの可能世界論を説明する入門書はいくつもありますが、その中でも割と最近出ていてかなり読みやすいのでとりあえず触れるにはオススメです。

 

虚構世界について、存在論というからには単に存在するか否かだけではなくどのように存在しているのか等も含めた詳細な議論が含まれています。

特にキャラクターに軸足を置いた分析は地に足がついたものとして楽しく読め、Vtuberとかソシャゲキャラとか近年の変質していくキャラクター概念を捉える上でも有用です。

 

物語理論の観点から可能世界と虚構世界を整合的に接続する名著です。かなり分厚いですが、人工知能パートはあまり大したことがない話なので個人的には読まなくていい気もします。

神威の能力と彼方の能力を同じ土俵に乗せることが出来るという基本的なアイデアはこの本から来ています。

 

ゲーマーの哲学について

遊び概念の顕著な性質として自己目的性があることを指摘した古典です。

ただし戦前の本ということもあって想定している遊びの感じは全体的に非常に古く、ゲーム研究においてもそのまま使うというよりは叩き台として適宜引いてくるようなポジションではあります。

 

彼方のキャラ造形にかなり貢献している本です(ゲーマーの強さとニーチェの強さはよく似ている)。『ゲーマゲ』を書いている最中はあまり意識していなかったのですが、僕自身の強者像がかなり永井均ニーチェ像に影響を受けているため、後から読み返すと「彼方ってニーチェだな」と思うことが多いです。

 

オートポイエーシスについて

混乱しているオートポイエーシス界隈について先行理論の難点を指摘しながら整合的な解釈を改めて提示してくれるありがたい本です。

ただ先行理論の批判によって組み立てられている都合上、先行理論の話が多くなってしまっており、初手から勧められるかどうかは微妙なところでもあります。「この本が出るまでに一般的に流布していたオートポイエーシスの描像」が大掴み出来ていれば効果は覿面ですが、最初から前提と批判を一気に咀嚼するのは少し荷が重いかもしれません。

 

邦書としてはかなり初期に出たオートポイエーシスの紹介書です。

タイトルに「第三システム」とある通り、今までの既存システム論を総括した上で三番目の考え方としてオートポイエーシスを導入するという経緯の説明に紙面を割いています。よって「オートポイエーシスと似てはいるけどオートポイエーシスではない類似システム」との差異を丁寧に確認できるところが非常にありがたい一冊です。

ただ、その分だけオートポイエーシスではない話の記述を大量に読む羽目になるため、入門書としては少ししんどいかもしれません。

 

感想リンク集

ありがとうございます~

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23/2/19 お題箱回109:Skeb、エクセルサーガ、生成AIの是非etc

お題箱と関係のない宣伝

ゲーマゲ批評会やるのでよろしくお願いします

 

お題箱109

534.LWさんはSkeb使ったことありますか?Skebのシステム結構面白いと思うんですよね

僕もとてもよく考えられた面白いシステムだと思いますが、使ったことはありません。

Skebはベースが「投げ銭」であって「依頼」ではなく、イラスト閲覧の延長上にあるものという認識ですが、イラスト閲覧趣味としては絵師が自発的に描いてTwitterに出しているものだけでけっこう満足してしまうからです。

ただSkeb自体を使うわけではありませんが、イラストをちゃんと発注したいとき、つまりSkebでは禁止されているような細かい要件指定や修正要望のやり取りを含む個人依頼を行いたいときの参考としてSkebはかなり便利です。

まずSkebを解放している絵師はその時点で「条件次第では不特定の個人のために絵を描く意志がある」ということがわかるのが非常にありがたいですね。その意志の有無を見極めるのはけっこう難しくて、例えばココナラやSKIMAのような外部マッチングサイトに登録していれば絶対OKだとわかりますし、bioに「個人依頼は受け付けておりません」とか書いてあれば絶対NGだとわかりますが、どちらにも該当しないニュートラルな絵師も多いです。つまり「自ら営業するほど積極的に個人からの仕事を受けたいわけではないが、全く時間が捻出できないとか価値観的に絶対NGというわけでもなく、条件次第では個人向けに描いてもよい」という温度感の絵師が一定数いて、Skebを利用していればとりあえず交渉を持ちかけてもよさそうだと判断できます。

またSkebには必ず予算が明記されているのも個人依頼時の参考としてありがたいところです。イラスト料金って絵師によってピンキリすぎて相場がはっきりしないので、とりあえずの叩き台としてどのくらいの価格帯レンジで考えているかわかる恩恵が大きいんですよね。もっと正確に言えば、価格そのものを参考にできることに加えて、「Skebの予算を拝見させて頂いたところ××円とのことでしたので一旦○○円で~」みたいな感じで交渉時のメールで根拠込みで見積もりを書けるのが嬉しいです。

ただ注意として、Skebに表記されている値段でちゃんとしたイラスト依頼が出来るとは思わないでください。「Skebでの予算が3万円なので3万円で依頼したいです」は絶対NGです。Skebに記載されている予算は企画書を読み込む手間や修正の工数を省いた労力の価格なので、他の手間が入る場合はざっくり2~3倍くらいで見積もった方が安全だと思います(Skebの予算が3万円だったら5~10万円くらいは見ておいた方がいい)。

あと一応念のために付記しておきますが、Skeb内での依頼行為は禁止されています。メール等で個人的に発注を行う際にSkebが参考になるという話であって、Skebの使い方の裏技みたいな話ではありません。

 

535.リコリコとワンエグってキャラ偏重で物語を放棄した点では似てると思うんですが、ワンエグがほぼ話題にすらならなかったのに対してリコリコが大人気なのはなにが明暗を分けているんですかね?個人的にはワンエグのほうが(少なくとも中盤までは)楽しめたので気になります

うーん、個人的な印象としては、言うほどワンエグがキャラ偏重してた感じはしないです。キャラデザと作画はかなり良かったですが、SNSで話題になるようなキャッチーなキャラの性格やキャラ同士の関係をフィーチャーすることに熱心だったようには感じません(キャッチーでないことが良くないといっているわけではなく、キャラパワーで押すコンテンツではなかっただろうということです)。

あと以前の記事にも書きましたが、リコリコが物語を放棄していたとも思いません。ツッコミどころは無限にあったとしても全体として全く意味不明な点はそれほどなかったと思います。

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色々と適当なところはありつつも肝要なところは概ねきっちり作られており、5ミリくらいだけ瞼を開けて薄目で見ればかなりの良アニメだと思う。マクロな世界設定もミクロな行動判断もおかしいが、その中間くらいの粒度で見れば概ね筋が通っている。具体的に言えば、「細かい不整合を無視した個々の単発のお話」や「細かい判断ミスを無視したキャラそれぞれの行動原理」は満足のいくレベルで描写されていたと思う。

はっきり言ってしまえば、ワンエグは「キャラがそこまでキャッチーではない割にはどんな粒度で見てもイマイチ話が掴めない」みたいなところで明暗が分かれている気はします。

 

536.ラノベ100冊のうち、面白かったラノベはありましたか?

レビューを書きました! 評価が4か5くらいのやつが面白いやつです。

saize-lw.hatenablog.com

売らずに手元に残したのは『みすてぃっく・あい』『塔の町、あたしたちの街』『世界の終わり、素晴らしき日々より(1巻のみ)』『空に欠けた旋律』『サムライエイジ』の5作品です。女性主人公以外のラノベだと『猫の地球儀』が他とは次元が違う水準で、やっぱ秋山瑞人やばいな~と思いました。

 

536.こんにちは。ペーパーテストのブログ記事で初めて拝見し、エクセルサーガに少し触れていた記事を見つけました。既に書いているのを見逃していたら恐縮ですが、エクセルサーガホーリーブラウニーなど六道作品について語ってほしいです。私はホーリーブラウニーが読んできた漫画の中で上位に入るほど好きです。お暇な時にでもお願いします。

あんまり語る機会ないですが、エクセルサーガホーリーブラウニーめちゃめちゃ好きです。

エクセルサーガは趣味に合うというよりは趣味を定義した作品で、女性主人公フェチ自体も、特にフィジカル強くてガンガン動けて頭のネジ飛んでる女性主人公キャラが好きなのも概ねエクセル由来です。露悪的な反社会ギャグを好んでいるのもホーリーブラウニーの影響が大きいでしょう。

どちらも情報量が多い漫画で、ギャグにせよストーリーにせよ頭が良い作者のアイデアが大量に詰め込まれているので読んでいて気持ちがいいです。あと普通に美少女キャラクターがかなり上手いので2007年頃のヤングキングアワーズは『ワールドエンブリオ』と『エクセルサーガ』で美少女漫画の二枚看板みたいな認識を僕はしていたんですが、あんまり美少女漫画扱いされているのは見ない……と思ったら萌え攻殻機動隊こと『紅殻のパンドラ』で萌え漫画家のルートに入っていき「そっち行くんだ」と僕は後方で腕を組みながら思っていました。

なんか年季の入った漫画読みの間では有名な作品だけどオタク界全体ではそこまで存在感あるわけでもないみたいなよくわからないポジションではあって、もっと評価されてもいい気はします。

 

537.LWさんが画像生成AIを毛嫌いしているのはどういった理由ですか?滅ぼしたい旨のツイートを度々拝見しているので気になりました。

去年10月頃に生成AIが流行り始めた頃の質問に今答えているのでAI関連のものがかなり多いですが、AIの流れは激流のように早く、あれからもう何度も世間的にも個人的にもフェイズが変わってしまいました。具体的に言えば、つい先週にControlNetがリリースされてプロンプトを用いた生成パラダイムが終わりを告げたり、10月頃から僕がWeb小説でAIイラスト挿絵をめちゃめちゃ使ったりしています。

「毛嫌い」というと若干語弊があって、もっと正確に言うと僕の主張は「生成AIが存在する世界より、生成AIが存在しなかった世界の方が良かったのではないか」ということです。これは「生成AIが発見されて発展した世界」と「生成AIが発見すらされなかった世界」を比較しているのであって、「生成AIが発見されて発展した世界」と「生成AIが発見されたが反対運動によって普及しなかった世界」を比較しているのではないことに注意してください。世界の現実的な在り方の話ではなく、世界の潜在的な認識の話をしています。生成AIが実際に使われるか否かに関わらず、創作能力は神秘化されていた方が人類の幸福度は高かったのではないかみたいな話です。

だからもう手遅れです。今から「生成AIが発見すらされなかった世界」に戻れる可能性はゼロであるため、この議論に夢物語以上の意味はありません。去年の10月頃は今から滅ぼせばまだ「生成AIが発見すらされなかった世界」へのシフトがギリギリ間に合うかなとちょっと思っていましたが、完全に無理だったので、もう忌避する理由も無くなって必要があれば自分でも使うことにしています。

 

538.お絵描きAIが進化し続けて、やがてAIの描いた絵と人間絵師の描いた絵が本当に区別が付かなくなった場合でも、人間絵師の描いた絵に「人間絵師が描いた」以外になんらかの価値は残ると思いますか?

残らないし残り得ないと思います。「AIの描いた絵」と「人間絵師の描いた絵」の定義上の差異は「AIが描いたか人間が描いたか」しかないので、「人間絵師が描いた」を除くと二つは同じものになるはずだからです(これは価値の話ではなく文法の話です)。

もし「『人間絵師が描いた』という部分にはどのような価値が残るか」という質問であれば、それは色々な価値が残ると思います。例えばYouTubeのshortとかでよくあるようにイラストを描く過程が面白かったり、人間が描いたという前提の下で細かい描写にどのような意図が込められているか考えてみたり、作品そのものよりは作者に対する感情を反映して鑑賞してみたり、やりようは色々あるでしょう。

ただそれらによって生じる価値は、どちらかと言えば趣味に属するかなり主観的なものではあって、客観的に主張できるかどうかは時代の潮流依存というところでしょう。

 

539.AIで描いた女の子、下着の透けも指定していますか

特にしていません。時期的に去年10月頃にTwitterに上げたこのイラストの話ですかね?

去年10月頃に作ったやつ(黒ブラ?)

一応プロンプトは以下の通りですが、AIのスピード感に対して4ヶ月前のイラストのプロンプト貼るの今更感が凄すぎますね。

{{masterpiece}}, white hair, long hair, cooler, armpits, trench coat, red eyes, school uniform, necktie, collar, wet, arm up, sweat

ちなみに透けに関してはtransparentとかを上手く指定すると良い感じに出るみたいな話があった気がしますが、それも2ヶ月前くらいの情報ではあります。

 

540.AIのイラストとか小説とかに物申したいことある?

かなりあるのでかなり書きました。

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上の記事では発注者やプランナーとしての立場で思うところを書いていますが、個人的に思うところとしては、イラストレーターの立場が悪くなるのは非常に心苦しく、何とかして廃業せずに仕事ができる流れになってほしいと常に思っています。

ちなみにこれは僕がイラストレーターという職業に対して「この世界で唯一価値のあるオブジェクトであるところの美少女イラストを生み出せる種族だから」という理由で非常に強い敬意を払っているからで、他の職業に対しては一般化されません。つまり事務職とかコスプレイヤーとかドライバーがAIに仕事を奪われて路頭に迷うのはあまり知ったことではありませんが、イラストレーターだけは絶対に肩を持つということです。

また、自分の創作趣味については、言語系AIが小説を生成できるようになりつつあることに対する危機感やモチベーションの変化は一切ありません。僕は商業作家ではなく趣味の人間なので、自分の脳内にあることを出力することが第一の目的で、客観的に面白く優れた作品を出力することは付随的な目的に過ぎないからです。脳内出力は明らかにAIで代替できないため、昨日も今日もダラダラ新しい作品を書いています。

補足446:と口では言いつつ、客観的に見て面白くなるように色々と作品を研究してみたり、読者からのフィードバックを重視していたりと、振る舞いが一貫していないところはあります。

とはいえ、割とこだわりの薄い繋ぎみたいな部分(けっこうどうでもいいシーンとかけっこうどうでもいい設定とか)について補助輪みたいな形でAIを使うのは全然ありなので、それは気が向いたらやってみてもいいかなとは思います。

 

541.さっきリツイートしてた「ウイグルの街並みです。気付きましたか!」ってツイート、何に気づくんだろうと思って垢に飛んだらバチバチ陰謀論者で笑いました。

元ツイートの痕跡を探したらアカウントが消えていました。気付いて消されてしまったんでしょうね。

 

542.いつも楽しく拝見させて頂いております。
LWさんは現在ライトノベルを執筆しており、また過去の批評の中には作品をストーリーテイリングやキャラクターメイクの基本(定石?)から読み込んでいくケースもいくつか見受けられましたが、批評やラノベ執筆で参考にしているハウツー的な書籍があれば教えて頂きたいです。

ありがとうございます!

すみません、僕の中では強く意識してストーリーテリングとかキャラクターメイクの基本から批評とか執筆をした記憶はあんまりないです。ただ、いわゆる「序破急」「語り手」「異化」みたいなレベルの標準的な小説技法については説明しろと言われればできる程度には普通に知っているし、概ね正しい理論だと思っているので、なんとなくうっすら使ったりしているかもしれません。

具体的にどの書籍で学んだとかは思い当たらないですが、強いて言えばパッと思い出せるのは『批評理論入門』とか『キャラクター小説の作り方』あたりでしょうか。

ちなみにストーリーテリングとかキャラクターメイクそのものについてではないですが、明確に「良いな~」と思っているハウツー系の本は三宅隆太『スクリプトドクターの脚本教室』という本で、以下の記事で詳しく紹介しています。

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22/2/11 重い腰を上げて10年前に積んだ女性主人公ラノベ83冊を崩した【4/4】

レビュー続き、前回まではコチラ

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読んだ女性主人公ラノベリスト(再掲)

  • 評価
    俺が好きだったか否かの主観評価。5だからといって作品として優れているとは限らないし、他人にオススメできるわけではない。
    5:心に残る
    4:読んで良かった
    3:読んでも良かった
    2:読まなくても良かった
    1:こんなん売らないでほしい
  • 百合:百合要素があれば+、無ければ-。
  • ヘテロヘテロ要素があれば+、無ければ-。
No. 書名 著者 出版社 発行月 評価 百合 ヘテロ
1 氷の国のアマリリス 松山剛  ADOKAWA 2013/04 2 - +
2 あまがみエメンタール 瑞智士記  一迅社 2009/03 4 + -
3 あかね色シンフォニア 瑞智士記  一迅社 2009/11 2 + -
4 みすてぃっく・あい 一柳凪  小学館 2007/09 4 + -
5 私たち殺し屋です、本当です、嘘じゃありません、信じてください。 兎月竜之介  集英社 2016/08 2 + -
6 黒百合の園 : わたしたちの秘密 秋目人  KADOKAWA 2013/12 2 - -
7 四人制姉妹百合物帳 石川博品  星海社 2014/12 4 + -
8 おとめ桜の伝説 : 小峰シロの物ノ怪事件簿 くしまちみなと  一二三書房 2012/12 2 - -
9 結成!聖(セント)☆アリア電脳活劇部 御門智  一迅社 2011/11 4 + -
10 サムライエイジ みかづき紅月  徳間書店 2008/06 5 + +
11 サムライエイジ : 乙女たちの初陣っ! みかづき紅月  徳間書店 2008/10 5 + +
12 サムライエイジ : 恋せよ戦乙女たちっ! みかづき紅月  徳間書店 2009/06 5 + +
13 特別時限少女マミミ 斧名田マニマニ  集英社 2014/04 4 + -
14 声優ユニットはじめました。 藤原たすく  小学館 2014/01 1 + -
15 マイノリティ・コア 絶対無敵の女剣士と甘えたがりの機織り娘 みなみケント 泉彩 ポニーキャニオン 2014/07 1 + -
16 乙女革命アヤメの! 志茂文彦  メディアファクトリー 2008/11 2 + -
17 マジカル†デスゲーム1 少女は魔法で嘘をつく うれま庄司  ADOKAWA 2014/03 3 + -
18 マジカル†デスゲーム2 反証のアーギュメント うれま庄司  ADOKAWA 2014/05 2 + -
19 誰よりも優しいあなたのために あきさかあさひ  一迅社 2012/02 2 + -
20 .(period) 瑠璃歩月  一迅社 2008/08 3 + -
21 東京地下廻路(アンダーサーキット) 小林雄次  オーバーラップ 2014/09 2 + +
22 乙女は花に恋をする : 私立カトレア学園 沢城利穂  一迅社 2009/05 2 + -
23 スーパーヒロイン学園 仰木日向  ポニーキャニオン 2014/12 3 + -
24 いらん子クエスト 少女たちの異世界デスゲーム 兎月竜之介  集英社 2015/07 3 - -
25 ウィッチマズルカ (1).魔法、使えますか? 水口敬文  角川書店 2006/07 3 + -
26 ウィッチマズルカ (2). つながる思い 水口敬文  角川書店 2006/11 3 + -
27 えびてん : 綺譚奇譚 SCA自  角川書店 2012/10 3 + -
28 桜色の春をこえて 直井章  アスキー・メディアワークス 2011/11 3 + -
29 彼女は眼鏡holic 上栖綴人  ホビージャパン 2008/07 3 + -
30 不完全ナックル 十階堂一系  ADOKAWA 2012/08 3 - -
31 不完全ナックル2 十階堂一系  ADOKAWA 2012/11 3 - -
32 虹色エイリアン 入間人間  ADOKAWA 2014/11 4 - -
33 世界の終わり、素晴らしき日々より 一二三スイ  ADOKAWA 2012/09 5 + -
34 世界の終わり、素晴らしき日々より2 一二三スイ  ADOKAWA 2013/01 2 + +
35 世界の終わり、素晴らしき日々より3 一二三スイ  ADOKAWA 2013/06 3 + +
36 超次元ゲイム ネプテューヌ おぶ・ざ・ないとめあ? 八木れんたろー  ADOKAWA 2013/08 1 - -
37 ヒマツリ : ガール・ミーツ・火猿 春日部タケル  角川書店 2010/12 2 - +
38 ヒマツリ アイスドール・ウォーズ 春日部タケル  角川書店 2011/04 2 - +
39 サイハテの聖衣 三雲岳斗  ADOKAWA 2011/12 3 - -
40 サイハテの聖衣2 三雲岳斗  ADOKAWA 2012/12 3 - -
41 魔よりも黒くワガママに魔法少女は夢をみる 根木健太  エンターブレイン 2011/03 2 + -
42 魔よりも黒くワガママに魔法少女は夢をみる2 根木健太  ADOKAWA 2011/09 2 + -
43 ワイルドブーケ : 花の咲かないこの世界で 駒尾真子  一迅社 2008/08 3 + -
44 ワイルドブーケ : 想いを綴る花の名は 駒尾真子  一迅社 2009/01 3 + -
45 超次元ゲイムネプテューヌ : TGS炎の二日間 八木れんたろー  メディアファクトリー 2013/05 1 - -
46 塔の町、あたしたちの街 扇智史  エンターブレイン 2007/04 5 + -
47 塔の町、あたしたちの街2 扇智史  エンターブレイン 2008/05 5 + -
48 あるゾンビ少女の災難 I 池端亮  角川書店 2012/07 4 + -
49 あるゾンビ少女の災難 II 池端亮  角川書店 2012/07 4 + -
50 雨の日のアイリス 松山剛  ADOKAWA 2011/05 4 - -
51 ぴぴっと!! 和智正喜  メディアファクトリー 2007/06 3 + -
52 しずるさんと偏屈な死者たち 上遠野浩平  星海社 2013/07 3 + -
53 しずるさんと底無し密室たち 上遠野浩平  星海社 2013/09 3 + -
54 ブギーポップは笑わない 上遠野浩平  ADOKAWA 1998/02 4 - -
55 原点回帰ウォーカーズ 森田季節  メディアファクトリー 2009/01 3 - -
56 原点回帰ウォーカーズ2 森田季節  メディアファクトリー 2009/05 4 + -
57 ノートより安い恋 = The love that is cheaper than a notebook 森田季節  一迅社 2012/04 3 + -
58 あまいゆびさき 宮木 あや子 一迅社 2013/04 3 + -
59 空に欠けた旋律(メロディ) 1 葉月双  ソフトバンククリエイティブ 2012/08 4 + -
60 空に欠けた旋律(メロディ) 2 葉月双  ソフトバンククリエイティブ 2012/12 4 + -
61 空に欠けた旋律(メロディ) 3 葉月双  ソフトバンク クリエイティブ 2013/08 4 + -
62 ストロベリー・パニック!〈1〉 公野櫻子  メディアワークス : 角川書店 2006/03 3 + -
63 ストロベリー・パニック!〈2〉 公野櫻子  メディアワークス : 角川書店 2006/08 3 + -
64 ストロベリー・パニック!〈3〉 公野櫻子  メディアワークス : 角川書店 2006/12 3 + -
65 鹿乃江さんの左手 青谷真未  ポプラ社 2015/01 3 + -
66 OBSTACLEシリーズ 激突のヘクセンナハトI 川上稔  ADOKAWA 2015/08 2 - -
67 よくわかる現代魔法 桜坂洋  集英社 2003/12 3 - +
68 よくわかる現代魔法 : ガーベージコレクター 桜坂洋  集英社 2004/05 3 - +
69 よくわかる現代魔法 : ゴーストスクリプト・フォー・ウィザーズ 桜坂洋  集英社 2004/09 3 - +
70 よくわかる現代魔法 : Jini使い 桜坂洋  集英社 2005/01 3 - +
71 よくわかる現代魔法 : たったひとつじゃない冴えたやりかた 桜坂洋  集英社 2005/05 3 - +
72 よくわかる現代魔法 : Firefox! 桜坂洋  集英社 2009/03 3 - +
73 魔法少女育成計画 遠藤浅蜊  宝島社 2012/06 5 - -
74 魔法少女育成計画restart 遠藤浅蜊  宝島社 2012/11 5 - -
75 魔法少女育成計画restart 遠藤浅蜊  宝島社 2012/12 5 - -
76 魔法少女育成計画episodes 遠藤浅蜊  宝島社 2013/04 4 - -
77 魔法少女育成計画limited 遠藤浅蜊  宝島社 2013/11 4 - -
78 魔法少女育成計画limited 遠藤浅蜊  宝島社 2013/12 4 - -
79 魔法少女育成計画JOKERS 遠藤浅蜊  宝島社 2014/08 2 - -
80 魔法少女育成計画ACES 遠藤浅蜊  宝島社 2015/09 2 - -
81 魔法少女育成計画episodesΦ 遠藤浅蜊  宝島社 2016/04 3 - -
82 魔法少女育成計画16人の日常 遠藤浅蜊  宝島社 2016/10 4 - -
83 魔法少女育成計画QUEENS 遠藤浅蜊  宝島社 2016/12 2 - -
84 先輩と私 森奈津子 徳間書店 2011/05 4 + -

 

女性主人公ラノベレビュー【4/4】

マイナー古ラノベはどうせ誰も読んでおらずただ感想を書いても共有できない可能性が高いため、皆が手に取りやすいようにあらすじを引用している。

ネタバレ配慮は特にしていないので気になるものは先に読んでほしい。俺も読んだんだからさ……

 

昔けっこうあった不条理系ラノベ

おかしな人間ばかりが通う私立御伽坂学園には、当然のようにおかしな事件ばかりが起こる。そんな学園の平和を守るため、日々戦い続ける男・それが山崎章夫だ。ある時は失踪した天才音楽家の行方を追い、ある時は密室殺人の謎に挑み、またある時は突然美女と化した同級生の秘密に迫り、そしてことごとく“命を落とす”。そう、これらはすべて『彼ら』の陰謀なのだ! 章夫の幼なじみであるアキラは、なんとか章夫の“結末”を変えるべく、学園の三奇人と共に『彼ら』に立ち向かうのだが――。ツッコんだら負けの、<運命ねじ曲げ系>奇天烈学園ファンタジー!!

【評価: 3】【百合: -】【ヘテロ: -】

割とよく女性主人公を書いている森田季節の最初期の作品。

最近では異世界転生量産マシーンという印象もあるが、15年前くらいは京大文学系出身らしく尖った作品をよく書いていた。これも深崎暮人の可愛いキャラデザの割には不条理系のライトノベルで、フィクションに囚われた世界で勃発する荒唐無稽なイベントを更に上を行く荒唐無稽なキャラで押し切っていく。昔は萌えの立て付けを逆手に取った不条理系ライトノベルというジャンルが存在していたが(『消えちゃえばいいのに』『インテリぶる推理少女とハメたいせんせい』等)、今も残っているのだろうか?

二巻はけっこう百合要素があって当時のスレで盛り上がっていた記憶がある。主人公が惚れ薬でモテモテになってしまう騒動回で傍若無人の美少女上司にだけは効かなかった(元々好感度が高い人間には惚れ薬が効かない)というTwitterで無限に見るアレがあったため。

 

一迅社変革期の先鋒

コミック百合姫発・ノベルシリーズ第一弾 わかってる。 この道をどれだけ行ったとしても その先に、あなたはいないんだ。 森田季節が描く、少女たちの様々な思い。 恋かもしれない、何か。 苦くて切ない、冷たくてあたたかい彼女と彼女の関係、 覗いてみませんか? 百合姫掲載4 編に加え、書き下ろし多数で刊行。

【評価: 3】【百合: +】【ヘテロ: -】

こちらも森田季節だが、一迅社らしくもっとゴリゴリの百合もの。

2012年頃はゆるゆりの大ヒットを受けて一迅社の百合系コンテンツ(特に百合姫)が男性をキャッチする方向へと舵を切りつつあった時期で、この小説も古くから女性向けでポジショニングしてきた一迅社アイリス文庫ではなくコミック百合姫の系譜として新たに創設されたレーベルに属している。

それを受けてかどうか、サクッと楽しめるエモい話を集めたエモ短編集で、概ね男性でも楽しめそうなTwitterっぽい現代的な立て付けだ。特に共通したテーマは設けられていないが強いて言えば自他の区分みたいなところがテーマになっている話が多い。俺は女子大生が女子小学生にちょっかい出す話が好きだった。

 

こっちはレズビアン小説の系譜

幼い少女ふたりの邂逅。過酷な生き方を余儀なくされた思春期少女たちは、もがきながら互いを希求し続け…。切ない欲望が交差する、ふたりのビルディングスロマン。百合長編小説。

【評価: 3】【百合: +】【ヘテロ: -】

こちらも元は百合姫絡みで出ていたやつだが、後々ハヤカワからも出た(俺が積んでいたのは百合姫版だが何故かリンクが張れない)。

「百合長編小説」と自称しているが、こちらは百合小説や少女小説というよりはレズビアン小説の系譜であるように感じる。家庭環境がめちゃめちゃ悪い被虐待児の少女二人が色々な諸々を乗り越えてなんやかんやでくっつく話で、治安の悪い世界で虐げられるポジションからの立ち上がりという基本線が通底している。最終的に渡米してLGBTコミュニティに属していくあたりにも現実的なマイノリティの生存戦略にかかる視点がある。

個人的には現実のマイノリティに係る苦難にはそれほど関心がないので萌えファンタジーの方が嬉しくはある。

 

ヤンデレ大戦争

「魔女さんのことが、好きです」 百年以上前から泥沼の戦争が続く世界。レイは単騎で敵を撃墜し続ける銀色の魔女、クッキィに恋をした。彼女への憧れから士官学校を卒業後、パイロットとしてクッキィのいる基地へとやってきたレイ。配属早々の戦闘のさなか、敵軍のエースに撃墜されたクッキィを救うため、レイは戦線を離脱する。ところが戦域から離れた場所で、死を望んでいるかのようなクッキィの言動に、思わず告白してしまう。そんなレイに、クッキィは銃口を向け、甘くささやく。 「世界を変えてみない?」 絶望的な世界のなかで、疾走する空戦と恋の旋律。GA文庫大賞《奨励賞》受賞作。

【評価: 4】【百合: +】【ヘテロ: -】

これかなり好きです。名作。

あらすじだけだと百合要素は特に感じられないが、実は主人公のレイが女性。「女性ヒロインと恋愛する、一人称が『僕』の主人公」が僕っ娘の女性主人公であることがかなり遅れて発覚する謎の叙述トリックは、「女性主人公と百合は売れないからあらすじで露見しないように隠されるのだ」という当時の陰謀論を補強することになった。

シリアスな戦時下で繰り広げられる軍事系戦闘美少女ものだが、主人公を筆頭にLOVE最優先の重度ヤンデレキャラが多く、戦闘や行動にかかる判断がいちいちナチュラルにバグっているのがかなり独特で魅力的。その前提として、ラノベ的な温い恋愛描写では必須の「主人公とヒロインの距離を縮めるパート」が全てショートカットされているのが面白い。冒頭の主人公からヒロインへの告白が普通に通って普通に付き合い始め、既に恋人同士という前提の下で重すぎる愛の交錯がスタートする。

甘いラブコメパートが存在しない代わりに重いヤンデレパートが恋愛要素のほぼ全てを占めており、泥沼の戦争状態の中で「死んだり殺したりするのは構わないが、LOVEだけは絶対に裏切ってはいけない」という激重価値観が蔓延している。主人公はヒロインに少しでも危害が及びそうだと見るや即決で味方上官を殺害するし、ヒロインもフレンドリーファイアを一切躊躇しない。主人公がヒロインをガチで殺そうとすることも割と多く(LOVEは命より重いため)、幼馴染のサブヒロインや敵国の軍人も揃って戦争状況より自分のLOVEやPROMISEを優先して戦う謎の誠実さを持っている。

強いて言えば戦闘描写がよくわからないことや台詞回しが粋すぎて若干寒いという欠点は無くもないが、恋愛脳を極めすぎたヤンデレ大戦争にはそのくらいがちょうどいいのかもしれない。

 

レジェンド百合コンテンツ正典

乙女の聖域に秘められた恋…。『シスター・プリンセス』の公野櫻子氏が、正統派百合ノベルを華麗に書き下ろし。舞台は、名門お嬢様学校が3校建ち並ぶ、緑豊かなアストラエアの丘。ごく普通の15歳の少女・蒼井渚砂は、3校の中で最も伝統ある聖ミアトル女学園に編入し、3校の寄宿舎・いちご舎へと入寮する。桜の花びらが舞い散る、登校初日。渚砂は最上級生の花園静馬と出会い、その麗しさに息を呑む。“エトワール”の弥号を持つ静馬は、全校生徒から憧憬の視線を浴びている至高の存在。そんな静馬に気に入られた渚砂は、恋と波乱の女子校ライフを送ることに…。

昔読んだしアニメも全話見たが、まとめて積まれていたのでついでに再読。

百合がスーパーライト化した現代から見ると相対的にコアなユーザー向けの正統派百合コンテンツにも感じるが、当時は比較対象が『マリみて』だったためかなりライトユーザー向けの百合作品というポジションだった。今振り返ると電撃G's系コンテンツはレジェンド公野櫻子が牽引しながら「シスプリストパニラブライブ」という流れを辿ってきていて(マリロワってあんまり流行らなかったね)、ラブライブが男性主人公をオミットしたところには百合要素の明確な貢献があった。

正伝系に属するライトノベル版はエトワール選を進めるという体裁でスタートするが、途中から主人公ペアを含めた参加者が勝手にドロップしたりして開催自体が危ぶまれていくという流れは邪道じみている。最終的にはスピカ組くらいしか残らなかったので消化試合になってしまい、試合内容が碌に描かれないのはかなり面白かった。

カップリング的には一番人気(諸説あり)(俺も一番好き)の光莉&天音ペアがめちゃめちゃ優遇されており、ライバルの妨害が入りつつも最終的に光莉と天音がくっついて良かったねという話に収束していく。逆に主人公ペアは取って付けたような退学騒動とか過去話に振り回された挙句にドロップしていてあまりぱっとせず、面白かったところは最強お姉さまであるはずの静馬が妙にキャピキャピしていてモノローグでいちいちハートマークを飛ばしたりするお茶目さを見せることくらいだ。

 

ゆる日常ミステリ

ある女子校で起こる“不思議で残酷な出来事"を描く3つの連作短編集。「この学校には魔女が棲んでいて、どんな願いごとも一つだけ叶えてくれる」という噂。絵空事と思っていた生徒の前に、ある日魔女を名乗る女性が現れて……(「からくさ萌ゆる」)。

【評価: 3】【百合: +】【ヘテロ: -】

なかなか面白かった。ポプラ文庫はさすがにラノベではないと思うが、たぶん当時のスレの流れでギリギリでラノベ判定を食らって積まれていたのだろう。一般寄りのちゃんとした小説としてのクオリティが高い。

「魔女が出てきて少し不思議なイベントが起きるが最終的に合理的な説明が付いてしまって魔女は何だったのかはよくわからない」というギミックの構築はかなり巧みだ。一見すると不明瞭な幻想にきっちり理由を付けていく手振りはミステリに近い趣きもあり、その中で少女同士がワチャっとしたりしなかったりする百合要素もゴリゴリにある。個人的には謎の肉弾戦が発生するところが好きだった(男の子なので)。

 

俺が知らない文法で書いてある

ここは【黒の魔女】に支配されている地球。かつてこの世界を滅ぼそうとする魔女を、人類は月に封印することに成功したが、その力は今もなおこの世界に傷跡を残していた。 十年一度のヘクセンナハトの夜、月に封印された魔女を裁くのは一体誰なのか。少女達はその座を争い、ハートを燃料に高速で激突。砲弾が大地を割る。世界を救うために!! 「月刊コミック電撃大王」連載中のコミックを原作者自ら長編小説化! 『境界線上のホライゾン川上稔が贈る、新たなる魔法少女の物語!!

【評価: 2】【百合: -】【ヘテロ: -】

唯一明確に合わなかったラノベ。クオリティの問題ではなく、文章の癖が強すぎて全然読めなかった。特に説明されない固有名詞や固有動詞が無限に出てきて、何のために何が起きているのかわからないバトルが一生展開され続けていて何が何だったのか最初から最後まで全然わからない。普段俺が読んでいる文章と違う文法で書かれている。

今あらすじを見て初めて知ったが、元はコミックらしいので細かいところはコミックで補完する前提なのかもしれない。確かにずっと戦闘描写が続いている様子はコミック映えしそうではある。

最強美少女主人公の造形は明確によくて、何でもできる割に常に上から目線な口調はかなり良かった。

 

All You Need Is Killわしが育てた

自分を変えたい! ドジでお子さま体型のこよみは、現代に生き残る魔法使い美鎖(みさ)からPCを使った魔法を学ぶことに。でも、こよみの魔法は変に発動してしまい…異世界の魔物(デーモン)まであらわれた!? その頃、ネットワーク型大規模魔術により各地で異変がおき始める。天才魔法少女・弓子や理系委員長の嘉穂(かほ)も巻き込んで、こよみの大活躍がはじまる!

【評価: 3】【百合: -】【ヘテロ: +】

最近すっかりちゃんとした小説家になってしまった桜坂洋出世作

全五巻で一旦完結したもののアニメ化したあたりで新装版や第六巻が出てコンテンツが続きそうな気配を出していたが、同作者の『All You Need Is Kill』が世界中で大ヒットしたことによって日本でちょっとアニメ化した程度のライトノベルにかかずらっている場合ではなくなり続編は絶望的になった。

当時は若干ハマった記憶があるのだが、今読むと思ったより地味でパッとしないという感想は否めない。主人公の造形がかなり萌え萌えしている割には本当に話を動かす中核にいるのはプログラマーのオッサンたちばかりで、唯一プログラミングを扱える萌えキャラである「美鎖」に物語上の負荷のほとんどが集中している。主人公のような純萌えキャラたちがおっさんたちと正面から敵対するシーンもそれほど多くなく、萌え文脈と硬派SF文脈が断絶していて今読むと本当はもっとちゃんとした小説を書きたかったんだろうなと邪推してしまう。

変則能力バトルものとして見ようとしても、完全無効化系能力者が味方陣営に二人もいるために直接的な戦闘の次元ではほとんどバトルが成立しなくなっている(こよみと聡史郎)。一応はクライマックスでは主人公のこよみを活躍させたい事情もあり、バトル的にはこの二人で全て収拾できる話が多い。

当時割とハマっていたためまとめて積まれていた関連書籍も再読したが、アニメファンブックである『よくわかる現代魔法が256倍よくわかる本』が必読。原作を読むなら絶対に目を通した方がいい。

結局のところ、このラノベの白眉は「プログラミング」と「魔法」を発動領域がシリコンか肉体かが異なるだけの同じ理論体系であると見做すアナロジーにあるのだが、実際に「コード」と「詠唱呪文」がどのように対応しているのかはこのファンブックにしか解説がない。例えば「『めぐれめぐれ、ゆらぎの数無くなるときまで』という詠唱が疑似コードにおいてはDO WHILE文に対応している」というような最重要情報が具体的に紹介されている。

正直に言えば、萌えコンテンツとしては原作イラストレーターで漫画家でもある宮下未紀本人による漫画版が「顧客が本当に求めていたもの」だったような気がする。

プログラマーのおっさんたちが策略を巡らせるパートを全てオミットして美少女キャラ同士がワチャワチャするコメディにする潔さ。宮下未紀はかなり古参の百合漫画家ということもあって基本的に萌え漫画が上手く、原作では仲良し程度だったこよみと弓子が明確にカップリング扱いになっているあたり、桜坂洋はあまり関心がなかったであろう萌えのツボがきっちり押さえられている。

補足445:宮下未紀はかなり昔から男性向けの絵柄で女性主人公や百合をやっていた非常に貴重な漫画家の一人で、無期休載されている『ピクシーゲイル』が一部で伝説になっているように男性向け百合界隈では確固たる立ち位置を確立していた(諸説あり)。俺も昔からファンで、『よくわかる現代魔法』が流行った頃に便乗して昔成年漫画家だった頃の古いエロ漫画『キスきゅー』『シトロン・ヴェール』に表紙描き下ろし新装版が出たのが激熱だった話とか色々な思い出がある。

 

群像劇能力バトルデスゲームの完成形……だった

大人気ソーシャルゲーム魔法少女育成計画』は、数万人に一人の割合で本物の魔法少女を作り出す奇跡のゲームだった。幸運にも魔法の力を得て、充実した日々を送る少女たち。しかしある日、運営から「増えすぎた魔法少女を半分に減らす」という一方的な通告が届き、16人の魔法少女による苛烈で無慈悲なサバイバルレースが幕を開けた……。

【評価: 5】【百合: -】【ヘテロ: -】

limited編まで読んで止まっていたので全部読み直した。

エンタメとしては今回読んだ83冊の中で断トツで面白かった。だいぶ前にアニメ化してから続刊がしばらく止まっていた時期があったが、最近またリブートして続編のアニメ化も決まったらしく楽しみにしている。

一作目(無印)の完成度が傑出しており、群像劇能力バトルデスゲーム作品の完成形の一つと言ってもいい。

やはり「魔法少女を半分に減らすポン」という立て付けがよく出来ている。一人生き残り型のデスゲームではないので徒党を組む協調インセンティブがあるが、一人蹴落とし型のデスゲームではないので殺せそうなところから殺していく対立インセンティブもあり、これによって色々なキャラが相互の信条に応じて交渉や闘争を行うようになる。

そうやって十六人もの魔法少女が参加するデスゲームでありながら、各キャラが非常によく立っていて性格や関係のバリエーションが豊富。同じバトルマニア系の魔法少女でも正々堂々いくか不意打ちを許容するか、利己主義の魔法少女でも常に貫徹できるかいざとなると怖気づいてしまうか等の違いがきちんと解像度高く設定されている。

こうしたデスゲーム参加キャラのバリエーションを担保している要石は、「どんな人間でも魔法少女になれる(魔法少女は変身前の外見や年齢や性別を全く保持しない)」という魔法少女の変身ギミックを逆手に取った設定だ。この設定によって、変身後はおしなべて美しい魔法少女だとしても、変身前は男子高校生や女子小学生など色々な人間像を扱えるようになる。例えば一般人を虐殺する最もヤバい魔法少女「カラミティ・メアリ」の変身前は子供を虐待しているアル中主婦だが、この造形は単に女子高生の萌えキャラである限りは年齢的に不可能なものだ。

このおかげで「一人に一つ固有の魔法」というベタな能力バトル用の設定にもキャラがしっかり結び付いて立体的な味わいが出てくる。魔法少女のデスゲームでありながら本質的には様々な人生を背負った一般人が殺し合う二重性にこそ優れたフォーマット上の技巧があり、この工夫は商業的な都合でビジュアル的には女子高生前後の美少女をメインキャラクターにせざるを得ない萌えコンテンツの抜け道としても優れている。

また、スピーディーにデスゲームを進めるペース配分も凄い。具体的に言えば、そこまで厚くない280ページの文庫本一冊に16人が参加するバトルロイヤルが収まっている。単純に16で割っても一人あたり僅か18ページしかなく、この分量で世界観設定や物語進行まできちんとこなしているのがあまりにも不思議で一度分解して研究してみた(この研究成果は今は書かないが、いずれ自分の創作に活かされるかもしれない)。

ただ、二作目のrestart編までは相変わらず面白いのだが、三作目のlimited編あたりからやや微妙になってきて、その続きのトランプ三部作はちょっと読めたものではなかった。面白くなくなった理由は全くはっきりしていて、戦いが「一般人のデスゲーム」から「職業軍人の戦争」にシフトしていったことだ。

limited編くらいからデスゲームのバックにいた巨大ファンタジー組織「魔法の国」が本格的に描かれ始め、それまで戦っていた「ある日いきなり魔法少女になってしまった一般人」に代わって「魔法の国から出向している役人」や「魔法の国に勤務する戦闘要員」が戦うようになってくる。

こうした役人や構成員は突然デスゲームに巻き込まれたのではなく、既に自分の意志で戦争に参加している職業軍人だ。この作品の武闘派キャラは総じて覚悟が完了しており、いちいち戦いに動揺したりせず政治的な立場で形式的に戦えてしまうのでドラマの盛り上がりが犠牲になる。彼女らは魔法少女への変身前後を問わず魔法組織にコミットする人生を送っているため、「変身前後のギャップ」という最も優れた設定も特に活かされない。

更には魔法能力が軽視されるようになり、代わりに各人が使い慣れた固有武装で物理的に殴り合うことが増えていく。初期は一般人たちが「一見微妙な能力は使い方で活かす」という典型的な能力バトルをやっていたのだが、後発の職業軍人たちは「微妙な能力を持っている場合は汎用性が高い武装と腕力による戦闘スキルで補う」という身も蓋もない判断をしてしまい、それによって生まれるバトルはあまり魅力的なものではない。

特にトランプ編から出てくるようになった「シャッフリン」という魔法少女が本当に良くない。この作品を終わらせた戦犯はシャッフリンだ。「キャラの画一化」「変身のオミット」「能力の軽視」というトランプ編の悪いところが全部詰まっている。トランプをモチーフにした「シャッフリン」は自己意志を持たないが無限増殖する能力を持つ無名の兵隊魔法少女であり、シャッフリン戦は常に質的な戦いではなく量的な戦いになるため交戦に伴うドラマが全く生まれない。いまやスタメン化したシャッフリンが敵味方問わず戦場の空白を埋める役割を担ってしまっているのは悪夢としか言いようがない。

初期は傑作中の傑作だったが、正直なところトランプ編で作品が進むべき方向をめちゃめちゃに間違えている気がしてならない。巨大な組織闘争を描くより、優れた立て付けが最も活かされる一般人のデスゲームにこだわるべきだったのでは?

 

男性向けお気楽レズビアン官能小説

T女子大学好色文学研究会の会員・光枝は、会長の阿真理先輩(ロリ巨乳系)に淡い恋心を抱いている。それを知ってか知らずか先輩はつれなくて、オナニーによる女性の真の自立と解放を叫ぶのみ。光枝は仕方なく、エッチな小説を書いて自らを慰める、しょんぼりな毎日。そこへライバルサークルの会長、華代の魔の手が。笑いとエロスが奇跡の融合を遂げた、著者の真骨頂。女だらけの官能小説。

【評価: 4】【百合: +】【ヘテロ: -】

純粋なレズビアンR18官能小説だが、表紙イラストが割とキャッチーということで百合ラノベ判定されていた。

しかし内容は表紙に合ったラノベ調のものでサクッと読めてかなり面白い。レズビアン官能小説というとねっとり重くなりがちな印象もあるが(偏見)、それに抗して森奈津子は男性が笑って読めるレズビアン小説を目指した旨があとがきで語られており、その目論見は完全に実現されていると思う。

ロリ巨乳で文学の才能があって堅い口調でオナニーに関して一家言あるという、いかにも男性向けに造形していそうな属性モリモリの「先輩」が普通にかなり萌えで良かった。先輩が一番好きなので個人的には金持ちのレズキャラをいじめるパートがちょっと長く感じたが、監禁凌辱とかやっている割には重くならないコメディタッチが巧み。

23/2/4 重い腰を上げて10年前に積んだ女性主人公ラノベ83冊を崩した【3/4】

レビュー続き、前回まではコチラ

saize-lw.hatenablog.com

saize-lw.hatenablog.com

読んだ女性主人公ラノベリスト(再掲)

  • 評価
    俺が好きだったか否かの主観評価。5だからといって作品として優れているとは限らないし、他人にオススメできるわけではない。
    5:心に残る
    4:読んで良かった
    3:読んでも良かった
    2:読まなくても良かった
    1:こんなん売らないでほしい
  • 百合:百合要素があれば+、無ければ-。
  • ヘテロヘテロ要素があれば+、無ければ-。
No. 書名 著者 出版社 発行月 評価 百合 ヘテロ
1 氷の国のアマリリス 松山剛  ADOKAWA 2013/04 2 - +
2 あまがみエメンタール 瑞智士記  一迅社 2009/03 4 + -
3 あかね色シンフォニア 瑞智士記  一迅社 2009/11 2 + -
4 みすてぃっく・あい 一柳凪  小学館 2007/09 4 + -
5 私たち殺し屋です、本当です、嘘じゃありません、信じてください。 兎月竜之介  集英社 2016/08 2 + -
6 黒百合の園 : わたしたちの秘密 秋目人  KADOKAWA 2013/12 2 - -
7 四人制姉妹百合物帳 石川博品  星海社 2014/12 4 + -
8 おとめ桜の伝説 : 小峰シロの物ノ怪事件簿 くしまちみなと  一二三書房 2012/12 2 - -
9 結成!聖(セント)☆アリア電脳活劇部 御門智  一迅社 2011/11 4 + -
10 サムライエイジ みかづき紅月  徳間書店 2008/06 5 + +
11 サムライエイジ : 乙女たちの初陣っ! みかづき紅月  徳間書店 2008/10 5 + +
12 サムライエイジ : 恋せよ戦乙女たちっ! みかづき紅月  徳間書店 2009/06 5 + +
13 特別時限少女マミミ 斧名田マニマニ  集英社 2014/04 4 + -
14 声優ユニットはじめました。 藤原たすく  小学館 2014/01 1 + -
15 マイノリティ・コア 絶対無敵の女剣士と甘えたがりの機織り娘 みなみケント 泉彩 ポニーキャニオン 2014/07 1 + -
16 乙女革命アヤメの! 志茂文彦  メディアファクトリー 2008/11 2 + -
17 マジカル†デスゲーム1 少女は魔法で嘘をつく うれま庄司  ADOKAWA 2014/03 3 + -
18 マジカル†デスゲーム2 反証のアーギュメント うれま庄司  ADOKAWA 2014/05 2 + -
19 誰よりも優しいあなたのために あきさかあさひ  一迅社 2012/02 2 + -
20 .(period) 瑠璃歩月  一迅社 2008/08 3 + -
21 東京地下廻路(アンダーサーキット) 小林雄次  オーバーラップ 2014/09 2 + +
22 乙女は花に恋をする : 私立カトレア学園 沢城利穂  一迅社 2009/05 2 + -
23 スーパーヒロイン学園 仰木日向  ポニーキャニオン 2014/12 3 + -
24 いらん子クエスト 少女たちの異世界デスゲーム 兎月竜之介  集英社 2015/07 3 - -
25 ウィッチマズルカ (1).魔法、使えますか? 水口敬文  角川書店 2006/07 3 + -
26 ウィッチマズルカ (2). つながる思い 水口敬文  角川書店 2006/11 3 + -
27 えびてん : 綺譚奇譚 SCA自  角川書店 2012/10 3 + -
28 桜色の春をこえて 直井章  アスキー・メディアワークス 2011/11 3 + -
29 彼女は眼鏡holic 上栖綴人  ホビージャパン 2008/07 3 + -
30 不完全ナックル 十階堂一系  ADOKAWA 2012/08 3 - -
31 不完全ナックル2 十階堂一系  ADOKAWA 2012/11 3 - -
32 虹色エイリアン 入間人間  ADOKAWA 2014/11 4 - -
33 世界の終わり、素晴らしき日々より 一二三スイ  ADOKAWA 2012/09 5 + -
34 世界の終わり、素晴らしき日々より2 一二三スイ  ADOKAWA 2013/01 2 + +
35 世界の終わり、素晴らしき日々より3 一二三スイ  ADOKAWA 2013/06 3 + +
36 超次元ゲイム ネプテューヌ おぶ・ざ・ないとめあ? 八木れんたろー  ADOKAWA 2013/08 1 - -
37 ヒマツリ : ガール・ミーツ・火猿 春日部タケル  角川書店 2010/12 2 - +
38 ヒマツリ アイスドール・ウォーズ 春日部タケル  角川書店 2011/04 2 - +
39 サイハテの聖衣 三雲岳斗  ADOKAWA 2011/12 3 - -
40 サイハテの聖衣2 三雲岳斗  ADOKAWA 2012/12 3 - -
41 魔よりも黒くワガママに魔法少女は夢をみる 根木健太  エンターブレイン 2011/03 2 + -
42 魔よりも黒くワガママに魔法少女は夢をみる2 根木健太  ADOKAWA 2011/09 2 + -
43 ワイルドブーケ : 花の咲かないこの世界で 駒尾真子  一迅社 2008/08 3 + -
44 ワイルドブーケ : 想いを綴る花の名は 駒尾真子  一迅社 2009/01 3 + -
45 超次元ゲイムネプテューヌ : TGS炎の二日間 八木れんたろー  メディアファクトリー 2013/05 1 - -
46 塔の町、あたしたちの街 扇智史  エンターブレイン 2007/04 5 + -
47 塔の町、あたしたちの街2 扇智史  エンターブレイン 2008/05 5 + -
48 あるゾンビ少女の災難 I 池端亮  角川書店 2012/07 4 + -
49 あるゾンビ少女の災難 II 池端亮  角川書店 2012/07 4 + -
50 雨の日のアイリス 松山剛  ADOKAWA 2011/05 4 - -
51 ぴぴっと!! 和智正喜  メディアファクトリー 2007/06 3 + -
52 しずるさんと偏屈な死者たち 上遠野浩平  星海社 2013/07 3 + -
53 しずるさんと底無し密室たち 上遠野浩平  星海社 2013/09 3 + -
54 ブギーポップは笑わない 上遠野浩平  ADOKAWA 1998/02 4 - -
55 原点回帰ウォーカーズ 森田季節  メディアファクトリー 2009/01 3 - -
56 原点回帰ウォーカーズ2 森田季節  メディアファクトリー 2009/05 4 + -
57 ノートより安い恋 = The love that is cheaper than a notebook 森田季節  一迅社 2012/04 3 + -
58 あまいゆびさき 宮木 あや子 一迅社 2013/04 3 + -
59 空に欠けた旋律(メロディ) 1 葉月双  ソフトバンククリエイティブ 2012/08 4 + -
60 空に欠けた旋律(メロディ) 2 葉月双  ソフトバンククリエイティブ 2012/12 4 + -
61 空に欠けた旋律(メロディ) 3 葉月双  ソフトバンク クリエイティブ 2013/08 4 + -
62 ストロベリー・パニック!〈1〉 公野櫻子  メディアワークス : 角川書店 2006/03 3 + -
63 ストロベリー・パニック!〈2〉 公野櫻子  メディアワークス : 角川書店 2006/08 3 + -
64 ストロベリー・パニック!〈3〉 公野櫻子  メディアワークス : 角川書店 2006/12 3 + -
65 鹿乃江さんの左手 青谷真未  ポプラ社 2015/01 3 + -
66 OBSTACLEシリーズ 激突のヘクセンナハトI 川上稔  ADOKAWA 2015/08 2 - -
67 よくわかる現代魔法 桜坂洋  集英社 2003/12 3 - +
68 よくわかる現代魔法 : ガーベージコレクター 桜坂洋  集英社 2004/05 3 - +
69 よくわかる現代魔法 : ゴーストスクリプト・フォー・ウィザーズ 桜坂洋  集英社 2004/09 3 - +
70 よくわかる現代魔法 : Jini使い 桜坂洋  集英社 2005/01 3 - +
71 よくわかる現代魔法 : たったひとつじゃない冴えたやりかた 桜坂洋  集英社 2005/05 3 - +
72 よくわかる現代魔法 : Firefox! 桜坂洋  集英社 2009/03 3 - +
73 魔法少女育成計画 遠藤浅蜊  宝島社 2012/06 5 - -
74 魔法少女育成計画restart 遠藤浅蜊  宝島社 2012/11 5 - -
75 魔法少女育成計画restart 遠藤浅蜊  宝島社 2012/12 5 - -
76 魔法少女育成計画episodes 遠藤浅蜊  宝島社 2013/04 4 - -
77 魔法少女育成計画limited 遠藤浅蜊  宝島社 2013/11 4 - -
78 魔法少女育成計画limited 遠藤浅蜊  宝島社 2013/12 4 - -
79 魔法少女育成計画JOKERS 遠藤浅蜊  宝島社 2014/08 2 - -
80 魔法少女育成計画ACES 遠藤浅蜊  宝島社 2015/09 2 - -
81 魔法少女育成計画episodesΦ 遠藤浅蜊  宝島社 2016/04 3 - -
82 魔法少女育成計画16人の日常 遠藤浅蜊  宝島社 2016/10 4 - -
83 魔法少女育成計画QUEENS 遠藤浅蜊  宝島社 2016/12 2 - -
84 先輩と私 森奈津子 徳間書店 2011/05 4 + -

 

女性主人公ラノベレビュー【3/4】

マイナー古ラノベはどうせ誰も読んでおらずただ感想を書いても共有できない可能性が高いため、皆が手に取りやすいようにあらすじを引用している。

ネタバレ配慮は特にしていないので気になるものは先に読んでほしい。俺も読んだんだからさ……

 

入間人間いつもこんなん書いてる

ハロー。ハロー。まもなくチキューに到着します。衝撃に備えてください。 そいつはひやむぎ泥棒か宇宙人、どっちなのだろう。 名前も分からない、言葉も分からない。分かるのはその少女の髪が虹色に輝くことだけ。私がその髪に触れると、その指も虹色を帯びた。 そして起こるは、狭苦しいアパートの一室で繰り広げられる、虹色のエイリアンとの壮大なファーストコンタクトであった。ご近所さんにこの子を紹介し、カニャエと名前をつけ、不思議なロブスターと邂逅し、ひやむぎ買いに二人でスーパーまで競争! 地球のどこかで発生したささやかな異星間交遊。それは、窓から、外から、腹の中から始まっていた。 宇宙からやってきた虹は今日も暖かい。 異星人(あなた)も地球人(わたし)も宇宙人(変なやつ)。 こんなのがいれば、夜空も明るいわけだ。

【評価: 4】【百合: -】【ヘテロ: -】

入間人間お得意の無害な宇宙人と緩い日常SFをやるやつ。こいついつもこんなん書いてんな……と思ったらあとがきでも「いつものです」みたいなこと書いてて笑った。

いつも通り劇的な事件やギミックは発生せず論理的な腹落ちも存在しないが、それでも文章がめちゃめちゃに上手く読後感が抜群に良い。たぶん全体プロットや構成というよりは細部の描写力が優れており、funnyとかinterestingという意味で激しく面白いわけではないのに、読んで良かったかもしれないと強制的に思わせる力がある。

これがコンスタントに出力できるから頑張って流行に乗ったりせず同じような話を書いていても食いっぱぐれることがないのだろう。長らくラノベ界の第一線を走っているプロの小説。

 

終末世界×おねロリ×二人旅

「コウちゃんは、大丈夫だよね? いなくならない、よね」 敵対する近隣国 『高国(こうこく)』 との開戦直後、突如として人類のほとんどが消えた“終わってしまった世界”。その片隅で出会った2人の少女はボロボロのトラックに乗って旅に出た。 人見知りのチィと皮肉屋のコウがある日たどり着いた街。そこには消失の混乱で散り散りになった 『高国』 の軍人が潜んでいて……。2人の少女が行き着く先、それは──。

【評価: 5】【百合: +】【ヘテロ: -】

一巻はめちゃめちゃ良かった! 手元に残しておきたいラノベ

社会システムが崩壊したアナーキーな世界を旅する中で血生臭い戦闘シーンが頻繁に発生し、保護者役のお姉さんがいちいち小学生を防衛するあたりで「おねロリっていいよね」という原始的な感情を思い出せる。のっぺりと旅するだけではなく、元凶の戦争が絡んだ各人の出自も上手く物語に組み込まれてバディ描写に貢献している。

が、二巻以降はかなりイマイチだった。世界に二人しかいない感じが良かったのだが、二巻から集落や学校のようなコミュニティとか割とどうでもいい感じの新キャラがワラワラ出てきてしまう。元凶の戦争に関してもかなりの設定的な労力を割いて収拾を付けるのだが、当初の導入で期待していたのは終わった世界で生きているキャラたちの局所的な生き様であり、大局的な世界の顛末にはそれほど関心が無い。

なんか一巻が人気過ぎて急遽続刊を書いたという噂もあり、真偽不明だが読んだ限りは真っぽく感じる。別に一巻だけ読んでも全然いいと思う。

一巻では美少女二人旅をしておきながら二巻以降はそれぞれがヘテロ恋愛に巻き込まれていくのは現代百合ラノベ市場ではなかなか無さそうな展開ではあり、百合概念が商業的に確立していなかった当時の時代感を感じる。たぶん作者的には最初から百合というか少女二人で話を回すことにはあまりこだわりがなく、順当な流れとして人間関係を拡張しただけで路線変更のつもりもないのだろう。

 

義務による生成物

架空のゲーム機をヒロインに見立て、ゲイムギョウ界を舞台に女神たちの友情と絆を描くアニメ「超次元ゲイム ネプテューヌ」のノベライズ第1弾! マハリク☆メッセにて各国のゲームを披露する式典「TGS」を開催するネプテューヌたち。お祭り騒ぎの会場とは裏腹に、着々と進行する良からぬ企てとは……?!

最新ゲーム機のテストプレイでベールに呼ばれた、ネプテューヌ一行。季節を逆転させたり、超リアルなゾンビを投影できるゲーム機に夢中になるが、誤操作による暴走で世界に異変が現れ始める……。

【評価: 1】【百合: -】【ヘテロ: -】

女性主人公ゲームシリーズの女性主人公ノベライズなので女性主人公フェチとして一応買っておいた……というわけではなく、普通にネプテューヌシリーズのファンだったので一応買ったがめちゃめちゃつまらなかった。

多分メディアミックスとして小説くらい出しておくかという義務感によって生み出されてしまった虚無のドタバタコメディ。大勢のキャラを総出演させて喋るノルマを消化するためのテキストであって物語の面白さがどうこうという次元ではない。元のゲームの時点で異常な多さのキャラを何とか出し切ろうと頑張っていたとは思う(メイン四人、その変身態が四人、妹が四人、その変身態も四人、その他関係者が十人以上)。

ちなみに今回読んだ中で作者のあとがきが存在しない唯一のライトノベルだった。敗戦処理を引き受けただけで書くことが何もなかったのだろうか?

 

活躍予定だったキャラの輝き

ドジッ娘属性の花村祭は、喋る猿のぬいぐるみサンジュと暮らす女子高生。しかし消えた同級生を捜しに街に出た祭は、突然の怪異に襲われる! 絶体絶命のなかサンジュに宿る大妖怪《火猿》が、祭を覚醒に導く――!

【評価: 2】【百合: -】【ヘテロ: +】

ちゃんと読めるが面白くはない。

オーソドックスな巻き込まれ系怪異ものではあって、世界設定はしっかりしているし、キャラ同士の縁も関係もちゃんと作っているし、展開にもきちんと起承転結があるはずだが、「そうなんだ」という以上の感情が特に湧いてこない。固有の魅力が無いために、それなりに考慮された各構成パーツを組み上げる地点がこの作品である必要を感じない。友達が書いていれば「よく書けている」とコメントするが、そういう外的な動機付け無しで消費する理由が見付からない。

二巻の表紙がめちゃめちゃ面白く、大きく描かれているクール系美少女は実はメインの事件に全く絡んでいない。二巻は明らかに「さとり」というキャラのためにある話で、さとりちゃんが衝撃的な登場をしてその出自を巡って諸々の戦いが発生して最後には死んでしまうという主役級の立ち回りをしている。が、何故か全てのドラマを担ったさとりではなくちょっとコンビニで買い物してただけのサブキャラに表紙を奪われている。

ビジュアル的に一番強いのと今後活躍予定ということで表紙に回したのだろうが、二巻で打ち切られて続刊が出なかったため本当に意味のわからない表紙になってしまった。これもまた歴史か。

 

軍事系戦闘美少女アニメの一番面白い話数のところ

霊獣を封印した破魔の鎧 ── 獣装戦闘服(BUD)。またの名を聖衣(シュラウド)。それをまとう少女たちは獣装巫兵と呼ばれ、謎の妖獣“禍憑妃(マガツヒ)”から日本を守るために、日夜、戦い続けていた。本州最西端にある赤間関市を舞台に、民間軍事会社“極東自衛機構”所属の少女兵士たちの活躍と、コミカルな日々の生活を描いた新感覚・日常系戦場ファンタジー。 『ストライク・ザ・ブラッド』 の三雲岳斗が贈る 『電撃文庫MAGAZINE』 の人気連載作品、文庫化スタート!

【評価: 3】【百合: -】【ヘテロ: -】

これだいぶ好きです。

ストライクウィッチーズ』みたいな軍事系戦闘美少女アニメの3~5話くらいによくある、キャラとか世界とか設定の紹介を兼ねた単発コメディ回を集めた感じの短編集。「アバンでちょっとした事件が起きる→全員がワチャワチャするAパート→CM入りくらいで敵キャラ襲撃警報→Bパートで出撃して撃破して何となく事件が収拾される」みたいな流れの話をやってる回って安定して面白くていいよね(こういう中盤までの単発回に比べて終盤のシリアスロング回が面白くなくて失速の誹りを受けるアニメは少なくない)。

固有名詞と設定が多い割には作者が書きなれていて読みやすいし、キャラがそこそこ尖ってて全員キレてヤバいことするポテンシャルがあるのが良かった。かなりの頻度でフレンドリーファイヤーしてくるし、ちょっとしたことで暴走して皆殺しにしかけたり、一番ヤバいやつは普通に裏切って敵兵器で攻撃してくる。女の子はキレてるくらいがいい。

機動系の武装による空中戦がメインにつき、かなり映像映えしそうなのでアニメで見たかった作品。

 

邪道魔法少女と特撮の合いの子

あたしは望月瑠奈。魔法少女のアニメを観てる以外は普通の女の子。憧れの先輩もいたりして、それはもう完全完璧に普通の女子高生! だったはず……。「ボクと一緒に戦ってください」そう、神族に追われてるなんて宣う馬(魔族)に会うまでは。「瑠奈さん、今日から『慟哭屍叫セレンディアナ』です!!」こんな魔法少女かわいくねー! 神魔の諍いなんてカンケーないっ。あたしの日常を返せ~~!! 第12回えんため大賞特別賞のチョイ邪悪系マジカル・デス・コメディ!!

【評価: 2】【百合: +】【ヘテロ: -】

魔法少女になった主人公が実は正義サイドではなく魔族サイド」という、いまやもうかなりベタな設定のギャグバトルコメディ。ギャグの根幹を成す魔族とのやり取りはかなりオーバーでやや寒めだが、概ね面白く読める。

ただ全体のストーリーは情報量が多すぎ、要らないキャラと要らないアイテムがこれでもかと出てきて認知に負荷をかける割にはそれに見合う話が展開されない。二巻では更に破滅的な内容になり、キャラと設定が無限増殖していく割には直近のプロット上ですらどう活かすのかが練られておらず、回収を考えずに配置している印象を受ける。

作者があとがきで特撮について少し触れており、「ああこの感じって特撮由来だったのか」と腑に落ちた。確かに特撮では販促義務として脈絡なくパワーアップアイテムが登場されることがよくあるし、話を最後までガチガチに決めずに撮影しているためライブ感でよくわからんキャラや設定が挿入されることが少なくない。特撮オタク的には勢いがあって面白いという評価もありかもしれない。

 

禁断の恋愛のその後

数十年に渡る大戦と歴史に残る疫病の流行で男性が極端に減った世界。
連邦国の主軸をなすアガパンサス王国は「連邦国における国民繁栄のための婚姻促進法」を制定、子孫を残す営みを伴わない恋愛を一切禁止した。
王宮に仕えるメードのジョーゼットは、アガパンサス王に嫁いできた隣国の王女・デェリアナの世話をするうちに、彼女の深い闇に触れることになり…。
自由恋愛が禁止された世界で、少女たちはいかに恋を育んでいくのか…!?

【評価: 3】【百合: +】【ヘテロ: -】

一迅社アイリスらしい正統な少女小説百合ラノベ。「同性愛が禁止された世界」「王女と侍女の身分違い」「結婚式中にお姫様を攫う計画」など、これでもかとばかりに詰め込まれた「禁断の恋愛」要素が乙女心をビンビンに刺激してくる。

一番良かったポイントは二巻がちゃんと出ていることだ。一巻では「侍女が王女と駆け落ちする」という略奪愛と脱出劇がメインだが、しかしただ若気の至りで駆け落ちするだけなら単に浅はかな話ではあって、その後どうやって逃避行を継続してできるのかというところに真の困難があるだろう。二巻では別のカップルに焦点が当たりつつも主人公とヒロインが頑張って二人でそれなりに生きている様子が描かれ、一巻が夢小説全開な内容だっただけに「続き」を放り出さずにきちんとやっているところで凄く好感度が高い。

 

最高のバッドエンド

あたしの「力」って何ですか!?

積野辺。天を衝く巨大な「塔」が建ち、大気に満ちた「歪気」により、独自の機械が動いている不可思議な場所。そんな町で、西条なごみは親友の皆口華多那とふたり、楽しい高校生活を送っていた。しかしなごみの父、放浪の画家西条久沖の未発表スケッチとの邂逅から、彼女は自らの「血筋」に秘められた「力」に向き合わざる得なくなるのだった−−。えんため出身作家が描く、異形の町に生きる少女のドラマチックファンタジー

【評価: 5】【百合: +】【ヘテロ: -】

これ良すぎた、神。こういうラノベに出会うことがあるからラノベを読むのはやめられない(やめられなくはない)。

不思議な力で駆動するファンタジックな街の裏側には微妙なパワーゲームの綱引きがあるという基本線はありがちと言えばありがちだが、キャラの造形と配置と描写が巧み。街の存続を左右する能力を持つが故に自由を抑圧されている主人公、街を管理する責任を一手に引き受けている最強生徒会長、そして主人公の幼馴染でありながら街を管理する家系の末裔で板挟みになるヒロインが綺麗に配置され、ちょっとした日常や事件の裏で微妙な緊張関係がいちいち走っていることが丁寧に示される。

続刊を放棄したことで生み出された二巻の結末がめちゃめちゃ良かった。結局ジレンマがどうにもならずにヒロインが死亡したことで主人公が切れ、生徒会長を殺害し舞台である「塔の町」を破壊して幕切れとなる。殺害時の「先輩こんなに弱かったんですね」という台詞が良すぎた。この立て付けで碇シンジ側が完全勝利するパターンあるんだ……

 

陸の孤島での殺戮サイコホラー」の怪物側

ユーフロジーヌお嬢さまと可憐すぎる侍女、わたくしアルマ・Vが百年の眠りから目覚めたのは、日本なる異国の大学構内でした。愚かな学生たちに盗まれた“秘石”を取りもどすため、彼ら全員を抹殺しなくてはなりません。なのにまったくお嬢さまのやる気のなさ、臆病さと来たら……“不死身の怪物”らしく、さっさと人間たちを殺してしまってください! わたくし? わたくしは危険な肉体労働はいたしません。脇役ですし。

【評価: 4】【百合: +】【ヘテロ: -】

かなり面白かった! 相当上質なエンタメラノベで読んで損しない枠。

百年の眠りから蘇った美少女ゾンビ主人公が哀れな大学生たちを陸の孤島に封鎖して皆殺しを試みる、敵と味方が裏返ったサイコホラー。人体改造に裏打ちされた超暴力が主人公サイドの主な武器だが、人間サイドも現代通信機器や拳銃を駆使して対抗してくる。人間側のスキルが絶妙にラノベチックで良く、通信教育で拳法の達人になっている女子大生とか、修羅場を潜ってきて覚悟が完了しているヤクザとか、ファンタジーではないけどリアルでもないギリギリのライン取りによってコメディとスプラッターが両立している。

特に罪のない一般人をサクサク殺していく主人公とその侍女を筆頭に倫理観が終わっているキャラたちが魅力的だし、ポップな割にはいちいち生首や内臓が飛びがちなゴア寄りの挿絵も楽しく、萌えの映えを意識しているラスボス戦も非常に良かった。

 

美少女尊厳凌辱だぜ!

ここにロボットの残骸がある。『彼女』 の名は、アイリス。正式登録名称:アイリス・レイン・アンヴレラ。ロボット研究者・アンヴレラ博士の元にいた家政婦ロボットであった。主人から家族同然に愛され、不自由なく暮らしていたはずの彼女が、何故このような姿になってしまったのか。これは彼女の精神回路(マインド・サーキット)から取り出したデータを再構築した情報 ── 彼女が見、聴き、感じたことの……そして願っていたことの、全てである。

【評価: 4】【百合: -】【ヘテロ: -】

激鬱ラノベ

鬱すぎて今回読んだ中で頭いくつか抜けてキツかった。Amazonレビューでは「愛と感動と希望」「感動の名作」みたいな扱いされてるけど、俺の中では『ファニーゲーム』とか『ミスト』と同じようなところにカテゴライズされている。

博士と百合百合楽しく暮らしていた僕っ娘ロボ美少女主人公がいきなり人権を失って入念に解体されて汚いロボに魂だけ移されて強制労働させられる流れ、美少女キャラに対してやっていい攻撃のラインを何本も踏み超えている。よく凌辱もので美少女キャラが性奴隷になったり拷問されたり殺されたりしているが、それは容姿までは奪われていないから最終ラインまでは超えてないんだなということを理解した。

美少女から美少女の容姿を奪ってはいけないって学校で教わりませんでしたか? 尊厳凌辱だぜ!

 

能力がクソエグい割に百合がクソ軽い

五月最後の月曜日、高校生の美倉清香はクラスにやってきた美人な転校生・彩原舞子に一目ぼれしてしまう。運動神経抜群な清香にはない、清楚で可憐で上品な雰囲気への憧れもあったのかもしれない。放課後、いけないとは思いつつ舞子を尾行する清香。風格のあるお屋敷といった風情の舞子の自宅に感嘆していると、あっさり舞子に見つかってしまった。清香があわてながらもがんばって偶然を装いつつ声をかけると、舞子はすんなり応じ――清香の頭にアンテナを刺した!? 『Slave & Master』って一体!? その瞬間から奇妙な事件に巻き込まれていく、清香のアクティブ学園ストーリー!

【評価: 3】【百合: +】【ヘテロ: -】

なんだか惜しい。設定は独特でポテンシャルを感じるが、あまり活かされずにあっさり終わってしまった。

鍵になっている『Slave & Master』は名前通りの完全支配アイテム。「Masterの人間がSlaveの頭にアンテナを刺すことでSlaveの肉体を自由に操作すると共にSlaveの思考も全て盗聴できる(Slave側の意識はそのまま)」という能力バトルでもかなりエグい方の武器だが、主人公が能天気だしヒロインもお嬢様なので「これで肉体労働と頭脳労働を分担協力して街のちょっとした事件を解決しましょう」という緩い話になる。地味なのが良いという意見もあろうが、個人的にはもうちょっとグッと何かやってほしかった気持ちがある。

なお2007年のラノベにしてはかなり珍しいことに、何の留保もなく主人公とヒロインが両片思いであるのが先進的(女性同士であることについてのツッコミが特に入らないということ)。だが、『Slave & Master』で百合的にもなんかいい感じに美味しい展開が作れそうかと思いきや、その方面にも割と淡白ではある。

 

さすがに一時代

君には夢があるかい?残念ながら、ぼくにはそんなものはない。でもこの物語に出てくる少年少女達は、みんなそれなりに願いを持って、それが叶えられずウジウジしたり、あるいは完全に開き直って目標に突き進んだり、また自分の望みというのがなんなのかわからなかったり、叶うはずのない願いと知っていたり、その姿勢の無意識の前向きさで知らずに他人に勇気を与えたりしている。 これはバラバラな話だ。かなり不気味で、少し悲しい話だ。――え? ぼくかい? ぼくの名は"ブギーポップ"――。 第4回ゲーム小説大賞〈大賞〉受賞。上遠野浩平が書き下ろす、一つの奇怪な事件と、五つの奇妙な物語。

【評価: 4】【百合: -】【ヘテロ: -】

昔一度読んだが、まとめて積まれていたのでついでに一応再読した(一応女性主人公ラノベ扱い)。今読んでもやはりよく書かれており、白眉は視点運用にあるように感じた。

中心人物にとっての事件の真相を明かすことより、周囲の色々な一般人から見て「この事件はどんな出来事として観測されたのか」という影響や経験を描写することに軸足を置いている。よって通常の群像劇が様々な視点からピースを集めて真相を明らかにするのに対して、これは最後まで読んでも繋がらない断片がうっすらと散らばるだけで真相が知れることはない。限られた紙面の中で真相を切って表層を拾ったことにより、ファンタジーをミステリーではなくジュブナイルとして描くことに成功している。

辛うじて日常と異常の間に接点を生むキーパーソンは人間でありながら異形に協力する異常な感性を持つ一般人であり、それを象徴する「今やあなたは僕らの敵だ」という台詞がかなり良い。昔は別に敵じゃなかったけど、今は敵なんだよな。それも僕らの。

 

お嬢様二人でバディ組んでもいいんだ

とってもミステリーで、ちょっぴり百合。これぞ上遠野ミステリー!
原因不明の難病で病室にこもりきりの“深窓の美少女”しずるさんは、好奇心旺盛な“わけありお嬢様”よーちゃんが持ち込む難事件を病床にいながらにして次々と解明していく。唐傘小僧(からかさこぞう)に宇宙人、幽霊犬に吊られた男……これは奇怪で不気味な、最初の事件簿。

【評価: 3】【百合: +】【ヘテロ: -】

元は2003年に出たシリーズだが、星海社から復刻されたのでとりあえず積んだのが2013年で、今読んだら10年周期が2周してしまった。

サクサク読めるものの、あまり記憶には残らない。典型的な安楽椅子探偵ものだが、「怪奇な事件が起きるものの前提がおかしくて全く普通の成り行きだった」という梯子外しに終始することが多い、というかそのパターンしかない割には「言うほどそれ起きるか?」という納得感が無い回もけっこうある。ブギーポップが背景に巨大な世界を感じさせるものであるのとは対極に、こちらは世界を浅薄に解明していくような手振りだ(ブギーポップシリーズとリンクしているらしいので伏線なのかもしれない)。

「入院中美少女探偵」と「お見舞い美少女助手」のバディといういかにも「お嬢様と庶民」みたいな立て付けであるにも関わらず、二人ともお嬢様で中途半端にお嬢様口調なので微妙にキャラが混ざっているのが若干面白くはある。メインが二人しかいないのに二人の属性が近い。

 

続き

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23/1/23 お題箱108:広告データサイエンティスト、過酷な体勢、アニマルライツetc

お題箱回108

523.クオンツ投資とかで資金作って、第二の岩田聡になって任天堂と張り合ってくれた時に、古参勢アピしたいです。応援しています。

応援ありがとうございます。

ただ僕が今後の人生で起業する可能性は極めて低いと思います。社会的に成功することや社会に影響を与えることへの関心が薄く、そうする動機に乏しいからです。「どうしてあなたは発破技師にならないのか?」と聞かれたとき「発破技師になる理由が特にないから」と答えるのと同じニュアンスで起業する理由が特にありません。

特にコンテンツ周りなら適当なプラットフォームを使って個人でいくらでも発信できる時代ですしね。強いて言えば規模の問題で組織化や集金が必要になったときに検討する可能性が無くもないくらいでしょうか(それも個人クラウドファンディング等でかなりの程度フォローできそうではありますが)。

 

524.ガスキーさんのいいね欄でエッチなネタを漁ることはありますか?
僕はあります

あります。暇なときいいね欄を漁るフォロワーは何人かいますが、ガスキーもその一人です。攻防バランスよく適当に配置されているので手頃です。

 

525.広告データサイエンティストについてはどう考えてますか?

一番王道というか無難なデータサイエンスの使い道の一つだと思います。実世界じゃなくてデジタルからログを取ってくるやつはデータの質がいいですし、KPIにも直結して目的がわかりやすいですしね。それでいて適度にコンテンツやデザインとの接続もあって、かなり手頃な感じがします。

個人的な関心の度合いで言えば、広告データサイエンティストというタスクのタイプというよりは、広告というタスクで扱う内容に依存する気がします。服とかスーパーの広告出稿でA/Bテストをしろと言われても分野への関心が低いのでいまいちやる気が出ませんが、ゲームとかコンテンツ産業なら興味があってモチベーションが上がると思います。

 

526.ブログを愛読していてこれを書いているのはどんな人なんだろうと大変興味を持っていたので、半生の記事を書いて下さって嬉しかったです。お姉さんがいらっしゃるというのが一番意外なところでした。
ブコメが言いたい放題なのは残念ですが、普段からの読者はこの記事が読めて嬉しかったと伝えたいです。

ありがとうございます。この記事ですね。

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僕は僕個人の人生にはあまり需要はないかなと思って普段あまり書かないのですが、めちゃめちゃ伸びたのでびっくりしました。この記事に関連する質問は他にもいくつか来ています。

姉との仲は悪くないですが、関心が薄くて人生で影響を受けている事柄もほとんどないので話題に出す機会が少ないです。人生を振り返ったときにきょうだいの影はほとんど見えないというか、彼女がどういう人物かをあまりよく知らない気がします。ある程度年齢を重ねたらきょうだいなんてそんなもんですかね?

また、レスポンス編の記事にも書きましたが、僕はこの記事に付いたブコメがそれほど悪辣だとは思っていないです。ネットはこのくらいの感じでいいです。

 

527.過酷な体勢は修正できましたか?
気になって夜しか眠れません

再入院はしたくないので修正しました。

あれ以降、下関係の問題を抱えたことはまだないですが、遺伝的に前立腺が弱い(前立腺に何らかの疾病が発生しやすい)系譜らしいのでやや戦々恐々としています。

 

528.Lwを人間として見るべきか、理解できない怪物として見るべきか

めだかボックスみたいな世界観になってますね。こうしてお題箱も開放して、考えていることは全部ブログに書いているので理解不能要素はあんまりないと思います。

 

529.今回のガチャが優れたゲーム体験であるという話、下記の記事の「確定されたメインストーリーの体験と、ユーザーそれぞれの個人的な体験がうまく融合していく」みたいなことで合ってますか?
https://news.denfaminicogamer.jp/interview/201222x/2

news.denfaminicogamer.jp

合ってます! このインタビューは初めて読みましたが、僕のガチャに対する考え方とほぼ同じです。

松永氏:
 それってまさに、物語をゲームでやることの最大のメリットだと思うんです。縁や絆を感じるような運命的な出会いに、インタラクティブに立ち会うことができてしまう。

 主人公と自分を重ね合わせて、一本道の物語に没入するという昔ながらの楽しみ方もわかるんですが、そこには何かが足りないんじゃないのかと思っていたんです。結局のところ、一本道の物語は誰かが書いた物語であって、自分だけの物語にはならないんじゃないかと。

 でも、たとえメインストーリーが一本道だとしても「初めて引いたSSRのキャラと一緒に冒険する」というだけで、誰が読んでも同じになるはずだった物語が、自分だけの特別なものになる。やっぱり、これってすごいことだと思うんですよ。

奈須氏:
 わかります。いわゆる「骨太のストーリー」って、普通のメディアだったら、本当に誰が読んでも同じになるはずなんですよ。
 でも、我々の場合はしっかりと土台となるお話を用意したあとに、AさんはSSRキャラを引いた、BさんはSRキャラを引いた、という具合に、同じものを味わっているのに異なる視点が生まれているんですよね。

 大きなストーリーの流れはありながらも、実質的には個人の物語になっていく。私だけの、あなただけの記録になっていくという。

ただこの記事のコメント欄にもやっぱりガチャをどうしても認めたくない勢力がいて、そのほぼ全てが「この論に反論がある」というよりは「この論を認めてもなお他の理由でどうしてもガチャを肯定するわけにはいかない」という立場にあるようです。

・ガチャをいい話にしようとするなー!

・「ガチャを引くだけで、それは『運命の出会い』になる」 クソ、「ガチャを滅ぼします」をホンキで思っていないのは、ホントにクソ。

この辺はたぶんガチャの問題というよりは人生観の問題で、「娯楽には時間あたりいくらまでなら支払ってよいか」「他人の愚行権を認めるか」「娯楽に伴う破綻可能性をどこまで許容できるか」というようなところに見解の相違があるのでしょう。

ただ僕が既に書いた通り、ガチャの運命的な価値を担保しているのは「そうそう何度も引き直せない」という高額な価格帯レンジによるところが大きいため、こうした人生観の人たちに歩み寄る形でガチャ側が妥協することは今後もないと思います。

 

530.ガチャを集金システムではなく革命的なゲームシステムとして捉えるLw、Lwの小説に出てくる悪役

実際悪役っぽさは結構あって、「ガチャを売る仕事に良心が耐えられずガチャを肯定するロジックの幻影を作り出してしまった」とかいう悪役のオリジンを勝手に想像している人が一部にいたのは面白かったです。

しかし僕はソシャゲ会社に就職する前からほぼ同内容の記事を書いており、就職を経てその確信が補強されただけです。ソシャゲ以外にやりたいことがある人はソシャゲをやらなくていいですが、ソシャゲ以外に特にやりたいことがない人はソシャゲをやって人生を豊かにしてほしいです。

ガチャに限らず「適切なお金の使い道が見付からず人生に虚しさを感じている人が、お金の注ぎ先を見付けることで欲求が満たされる」という事態は他にもいくらでもあって、ガチャに比較的近いものだと「カードコレクター」あたりもそうですね。

最近ちょっと古いカードが無限に高騰してアコギな値段が付いていますが、これは売る側は儲けられて嬉しいのはもちろんのこと、買う側にとっても子供っぽい趣味のまま大人になってしまったために年相応の出費が嵩むライフイベントが発生せずにお金が余って困惑している独身男性に適度な難易度の人生の目標を与えてくれる蜘蛛の糸です。

20年前に刷られたしょうもないカードをそのまま300円で売るより30000円の値札を付けてあげた方が買い手と売り手の双方にとって幸福なので、こういう状態は「搾取」ではなく「福祉」と呼びます。

 

531.LWさんはアニマルライツについてどのようにお考えでしょうか?

私の場合、かつてはヴィーガンをなんとなく胡散臭く思っていたのですが、大学の一般教養科目ピーター・シンガーの『実践の倫理』を読んで、「すげえ!ヴィーガン正しいじゃん!」と衝撃を受けたのを覚えています(その後1ヶ月程度は肉食を禁じ、飲み会ではポテトと枝豆だけを消費していました)。

僕はアニマルライツに関しては珍しくかなりの過激派で、人間以外の動物は倫理的な考慮の対象ではないと思っています(倫理という概念を動物に対して適用するのはカテゴリーエラーだということです)。よって「動物を倫理的にどう扱うべきか」というタイプの問題は議論をする以前に最初から存在しません。動物を殺して食べるのはもちろん、殺処分したり虐待したりすることも全て問題ないです。様々な意見を考慮した上で問題ないと言っているのではなく、問題がある可能性が最初からゼロなので考慮する必要がありません(これ伝わりますかね?)。

これはインテリがよくやる「さあ俺を論破してみろ」という露悪的なポジショニングではなく、本当に心の底から動物を権利主体として認める意味がわからないと思っています。この考え方があまり尋常ではないという認識はあるので『動物の権利』→とか『動物からの倫理学入門』→を読んだりしたのですが、どれも全然納得できませんでした(ただ本丸のピーターシンガーの著作を直接読んだことはないので、一度くらいは読んだ方がいいかもしれません)。

書籍を読んで思うのは、アニマルライツという分野自体が動物を何らかの主体として認めることを前提にしているので、僕からすると根本的なところが全くズレているということです。例えば多くのアニマルライツ擁護者は「もし動物が苦痛を感じることができるならば動物に苦痛を与えてはいけないはずだ」という前提を持っているので生物学とか認知理論を総動員して「動物は苦痛を感じられること」を一生懸命示そうとするのですが、僕は「動物が苦痛を感じていようが動物に苦痛を与えてよい(動物は倫理的に考慮される権利を持たないため)」と考えるのでその論証には特に意味がありません。

一応書いておくと、別に動物は嫌いではないですし苛めたり虐待したりしたことは一度もありません。セロテープとか鉛筆が倫理的な主体ではないからといって、わざわざ痛めつけて遊んだりしないのと同じです。動物の場合は法律でも禁止されてますしね。

 

532.永井均ツイッター本(『独自成類的人間』)にLWさんの引用ツイート(FAKE野郎)が載ってて笑ってしまいました。
このようないわゆる著名人?にツイートに反応されることについて、何か感想のようなものはありますか?

この件ですね。報告ありがとうございます。この投稿を見て本をチェックしに行きました。

どんな形であれ、ツイートや発信に何らかの反応があるのは概ね良いことだと思います。「波長が合わない人に頑張って合わせに行く必要はないけど、潜在的に波長が合う人は一定数存在するのでそこにリーチするための拡散はされた方がいい」というスタンスは一貫しており、ブログを書いているのにもそういう考えが常にあります。

ただ永井均に限って言えば、本で取り上げられたからといって「永井に評価されて嬉しい!」という類の感触は全然無いです。たぶん永井は自分の思考に資するか否かだけで全てを見ていて、ツイートだろうがChatGPT生成だろうが乱数生成だろうが彼の思考を促す限りにおいて「おお」とか言って反応するタイプです。よって僕のツイートはたまたま彼の思考を触発した路傍の石だったというだけで、評価されて掲載というような華々しい文脈ではないはずです。

 

533.前に興味ある学術分野の勉強の仕方についてお話されていましたが、例えばイラスト等の手を動かして身につけるタイプの創作技術を勉強する時にLWさんがどうするのか興味があります。
良ければご教授ください。

うーん、イラストは一度も勉強しようとしたことがないのでわからないですね。

小説創作活動は「こんなんよりは俺が書いた方が絶対面白いだろ」という苛立ちが原動力になっているのですが、イラストに関してそう感じることは無く「俺には出来ないことをできる人がいるのは素晴らしいことだ」みたいな純粋なリスペクトしかないのでモチベーションが生じません。

強いて言えば筋トレあたりがギリギリ近くて、達成可能な目標を立てながら地道に肉体に染み込ませるような感じでやっていくと思います。手を動かすタイプの勉強はただ漫然と動かすだけでもやった感が出てしまうのが恐らく一番警戒すべきところで、スキルツリーをはっきり言語化して持っておく必要があります。それも遠い目標を立てるのはあまり良くなくて、短いサイクルで達成できる明確に言語化可能な目標を立てて無理だった場合は修正していくみたいなPDCAを意識するのがいい気がします。

23/1/15 お題箱回107:ちいかわ、ゲイ疑惑、データサイエンスetc

お題箱107

513.LWさんのちいかわについての見解が聞きたいです。

ちいかわはけっこう好きです。毎回欠かさずチェックするほどではないですが、気が向いたタイミングで適当に遡って読む程度には好きです。

描写されていない裏設定を示唆するいわゆる「考察」的なものが少し目の肥えたオタク層にも受けている要因だと思われがちですが、絵柄と世界観とのギャップとかを一旦抜きにしても「キャラの描写」みたいな漫画の基本的な部分も質が高く優れていると覆います。つまり「進撃の巨人は漫画が上手い」と評するのと同じニュアンスでの「ちいかわは漫画が上手い」という評価は全く妥当です。

僕が最初に「ちいかわ、漫画上手いな!!」と思ったのはキメラ回でした。この回までは「なんか最近流行ってるやつあるな」くらいだったのですが、これを見て一気に「この漫画はやるやつだ」と認識を改め、今でも一番好きな回です。

線やコマ割りの図像自体はシンプルなのにキメラというキャラの背景に複雑な経緯と葛藤があることを示す描写が巧妙で、暗黙に含んでいる情報量とそれを描写する力が凄いです。もっと垢抜けない漫画なら回想コマを挿入してキメラの過去を匂わせたりすると思うのですが、ちいかわはそんな安っぽいやり方をしません。

終始変わらない泣き笑いの表情と「なっちゃったからには……もう……ネ……」という台詞が非常に秀逸で、これで「ナガノ天才だろ」と思いました。この台詞だけで「不本意にも化け物になってしまった」という悲劇のベースに「変身を受け入れて開き直る」というやけくその反転が加わり、そして「いて いて ひーこわいこわい」とコミカルに退散していく部分からはもはや一周して喜劇的な有様も伺えます。異様な言動と表情と動作だけで、悲劇が極まって喜劇に転ずるようなキャラの奥行が描かれています。特にアンビバレントな葛藤の中で覚悟を完了してウルヴァリンみたいな爪を出す中2コマがめちゃめちゃ良いです。

 

514.LWさんは「作品の評価は作品内の描写が全てであり作品外の要素は考慮しない」というスタンスだそうですが、そのスタンスは原作者が関わっていないメディアミックスや続編などにも適用されるのでしょうか?それとも完全に別の作品としての評価になるのでしょうか?

いえ、そもそも「作品の評価は作品内の描写が全てであり作品外の要素は考慮しない」というほど過激派ではないです。「作品の評価は作品内の描写を全てとしてもよく、作品外の要素は考慮しなくてもよい」くらいのスタンスです。

というのも、「作品外の事情を無視する」というスタンス自体に強いこだわりがあるわけではなく、それは「何とかして作品をポジティブに評価したい」という目的を達するための手段に過ぎないからです。つまり「作品のポジティブな面を引き出すにあたって作品外の要素を考慮しないことが有効なのであれば、そういう手を取ることを辞さない」という感じです。具体的には「作者の意図を積極的に無視した方が作品を高く評価できる」とか「恐らく制作側の意図からは外れているだろうが、それを問題にしない限りにおいては良い効果が生まれている」とかいうケースがかなりよくある典型です。

最近だと、リコリコの評価でもそんなスタンスを取っていました。

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制作側の意図を想像すると「描写や設定が杜撰であったために本来意図されていたであろうハードな社会派アニメを描くことには全く成功していない」という酷評しかできませんが、作品外の意図は問題にしないことで「制作側は意図していたかは定かではないが(たぶん意図していないが)脚本の適当さが結果的に良い効果を生んでいた」という評価が可能になります。

そもそも「作者が本当に意図していたかどうか」を評価の軸足に置いてしまうと、それを立証する作業はインタビューやツイートを漁る羽目になって大抵は非常に困難か不可能です。よってその線で評価することは諦めて、「作者の意図などは作品外の要素として考慮から外して評価する」という態度を取った方が建設的なことが多いです。

逆に言えば、今したい評価に応じて合目的的にスタンスを選択しているだけなので、メディアミックスで作者が変わるような顕著な状況では普通に作品外の事情を考慮してもよいと思います。例えばカイジスピンオフのトネガワとかを評するにあたって、「作者が変わった分だけ自由な見方が可能になって良い味が出ている」のように作者変更に立脚した評価を述べる可能性は大いにあります。

 

515.LWさんってゲイじゃないんですか?

多少のバイ要素はあるかもしれませんが、ゴリゴリのゲイではないです。男性の裸体を見て「良い身体だな」と思っていることはよくあるにせよ、それは美的な意味合いに過ぎず、オナニーをする対象は女性の身体に限られます。

何度か同じことを書いている気がするのですが、確かに僕は女性との接触を可能な限り避けているため、結果として男性とのみ接触しているのは事実です。つまり僕が男性としか関わりを持たないのは、僕の方から意識してそう心がけているからという側面は確実にあります。そういう生き方からゲイ疑惑を持たれていることは少なくありません。

ただそれは女性を嫌悪しているからではなくむしろ逆で、女性への関心を抑制する自信がないからです。普通に考えて20後半まで女性と会話していない男性が初めて女性と接触したときに理性的な振る舞いができるとは考えにくく、僕がストーカーやメンヘラやミソジニーと化す可能性は低くありません。それは僕自身にとっても女性側にとっても人生を破壊しかねないほどのリスクであるため、そういう不幸の可能性を生まないように最初から可能な限り接触を回避しているということです。Twitterでマチアプとかにハマって女に狂っているオタクの影には、こうして前もってその危険を回避しているオタクがいるんですね。

 

516.>例えばファーストガンダムを見てシャアのかっこよさに感動した人が「これすげえアニメだから監督が何を思ってこれを作ったのか知りてえ」と思って冨野監督のことを調べ始めたとして、「それ結局シャアじゃなくて冨野が好きなだけじゃん」「本当にシャア好きなら冨野関係ないだろ」とはならないですよね。

これ私の感覚では半分はなると思うんですよ。シャア好きではあると同時に、作品を作った人間も好きになっていると言えるので。
シャアの気持ちは考えたことありますか?シャアは「俺は俺だ。冨野は関係ないだろ」と思ってますよ。私にはわかります。

この回の話ですね。

saize-lw.hatenablog.com

まああまり本気で言ってない冗談だと思いますが、キャラに過度に感情移入している人はそう感じる場合もあるかもしれません。

ただその場合でも「シャアと冨野が同時に同じくらい好き」というだけで、「冨野が好きになった分だけ相対的にシャアへの関心が低い」という話ではないですよね。それなのにVtuberの場合は「演者が好きということはキャラが好きなわけではないんだろ?」という片方しか取れない前提の論法が何故か罷り通っているのが不健全ということです。「白上フブキさんの演者の人にクリエイターとして好意的な敬意を払っているし、それはそれとして白上フブキさんというキャラも好き」という立ち位置は普通に可能です。

 

517.たまにサイゼに出てくる「ラディカル」という表現は「反骨的」「インモラル」的なニュアンスという理解で合ってますか?

いえ、「急進的な」「過激な」くらいの意味です。勢いや程度を表すもので、価値や倫理のニュアンスは含んでいません。過激な運動は結果的に反社会的でインモラルな様相を帯びることが多いというだけです。ニュートラルな言い回しとしては「ラディカルなうどん派(めっちゃうどん推しの派閥)」みたいな表現にも違和感は特にありません。

 

518.漫画・アニメを嗜みたい気持ちはあれど、発掘するほどの時間的余裕が少ないので、LWさん的GOODエンタメは積極的にRTしてくれると助かります。

僕も一時期に比べるとそんなにモリモリ発掘しているモードではなくなっていますが、今後も可能な限り拡散していきます。2023冬はスパイ教室がかなり面白いのでよろしくお願いします。

ch.nicovideo.jp

 

519.周回遅れですが、日本でもデータサイエンス(広義には理系尊重)の流れが少しずつ来ているように感じます。
(勉強を苦と感じなさそうなLWさんには無縁な気もしますが、)差別化をどのように考えておられるのか伺いたいです。

来てますね。僕が大学で情報系をやっていた頃からもう来てると思ってたんですが、今思うと当時はまだアーリーアダプターみたいな段階で、今がマジで来てるんでしょうね。来すぎて逆にもう終わりつつあるという説も聞くんですがどうなんですかね?

とはいえ僕は起業家ではなく会社員しかやるつもりがないので、普通にスキルで勝負できれば良くて「頑張って差別化する」という方向ではあまり考えていないです。現状ではデータサイエンス業務の需要はどこにでもあるはずなので、普通に求められるバリューを普通に出すスキルがあるという方向性でやっていける想定です。

現状で持ってる手札は「東大計数出身」「統計検定1級」「データベーススペシャリスト」「データサイエンス系資格だいたい全部取った」「データ分析と経営戦略の業務経験がある」「PythonSQL、モダンEXCELが使える」あたりで、この辺を総合して「こいつはデータサイエンス業務ができそうだ」と思ってくれる会社のうちテレワークとかの条件が噛み合うところに雇われるようなイメージです。もしデータサイエンスにかけ合わせられるような差別化点があるとすればゲームプランナー経験によってゲーム運営や企画側についてのドメイン知識があることですが、それを利用するかどうかは定かではありません。

どこも雇ってくれなかったら最終手段としてこのブログに職務経歴書と履歴書を貼る予定ですが、万が一現状で雇いたい人とかリファラル飛ばしたい人がいれば普通にDMとかくれれば話を聞きます。いま就職先一切決まってなくて完全にフリーです。

 

520.チェス盤の問題の問と解の一般化は、グラフの完全マッチングを求める問題だと思います。

ドミノ問題の白黒解法(→)に関する件ですね。

リプ欄でもこの件についてフォロワーと喋ってるんですが、僕の書き方がやや悪かったです。

問題を一般化したときの数学的な解釈は仰る通りですが、僕が言いたかったのは「眼前の問いをグラフの完全マッチングを求める問題へ一般化できるという閃きはどうすれば一般化できるか」というややメタな気付きの話です。「これはグラフの完全マッチングに帰着すれば解けますよ」と助言されれば誰でも解けるとして、じゃあその「これはグラフの完全マッチングに帰着できる」っていう閃きをどうやって得るかという感じです。

一般的に言って解法を読んで理解できることとその解法を利用できることは全く別のスキルだというような話ですが、ここは職人芸とかコツみたいな領域になる気はしています(一般に状況をモデル化する方法は一意ではないため)。

 

521.リコリコは現代版転生王女と天才令嬢だと思ってるんですけど、LWさん的には評価どうですか?

転天は漫画版を読んで「異世界転生者と悪役令嬢で百合やればいいじゃん」っていう発想はマジのガチで天才だと思ったのですが、それ以降の話が異世界転生要素も悪役令嬢要素も大して使わずに凡庸なファンタジーをやるだけで凄くがっかりしました。設定を活かさずに百合パワーだけで押し切ろうとするという意味では確かにリコリコにかなり似ているかもしれません。

まあ期待値もリコリコくらいの感じで、話は面白くないけど時折挿入されるキャッチーなシーンが百合好き民の記憶に残れば御の字というところでしょう。

 

522.『人生のうちで1回は海外に行っといたほうがいい』のような、1回は○○を経験しておくべきみたいな言説についてどう思いますか?

質問の意図としては、「やっている最中の評価よりもやったあとの評価を基準にして行動を決定する」と記事で書いてらしたかと思いますが、私もかなり似た感覚があり、後に残ったり継続できることでないと意味がないという気分になるときがあります。

1回は○○を経験したほうが良い、と言われても、どうせこの1回しか経験しないならやらなくていいなと考えて結局家から出ない、というようなことがよくあるのですが、そうすると新しいことが始めにくく、停滞してしまう不安もあります。『継続した楽しさを重視する』ことと、『完全に新しい楽しみに出会いづらい』ことのバランスをどうとってらっしゃいますか?

概ね同意します。僕も見たことない名前の料理を頼んだら超マズかったとしても「でも知らなかった名前の飯が知ってるマズい飯になったから知識を得た分だけプラスだな」と考える方です。

ただ質問では同列に並べられている「後に残る」と「継続できる」は僕の認識だとかなり違っていて、概ね真逆と言ってもよいくらいです。超マズい料理を食うのって一回はやった方がいいけど、逆に一度理解したらもう二度とやらなくて良いです。大抵の体験的な知識は0から1になるときが一番バリューあって、それ以降はコストに対するリターンが漸減していく傾向があります。「知識だけ後に残すが行動は継続しない」という状態が理想で、「新しいことを始める(そして続けていく)」というよりは「新しいことを一瞬だけ摘まんで捨てる」みたいなイメージです。

むしろ1回しか経験しないようなことこそやった方がよくて、そのために家から出た方がいいという感じですね。

23/1/9 重い腰を上げて10年前に積んだ女性主人公ラノベ83冊を崩した【2/4】

レビュー続き、前回はコチラ

saize-lw.hatenablog.com

読んだ女性主人公ラノベリスト(再掲)

  • 評価
    俺が好きだったか否かの主観評価。5だからといって作品として優れているとは限らないし、他人にオススメできるわけではない。
    5:心に残る
    4:読んで良かった
    3:読んでも良かった
    2:読まなくても良かった
    1:こんなん売らないでほしい
  • 百合:百合要素があれば+、無ければ-。
  • ヘテロヘテロ要素があれば+、無ければ-。
No. 書名 著者 出版社 発行月 評価 百合 ヘテロ
1 氷の国のアマリリス 松山剛  ADOKAWA 2013/04 2 - +
2 あまがみエメンタール 瑞智士記  一迅社 2009/03 4 + -
3 あかね色シンフォニア 瑞智士記  一迅社 2009/11 2 + -
4 みすてぃっく・あい 一柳凪  小学館 2007/09 4 + -
5 私たち殺し屋です、本当です、嘘じゃありません、信じてください。 兎月竜之介  集英社 2016/08 2 + -
6 黒百合の園 : わたしたちの秘密 秋目人  KADOKAWA 2013/12 2 - -
7 四人制姉妹百合物帳 石川博品  星海社 2014/12 4 + -
8 おとめ桜の伝説 : 小峰シロの物ノ怪事件簿 くしまちみなと  一二三書房 2012/12 2 - -
9 結成!聖(セント)☆アリア電脳活劇部 御門智  一迅社 2011/11 4 + -
10 サムライエイジ みかづき紅月  徳間書店 2008/06 5 + +
11 サムライエイジ : 乙女たちの初陣っ! みかづき紅月  徳間書店 2008/10 5 + +
12 サムライエイジ : 恋せよ戦乙女たちっ! みかづき紅月  徳間書店 2009/06 5 + +
13 特別時限少女マミミ 斧名田マニマニ  集英社 2014/04 4 + -
14 声優ユニットはじめました。 藤原たすく  小学館 2014/01 1 + -
15 マイノリティ・コア 絶対無敵の女剣士と甘えたがりの機織り娘 みなみケント 泉彩 ポニーキャニオン 2014/07 1 + -
16 乙女革命アヤメの! 志茂文彦  メディアファクトリー 2008/11 2 + -
17 マジカル†デスゲーム1 少女は魔法で嘘をつく うれま庄司  ADOKAWA 2014/03 3 + -
18 マジカル†デスゲーム2 反証のアーギュメント うれま庄司  ADOKAWA 2014/05 2 + -
19 誰よりも優しいあなたのために あきさかあさひ  一迅社 2012/02 2 + -
20 .(period) 瑠璃歩月  一迅社 2008/08 3 + -
21 東京地下廻路(アンダーサーキット) 小林雄次  オーバーラップ 2014/09 2 + +
22 乙女は花に恋をする : 私立カトレア学園 沢城利穂  一迅社 2009/05 2 + -
23 スーパーヒロイン学園 仰木日向  ポニーキャニオン 2014/12 3 + -
24 いらん子クエスト 少女たちの異世界デスゲーム 兎月竜之介  集英社 2015/07 3 - -
25 ウィッチマズルカ (1).魔法、使えますか? 水口敬文  角川書店 2006/07 3 + -
26 ウィッチマズルカ (2). つながる思い 水口敬文  角川書店 2006/11 3 + -
27 えびてん : 綺譚奇譚 SCA自  角川書店 2012/10 3 + -
28 桜色の春をこえて 直井章  アスキー・メディアワークス 2011/11 3 + -
29 彼女は眼鏡holic 上栖綴人  ホビージャパン 2008/07 3 + -
30 不完全ナックル 十階堂一系  ADOKAWA 2012/08 3 - -
31 不完全ナックル2 十階堂一系  ADOKAWA 2012/11 3 - -
32 虹色エイリアン 入間人間  ADOKAWA 2014/11 4 - -
33 世界の終わり、素晴らしき日々より 一二三スイ  ADOKAWA 2012/09 5 + -
34 世界の終わり、素晴らしき日々より2 一二三スイ  ADOKAWA 2013/01 2 + +
35 世界の終わり、素晴らしき日々より3 一二三スイ  ADOKAWA 2013/06 3 + +
36 超次元ゲイム ネプテューヌ おぶ・ざ・ないとめあ? 八木れんたろー  ADOKAWA 2013/08 1 - -
37 ヒマツリ : ガール・ミーツ・火猿 春日部タケル  角川書店 2010/12 2 - +
38 ヒマツリ アイスドール・ウォーズ 春日部タケル  角川書店 2011/04 2 - +
39 サイハテの聖衣 三雲岳斗  ADOKAWA 2011/12 3 - -
40 サイハテの聖衣2 三雲岳斗  ADOKAWA 2012/12 3 - -
41 魔よりも黒くワガママに魔法少女は夢をみる 根木健太  エンターブレイン 2011/03 2 + -
42 魔よりも黒くワガママに魔法少女は夢をみる2 根木健太  ADOKAWA 2011/09 2 + -
43 ワイルドブーケ : 花の咲かないこの世界で 駒尾真子  一迅社 2008/08 3 + -
44 ワイルドブーケ : 想いを綴る花の名は 駒尾真子  一迅社 2009/01 3 + -
45 超次元ゲイムネプテューヌ : TGS炎の二日間 八木れんたろー  メディアファクトリー 2013/05 1 - -
46 塔の町、あたしたちの街 扇智史  エンターブレイン 2007/04 5 + -
47 塔の町、あたしたちの街2 扇智史  エンターブレイン 2008/05 5 + -
48 あるゾンビ少女の災難 I 池端亮  角川書店 2012/07 4 + -
49 あるゾンビ少女の災難 II 池端亮  角川書店 2012/07 4 + -
50 雨の日のアイリス 松山剛  ADOKAWA 2011/05 4 - -
51 ぴぴっと!! 和智正喜  メディアファクトリー 2007/06 3 + -
52 しずるさんと偏屈な死者たち 上遠野浩平  星海社 2013/07 3 + -
53 しずるさんと底無し密室たち 上遠野浩平  星海社 2013/09 3 + -
54 ブギーポップは笑わない 上遠野浩平  ADOKAWA 1998/02 4 - -
55 原点回帰ウォーカーズ 森田季節  メディアファクトリー 2009/01 3 - -
56 原点回帰ウォーカーズ2 森田季節  メディアファクトリー 2009/05 4 + -
57 ノートより安い恋 = The love that is cheaper than a notebook 森田季節  一迅社 2012/04 3 + -
58 あまいゆびさき 宮木 あや子 一迅社 2013/04 3 + -
59 空に欠けた旋律(メロディ) 1 葉月双  ソフトバンククリエイティブ 2012/08 4 + -
60 空に欠けた旋律(メロディ) 2 葉月双  ソフトバンククリエイティブ 2012/12 4 + -
61 空に欠けた旋律(メロディ) 3 葉月双  ソフトバンク クリエイティブ 2013/08 4 + -
62 ストロベリー・パニック!〈1〉 公野櫻子  メディアワークス : 角川書店 2006/03 3 + -
63 ストロベリー・パニック!〈2〉 公野櫻子  メディアワークス : 角川書店 2006/08 3 + -
64 ストロベリー・パニック!〈3〉 公野櫻子  メディアワークス : 角川書店 2006/12 3 + -
65 鹿乃江さんの左手 青谷真未  ポプラ社 2015/01 3 + -
66 OBSTACLEシリーズ 激突のヘクセンナハトI 川上稔  ADOKAWA 2015/08 2 - -
67 よくわかる現代魔法 桜坂洋  集英社 2003/12 3 - +
68 よくわかる現代魔法 : ガーベージコレクター 桜坂洋  集英社 2004/05 3 - +
69 よくわかる現代魔法 : ゴーストスクリプト・フォー・ウィザーズ 桜坂洋  集英社 2004/09 3 - +
70 よくわかる現代魔法 : Jini使い 桜坂洋  集英社 2005/01 3 - +
71 よくわかる現代魔法 : たったひとつじゃない冴えたやりかた 桜坂洋  集英社 2005/05 3 - +
72 よくわかる現代魔法 : Firefox! 桜坂洋  集英社 2009/03 3 - +
73 魔法少女育成計画 遠藤浅蜊  宝島社 2012/06 5 - -
74 魔法少女育成計画restart 遠藤浅蜊  宝島社 2012/11 5 - -
75 魔法少女育成計画restart 遠藤浅蜊  宝島社 2012/12 5 - -
76 魔法少女育成計画episodes 遠藤浅蜊  宝島社 2013/04 4 - -
77 魔法少女育成計画limited 遠藤浅蜊  宝島社 2013/11 4 - -
78 魔法少女育成計画limited 遠藤浅蜊  宝島社 2013/12 4 - -
79 魔法少女育成計画JOKERS 遠藤浅蜊  宝島社 2014/08 2 - -
80 魔法少女育成計画ACES 遠藤浅蜊  宝島社 2015/09 2 - -
81 魔法少女育成計画episodesΦ 遠藤浅蜊  宝島社 2016/04 3 - -
82 魔法少女育成計画16人の日常 遠藤浅蜊  宝島社 2016/10 4 - -
83 魔法少女育成計画QUEENS 遠藤浅蜊  宝島社 2016/12 2 - -
84 先輩と私 森奈津子 徳間書店 2011/05 4 + -

 

女性主人公ラノベレビュー【2/4】

マイナー古ラノベはどうせ誰も読んでおらずただ感想を書いても共有できない可能性が高いため、皆が手に取りやすいようにあらすじを引用している。

ネタバレ配慮は特にしていないので気になるものは先に読んでほしい。俺も読んだんだからさ……

 

迫真のハッテン場描写に草

ふと気がついたら美しい女の子になっていたのでびっくりした――。どういうわけか瓜二つの容姿を持つ、花時雨学院のアイドル的存在である姫子と記憶喪失のアヤメ。品行方正、成績優秀で誰からも慕われている姫子だが、本当は学院の支配をたくらむ腹黒の陰謀家だった!! そのことを偶然知ってしまったアヤメは、記憶を取り戻すのに協力してもらうかわりに姫子の影武者として利用されることになってしまい……。右も左もわからぬまま「姫子」にされたアヤメの運命やいかに!? 波乱が波乱を呼ぶ体当たり的スクランブル身代わりコメディ第一弾!「失敗したら──許さないわよ」

【評価: 2】【百合: +】【ヘテロ: -】

「主人公が記憶喪失」「しかも容姿まで変わっている」「しかもヒロインと同じ外見」といういかにも古ラノベっぽい不思議設定がいくつも悪魔融合されており、設定の掴みは強力。

だが、期待して読み進めるもちょっとした事件を解決しただけでストーリーが終わってしまい、それらの謎は全く解決しなかった。あらすじにも「第一弾!」と書いてあるあたりもっと壮大なストーリーの序章という位置付けだろうが、これだけ主人公の出自に謎を集中させるなら一つくらいは消化してほしかった。

なおTSを女性主人公に含めるか否かには古来より激しい論争があるが、俺は含めない派だった。このラノベはTSのような気はするのだが、少なくとも一巻の範囲では主人公の元人格が一切明かされないためギリギリ女性主人公判定が出て購入リストに入っている。そういう意味では主人公の出自を一切明らかにしなかったことで読者を一人増やした正しい判断だったと言えなくもない。

突出して妙に面白かったポイントとして、学院のアンダーグラウンドに存在するハッテン場の描写が異様にリアル。

「ここは、ある種の社交場。もっとありていに申しますと、非合法のナンパカフェ、女の子同士のハッテン場なんです。花時雨学院では、生徒同士が過度に親しくなることも禁止で、学生らしく節度を保った友情を育むよう定められてるでしょう? でもここでは、そんな規則は関係ないんです」

こうして文中で「ハッテン場」と明言されており、「薄暗くて顔は見えない」「声かけを待っていてもいいし誰に声をかけてもよい」「プライベートに踏み込む会話は禁止」「他の人が口説いている間は割り込み禁止」などと新宿二丁目の如くガチすぎるルールが設けられている。しかもハッテン場はギャグ描写ではなく、割と事件の核心付近にある施設だ。いわゆる秘密の花園における反動的な舞台設定として、マジのハッテン場をブチ込んでくる手配は確かに正しいと言えば正しい。需要はあるから……

 

魔法少女育成計画の完全劣化

「この中に一人、嘘をついている魔女がいます。皆さんには、その魔女を見つけて、“処刑”してほしいのです」魔法少女を育成・管理する魔法学園。その教室に呼び集められた13人の魔法少女たちは、妖精フィアから招集の理由を告げられて困惑する。明るさがとりえの魔法少女・愛葉レナも、その中の一人だった。魔女だと思う人物に投票するという魔女探しのルールに従い、最初は気軽な気持ちで投票を行うけれど…!?生き残るのは魔女か、魔法少女か―愛らしい13人の少女たちによる、運命のデスゲーム!

【評価: 2】【百合: +】【ヘテロ: -】

かなり露骨な『魔法少女育成計画』フォロワー。

魔法少女同士のデスゲーム」「一人一つ素朴な魔法が使える」「表裏のある進行役の妖精」という基本設定を全て流用する潔さ。「一人だけいる魔女を探す」という人狼ゲーム風の脚色が加えられているように見えて、この2年前に出た魔法少女育成計画restart編も「一人だけいる魔王を探す」というルールだったため言い逃れようがない。

一応読者としては「二次創作だと思えばいいし話が面白ければパクリは不問に付そう」というスタンスだったのだが、話も普通に面白くなかった。キャラ立ちが浅くて魅力に欠け、能力バトル的な駆け引きもイマイチ冴えず、1巻で提示された謎の真相も「流石にそれはない」というちゃぶ台返しで終わる。ゲーム設定が人狼ゲームであることに対応して主人公が「自分の言葉を本当だと信じさせる」という人狼ゲーム最強能力を持っているのはかなり面白いと思ったのだが、頭脳戦が薄いためそこまで活かされなかった。特にラスボス周りってペチカのパクリだよね?

 

綾波レイみたいなやつが救われる話

私は、誰からも必要とされていない人間だった。もちろん研究所にとって不可欠な存在だったはずだけれど、それは一個人であるメイ・オータムをではなく、あくまでも被験体ナンバー5ACを必要としているだけのことに過ぎなかった。そんな私が生まれて初めて経験した、その気持ちとは―これはメイとみまり、二人の少女が描くハートウォーミングな物語。

【評価: 2】【百合: +】【ヘテロ: -】

別につまらなくはないし丁寧に書いてはいると思うが、あらすじに話が全部書いてあってそれ以上でもそれ以下でもない話なので、追加で思うところがない。

まだアニメとかをあまり見たことがなくて「綾波レイみたいな境遇のキャラが良い感じに居場所を見付けられて良かったねという話」と言われて「ああそういうやつね」と思い当たる節が無い人は読んでみるとけっこう楽しめると思う。

 

20年前に流行ったタイプの美少女ガンアクション

かつて暴力でイタリアを支配してきたマフィアは、今や市民の生活に静かに、だが奥深く根付いていた。マフィアへの復讐に燃える若き女性警官・ビアンカは、警察への復讐に全てをかけるマフィアの手先・ニコラと運命的な出会いを果たす。絶対に相容れない者同士が闘いの中で互いを認め、惹かれ合っていく…。宿命を背負った少女たちに待ち受けるものは、憎しみを超えた愛か、それとも死か。絶望の連鎖を断ち切る闘いが始まる…。

【評価: 3】【百合: +】【ヘテロ: -】

令和の美少女バディガンアクションと言えば『リコリコ』だが、その源流にある『NOIR』とかの系譜に属する作品。なんかヨーロッパとか中国あたりの裏社会が舞台になっていて、若干臭いけど粋な台詞回しでシリアスな美少女ガンアクションをやるのが流行っていた時代があった。

展開はスリリングだし緊張感もあって良いが、話がちょっと長くて終盤かなりダレるという欠点はある。主人公とバディの信頼関係が構築されてからもけっこうどうでもいいチェイスをしているパートが長く、「もう終わりかと思ったら追加ステージが始まる」という展開が二回くらいあった。

ちなみに前回のブログに「女性主人公と言えばコバルトとか角川ビーンズもあったのでは」というコメントもぼちぼち付いていたが、それらは完全に女性向けという認識であまり購買対象になっていなかった。コバルトや角川ビーンズは顎の尖ったイケメンとの恋愛とかがメインなのに比べて、一迅社アイリスはこの作品のようにアクション要素が入っていたりと男性でも楽しめるライン取りをしていたため、ギリギリ男性界隈でも嗜まれていた。

 

御当地とメディアミックスの悪いとこ全部出てる

未知なる世界には、素晴らしい宝物が眠っている―。そんな言葉を残して消えた祖父を探すため、人口300人の孤島、東京都御蔵島から渋谷へとやってきた御蔵美波。都会で途方に暮れる美波を助けたのは、東京を守る魔法少女、小張凛。「…こんなに広い東京の真ん中で、あたしたち魔法少女が巡り会うなんて!」経験は浅いながらも、美波もまた、御蔵島の加護を得てご当地を守る魔法少女だった。凛の協力を得た美波は、50年前の地下鉄路線図を手掛かりに祖父を探しを始めるが、やがて二人は何かに導かれるように地下廻路へと迷い込んで行く。東京を守りたい―その想いがひとつになったとき、少女たちの絆がかつてない魔法を発動する!そして魔法少女は、かけがえのない宝物を手に入れる―。

【評価: 2】【百合: +】【ヘテロ: +】

大して流行らずにサ終したブラウザゲーム魔法少女大戦』のラノベ版。遊んでもいないゲームのノベル版を「女性主人公だから」という理由だけできっちり買っているあたりに当時の女性主人公枯渇状況を感じる。

魔法少女大戦』も平成中期に流行った御当地ものの一つで「全47都道府県に配置された御当地魔法少女が活躍する」という内容だったが、アニメも大して面白くなかった記憶がある。この作品に限ったことでもないが、御当地もののジレンマとして「御当地要素を反映しないといけない」「どっかの地域だけ印象下げるわけにもいかない」という事情によってそれっぽい要素をツギハギしただけで尖ったところのない魅力に欠けるキャラが出力される傾向がある。しかもメディアミックスともなれば本筋に影響の大きい生き死にが絡むような話をガッツリ進めるわけにもいかないという縛りまで加わり、何も残らないホワイトノイズみたいな作品が生成されてしまった。

 

小学校に置いてありそう

女の園、私立カトレア学園の入学式。迷子になって泣いていた、ひなを助けてくれたのは『氷のプリンス』大城翼先輩。みんなの憧れのプリンス・翼先輩は、なぜかひなを気に入り、カトレア祭で自分のプリンセスになってほしいと申し込んできてーー!?翼先輩のパートナーとして認められるため、乙女の試練に立ち向かうことになったひなだけど…。男子禁制の乙女の花園でひそやかに咲く、乙女たちの甘くて切ないスイート・ラブ。

【評価: 2】【百合: +】【ヘテロ: -】

これ児童書ですよね?

「面白くなかった」と言ってしまうのは大人気ないのではないかと不安になってくるほど、内容から想定される対象年齢が低い。当時なら青い鳥文庫、現代なら角川つばさ文庫あたりから出るべきものが何かの誤りで一迅社アイリスから出てしまったとしか思えない。

一応主人公は女子高生のはずだけど、その年齢で生徒会が学園のどっかに隠した指輪を手紙のヒントを謎解きして探すゲームとかやってるのはちょっと異様すぎる。話自体に大きな瑕疵があるわけではないので、女子小学生のマインドを持っている自信がある人は全然楽しめると思う。俺も仮面ライダーとかたまに見るしね。

 

僕のヒーローアカデミア美少女版

ヒーローを育てる女子校『ヒロインアカデミー』に通う亜依と悠美とハルカ。
シェアハウスで共同生活をしている三人のもとに、噂のA級スーパーヒロイン、熊瀬川リンが加わることになった。
あれ?でもなんだかこの子、すんごく弱いし大人しいし、全然ヒロインっぽくな
いぞ…! ?

ヒーローやヒロイン達の住む大都会“バスターポリス"で繰り広げられる、
新米スーパーヒロイン達のドタバタ&ほんわかコメディ!

【評価: 3】【百合: +】【ヘテロ: -】

WJでやってる『僕のヒーローアカデミア』をそのまま美少女版にしたもの。「ギフトを持つ学生たちがプロヒーローを目指して養成学園に通って犯罪者と戦う」という基本設定はそのまま、「表向きには隠蔽されているがプロヒーローに弱体化の兆しがある」「過度に潔癖で殺害も辞さないダークヒーローが登場する」「しかもダークヒーローは他人の血を吸収することで発動する能力を持っている(ステイン?)」など細部まで清々しくパクっている。

ただ美少女キャラ要素を活かしやすいコメディとして書かれていることが奏功しており、キャラ自体は独自のものとして割とよく立っていて生き生きしているのでそれなりには面白く読める。『僕のヒーローアカデミア』より面白いことは無いが、『僕のヒーローアカデミア』がめちゃめちゃ面白い100点の漫画なので70点くらいには仕上がっており、悲しいけどオリジナルで60点のラノベよりは評価が高い。

 

異世界で異次元のギスギス

あなたは『いる子』? 『いらない子』? どこにも居場所がない中学生、狩屋友恵(かりやともえ)は自分のことを誰にも必要とされない『いらん子』だと思っていた。ある日、友恵は見覚えのない異世界に飛ばされてしまう。 友恵を召喚した黒騎士と名乗る謎めいた存在は語る。 「いらん子クエストの世界へようこそ。みなさんには今日を含めて三日間、冒険者のパーティーに扮して凶悪な魔物たちと戦ってもらいます。合計三回の『いらん子バトル』を生き残った方々は、そのまま元の世界にお帰りいただけますからご安心を……」 7名の少女が生き残りをかけてゲームに挑む。だが、『いらん子クエスト』にはまだ怖ろしい秘密が隠されていた……。絶望と希望が織りなす異世界デスゲーム開幕!!

【評価: 3】【百合: -】【ヘテロ: -】

たぶん一般的にはあんまり面白いラノベじゃないけど、俺はわりと好きな枠。『私たち殺し屋です』でだいぶ下がっていた兎月竜之介の評価が持ち直した。基本的に俺はデスゲームものがかなり好きで相当評価が甘くなるらしい。

「全員いらん子」というコンセプトがしっかりしており、少女キャラが7人もいる割には揃って性格がクソ悪く人間関係も最悪で終始めちゃめちゃ険悪。デスゲームは「クエストをこなしつつ一番いらなかった人を投票で決めて処刑する」というかなりベタなルールだが、全員性格がカス寄りなのできちんと足を引っ張り合っている感じが良い。最後の最後に特に伏線なしで唐突に現れるヤバいサイコ女が全てを回収していくセコい締め方をするが、それも嫌いじゃないぜ。

 

古き良き学園魔法ファンタジーバトル

失われた強大な力―魔法。だが、その力は形を変え「偽りの魔術」として現代にも受け継がれていた。高校生の綾白未玖とその過保護な姉である夏咲も“力”を使うことができる「魔女」の姉妹。しかし魔女を守るはずの組織「連盟」が二人を襲い始めたとき、未玖から魔術起動の象徴・八重桜が大量に舞い始める!そこには未玖の持つ「偽りの魔術」を根底から覆す秘密があった!強く優しき魔女たちによる運命の踊りが今、始まる。

【評価: 3】【百合: +】【ヘテロ: -】

かなりちゃんとした古き良き学園魔法ファンタジーバトルラノベ。「昔の王道ファンタジーラノベってこんな感じだったよね」という歴史的なイデアの趣きがある。抜群に面白くはないがアベレージは高い、教科書に載ってそう。

きちんと練られた世界に係る組織の力関係とか魔法体系の設定をベースに、いきなりセカイ系で処理せずに割とローカルな人間関係をクリアしていくところが古き良きを感じるポイント。

きょうだい関係を大きなテーマとしているため、登場人物のほぼ全てが何らかのきょうだい関係を所有して話に一貫性を添えている。きょうだい関係というのはキャラクターの間に関係を強制発生させる便利アイテムでもあり(ソシャゲにおけるきょうだい設定の多さを見よ!)、やはりそれ自体面白いというわけではないが堅実なドラマを提供してくれるものだ。

 

歴戦のゲームライター感

「蓮實、謎はすべて解けたわ!! ……ってアレ!?」「一生懸命なのになかなか謎が解けないで困っている結花さん、はぁはぁはぁ……」海老栖川高校に次々と起こる怪事件。その謎に伊勢田結花×大庭蓮實コンビが挑む! 伊勢田の膜を賭けた二人の推理勝負がいま始まる!! 「って、今膜を賭けてとか言った!?」──コミックよりもすかぢ的な「大庭が鼻血を出しながら伊勢田をハァハァ見つめる事が主題のミステリー(どんなやねん)」誕生!!

【評価: 3】【百合: +】【ヘテロ: -】

男性主人公ラノベ『えびてん』の女性主人公スピンオフ。

ラノベで主人公の次に人気のキャラは女性ヒロインに決まっているため、スピンオフが女性主人公になることはかなり多い。よって俺のような女性主人公マニアが本編を読んでいないにも関わらず「女性主人公だから」というだけの理由でスピンオフを購入していることは珍しくなかった。

ふつうにライターの力量が高くて緩い日常ミステリとしての完成度が高いので、変に挿入された浅めの変態百合要素がかなり浮いている。この手の日常ミステリは発覚してしまえば大した話ではなかったという経過を辿ることが多いが(大した話だった場合は非日常になってしまうので)、謎自体が何らかのバイアスの産物であること自体がテーマになっており、それが個人のルーツにまで遡っていく組み立ては見事。

ノベルゲームテキストの感覚で書いているのか、鍵括弧で区切って連続する会話台詞を同じキャラが発していることが多く「そんな書き方していいんだ」と驚いた。あとがきで「狗神煌先生のイラストが強いからどうせ売れるでしょ」という身も蓋もないことを書いているのも歴戦のゲームクリエイター感がある。

 

クラスメイトと謎同居して仲良くなるやつ

「あたしの家にくればいいよ?それで全て解決でしょ」高校入学とともに一人暮らしをはじめるはずが、手違いにより部屋を失った真世杏花に救いの手が差し伸べられる。救い主の名は澄多有住。杏花の同級生でもある彼女は、かわいい名前に反してぱっと見は不良、停学歴アリ。一緒に暮らし始めても無愛想でわがままでおまけに生活能力もない。杏花は折り合いをつけるのに難儀するが、時折ちょっとした優しさやかわいげが垣間見え…。これってもしかして、ツンデレ?二人の少女が織りなす、感動の同居×青春ストーリー。

【評価: 3】【百合: +】【ヘテロ: -】

割と好きだし、たぶん大抵の人が割と好きだと思う。

「あまり親しくないクラスメイトと何故か同居することになって最初は険悪だが距離が縮まっていく」というヘテロラノベでよくあるやつの両方女性だった版で、ベタな話ではあるが手堅くまとまっている。二人とも強気なタイプなのでどちらか一方が男役を引き受けているわけでもなく、過度な力関係が生じずに拮抗しているのがいい感じだ。

たまたま目に入ったAmazonレビューが興味深い(→)。

注・百合ではない
2012年10月28日に日本でレビュー済み

百合好きが間違えて買わないように、注意を喚起する目的でレビューさせていただきます。

女子高生二人がルームシェアするという設定から、百合要素を期待している方がいたら、それは大失敗なので注意して下さい。

百合要素はひとつもありません。女の子同士の友情は確かに少しありますが、そこに百合を妄想できる余地はほとんどありません。

物語のメインはそれぞれの女の子が過去に体験した、辛い記憶の回想です。

確かに二人とも性嗜好はたぶんヘテロだし性関係or恋愛関係に至ることは特にないため、但し書きとして一定の効力はある。とはいえ俺は「友達として仲良くなる話」に対して百合というフレーズを使うことに抵抗がないし、恐らく令和だったら満場一致で百合判定される内容だろう。当時の百合界隈では百合の定義に一家言ある人が非常に多かったことを思い出した(俺はかなりの穏健派だったが、この人は中庸寄りの過激派)。

 

ちゃんとした眼鏡フェチ

不思議な力を持つ眼鏡“魔鏡”の収集・保全を行なう秘密組織“アルハゼン”のエージェントにして“眼鏡使い”の深鏡めめこ。彼女は眼鏡にまつわる事件が起こっているという御園学院に転入し、調査をすることになった。幼い頃から孤独だっためめこは学園での生活に戸惑うが、眼鏡を掛けた美しい少女・黒野亞衣と出会い、心を開いていく。

【評価: 3】【百合: +】【ヘテロ: -】

新妹魔王の契約者』の作者のデビュー作だが、なるほど確かに完成度が高くて作者の力量を感じる。

「主人公が眼鏡フェチ」という設定が、浅い一発ネタではなく強い思想と行動を伴って一貫している。裸眼では歪んでいる世界を眼鏡を通して正しく見ることの価値が示されたり、知覚を支配する眼鏡をかけさせる行為を対人関係における重要な儀式にしたり、眼鏡を用いたアクションの意味付けがいちいち練り込まれていて関心させられる。あるテーマに対して様々な価値や表象的なイメージを探り続けるのは「○○の哲学」みたいなタイトルの書籍でよくあるパターンだが、その水準に達している。

ただ、眼鏡の哲学に対して誠実だった代わりに実際に起きている事件の描写が犠牲になっている節もある。「眼鏡狩り」とかいう割とどうでもよさそうなイベントを裏世界のエージェントが対処する温度感がよくわからなかったり、メインヒロインに主人公に執着されている以上の価値が見出せなかったりという違和感はないこともない。

 

一人称群像劇がうまい

空手系暴力女子だった過去を遠い彼方に葬り去り、夢にまで見た文化系女子ポジションを獲得すべく日々奮闘中の女子高生・雅野京歌。しかしそれなのに、京歌は何の因果か素人ばかりの空手部の創部に付き合わされてしまうことになって……。やる気はあるけど軟弱な部長にカラオケ要員系元気ガール、心優しきヤンキー娘に果ては名参謀としてならした病弱軍人娘まで!? 個性豊かすぎる仲間たちに囲まれた京歌は、あくまでも文化系女子への道を歩み続けるのか、それとも――。ゆるっと本気な青春+部活ストーリー!

【評価: 3】【百合: -】【ヘテロ: -】

メディアワークス文庫ラノベに含めるかどうかには諸説あるが、これはかなりラノベ寄りの小説。あらすじ通りにちゃんとした青春小説として女子高生がワチャワチャやる話で、キャラが多い割にはキャラ立ちが強い。

それを象徴するように、デスゲームでもサスペンスでもないのに一人称群像劇形式でグリグリ視点が変動していく挑戦的な構成が面白い。単に一人称に差異があるだけではなく、地の文が割と丁寧に書かれている割には各人の内省的な部分もよく書き分けられているために混乱も少ない。例えば必ず謎の格言から始めるキャラがいたり、思考が杓子定規で真面目なタイプのキャラがいたりと、一人称群像劇形式を上手くやればラノベらしくキャラを立てていくのにもかなり有効らしい。

 

続き

saize-lw.hatenablog.com

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