LWのサイゼリヤ

ミラノ風ドリア300円

21/4/2 お題箱回:エヴァンゲリオン延長戦

お題箱79

前回の記事でシンエヴァエヴァンゲリオンにケリがついたので、無限に溜まっていたエヴァ関連の投稿を処理します。 

saize-lw.hatenablog.com

 

253.シン・エヴァンゲリオンの記事お願いします!

書きました!

 

254.エヴァ新劇って今からでも見る必要ありますか?

見る必要あります。
シンエヴァを見るまでは「僕は旧劇信者なのでどっちでもいいです」みたいな感じでしたが、今やもう見ないという選択肢はありません。

 

255.エヴァ劇場版観に行きますか?

見に行きました。
周りには「そんな気になるものでもないけど一応見に行くか」みたいなこと言ってましたが、よく思い返してみればエヴァ見に行く前日に十五年ぶりくらいに髪をバッサリ切って気合入れてました。

 

256.LWさん的に貞本版ってどんな扱い⁉︎

他の映像版よりも登場人物がまともだし世界も優しい、比較的まともなロボットものとしてのエヴァンゲリオンという印象があります。
特にアスカが鳥葬される前にシンジが間に合うのはさすがに椅子から転げ落ちてしまいました。「そこでシンジが間に合ったらもうエヴァンゲリオンじゃなくない?」というコメントが喉から出てきます。

f:id:saize_lw:20210327225859j:plain

テレビシリーズと旧劇がグズグズに破綻して何も解決しなかった一方、新劇と貞本版は一応の決着を付けているという意味では大雑把な方向性は似ているようにも思います。そういう意味では新劇と貞本版を比較したようなテキストっていかにも誰かが書いていそうですが、まだ見た記憶がありません。
そういえば貞本版もなんかラストが新海誠っぽかったですよね。ぽかったっていうか、『君の名は』に同じシーンありましたよね。

 

257.これから初めてエヴァを観ようと思ってるんですけど一番正しいエヴァンゲリオンってどのシリーズですか?

正典は旧劇であるという見解は新劇が終わった今でも変わっていません。エヴァ的なものを終わらせたのが新劇であるとして、(それがどういう意味であるかという解釈は分かれるにせよ)そもそも「エヴァ的なもの」って何だったんですかということは旧劇に書いてあるからです。
また、旧劇は一応テレビ版最終二話のリメイクという位置付けなので、旧劇を見る前にテレビ版を見るのはマストです。

 

258.エヴァ記事わかりみが深かったです。
ところで重箱の隅を何とやらではありますが、冬月の「心半ば」は「志半ば」ではないですかね?

ありがとうございます。御指摘頂いた点修正しました。 

 

259.テレビ版と旧劇も見直してから臨んでほしい、心からのお願いです

シンエヴァ見る前に序破Qは見直しましたが、テレビ版と旧劇は見直しませんでした……魂に刻まれてるから見直すまでもない(建前) 時間がかかるし面倒臭い(本音)

 

260.エヴァ批評って何から読めば良いんですか?

261.最近エヴァのアニメ、旧劇、新劇を履修したのですが、エヴァに関連して読んでおいたほうがいいテキストとかってありますか?
(いわゆる設定の考察とかは今更だと思うので、それ以外の楽しみ方ってありますか?)

262.でもLWさんの考えるエヴァ批評のために読んどくべき本は気になる

何故かこの手のことを無限に聞かれていて、TwitterのDMでも聞かれました。
エヴァ放送当初からゼロ年代にかけてエヴァ批評としか言いようがないものが流行して、今でも一部のオタクジジイがそのボキャブラリーでエヴァを語っていることが多々あるのですが、当時の一過性の批評を井戸の底から掘り出して改めて体系立てるような時代感覚がフリーズした人間も特におらず、いまや当時使われたジャーゴンの残骸やスノッブな雰囲気だけが残存し、新劇完結を期にエヴァをかつての受容文脈も込みで今からきちんと履修したいと思っている殊勝なオタクが、どこから手を付ければいいのかわからず戸惑っている……というような状況があるんでしょうか?
大前提として僕は埃の積もったエヴァ批評とやらを今更抑える必要は特にないと思っているのですが、前回のシンエヴァ感想で葬送という形であれうっすら言及してしまった負い目があるので一応書いておきます。

この手のゼロ年代批評でエヴァが出てくる文脈ってだいたい決まってて、データベース論か、セカイ系論か、精神分析論の三つくらいじゃあないでしょうか。

東浩紀の超必殺技であるデータベース論は『動ポモ』を読んでおけば概ね事足ります。暇ならついでに大塚英志の『物語消費論』も読んでおいてください。
タイトルにも帯にも書いていないですが、この本は半分くらいはエヴァの本で、主にガンダムあたりと比較したエヴァの特徴が延々語られています。とはいえ、論の内容としては、物語としてのエヴァというよりは、メディアミックスのような商業形式や外伝の位置付けといった受容態度に関するものが主です。だからこれを読んだからといって旧劇や新劇のよくわからない点がわかるようになるというようなことは特にないように思います。
また、今読んでも内容が当たり前すぎてピンと来ないという人も何人も見ました。この本での指摘内容は今はもうエヴァ特有の事情では全くなく、むしろこれに該当しないものについて考えた方がまだ有益なような段階です。今だとSNS上でドライブしているVtuberとかソシャゲの二次創作中心のオタクカルチャーは明らかにこの本で指摘されたものの延長線上にあり、そういう現代の常識を今更省みるという意味では正しく古典なのかもしれません。

 

セカイ系としてのエヴァンゲリオン、つまり「少年少女の青い衝動が何故か世界を変革してしまう話」の代表格としてのエヴァンゲリオンについては前島賢セカイ系とは何か』が詳しいです。セカイ系とかいうワード、もう懐古系バズツイートを生成したいときか新海誠を叩きたいとき以外の使い道がないような気がしますが、それでも二つも用途があるのだから噛んで膨らませるフーセンガム程度には有用なのかもしれません。
セカイ系でプラスアルファの論としては、宇野常寛ゼロ年代の想像力』が非常にオススメです。セカイ系を持ち上げるオタクの盛り上がりに「ボケがよ」と冷や水を浴びせる内容であり、オタク内での自己正当化と性暴力の回路がどのように形成されているのかという冷徹な自省は一度は読んでおく価値があります。セカイ系批判は今だと献血やポスターでたびたび起こる騒動にも繋がってくると僕は思っていますが、萌えに対して過度に自省的なのもそれはそれでひと昔前のオタクしぐさという感じもします。

上記のデータベース論とセカイ系論の二つが「当時は語る価値が大いにあった」という一過性の歴史的産物という趣がある一方、たぶんエヴァの中身についてちゃんと語っていて読解として最も有益なのは精神分析論です。文学理論では割と正統な精神分析批評の流れの中にあり、古典的には『ハムレット』を解釈するような営みとそう違わないというのも権威主義者としては高評価です。
物凄く大雑把に言えば精神分析は幼児期の主に両親との関係による人格形成みたいな側面から精神的な問題について語るような営みです。この説明が半分くらいはエヴァの説明であることは錯覚ではなく、標準的な精神分析入門書籍を何か一冊適当に読めば誰でも「これってエヴァじゃん」みたいな感想を持つと思います。
また、精神医学関係者が割と頻繁にこの文脈でエヴァを語っており、ネットをちょっと検索するだけでも論文がポロポロ出てきます。直リンして良いpdfかわからないので名前を挙げるに留めますが、「漫画『新世紀エヴァンゲリオン』からみる思春期のこころ」「新世紀エヴァンゲリオンにみる思春期課題と精神障害」などがGoogleで簡単にヒットし、そこそこ面白く読めます。この手の分析は無理を承知であくまでも分析の練習としてアニメをサンプルにしたような手触りになりがちですが、エヴァの場合は地に足の着いたアニメの解釈として無理なく読めるのが嬉しいところです。
特に体裁が整って優れているものとして、以下に所収の高田明典『アニメーション構造分析方法論序説』という論文がオススメです。この書籍は特に誰にも省みられておらず無数にある謎本のような扱いしかされていないと思いますが、優れた批評的な姿勢と当時の熱気が伝わってきてお気に入りの一冊です(Amazonレビューでは「まぁ言ってしまえばエヴァについての考察本の類です」などと評されていますが……)。

 

263.有料noteとかサブスク購読とかやらないんですか?Amazon欲しいものリスト公開でもなんでもいいですが大抵の有料記事より質が高いのでなんかあってもいいのにと思いました

ありがとうございます。リンクにAmazon欲しいものリストを貼りました。

www.amazon.jp

僕は人に勧められたものを消費する腰が非常に重い方ですが(お題箱にも数十件のコンテンツ消費要望が溜まっている上に更に催促の投稿すら若干溜まりつつあるような状況です)、欲しいものリストから届いたものは可能な限り最速で消費するのでよろしくお願いします。