LWのサイゼリヤ

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24/3/9 お題箱回141:ゲームプランナーのKPI分析、日本語変数etc

お題箱回141

833.ゲームプランナーです。
KPIの分析に苦手意識があります。(売上、DAU、DRU、PU、ARPPU、課金率、継続率など)
仕事は数年続けていますが、分析方法は我流ではっきりと定まっておらず、実際の施策に活かせている実感もあまりありません。
LWさんはどのように分析していましたか。
参考にした書籍やサイト等もあれば教えてほしいです。

無職の身で仕事のアドバイスをするのは気が引けますが聞かれてしまったので答えます(聞き方的にコンシューマーではなくソシャゲ運営プランナーという前提で答えます)。

KPIには立場によって色々な見方があるので、KPI分析に着手する前にまず立場に応じた目的をはっきりさせましょう。ゲームプランナーはゲーム内容を企画する仕事なので、KPIを分析する目的はゲーム内容を改善することになるはずです。

しかし売上やDAUのような主要KPIは非常に粗い粒度での指標に過ぎず、それを眺めていてもゲーム内容とどうリンクしているかはほとんどわかりません。KPI自体が分析対象であるというよりは、KPIを呼び水にしてユーザーの動向を細かく深堀りしていくことになります。

そのためには、KPIの数値変動からゲーム内容の変動に至るまでのロジックをはっきり固める必要があります。自分が作っているゲームの仕組みはどうなっていてユーザーはどう遊んでいるのかを具体的に想像しながら、あるKPIの動きはユーザーがどこでどう動いた結果として生じたのかという仮説を立てて調べてください。

例えば今週の主要KPIのうちで売上が大きく減っていたとして、全体売上のグラフを眺めて唸るのは時間の無駄です。そうではなく、ゲーム内で売上を構成する要素を洗い出して、売上変動の内訳はどうなっているのかを具体的に調べましょう。仮にガチャとサブスクと単発商品があったとして、とりあえずメイン収入源である新ガチャの回転が落ちていることが判明したとします。

そうしたら次はガチャの回転が悪かった理由を調べます。不幸にもあんまり売れなかったガチャの目玉ユニットをユーザーがどう感じたり使ったりするかを想像して仮説を立て、Twitterやゲーム内チャットでテキストマイニングを試みたり、クエスト系のログにSQLを投げて新ユニットの使用率を調べたり、思いつく限りの方法でデータを引っ張ってきて仮説を検証してください(データを眺めてから仮説を立てる順序でもOK)。

例えばガチャの新ユニットの使用率が低いことがわかった場合、「新ユニットを引いた人も別にそんな使ってない→そもそも新ユニットはユーザーが使いたいと思うものではなかった」という理由が考えられます。ではなぜユーザーが使いたいと思わなかったのか。「性能は悪くないはずだが使い方が難しすぎたのではないか」という追加の仮説を立てたとして、それを検証する方法としては初心者と上級者のようにユーザー属性別でガチャの回転数変動を調べることが一つ考えられます。

もし運よく「上級者は普段通りによく引いているが、初心者はいつもより引いていない」という傾向が見つかった場合、「使い方が難しいユニットだったため、ゲームに習熟していたりコンボするユニットを既に所持していたりする上級者からの需要は高かったが、初心者は入手しても使えなかったり使い方がわからなかったりして引こうと思わなかった」という仮説がだいぶ固くなってきます。そこまで掘り下げられれば、初心者に向けてコンボ用のユニットを無償配布したり(無償なのでレアリティの低い劣化版とかでOK)、ユニットの使い方を公式Twitterで説明したりといった施策が考えられます。

ここに挙げたストーリーはほんの一例です。本当は最初に売上の内訳を調べる前にDAUやARPPUも細かくチェックした方がいいですし(例えばARPPUが変わっていないのにDAUが落ちて収益が下がっているなら本質的には収益というよりはユーザー離脱と流入減の問題)、実はガチャの回転が悪くなった理由はガチャの内容とは特に関係なくて来月の大型イベントに備えたユーザーの買い控えかもしれません。途中分岐は無限にあります。

ゲーム内容に留まらなくなってくる例も一つ挙げておくと、例えばDAUが減少していたとして、DAUのグラフを眺めて唸るのはやはり時間の無駄です。DAU減少としてモニターされる事象でも、背後で起きている事態が「新規登録者が減っている」か「既存ユーザーが離脱している」かではユーザーの動きが全く異なるので、まずそれがどっちなのか確定する必要があります。

仮に新規登録者がグッと減っている場合、それは広告のようなゲーム外の問題であることが考えられます。ゲームプランナーが広告出稿まで担当しているかどうかは組織によりますが、とりあえずその辺をやっているマーケティング担当者を特定して直近の事情を聞くのが最初のアクションになるはずです(しれっと予算が減らされてしれっと広告出稿数が減っているとか……)。

一方、既存ユーザーのリテンションが下がっている場合はゲーム内容の問題なのでゲームプランニングの管轄になります。どんな属性のユーザーがどの段階でどんな風に離脱しているのかを調べましょう(と簡単に書いていますが、これは概ねユーザー個別スケールでデータを見る羽目になるため相当しんどい作業になります)。もし初心者の離脱が目立つのであればゲーム開始当初のサイクルが上手く回っていないことが考えられます。例えば運営の長期化によってチュートリアル内容と実際のゲーム内容が噛み合わなくなっていたとしたら、チュートリアルを作り直す必要があるかもしれません。そして最悪なことに上級者が離脱しているのであれば事態は深刻です。エンドコンテンツの訴求力が落ちているのであればそれを作り直し、カムバックメールを送ったりして何とか上級者を呼び戻すことになるでしょう。

僕がイメージするゲームプランナーのKPI分析はこういう感じです。投稿文の「分析方法は我流ではっきりと定まっておらず」という言い方に若干の違和感があって、ゲーム内容の分析に我流も亜流もありません。常にそのタイトルのゲームプランナーが本流です。あるゲームについて一番詳しいのはそれを作っているゲームプランナーのはずで、通常業務では中身を構築するところを逆向きに検証するのが基本だからです。類似事例も探せば大いに参考にできるとは思いますが、本質的にはタイトルごとの個別具体的なゲーム内容からスタートすることを忘れると碌な結果にならないと思います。

あとこれは邪推かもしれませんが、KPIの分析に苦手意識があるのは利益を上げるための分析だと思って取り組んでいるからだったりしません? ぶっちゃけ「会社を儲けさせたい」っていう原動力で企画を作ってるゲームプランナーってあんまりいなくて、普通は「ユーザーを楽しませたい」とか「面白いゲームを作りたい」だと思うので、利益そのものには正直そこまでは興味ないというのは別におかしなことではないと思います。だから会社がちゃんと儲けてるか確認するためにKPIを見るんじゃなくて、ユーザーがちゃんと楽しんで遊んでくれている結果としてKPIが付いてくるくらいに思っていた方がモチベーションを保ちやすいと思います。売上そのものは興味なくても一生懸命考えた企画がちゃんと楽しまれているかどうかはゲームプランナーとして普通に気になりませんか?

ただ実際のところ、現場のユーザーログはそんなにしっかり結論を出してくれないし、込み入った分析の工数をなかなか取れないのがプランナーの悲哀ではあります。無職の部外者だから偉そうに理想を語れるだけで、日々の企画に追われているゲームプランナーがこういうことを落ち着いて考えて実行する気持ちと時間の余裕はなかなかないことも承知しています。しょうもない作業を何とか高速でやっつけてひねり出した時間でちょっとした成功例を作ってからチームを説得したりして工数を確保するのが現実的な動きになるような気もします。Good luck!

 

834.伊藤純也選手が性加害の疑惑によりアジア杯を戦っている日本代表から離れることになりましたが、この件についてなにか思うところはありましたか?教えていただきたいです。

そんなに興味ないですが、公的な判決が出てない段階で私刑みたいな形で社会的な制裁が発生する状況は普通にかなり良くないな~とは思っています。

別に警察や裁判所を含む治安システムが絶対に正しいとは思っていませんが、多少のエラーがあったとしても一応それを信頼してやっていくのが法治国家の最大公約数のはずで、性加害かどうかに関わらずあらゆる犯罪で判決前に干されるのは感心しません。

と、学生時代ならここで終わっていたのですが、とはいえ何も全てに対して判決が出るわけではないというのが人間社会の難しいところではあります。不倫のように犯罪ではなくても社会秩序を維持するために犯罪相当の扱いをされるべきようなイベントもありますし、特に人気商売であれば風評が生じた段階で「今後の収益低下が見込まれる」というだけの理由で一定キャンセルを受けることは資本主義の論理としてわからないではありません(全く健全ではないが、ステークホルダーにとっても生き死にが懸かっている状況で不利益を取ることを強要するのは難しい)。

ただそういう共感レベルの話になってくると、個人的には性加害疑惑に特有の共感できなさみたいなものは確実にあります。というのは僕自身が「そもそも異性と性的に接触しない」という選択肢を取れる側の人間なので、仮に冤罪だったとしても性加害疑惑が回避不可能な事故であるという印象があんまりないからです。

 

835.最近爆笑した経験ってありますか?

爆笑した記憶はあまりないです。めっちゃ面白いとき爆笑するタイプではなくて「それは面白すぎる」「今月で暫定一番面白い」とか言うタイプだと思います(オタク)。

 

836.ジバニャンとかツッパニャンみたいなキャラ好きなんですか?

かなり好きです。なんか男友達感があるキャラが好きかもしれません。

かわいいニャンねえ

マスコットキャラみたいなやつ全体的にかなり好きな方ですが、目がキラキラしてて直球で可愛いキャラよりは、目が死んでたり鈍そうだったりスレてたりするキャラの方が好きです。

ポケモンで言うとピカチュウとかプリンよりコダックとかヤドンの方が好きですし、ジュエルペットとかシナモロールとかミッキーマウスよりポムポムプリンとかリラックマとかくまモンの方が好きです。

 

837.資産どれくらいまで行ったら完全に仕事辞めて遊んで暮らしますか?

「人は資産が閾値を超えたら完全に仕事を辞めて遊んで暮らす」という前提の質問ですが、別に資産がどんだけあっても仕事を完全には辞めないと思います。週3勤務とかに縮小するにせよ、働いて社会とか新しい情報との接点を持たないと人生が先細りするのでちょっとは働いた方がいいです。

ただもう先が長くなければ先細ってもいいので、死期が見えてきたら完全に仕事辞めて遊んで暮らしてもいいかもしれません。そういう意味では金額というよりは年齢の問題で、60歳くらい?で2000万くらい?ですかね?

 

838.大学の公用語を英語にという話題で母語で学べる事の素晴らしさを説く発言を沢山見かけるのですが、その理屈でいけばプログラミングても日本語変数名を使えるとこは使っていく事を推奨した方が日本のプログラミング力を上げる観点でよいですかね?

概ね賛成です。日本語変数の利用についてはかなり諸説ありますが、僕は日本語変数を使った方が生産性が上がる(ことがよくある)というのは正しいと思う派閥です。

変数名ってめちゃめちゃ重要なのに英語に変換するところでエラー起きたり情報落ちたりするの普通に意味不明ですからね。ただ既に英語変数名が浸透していて無駄な混乱を避けるためにルールは統一すべきという事情もあるので、そこの折衝をどうするかというのが現実的な問題でしょう。

なんか一昔前は「英語を流暢に使えるやつはよく勉強してて偉い、英語も喋れないのはちゃんと勉強してない怠惰」という風潮一色だったのに、最近だと「アメ公が母語を世界標準にして楽してるだけ、非英語圏のやつが頑張って覚える必要ない」みたいなポジションも成立するのはいい時代になりました。これも機械翻訳の普及とリベラル活動の成果ではあって、僕も語学そのものにはあんまり興味ないのでそちらにこっそり肩入れしたい方です。

 

839.「カレーのレシピに風力発電は関係しているのか」というパンチラインで確信したんですが、最近のLWさんは物事を喩えたり、噛み砕いて説明する能力が明らかに高水準になっていませんか
文学的修辞やいわゆる美文とは違うけれど、厳密さをできるだけ損なわずに物事を簡潔な形に言い換えるのがシンプルに上手いと感じます
こうした言い換えや喩えの表現が可能になったのは、やはり小説執筆が影響しているのでしょうか?それとも何か他のトピックでしょうか?(仮にブログをただ書き続ける事で無意識のうちに鍛えられたとしても、在野の強キャラぽくてかっこいい)

ありがとうございます。確かに言われてみれば小説執筆が関係してるような気はします。

そもそも僕は格の低いライトノベルを志向しているので小説を書くにしても修辞とか美文にはあんまり興味なくて、基本的には伝えるべき情報を正確に伝える文章を書くべきだと思っています。

ただそれは「右腕を六十度上げた。手首を捻った。ボールを前方に投擲した。」みたいに物理的に正しい動作を書くこととは全く違います。というのは、人間が普段の暮らしの中で物理的な世界観で物事を捉えていることって基本ないので、そういう書き方をしても人間の認識が混ざった地の文としては別に全然正しくないからです。

結局「動物園で見た白鳥のネックカーブを思い出しながら意識して腕を滑らかに回したが、しかしボールは嘴のように鋭い直線で飛び立っていった」みたいに書かざるを得ませんが、これは修辞とか比喩が使いたくて使ってるわけでは全くなくて、人間が実際に世界を認識しているやり方に近付けて正しく描こうとした結果です。

そういう風に小説執筆時には「抽象的な把握や認識を、喩えや言い換えを総動員して正確に表現しなければならない」みたいな意識があって、それは修辞ではなく正確さを志向した結果であるため、小説以外で噛み砕いて説明する局面でも役立っているという事情であると思われます。

 

840.LWのサイゼリヤのアイコンは何ですか?

Living WallというMtGカードのイラストを元に自作したものです。水疱に埋まっている胎児を可愛い感じのキャラにしています。

カード

自作アイコン

Some fiendish mage had created a horrifying wall of living flesh, patched together from a jumble of still-recognizable body parts. As we sought to hew our way through it, some unknown power healed the gaping wounds we cut, denying us passage.

ある悪魔のような魔道士が、原形をとどめた肉片がごちゃごちゃに継ぎ合わされたこの恐るべき肉の壁を作り上げた。その壁を切り裂くが、謎の力によって傷口がふさがり、我らの行く手を阻むのだ。

 

(フレーバーテキスト)

Living WallはMtG屈指の猟奇カードとして知られていて、たぶん肉壁の素材に巻き込まれた妊婦の体内にいた胎児がそのまま壁に埋まっているみたいな経緯だと思われます。左下に描かれている大人の歯と比較すると体長5センチくらいしかないため、赤ちゃんですらなくて明らかに出生前というグロテスクさが特にお気に入りです。

 

 

何か買ってもらえると嬉しいです。

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