LWのサイゼリヤ

ミラノ風ドリア300円

24/3/6 全カードゲーマー、CROSS GEARをやれ!

お題箱から

832.CROSS GEARっていうカードゲームが結構面白いのでお時間ある際にカードゲームリテラシーの高いご友人と遊んでいただいての所感をお伺いしたいので、気が向いたら欲しいものリストに入れておいてほしいです(気が向いたときに確認して入ってたら買っておきます)
第三者なので案件ではないです

欲しいものリストからカードゲームが送られてきました。ありがとうございます。

補足501:MtG日本王者ではなくMtG世界王者でした(訂正)。

何度か遊んでみましたが、確かに相当面白くて周りのカードオタクたちからの評判もかなり良かったです。マイナーカードゲームには定期的に触れる機会を作っているのですが、過去に触れたその他全てより明確に優れていました。

「基本ルールは単純ながら奥が深くて飽きず、プレイ感には既存のカードゲームと異なる新鮮さがあり、フレーバーも芳醇で戦略のコンセプトが面白い」という大抵の新興カードゲームが自称するが別に達成できていないことを普通に達成していると言ってよいと思います。掘り尽くされたと思われていたカードゲームのデザイン空間にもまだこんな領域が残っていたんだなと感動しました。

内容はカードゲームですが商品としての立て付けは完全にボドゲで、1箱買えば全てのカードが手に入って2~3人で遊ぶことができ、パックなどの追加購入もありません。価格は3980円とカードゲームにしてもボードゲームにしてもそこまで高くないため、とりあえず買って遊んで損しないと思います(ノンアフィ・ノン案件)。

 

異常に速いゲームスピード

ルールをちまちま書くよりエッセンスだけ書くと、CROSS GEARの本質は「異常に速いゲームスピード」に集約されます。

補足502:普通のゲーム紹介なら「GEARLINK」「DRIVE」という二つの固有システム紹介から入るべきですが、本質はそこではないのでこの記事では触れません。

基本的には「毎ターン2つずつ増えるマナを使って美少女を召喚して殴っていく」というオーソドックスなマナ制カードゲームでありながら、マナ効率が異常に良いために全ての行動が速いです。そのため決着も早く、概ね3~5ターンくらいでゲームが終わるという音速ぶりです。

召喚が速い! 攻撃も速い!! 除去まで速い!!!

 

召喚が速い!

CROSS GEARのカードにはテキスト以外の数値は左上の一つしかありません。

このカードは左上の数字が「3」

カードゲーマーなら「ああ3マナのカードなのね~」と思うところですが、これはマナコストではなく戦闘に使う「パワー」です。ちなみにパワーは「1」と「2」と「3」の3種類があります。

マナコストは? どこにも書いていません。

じゃあどうやって唱えるの? パワーに関わらず全てのカードが1マナです

そう、CROSS GEARでは「どうせ全てのカードが1マナなのでマナコストを特に記載していない」というのが真相です。先攻1ターン目には1マナ捻ってどんな生物も1マナで投下でき、更には毎ターン2マナずつ増えるので先攻2ターン目には3マナ捻って3体投下できます。召喚が早すぎる。

マナコストが全て1である以上、「手札が重くて唱えられない」という手札事故は存在しません。それどころか「マナを溜めて高コストカードを出す」とか「マナコストが重いカードは強い」とかいう概念もありません。

全プレイヤーに確実なスタートダッシュが保証されているために後攻1ターン目から殴り合いを始められるのがCROSS GEARのスピード感です。

 

攻撃も速い!!

CROSS GEARでは当然のように召喚酔いがありません。全てのカードが場に出たターンから攻撃できます。

ただし代わりに攻撃には1マナが必要です。なんだ、それなら言うほど早くないんじゃ……と思ったところでさっきのカードをもう一度見てみます。

「ダメージは倍になる」というテキストに注目

さっき勉強したように、このカードのパワーは左上に書いてある「3」です。更にテキストに「相手プレイヤーにダメージを与える時、そのダメージは倍になる」と書いてあるので一発殴ると3×2=6点入ります。ちなみに初期ライフは20です(MtGやシャドバと同じ)

そろそろ何かがおかしいことに気付いてきたでしょうか。このカードは1マナで出せて召喚酔いせずに1マナで走れます。そして相手プレイヤーに攻撃が当たれば6点ダメージが入り、初期ライフ20点を14点まで落とします。つまり2マナあれば即座に相手ライフを1/3近く抉れることになります。いくらなんでもクロックが早すぎないか?

召喚と攻撃に必要なマナはカードによらず1マナであるため、「どんなカードでも1マナで召喚して1マナでそのまま攻撃できる」、つまり「2マナあれば空の場からどんなカードでも走ってくる」という異常な殴りバーストがCROSS GEARのスピードです。攻撃が早すぎる。

 

除去まで速い!!!

異常なスピードで毎ターン殴られていたらすぐに死んでしまうので当然CROSS GEARにも除去はあります。

「パターンわかってきた、どうせどんな除去呪文でも1マナで唱えられるんでしょ?」と思ったカードゲーマーは残念ながら不正解です。そもそもCROSS GEARに呪文は存在しません。「0マナ除去が生物に内蔵されている」が答えです。つまりどういうこと?

代表的な除去持ちカードを紹介します。

通称タップキル子

【攻撃時】のテキストを読んでください。「相手のダウン状態のアーツ1つを対象とし、それを破壊する」とは「相手のタップしているクリーチャー1体を対象とし、それを破壊する」という意味です。この効果を使うために必要な追加コストは特にありません。

つまりこのカードは「攻撃時に無料でタップキルする」というパワー2の生物です。さっき確認したように「2マナあればどんなカードでも出して走れる」ので、これは2マナあれば「場に出て攻撃してタップキルして相手ライフを2点削って場に残る」という挙動ができる生物です。たった2マナで全てをやるんじゃない!

CROSS GEARにはこういう除去内蔵生物が多く存在しており、タップキルだったり火力だったり布告だったり色々な除去がオマケで誘発します。音速で殴るついでに無料で除去まで打つのがCROSS GEARのスピードです。わざわざマナを払って除去呪文を唱える必要はもうありません。

 

なぜ異常に速いゲームが成立しているのか?(オタク向け補足)

(この節は煮詰まったカードオタク向けの補足なので、煮詰まったカードオタクじゃない人は読まなくてもよいです)

バリアンスの異常な小ささ

ここまでCROSS GEARというゲームの異常なスピード感を紹介してきましたが、煮詰まったカードゲーマーが次に言うことはわかっています。すなわち「これ引きだけの運ゲーじゃね?」と。

その心配はわかります。手札事故が存在せず音速で殴って数ターンで終わるゲームなら、要するに相手より早く殴り切る手札を配られた人が勝つだけのゲームではないかと。早く終わるならドロー枚数も少ないのだから、初期手札の質が勝敗に強く影響するのではないかと。しかし完全に杞憂です

何故ならCROSS GEARではデッキ構築が6種類×5枚ずつ=30枚で固定だからです。ただでさえデッキ枚数が少ない上に各カードの枚数が多いため、引きムラはかなり起きにくくなっています。ドローやサーチや濾過も存在し、更にはダメ押しとして「1マナ払えば1ドローできる(1ターンに何度でも可)」というルールすらあるため、むしろ動きの再現性は極めて高いです(動きのバリアンスが小さい)。

 

カード玄人もニッコリ

デッキ構築方法についてもう少し詳しく書くと、CROSS GEARでは6人いるリーダーのうち2人のリーダーを選んでデッキを作ります。

1人のリーダーが持っているカードは3種類×5枚ずつ=15枚であり、リーダー2人を選択した時点で15枚+15枚=30枚のデッキ内容が確定します(6人のリーダーから2人選ぶだけでデッキ内容が決まり、デッキは6C2=15種類しか存在しません)。

そして選択したリーダーはゲーム開始時から公開されている、つまり自分のデッキ内容は相手に完全に把握されていることになります。

ここまでの情報を統合してみましょう。

  • バースト火力が異常に高い & 除去も異常に強い
    →相手の返しへのケアが必須
  • デッキ内容はお互いに筒抜け & 動きの再現性が高い
    →相手の動きがほぼ完全に予想できる

つまり、CROSS GEARは突き詰めれば「相手の動きを完全に把握した上で、切り返しのバーストと除去をケアして動くゲーム」になります。

「相手のリーダーの組み合わせだと返しにMAXで何点出せるのか」を計算した上でそれを削り切られないようにブロッカーを立ててライフ水準を維持し、「相手のリーダーの組み合わせだと返しにどんな除去が飛んでくるのか」を計算した上でそれが直撃しないように盤面を構築します。このために表面的なスピード感に反して1ターンはいくらでも濃くなります。

このように構築要素の代わりに知識とプレイングとケアで競えるあたりが競技志向のヘビーゲーマーもCROSS GEARを楽しめるゆえんです。極まった段階でのプレイ感は環境末期のゲームに酷似しており、アーキタイプごとに結論構築が既に共有されている状況において相手のデッキへの理解を武器にして全てをケアしながら動いていくゲームはカード玄人なら望むところでしょう。

補足503:最も近いのは知る人ぞ知る遊戯王の04環境です。

 

Flesh and Bloodに似てるかも?

ついでにディープなカードオタク向けの話をもう一つ重ねておきます。

冒頭に書いたように「基本ルールは単純ながら奥が深くて飽きず、プレイ感には既存のカードゲームと異なる新鮮さがあり、フレーバーも芳醇で戦略のコンセプトが面白い」を達成し、最近流行の兆しを見せているカードゲームにはFlesh and Bloodがあり、ルールは全く違えど魅力としてはCROSS GEARと一定似ているかもと感じています。

ポイントはいずれも「マジックザギャザリングからつまらない時間を無くしたゲーム」という点です。つまりMtG(を代表とするマナ制カードゲーム)での「少しずつマナを増やしていく時間帯」を追放したゲームデザインになっています。なおこの売り文句はこちらのFlesh and Blood紹介記事からの引用で、面白いのでオススメです。

note.com

もちろんFlesh and Bloodは毎ターンマナが増えるゲームではないし、ゲームが長引くと1時間かかったりもするのでプレイ体験はCROSS GEARと全くの別物ですが、手段は違えど目的は共通しているように思います。Flesh and Bloodはマナの生産手段を土地ではなくピッチスペルにすることで、CROSS GEARはカードとシステムに異常なマナ効率を与えることで、1ターン目から激しい攻防をスタートできるという速さの魅力が共通しています。

 

3980円で今すぐ買え!

最後の方はカードオタク向けの早口になってしまいましたが、返しのケア盤面とか深いことを考えずにとにかく速いゲームシステムに乗っかって予想外のリーサルが出たり出なかったりする大味なゲームとしてもかなり楽しめます。別にカードゲームに限ったことでもないですが、本当に良い作品は素人と玄人を両受けできます。

カジュアル層からヘビー層まで受けの広い斬新なカードゲームとして3980円は安い! 10連ガチャを1回我慢してこっちを買え!

普通にハマっているので攻略記事も書きました(この記事は紹介編)。次回は既プレイヤー向けになるため気になる人は自分でプレイしておいてください。