LWのサイゼリヤ

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24/5/18 お題箱回161:自由度、イラストレーター志望etc

お題箱回161

1035.GPT-4oが発表され話題になってますが、LWさんはAIがプログラマーの仕事を食い潰すみたいな意見に対してどうお考えですか?

他のクリエイティブ職と同じように精鋭化(高給化と少人数化)が進むと思います。
誰でも書けるコードはAIでよく、AIでは済まない部分のみを人間が巻き取るイメージです。それはAIと何を作るのか考える上流寄りの能力や、AIでは手に負えない誤りを検出・訂正する能力や、AIが知らない根本的に新しい機能を実装する能力や、AI自体のエンジニアリング能力だったりします。
それらはAIの発展に応じてパイが増えたり減ったりしつつも少なくとも当分は無くなることはないでしょう。

1036.学歴で恩恵を感じたことはありますか?
例えば、東大出てよかったって思ったエピソードとかです。
東大で得た知識とか経験とかはなしでお願いします。

まあ就活などでは無難に強いです。中途でも未だにそこそこ有効そうでしたし、人事をやっている知り合いも「なんだかんだ東大卒は優秀で裏目ないからかなり採りたい」と口を揃えて言います。
とはいえ学歴に水戸黄門の印籠みたいな威光があるわけでもなく、基礎的な知的能力や学習経験については問題ないことが保証されるだけです(社会で要求されるスキルは他にも色々あります)。また学歴は数ある間接的な評価基準の一つでしかないので他の職歴とか実績で替えが効きますし、学歴だからどうみたいな劇的なエピソードはあんまりないです。

1037.YouTubeやXをダラダラ見るより、漫画や映画、アニメをしっかり見た方が最終的な満足度は高いことは理解していても、惰性でSNSを見てしまいます。LWさんは効率的にコンテンツを消費していて、素晴らしいと思いますが、こういった問題に悩んだ時期とかありますか?また、良い対処法はありますか?

最近1015で答えたのでそちらを参照してください。僕も常に悩んでいるので常に対処法を探しています。saize-lw.hatenablog.com


1038.rtされてるイラストのおかげで銀髪に目覚めそうになってきました. そういうイラストって銀髪の括り絞って探していますか?それとも大量に流れてくるのでそこから選んでいるスタイルですか?

後者です。銀髪はそれ単独でタグを付けるような特徴とはあまり見做されておらず、絞りたくても絞れないことが多いです。

1039.ダンジョン飯の感想読みました。
昔の他の感想と違って「他作品のこことの共通点が〜」とか「この本に書かれているこの思想との〜」みたいな語り口がなかったのは何か心境の変化などあったのでしょうか。
そういう読み方をする方だと思っていたので。

いや、最初からそういうこだわりは特にありません。
感想の目的は面白かったり優れていたりするポイントを言葉にすることで、手段は目的を達成する限りで何でもいいです。作品のポイントが類似作品との比較で明確になるならそういう書き方をするし、そうでないならそうしないというだけです。

1040.統計学の自由度の意味がいまいちふにおとせません。自由に値を決められる観測値の数らしいという部分まで理解しています

LWさんは、こういう場合どのように理解を進めますか?

理論全体をなるべく体系的・合目的的に把握して、理解したい概念の立ち位置を考えます。
これは概ね自然言語でやる作業で、数式ベースで考えることはあまりありません(参考にはします)。自由度にしても「自由に値を決められる観測値の数」という定義だけ眺めてもあんまり意味ないですが、「そもそも自由に値を決められる観測値の数を知りたいのはなぜだろう?」みたいなことを考えるとすぐ腑に落ちると思います。
統計学ではデータのばらつきを調べることが大きな目的の一つですが、その際に問題になるのは「全体のばらつきの大きさは自由に動ける数値の数に依存してしまう」ということです。例えば数値1つあたり10くらいのばらつきがあるとして、数値が100個集まると全体のばらつきは1000くらいになりますし、数値が1000個あれば全体では10000くらいになります(騒いでいる子供が集まれば全体の騒ぎ声も大きくなるイメージ)。
だからばらつきを考えるときは「ばらついてる数値は何個くらいあるのか」みたいなことも常にセットで把握しておきたくて、ざっくりそれが自由度のイメージです。

1041.「分裂病の精神病理」
お題箱83>批評界隈でスキゾフレニアと言えば…ネガティブな属性の中に回収されていきます。しかし…精神医学界隈では…ポジティブに記述しようとする姿勢が強く、読み物として非常に面白いです。
あたりについてです!
このおもしろさをもう少し詳しく知りたいので、良ければ噛み砕いて説明していただけますか。
補足382はこの話のみそっぽいなーとも思ったり。私は学校で医学をやっているので(のでではないかも)、隣の芝じゃないですけど思想系のほうが概しておもしろっぽさを感じます。

お題箱83の説明を読み返したのですが、これで十分に面白さを噛み砕いていると思うのでこれ以上の説明はありません。あとは『分裂病の精神病理』やその周辺書籍を自分で読んでみてください。そんなに難解な書籍ではないので読めばわかると思います。
一応再掲しておきます。

批評界隈でスキゾフレニアと言えばまず西洋のフロイトラカンやドゥルーズガタリが来て、構造主義からの流れの中にある図式において不可能性や破綻というネガティブな属性の中に回収されていきます。しかしこのシリーズから伺われる日本の精神医学界隈ではもっと現象学的な観点から患者の心象風景を虚心坦懐に捉えてポジティブに記述しようとする姿勢が強く、読み物として非常に面白いです。
もちろん木村敏の「イントラ・フェストゥム」とか安永浩の「ファントム理論」のように図式的な整理は頻繁に行うのですが、その根底にあるモチベーションは近代科学的な分類と整理という手法を用いたいからではなく、病者の歪み切った主観世界に少しでも近付くためには何とかしてそれを体系的に捉えることが必要だからという極めて実践的な試みです。周りでこの論文集を僕以外に読んでる人見たことないですが、オタクはそういうの好きだと思うので結構オススメです。
補足382:ここで言うネガティブ/ポジティブというのは悪い/良いという意味では全くなく、否定形/肯定形というニュアンスが近いです。ネガティブというのは何らかの図式の中で何かが充填されていないという欠落によってそれを否定形で語ること、ポジティブというのは逆に図式の中に何かを充填することで明確な位置付けを肯定形で語ることです。「ドーナツには穴がある」「ここには女性がいない」という穴と女性の語り方がネガティブ、「あんぱんにはあんこがある」「ここには男性がいる」というあんこと男性の語り方がポジティブです。ちなみに「穴」という概念は定義上ネガティブにしか語れないという顕著な性質を持ち、存在論的にも興味深い題材です。

 

1042.作品感想文を書き始めてから終えるまでにかかる時間がどのくらいか聞きたいです。
1日あれば書けてしまうのでしょうか?それとも数日以上かかるのでしょうか?

物にもよりますが一日か二日くらいです。最近伸びたものだとダンジョン飯の感想は漫画を読み終わった翌日には書き終えて投稿しました。
ただ一日中ブログを書いているわけでもないので、「二日かかる」というのは「10時から19時まで執筆する作業を二日分やった」みたいなイメージではなく「夕飯食ったあとにちょっと書いてから寝て翌朝にまた書き足して完成」みたいなイメージです(のべ二日分の時間がかかっているわけではない)。

1043.統計検定の勉強で得た知識が、普段の生活の思考に活きたりすることはありますか?例えばちょっとしたニュースや話題について、ある程度厳密に因果推論を行ってその蓋然性を考えてみるなどです。

生活の思考に活きることは多いですが、因果推論とかをわざわざ自分でやることは基本ありません。
分析をちゃんとやるにはけっこうなデータの質と量が必要で、形式的に分析自体はできてもブレが大きくて自明な結果しか出なかったり、クリティカルな原因を得るには結局公開されていないデータが追加で必要だったりします。
だから日常での活かし方としては「データを定量的にきちんと分析する」というよりは「背後に起きている事情などを定性的に推測する」ことの方が多いです。例えば「この件ってメカニズム的にはポアソン分布っぽいから上ブレしてもこんなもんか」とか「この件って交絡因子が絡んでてたぶんシンプソンのパラドックスみたいな状況になってそうだな」みたいなことは実際に分析しなくても色々考えられます。あと分析自体を自分でやらなくても誰かが分析した結果を読むのに便利です。

1044.趣味で東大の駒場と本郷に行きました。
どちらも良いキャンパスですね。
多分、駒場がサブキャンパスになると思うのですが、渋谷から2駅なので、立地的には駒場の方が良くないですか?
また、どっちのキャンパスが思い入れあります
か?

確かに駒場は渋谷から近いですが、本郷は秋葉原が近いので立地はイーブンくらいです。
個人的な思い入れは微妙なところです。どっちもいつでもチャリで行ける程度の距離なので思い出の地みたいな意識があんまりないこと、どっちも通った期間があまりにも長すぎて色々ありすぎたので単純比較できないこと、秋葉原も渋谷も基本何でもあるので体験の差分が小さいこと、一番好きな新宿に比べればどっちも誤差くらいなことあたりが理由です。ちなみにストレートで学部卒の一般的な東大生は駒場も本郷も2年ずつしか通いませんが、僕は色々あって駒場に8年・本郷に6年の合計14年という通学歴を持ちます。
あと個人的には駒場も本郷も物理的に良いキャンパスとはあまり思っていません。最大の問題は、国立なので無駄な建物がなかなか建てられず「なんでもない無名のスペース」や「学生が特に目的なく集まれる空間」が非常に少ないことです。何に使うのかわからんスペースが無限にある法政大学とかに遊びに行くたびに羨ましく思っていました。

1045.1ヶ月で他人と関わる遊びをする日は何日くらいありますか?
できれば、学生、無職、社会人、それぞれ時代の平均日数を教えて欲しいです

学生時代は平日に大学のサークルとかで遊ぶので週2〜3くらい(キャンパス移ってからは少なくなった)、無職時代と社会人時代は月1~3回くらいです。最近はボドゲとかが楽しくて若干頻度が上がっています。
たぶん今後も何もなければこのくらいの頻度を維持すると思います。現代はネットでもコミュニケーションできますし、頻繁に会うと対面のバリューも擦り減ってくるので会いすぎないくらいがよいと考える方です。

1046.性的倒錯を趣味嗜好ではなく特殊技能かのように扱ってる人を見ると、こっちは好きだから〇〇で致してるんだよ、と堀江貴文の野菜コピペの如くマジギレしそうになるんですけど、僕は堀江貴文のように狂人扱いされてしまうのでしょうか

気持ちはかなりわかります。僕も原神のパイモンとかアズレンの汎用型ブリは本気で抜けるタイプのキャラだと思っているのに、たまに抜けない前提で描いてるネタ絵がちょいちょいあって堀江貴文になりかけます。
とはいえネタと本気がはっきり分かれておらずグラデーションで変化していくのが二次元エロの懐の深さでもあります。常に境界事例が存在することは十分理解できるので、あまり過敏にならずに鷹揚に構えているのがいい気はします。

1047.私のフォローしている人にイラストレーター志望の方がいて、素人目に見てもあまり絵は上手くないし年単位で画力が変わっていません。
その方は「自分は毎日8時間描いてるのに上手くならないから絵は100パーセント才能に決まっているだろ」とよく言っています。
しかしその方は、私が見てきた数年間の中では一度も清書した絵をアップしていませんし、過去のうまくいった模写などを再掲するのみなので、ただただ練習のみを8時間やっているか、そもそも毎日8時間も描いていないだろうなと思っています。
イラストレーターで食っていけるほどの画力を手に入れられるかどうかは才能の部分もあるかもしれませんが、大なり小なり成長はできると私は思っているので、年単位で画力が変わっていない・清書と呼べる新規絵が全く無いその方はまずやり方を変えた方が良いだろうと思っています。
そのことをその方に伝えたいのですが、伝えると十中八九不機嫌になると思うので、今はただTLを眺めるだけになっています。
この状況が改善されないままこれからもその方の愚痴がTLに流れてくると思うと不快なのでミュートにしたいとも思っているのですが、逆にその方の愚痴が大きくなっていくのを楽しむ方向にシフトしようかなとも思っています。
LWさんならどんな選択をしますか?

一読して「たぶん何かを成し遂げた成功体験がなくて努力のやり方がわかっていないタイプの人」という印象を受けました。ちょっと前にも「十年以上カードゲームをやっているのになかなか勝てない」という質問がありましたが(→)、それと同じ話です。
これは勉強でもカードゲームでも仕事でも一角の結果を出したことがある人は誰でも知っていることですが、「本気でやる」というのは「めちゃめちゃ頑張る」とか「自分がやりたいことをひたすらやる」という意味ではありません。結果から逆算したPDCAを回すことができて初めてスタートラインに立てます。しかしそれは習得しなければ使えない一つの技術であり、人生のどこかで自分でそういう成功体験をしていたり、周囲の誰かからやり方を教わったりしなければなかなか難しいことでもあります。
e-sportsとかだと元が遊びであるだけに却って「競技レベルで強くなりたいなら漫然と遊ぶのは時間の無駄」という意識がもうかなり浸透している気がします。「一日八時間何となく遊んでても負けっぱなしで上手くなりません」とか言ってたら「なるわけないだろ馬鹿か?」って誰かがちゃんと言ってくれるんですが、他の領域だとそうでもないのかもしれません。
とはいえ効率を追い求めなくても楽しめるのが趣味の懐の広さでもあるので、「いつかイラストレーターになれたらいいな」くらいの温度感でやりたいことだけやっているのも全然悪いことではなく、むしろ趣味としては健全だと思います。僕も筋トレで効率の良いジムに行かずに自宅トレにこだわったり、ハースストーンも強くなる気がないので手なりで適当に遊んだりしています。
あとは人になんか言われて不機嫌になるのとずっと同じ愚痴を言ってるのはイラストレーター志望とか関係なくめちゃめちゃヤバイと思いますが(PDCAの観点から言っても人から情報が得られないとPlanとActionの精度が下がるし、上手くいかなくても愚痴ってないでCheckしないと前に進めない)、それもSNSの使い方は人それぞれなので何でもよいと言えばよいです。
まあ多少親しければこういうことを伝えますが、それも無理そうだったら普通にミュートかリムーブして翌日には忘れていると思います。


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