LWのサイゼリヤ

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23/2/19 お題箱回109:Skeb、エクセルサーガ、生成AIの是非etc

お題箱と関係のない宣伝

ゲーマゲ批評会やるのでよろしくお願いします

 

お題箱109

534.LWさんはSkeb使ったことありますか?Skebのシステム結構面白いと思うんですよね

僕もとてもよく考えられた面白いシステムだと思いますが、使ったことはありません。

Skebはベースが「投げ銭」であって「依頼」ではなく、イラスト閲覧の延長上にあるものという認識ですが、イラスト閲覧趣味としては絵師が自発的に描いてTwitterに出しているものだけでけっこう満足してしまうからです。

ただSkeb自体を使うわけではありませんが、イラストをちゃんと発注したいとき、つまりSkebでは禁止されているような細かい要件指定や修正要望のやり取りを含む個人依頼を行いたいときの参考としてSkebはかなり便利です。

まずSkebを解放している絵師はその時点で「条件次第では不特定の個人のために絵を描く意志がある」ということがわかるのが非常にありがたいですね。その意志の有無を見極めるのはけっこう難しくて、例えばココナラやSKIMAのような外部マッチングサイトに登録していれば絶対OKだとわかりますし、bioに「個人依頼は受け付けておりません」とか書いてあれば絶対NGだとわかりますが、どちらにも該当しないニュートラルな絵師も多いです。つまり「自ら営業するほど積極的に個人からの仕事を受けたいわけではないが、全く時間が捻出できないとか価値観的に絶対NGというわけでもなく、条件次第では個人向けに描いてもよい」という温度感の絵師が一定数いて、Skebを利用していればとりあえず交渉を持ちかけてもよさそうだと判断できます。

またSkebには必ず予算が明記されているのも個人依頼時の参考としてありがたいところです。イラスト料金って絵師によってピンキリすぎて相場がはっきりしないので、とりあえずの叩き台としてどのくらいの価格帯レンジで考えているかわかる恩恵が大きいんですよね。もっと正確に言えば、価格そのものを参考にできることに加えて、「Skebの予算を拝見させて頂いたところ××円とのことでしたので一旦○○円で~」みたいな感じで交渉時のメールで根拠込みで見積もりを書けるのが嬉しいです。

ただ注意として、Skebに表記されている値段でちゃんとしたイラスト依頼が出来るとは思わないでください。「Skebでの予算が3万円なので3万円で依頼したいです」は絶対NGです。Skebに記載されている予算は企画書を読み込む手間や修正の工数を省いた労力の価格なので、他の手間が入る場合はざっくり2~3倍くらいで見積もった方が安全だと思います(Skebの予算が3万円だったら5~10万円くらいは見ておいた方がいい)。

あと一応念のために付記しておきますが、Skeb内での依頼行為は禁止されています。メール等で個人的に発注を行う際にSkebが参考になるという話であって、Skebの使い方の裏技みたいな話ではありません。

 

535.リコリコとワンエグってキャラ偏重で物語を放棄した点では似てると思うんですが、ワンエグがほぼ話題にすらならなかったのに対してリコリコが大人気なのはなにが明暗を分けているんですかね?個人的にはワンエグのほうが(少なくとも中盤までは)楽しめたので気になります

うーん、個人的な印象としては、言うほどワンエグがキャラ偏重してた感じはしないです。キャラデザと作画はかなり良かったですが、SNSで話題になるようなキャッチーなキャラの性格やキャラ同士の関係をフィーチャーすることに熱心だったようには感じません(キャッチーでないことが良くないといっているわけではなく、キャラパワーで押すコンテンツではなかっただろうということです)。

あと以前の記事にも書きましたが、リコリコが物語を放棄していたとも思いません。ツッコミどころは無限にあったとしても全体として全く意味不明な点はそれほどなかったと思います。

saize-lw.hatenablog.com

色々と適当なところはありつつも肝要なところは概ねきっちり作られており、5ミリくらいだけ瞼を開けて薄目で見ればかなりの良アニメだと思う。マクロな世界設定もミクロな行動判断もおかしいが、その中間くらいの粒度で見れば概ね筋が通っている。具体的に言えば、「細かい不整合を無視した個々の単発のお話」や「細かい判断ミスを無視したキャラそれぞれの行動原理」は満足のいくレベルで描写されていたと思う。

はっきり言ってしまえば、ワンエグは「キャラがそこまでキャッチーではない割にはどんな粒度で見てもイマイチ話が掴めない」みたいなところで明暗が分かれている気はします。

 

536.ラノベ100冊のうち、面白かったラノベはありましたか?

レビューを書きました! 評価が4か5くらいのやつが面白いやつです。

saize-lw.hatenablog.com

売らずに手元に残したのは『みすてぃっく・あい』『塔の町、あたしたちの街』『世界の終わり、素晴らしき日々より(1巻のみ)』『空に欠けた旋律』『サムライエイジ』の5作品です。女性主人公以外のラノベだと『猫の地球儀』が他とは次元が違う水準で、やっぱ秋山瑞人やばいな~と思いました。

 

536.こんにちは。ペーパーテストのブログ記事で初めて拝見し、エクセルサーガに少し触れていた記事を見つけました。既に書いているのを見逃していたら恐縮ですが、エクセルサーガホーリーブラウニーなど六道作品について語ってほしいです。私はホーリーブラウニーが読んできた漫画の中で上位に入るほど好きです。お暇な時にでもお願いします。

あんまり語る機会ないですが、エクセルサーガホーリーブラウニーめちゃめちゃ好きです。

エクセルサーガは趣味に合うというよりは趣味を定義した作品で、女性主人公フェチ自体も、特にフィジカル強くてガンガン動けて頭のネジ飛んでる女性主人公キャラが好きなのも概ねエクセル由来です。露悪的な反社会ギャグを好んでいるのもホーリーブラウニーの影響が大きいでしょう。

どちらも情報量が多い漫画で、ギャグにせよストーリーにせよ頭が良い作者のアイデアが大量に詰め込まれているので読んでいて気持ちがいいです。あと普通に美少女キャラクターがかなり上手いので2007年頃のヤングキングアワーズは『ワールドエンブリオ』と『エクセルサーガ』で美少女漫画の二枚看板みたいな認識を僕はしていたんですが、あんまり美少女漫画扱いされているのは見ない……と思ったら萌え攻殻機動隊こと『紅殻のパンドラ』で萌え漫画家のルートに入っていき「そっち行くんだ」と僕は後方で腕を組みながら思っていました。

なんか年季の入った漫画読みの間では有名な作品だけどオタク界全体ではそこまで存在感あるわけでもないみたいなよくわからないポジションではあって、もっと評価されてもいい気はします。

 

537.LWさんが画像生成AIを毛嫌いしているのはどういった理由ですか?滅ぼしたい旨のツイートを度々拝見しているので気になりました。

去年10月頃に生成AIが流行り始めた頃の質問に今答えているのでAI関連のものがかなり多いですが、AIの流れは激流のように早く、あれからもう何度も世間的にも個人的にもフェイズが変わってしまいました。具体的に言えば、つい先週にControlNetがリリースされてプロンプトを用いた生成パラダイムが終わりを告げたり、10月頃から僕がWeb小説でAIイラスト挿絵をめちゃめちゃ使ったりしています。

「毛嫌い」というと若干語弊があって、もっと正確に言うと僕の主張は「生成AIが存在する世界より、生成AIが存在しなかった世界の方が良かったのではないか」ということです。これは「生成AIが発見されて発展した世界」と「生成AIが発見すらされなかった世界」を比較しているのであって、「生成AIが発見されて発展した世界」と「生成AIが発見されたが反対運動によって普及しなかった世界」を比較しているのではないことに注意してください。世界の現実的な在り方の話ではなく、世界の潜在的な認識の話をしています。生成AIが実際に使われるか否かに関わらず、創作能力は神秘化されていた方が人類の幸福度は高かったのではないかみたいな話です。

だからもう手遅れです。今から「生成AIが発見すらされなかった世界」に戻れる可能性はゼロであるため、この議論に夢物語以上の意味はありません。去年の10月頃は今から滅ぼせばまだ「生成AIが発見すらされなかった世界」へのシフトがギリギリ間に合うかなとちょっと思っていましたが、完全に無理だったので、もう忌避する理由も無くなって必要があれば自分でも使うことにしています。

 

538.お絵描きAIが進化し続けて、やがてAIの描いた絵と人間絵師の描いた絵が本当に区別が付かなくなった場合でも、人間絵師の描いた絵に「人間絵師が描いた」以外になんらかの価値は残ると思いますか?

残らないし残り得ないと思います。「AIの描いた絵」と「人間絵師の描いた絵」の定義上の差異は「AIが描いたか人間が描いたか」しかないので、「人間絵師が描いた」を除くと二つは同じものになるはずだからです(これは価値の話ではなく文法の話です)。

もし「『人間絵師が描いた』という部分にはどのような価値が残るか」という質問であれば、それは色々な価値が残ると思います。例えばYouTubeのshortとかでよくあるようにイラストを描く過程が面白かったり、人間が描いたという前提の下で細かい描写にどのような意図が込められているか考えてみたり、作品そのものよりは作者に対する感情を反映して鑑賞してみたり、やりようは色々あるでしょう。

ただそれらによって生じる価値は、どちらかと言えば趣味に属するかなり主観的なものではあって、客観的に主張できるかどうかは時代の潮流依存というところでしょう。

 

539.AIで描いた女の子、下着の透けも指定していますか

特にしていません。時期的に去年10月頃にTwitterに上げたこのイラストの話ですかね?

去年10月頃に作ったやつ(黒ブラ?)

一応プロンプトは以下の通りですが、AIのスピード感に対して4ヶ月前のイラストのプロンプト貼るの今更感が凄すぎますね。

{{masterpiece}}, white hair, long hair, cooler, armpits, trench coat, red eyes, school uniform, necktie, collar, wet, arm up, sweat

ちなみに透けに関してはtransparentとかを上手く指定すると良い感じに出るみたいな話があった気がしますが、それも2ヶ月前くらいの情報ではあります。

 

540.AIのイラストとか小説とかに物申したいことある?

かなりあるのでかなり書きました。

saize-lw.hatenablog.com

上の記事では発注者やプランナーとしての立場で思うところを書いていますが、個人的に思うところとしては、イラストレーターの立場が悪くなるのは非常に心苦しく、何とかして廃業せずに仕事ができる流れになってほしいと常に思っています。

ちなみにこれは僕がイラストレーターという職業に対して「この世界で唯一価値のあるオブジェクトであるところの美少女イラストを生み出せる種族だから」という理由で非常に強い敬意を払っているからで、他の職業に対しては一般化されません。つまり事務職とかコスプレイヤーとかドライバーがAIに仕事を奪われて路頭に迷うのはあまり知ったことではありませんが、イラストレーターだけは絶対に肩を持つということです。

また、自分の創作趣味については、言語系AIが小説を生成できるようになりつつあることに対する危機感やモチベーションの変化は一切ありません。僕は商業作家ではなく趣味の人間なので、自分の脳内にあることを出力することが第一の目的で、客観的に面白く優れた作品を出力することは付随的な目的に過ぎないからです。脳内出力は明らかにAIで代替できないため、昨日も今日もダラダラ新しい作品を書いています。

補足446:と口では言いつつ、客観的に見て面白くなるように色々と作品を研究してみたり、読者からのフィードバックを重視していたりと、振る舞いが一貫していないところはあります。

とはいえ、割とこだわりの薄い繋ぎみたいな部分(けっこうどうでもいいシーンとかけっこうどうでもいい設定とか)について補助輪みたいな形でAIを使うのは全然ありなので、それは気が向いたらやってみてもいいかなとは思います。

 

541.さっきリツイートしてた「ウイグルの街並みです。気付きましたか!」ってツイート、何に気づくんだろうと思って垢に飛んだらバチバチ陰謀論者で笑いました。

元ツイートの痕跡を探したらアカウントが消えていました。気付いて消されてしまったんでしょうね。

 

542.いつも楽しく拝見させて頂いております。
LWさんは現在ライトノベルを執筆しており、また過去の批評の中には作品をストーリーテイリングやキャラクターメイクの基本(定石?)から読み込んでいくケースもいくつか見受けられましたが、批評やラノベ執筆で参考にしているハウツー的な書籍があれば教えて頂きたいです。

ありがとうございます!

すみません、僕の中では強く意識してストーリーテリングとかキャラクターメイクの基本から批評とか執筆をした記憶はあんまりないです。ただ、いわゆる「序破急」「語り手」「異化」みたいなレベルの標準的な小説技法については説明しろと言われればできる程度には普通に知っているし、概ね正しい理論だと思っているので、なんとなくうっすら使ったりしているかもしれません。

具体的にどの書籍で学んだとかは思い当たらないですが、強いて言えばパッと思い出せるのは『批評理論入門』とか『キャラクター小説の作り方』あたりでしょうか。

ちなみにストーリーテリングとかキャラクターメイクそのものについてではないですが、明確に「良いな~」と思っているハウツー系の本は三宅隆太『スクリプトドクターの脚本教室』という本で、以下の記事で詳しく紹介しています。

saize-lw.hatenablog.com