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24/4/10 東大卒無職のTwitter就活記

インターネットへの就活完了報告

無職の再就活が無事に終わりました。

三ヶ月前くらいにTwitterとブログに雇用募集を出して50社近くから声をかけてもらって、最終的には条件や環境が非常に良くキャリアイメージもマッチしている大手でデータサイエンティストとして働くことになりました。

年収も前職から50%くらい増えたし非常に良い結果で終われたということで、報告がてら顛末を書いておきます。雇用募集ツイートを拡散して頂いたインターネットの皆さん(特にTwitter就活に協力的なエンジニア界隈)や声をかけて頂いた方々はありがとうございました。

(雇用募集ツイート↓)

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何故Twitter就活を選択したのか?

雇用募集ツイートは300RTくらいされて反響が色々あったのですが、その中でも特に多かったものの一つが「何故このスペックで正規のエントリー経路ではなくTwitter就活をしているのか」という疑問です。

正しい違和感

これは鋭い指摘で、実は正規ルートのエントリーではなくTwitter就活をしなければいけない理由がかなりちゃんとありました。

『追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 ~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~』第38話より

 

正攻法の就活は通らない!

Twitter就活を選択した理由はシンプルで、正攻法の就活は通らないことをもう既に確認していたからです。

実はTwitter就活を始める前に三ヶ月ほどビズリーチとエージェントを使って就活していたのですが、これが驚くほど振るいませんでした。半分くらいは書類選考落ち、その後も一次面接くらいは抜けますが二次面接あたりで弾かれるという具合です。15社のうち内定に至ったのは1社のみで(それも最終的には折り合わずこちらからdecline)、一般に内定率7%という数値の評価には諸説あるにせよ、ツイートのスペックからすると信じられないほど内定率が低いと言っても驕りにはならないだろうと思います。

とはいえ書類選考が通らない理由には心当たりしかなくて、それは「履歴書が雑魚すぎる」ということに尽きます。もちろん学歴や資格はツイート通りなので一定優れていますが、それを覆すほど人生の歩み方が地雷っぽすぎることがネックになっていました。具体的に言うと僕は浪人留年退学無職を全部やっていて、もともと新卒の時点で26歳学部卒というなかなかヤバい状態でした。更に新卒で入った会社は3年弱だけ働いて退職し、挙句の果てにそこから1年少し無職の空白期間を経て現在に至ります。

そういう生き方自体は概ね自分で胸を張って選択したものですし、面接で聞かれれば「私は常に有意義な生き方をしてきました」と堂々と説明しています。とはいえ、そういう有様を外から客観的に見たときは「大量の資格を持つスキルフルな30歳東大卒」と見せかけて実は「ほんのちょっとしか働いたことない30歳無職」でもあるという、両極端な性質を併せ持つ怪しすぎる人材になっていました。

そういう履歴書が実際に企業側からはどう見えていて強みや弱みがどこにあるのかについては、選考を進めてエージェントや企業からフィードバックを受けていく中でだんだん把握できてきました。

まず人事からの第一印象はかなり悪いです。履歴書を見たときの評価は「学歴や資格や学習能力から窺えるポテンシャルは高いが、短い社歴と直近の無職歴によって定着性や実務経験への懸念が大きい、ハイリスクハイリターンなギャンブル人材」というところでしょう。せめて二十代中盤くらいの新卒か第二新卒ならかなり欲しいですが、三十歳ともなるとリスクの方が気になってきます。一般的に言って事業はギャンブルではないので、こういうヤバそうなやつを的確に弾くのが人事の仕事ですらあります。

またマネージャーや役員クラスからの心象もだいぶ悪そうでした。組織内でも大局的な視点を持たなければならない立場からすると、「どこかで活躍しそうなポテンシャルは一定あるとしても、それが長期的な事業計画上でどこなのかという具体的なイメージが持ちにくい人材」は中途で入れて会社を支えていく仲間としては魅力に欠けます。

一方、明確に評価される強みももちろんあり、主に現場ポジションからの評判はかなり良い傾向にありました。現場の担当者は長期的な定着性や組織内の立ち位置というよりはシンプルに「現場で使えそうかどうか」をチェックするため、学歴と資格から確定しているポテンシャルや学習意欲がそのまま高く評価されるからです。

特に「データ分析に興味を持ってデータサイエンス資格を取ることにしたが、いま国内に十個近くあってどれを取ればいいのかわからなかったので全部取った」という脳筋ムーブ(筋脳ムーブ?)は面接で喋るたびにかなりウケていました。これはいま特定の何かに詳しいだけではなく学習能力そのものが優れていることの証明でもあり、「今後も業務で必要な知識は即座に習得可能」というのは現場では最強クラスの能力です。「技能についてはどうせ問題ないので質問を省略します」と言われることも多く、口頭試問系の質問を受けたことは就活全体を通して一回もありません。

また、僕は新卒の頃はコミュニケーション能力が著しく低く、面接の質問に対して期待される答えを全然返していなかった自覚があるのですが、そのあたりは一度社会に出たおかげで完全に改善されていたのは幸いでした。ありがたいことにフィードバックのほぼ全てに「受け答えが高速かつ的確で地頭は明確に良い」という感じの評価が含まれており、知力だけでなくコミュニケーションを含めても能力的には問題なかろうと判断されていたと思います(あくまでもそれを覆すだけの経歴のヤバさが足を引っ張る形)。このあたりはずっと個人ゼミを主催していたおかげでもあって、周囲の皆さんには感謝してもし切れないところです。

 

正攻法を捨ててTwitter就活へ

改めて整理すると、僕のステータスは「ポテンシャルはかなり強いが、履歴書がかなり弱い」というところです。こういう人が正規ルートでエントリーしたときの問題は、選考が根本的に敗者復活戦みたいになってしまうことです。

ビズリーチやエージェントや企業HPからの正規エントリーだとどうしても最初に履歴書を送ることになるので、「履歴書から受ける経歴の印象は悪いが、それを補うだけの要素があれば採用してもよい」というゲームになってしまいます。加点評価と言えば聞こえはいいものの、他の転職者がゼロからスタートしているところを大マイナスからスタートしてゼロに近付けていく作業をやらされるのは非常に不利です。

理想を言えば、逆の順序が望ましいのです。つまり最初に学歴と資格だけ見せて「この人は能力が高すぎるので是非採用したい」というファーストインプレッションを持ってもらって、そのあとで履歴書を送ってからでも「多少は経歴の懸念があるようだが目を瞑ってもよい」という判断で耐えるのが理想です。

ここに来て、一般志願者とは別枠で履歴書よりも先に学歴と資格だけを見せられる就活方法としてTwitter就活が浮上してきます。冒頭に置いた雇用募集ツイートがまさにそうで、初手で強みである学歴と資格だけをぶつけられるために第一印象は相当に良いことが期待されます。

また「そもそもTwitterでスカウトを行う組織は最初からマッチ率が高いだろう」という見込もあります。Twitterで就活するような素性の見えないやつに声をかける時点で志望者が正規ルートできちんと応募してくるような人間かどうかは特に気にしていない、つまり能力やポテンシャルがあるなら貪欲に採用したい思想のはずだからです。

更に言えば「さすがにTwitterでスカウトした相手を書類選考では落とさないだろう」という下心もありました。新卒ならともかく中途採用でこちらから声をかけた以上は門前払いするのは信義にもとるし、選考に通すくらいはするのが人情というものです。書類選考が第一関門になっていた僕にとってそこをパスして一旦面接に持ち込める意義は非常に大きく、実際、正規ルートでの就活では半数近くが書類選考落ちだったのに対して、Twitter就活で書類選考落ちになった組織は一つもありません。

あとTwitter就活でクリアしなければならない現実的な課題は「バズをどう確保するか」です。ここまで書いてきたように「正規の応募ルートではどうにもならない」という前提があってTwitter就活に賭けているので、初手に打つ雇用募集ツイートに冗談抜きで人生がかかっています。より多くスカウトをもらうためには可能な限りインプレッションを稼がないといけないが、かといって真面目な雇用募集なのでコラ画像みたいなネタ要素を入れることもできないという非常に難しいマーケティングでした。

最終的に拡散用フックとして作っておいたのが「希望 年収400万~」という記載です。バズにも色々なパターンがありますが、「何か一言いいたくなるツイート」は拡散力が高いツイート典型の一つです(何か一言いうためには引用RTかRTをしなければならないため)。実際、雇用募集ツイートに対して最も多かった反響は「このスペックで400万は信じがたい」系であり、そのおかげで面白味のないTwitter就活ツイートにしては画期的なペースで拡散することができました。

補足519:念のため書いておくと「希望 年収400万円~」という記載自体は嘘ではありません。現実的に就業を検討可能な最低ラインはそこで、天職にエンカウントした場合はその年収でも働くつもりでカジュアル面談を実際に受けていました。ただ、そうはいっても客観的に見てカタログスペックに対して著しく安いだろうという自覚くらいはあったということです。

その反応が欲しかった

結果としてTwitter就活は大当たりでした。意図通りにバズったツイートのおかげで50社近くからスカウトを頂き、事業内容などの時点でどうしてもミスマッチだったごく一部を除いてほとんどの組織とカジュアル面談をしました。

ただエージェントがいないので、膨大な組織から同時発生するスケジュールを全て自分で管理しなければなりません。進捗管理シートを作って全部のメッセージを並行で読みながら空いている日時を整理して面接日時候補を送って確定させて返信して面接して、朝から晩までメッセージを読んだり返したりしながら1日5~6社くらいのペースで面談し続ける日が続きました。「こんなんもう仕事だろ」と思いつつ、幸いにもダブルブッキングやすっぽかしのようなエラーは一件も起こさずに乗り切りました(ただ対面面接で乗り換えをミスって遅刻したことが2回あってその節はすいませんでした……)。

最終的にこちらからdeclineせずに最後まで進んだ選考のうち(つまり内定or不採用の結論が出た選考のうち)、ビズリーチやエージェントでは内定率が7%程度だったのに対し、Twitter就活での内定率は57%程度でした

 

就活を完走した感想

経緯については以上で、あと全体の感想を書いて終わります。

 

中途就活は楽しい

まず全体を通して就活は概ね楽しかったです。

新卒就活では働いたこともないのに何を言えばいいかよくわからず御多分に漏れず非常に苦しい思いをしていたのですが、中途ともなると職歴に紐付いた自分の軸が社会の中ではっきり形成されているので迷うことがありません。普通にやれることや普通にやりたいことを普通に喋るだけなので会社のキャリア面談とかと変わらなくて、過剰に身構えたり対策したりする必要がないのがとても楽です(注:ちょっとはある)。

また正規のエントリーと違って、Twitter就活だと先に声をかけた企業側から志願者に対して雇用したい理由や想定職務を説明する義務があるため、そこで事業について踏み込んだ話を聞けるのが非常に面白かったです。もう新卒ではなく社会人同士で話も通じるし、IR資料とか会社ブログで公にはなかなか書けないことも含めてAI時代の認識や本当に直面している困りごとや事業の展望などが本音ベースでいくらでも聞けます。

そういうカジュアル面談を面倒に感じる人もいるかもしれませんが、僕はもともと人の研究とか仕事の話を聞くのが好きでそのためだけのLT会を主催したことすらあるので願ったり叶ったりでした。事業内容を頭に入れたその場で「この事業って初期投資大きそうですけどもう黒転してるんですか?」とか「僕が昨日話した競合も同じようなことやってますけどどこで差別化できるんですか?」とか踏み込んで聞きまくったことも一度や二度ではなく、知的好奇心がめちゃめちゃ満たされる良い機会でした。

 

体概念を理解せよ

面接の基本的な考え方については自分で書いた自分の記事にかなり助けられました。この記事はなんかお題箱で聞かれたので答えただけなのですが、たまたま本格的に就活に入る前に言語化しておいて良かったと思います。

saize-lw.hatenablog.com

内容は全て書いてある通りで付け足すこともありませんが、この記事自体が2023年のはてなブログ全体で7番目に読まれた有名就活記事なので人事の方は既読だったりもして、特技の話とかで出動させるとたまに話のタネになってくれたりもしました。

 

中途は柔軟であれ

新卒とは異なる中途に特有の事情として、面接での受け答えはあまりはっきりさせ過ぎずに柔軟に喋った方が良いと思いました。

例えば「このような状況ではどういう方法を用いるのがよいと思いますか」というような想定解のないケース質問に対して、僕は最初は「ちゃんと意見を持ってはっきり答える人材の方が印象が良いだろう」と思って「そういう状況では~~をするのが良いです。何故なら~~」という一つの結論を出して論拠を説明するような答え方をしていました。

ただ有能なエージェントから「自分の考えに固執する印象を与えているようだ」というフィードバックを受けて「なるほどな」と思いました。確かに新卒レベルであれば意見を持っていない人とか何を言っているのかわからない人よりは意見を一つ持ってはっきり述べる人の方がよいのですが、中途であれば意見を持っていることは当たり前で、その上で色々な条件を勘案して落としどころを考えるワンランク上の能力が必要です。僕はなまじ論拠付けや反論の口先が回るので「この案を通す」と一度決めたら押し通すように喋ることもできてしまって、それは新卒ならいいけど中途ではちょっとね……ということのようでした。

だからそれ以降は論拠や状況を整理しつつも柔らかく複数案を挙げるように答え方を修正しました。上のようなケース質問では「全体的に工数と進捗次第ではあって、大抵は~~なのでAが有効だと思いますが、もしそれで~~ならBした方がいいかもしれなくて、Cはかなりいまいちですが強いて言えば~~が~~なら検討する価値くらいはあるかもですね」という感じです。

 

中途面接はミーティングみたいな感じでOK

そういう経緯もあって、中途面接は新卒採用と比べると一問一答の質疑応答というよりは実際のミーティングを見据えたコミュニケーションに近いという風に認識を改めました。よって必要があればレスポンスを往復させたり質問への確認を挟んだりしながら、なるべく意図を共有したフレキシブルな会話をするように心がけました。

例えば、質問の意図を汲んだ上でそれでもなおズレた回答をしたいことがたまにあります。実際によくあったのは「今後使っていきたい技術や技法は何か?」という質問で、僕の回答というか思想は「技術は目的ではなく手段なのでそのときのタスクに応じて最適なものを選ぶのがベストであり、技術の方からスタートしてこれを使いたいという考え方はしない」ですが、それは「何を使いたいのか?」という質問とは直接噛み合っていないのでそのまま答えると会話が上手くできない人に見えてしまいます。かといって「~~を使いたいです」とか思ってもいないことを無理に答えても他のスタンスと一貫しなくなって歪んでくるジレンマがあって、可能なら自分の考えをちゃんと伝えたいところです。

こういうときは答え始める前に「少し前提を崩してしまうのですが」という前置きや「その点については~~なので~~という方向で答えてもよろしいでしょうか」という確認を使うことで相手の期待とこちらの答えをアジャストさせていきます。そういうクッションを使うのはミーティングなら当たり前ですが、面接でもしっかりコミュニケーションを取りながら対話でクリアするのが良いと感じます。

また、こういう考え方は喋った後のフォローにも有効です。質問に対して答えたあとに少し答えの着地点がズレてしまったと感じたり、向こうの意図に完全に沿った答えかどうか自信がなかったりする場合は「つい勢いあまって~~まで喋ってしまいましたが、一旦以上です」とか「一旦は~~の想定で答えましたが、別の角度からということであれば仰って頂ければ補足いたします」みたいな言い方で〆ることで期待をズラさずに会話を続行することができます。

 

 

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