LWのサイゼリヤ

ミラノ風ドリア300円

24/3/14 お題箱回144:東大卒のガクチカ、バイオレンス・クリスマスetc

お題箱回144

862.レベルは遠く及ばないのですが、考え方や経歴はLWさんに近いな〜と個人的に感じているものです。
東大に理系で入って進振りで理学部に進んだのち合わなさすぎて文学部に転学部したのですが、ガクチカが全く存在せず就活に絶望しています。
なにかやっておけばとりあえず潰しがきくようなものはありますでしょうか。

僕は人事ではないので諸説あるという前提で差っ引いて読んでほしいですが、その経歴なら絶対もう既にあると思います。

無いわけないので逆に何でないと思うのかわからず答えにくいのですが、嘘吐きに「ガクチカで勉強関連はNG」「バイトやサークル活動に限る」みたいな嘘を吹き込まれているのでしょうか? 確かに「ガクチカで勉強の話をするのは微妙」という風潮はありますが、それは単位を取るための勉強しかしていないような大学生に限った話です。

これは単にコミュニケーションの問題です。大学を卒業見込みの学生が面接に来ている時点でそいつが「卒業単位を揃えるために大学の講義を頑張ったこと」は既にわかっているので、ガクチカを聞いて改めて「単位を取ることを頑張りました」と言われても手持ちの情報量が全く増えず、コミュニケーションとして成立していないということです(相手が既に持っている情報を考慮せずに冗長なコミュニケーションをする学生は採りたくない)。

逆に言えば、面接官が既に持っているだろう想定を超える熱量とか実績とかエピソードがあるなら勉強の話をしても構いません。特に(進振りで理一から文学部に行ったとかならまだしも)一度は進振りで理学部に行ったにも関わらずわざわざイレギュラーな手続きをして文学部に転学部したということは、その壁を超えるくらい高い関心やマルチな経験を持った上で決定を下したということだと思います。だから講義以外の余暇も使って専門書を読んだりフィールドワークをしたりした話をして、そういう経験が業務でどう活かせそうか適当に繋げて喋れれば問題ないでしょう。

補足504:Twitterでたまに見る「日本の就活では学業は全く評価されないので、学業以外の評価をするためにガクチカを聞いているのだ」みたいな言説は社不の妄言です。大卒を高卒より優遇して採用する時点で学業という評価軸が存在することは明らかです。そうではなく応募時点で既に卒業見込みだとわかっている学生に卒業見込みの話をされても困るという、単にコミュニケーション不全の問題です。

ただ一般的に言って大抵の組織では志願者には他の社員と協働する能力が求められていて、そこを実質的に補うのがガクチカでもあるので、勉強の中で他人と関係した経験も織り交ぜられた方が良くはあります。例えば難解な専門書を読むために友達と読書会をやったとか、文学部に所属しつつも理学部の旧友ともコミュニケーションして学際的な視点を育んだとか、転学部にあたって色々な研究室にアポを取って人脈を広げたとか、そういう要素があった方が評価されやすいと思います。

もちろん「なるほど、では学術と全く関係ない事柄で他に頑張ったことはありますか?」と食い下がってくる面接官もそれなりにいるとは思います。そこで戦うための手札を他に作りたければそこで初めてボランティアとかサークル活動とかフルマラソンへ挑戦とかを今からやってもいいですし、学業以外の経験を強く求めてくる企業にはマッチしないと諦めてもいいです。

補足505:「ガクチカのためにやったガクチカは評価されない」みたいなよくわからん説もありますが、別にそんなことはないでしょう。ガクチカのために動けるのも一つの行動力ですし、それで何を持ち帰ったかの方が重要です。取ってつけたような動機を無理に捻り出さなくても「就活が迫る中で学生生活で力を入れたことのレパートリーが乏しいことに気付き、将来に向けて自分の適性をよく知るためにもあえて興味が薄かったボランティアを頑張ってみて~」とか喋り始めればいいと思います。

いずれにせよ、少なくとも「ガクチカが全くない」ということは多分なくて、そういう質的な問題をクリアしたあとは「どういう手札をどこまで揃えておくか」みたいな量的な問題にシフトします。その上で選考って別にテストじゃなくてマッチングなので出された問いに全部正解を出さないといけないわけではなくて、いま持っている手札とマッチしない組織は切る(無理して手札を揃えない)という選択も全然ありです。

 

863.理学部から文学部に転学部したものですが、強烈に文学がやりたくなって転学部したわけではなく、理学部の必修にあまりにもついていけなさすぎて逃げの選択肢として転学部を選んだみたいな感じなので、少なくとも本心ベースではそこまで転学部に情熱はなかった感じです(逆によっぽどモチベがあったんだねと思ってもらえるのだとすればそこに合わせてお話を構成するのも一つの手かとは思いますが)

862の答えを書き終わった直後にこの訂正的な事情説明が投稿されたのですが、経歴だけ見た時点では(=履歴書チェック時点では)そういう期待をされるかもしれませんというサンプルとして862の回答はあえてこのまま残しておきます。

それでも東大生って基本的に自分の実績を過小評価する傾向がありますし、他に思い浮かばないか他のことへのやる気がなければやはり仰る通り転学部周りから組み立てるのが無難だとは思います。ちなみに過小評価しているというのは自信がないという意味ではなく、能力が高すぎて世間と評価基準がズレるという意味です。世間の凡人が半年くらい死ぬ気で頑張らないとできないことを一週間の片手間で出来てしまった挙句に「こんな簡単なことでは何の実績にもならないな」とか思っていたりします(念のための注:これは喩えではありません)。

本人がどう思っていようが、受験突破も込みで東大で通用する理系能力を持っていた上で途中から文系にシフトしてそれで問題なく卒業できる文理両道ぶりって外から見たらそれだけで全然バケモンです。本当についていけてないやつはもっと早い段階で死んでるしたぶん転学部自体できません。

 

864.「学生時代から根強く持っていたテーマの一つを完璧に完成させた漫画」、良かったら教えていただけませんか?

865.「学生時代から根強く持っていたテーマの一つを完璧に完成させた漫画を読んでそれ以降読む気が無くなった」
このツイートにある「テーマ」と「その漫画」について、
差し支えなければお聞きしたいです。

866.LWさんが「学生時代から根強く持っていたテーマの一つを完璧に完成させた漫画を読んでしまってこの話はもういいなと思ってそれ以降触れる気なくなった」と仰る【テーマ】って何だったのか、もし公にできることならお聞きしたいです。自分にはそのようなテーマがない人生だと気づきザワっとしました。よろしくお願いします。

867.> 学生時代から根強く持っていたテーマの一つを完璧に完成させた漫画

これってなんの漫画ですか?

868.テーマと、それを完成させた漫画のどちらも気になります。軽くで良いのでご紹介いただけると嬉しいです!

気になりすぎだろ! これの話ですね。

当該漫画は2023年2月にジャンププラスに掲載された南野夏雄『バイオレンス・クリスマス』です。幸いにも書籍に収録されていないのでWeb上で公開されています。全39ページと短いので今ここで読んでください。

shonenjumpplus.com

生物の解体でしか幸福を感じられない美少女がクリスマスにサンタから祝福を受ける話で、この作品で終わってしまったのは「本当にどうしようもない人は本当にどうすればいいのか」みたいなテーマです。似たテーマを扱った他の作品は細かいポイントがズレていて「わかってない」ので自分で書かないといけなかったのですが、この『バイオレンス・クリスマス』は完全に「わかっていた」のでもはや自分の創作でやる必要がなくなってしまいました。

例えばポイントの一つは、まず主人公が破綻してしまった理由が特に何もないことです。他の凡庸な作品なら主人公が抱える問題の裏には大抵は悲しい過去とかもっと根本的なトラウマがあってそれを解消することで異常もクリアされます(どうにかできるレベルのどうしようもなさでしかないのでどうにかできる)。翻って、サリーにはそういう根本原因が特にありません。回想でも最初から小動物を解体するシーンから入っており、それより以前には遡るべき過去を持ちません。本当にどうしようもない人というのは最初から先天的にどうしようもないのであって、「こういう理由でどうしようもなくなっている」という経緯を持っていないために解決の糸口もありません。

また、サリーがぶっ壊れているのは快楽の経路だけで、倫理観はむしろちゃんとしているということもよく描かれています。彼女は殺人そのものには罪悪感を持っているし、他者の痛みについても考えられるし、殺人対象も殺人鬼に絞ったりと色々頑張ってみてはいるのですが、結局のところどうしても解体をやめられません。サリーは人格的・倫理的には最初からずっとまともで、頭では既に答えがわかっているのにそれを踏み越えてしまうため、彼女の葛藤は理性的な次元では解決できません。何らかのエピソードを経て「こうすればどうにかできる」というロジックが浮上したとしても「それでもやってしまう」でいつでもひっくり返せるからです。

結局サリーは本当にどうしようもない人であるまま、サンタから「全てが美しい」という祝福を与えられることで物語は終わります。彼女が思い悩んでいた実質的な問題は何一つ解決されなくても、その存在が無条件に肯定されるというのは最大限に誠実な結論だと思います。本当にどうしようもない人が本当にどうしようもないまま、それでもなおその状態を祝福するということ。

自分語りにスライドすると、僕の一次創作でも当初は「本当にどうしようもないやつ」ばかりが主人公になっていました。

例えば『すめうじ』の主人公は「そこら中に蛆虫を湧かせる」という体質を持つ本当にどうしようもない成人女性だし、続く『ゲーマゲ』の主人公も「強敵を求めるあまり誰にでもゲームを挑んで虐殺せずにいられない」という本当にどうしようもないゲーマー女子高生でした。彼女らがどうしようもなさを温存したまま世界と向き合っていくことがテーマになっているので、体質や精神性のような問題そのものは最後までクリアされません。

ただ2022年12月に『ゲーマゲ』が完結したあとに2023年3月に『バイオレンス・クリスマス』が掲載され、そこで「このテーマは完成したからもう終わりでいいな」と思ったためにそれ以降は主人公のタイプが変わっています。一定の反社会性は未だに持ち合わせているものの、作品全体のテーマとして扱うほどではなくなったため、どうしようもなさはかなりマイルドになっています。

『にはりが』の主人公はシスコンすぎて自殺や殺人を厭わない悪性を持ってはいますが、ストーリーの中できちんと姉離れして友達を支援したり敵と協調したりすることもできるようになります。『うるユニ』の主人公も自分の初恋のためだけに街一つを危険に巻き込むことを躊躇しない一方、死者は出さないように気を配っているし自分なりに世界を思いやる友達(綺羅)と合流したりもします。

一応補足すると「本当にどうしようもない人」が主人公にならなくなった理由は『バイオレンス・クリスマス』だけというわけでもなくて、僕自身が学生時代は自分のことを本当にどうしようもない側だと思っていたけど社会に出て働いてみたらけっこう仕事楽しいし別にそんなことはないとわかったからというのも確実にあります。

めちゃめちゃ自分語りしてしまった! 一次創作を絡めて自分語りするのって自分語り界でも相当恥ずかしい部類なので、最初にあんまちゃんとツイートせずに無意識にぼかした理由が今わかりました。

 

869.過去のツイートを拝見する限り、上野千鶴子やセジウィックの著書を読んでおられるようですが、どのような動機で手に取ったのでしょうか。

偏見かもしれませんが、二次元美少女好きの男性はフェミニズム系の話題を忌避しがちなイメージがあるため気になります。

そこまで深い関心や動機があったわけではなく、「現代社会においてフェミニズムは一つのキーワードだし、ネットを鵜呑みにして語るのも気乗りしないので、ちゃんとした学者の本を少しは読んでおくか」くらいのモチベーションです。あと個人的な関心を強いて言えば、「ホモソーシャル」が悪徳のバズワードになって男が集まっているだけで叩かれる風潮は男子校出身者として不本意だったので、元々のロジックを確認したかったというところはあります。

「二次元美少女好きの男性はフェミニズム系の話題を忌避しがち」というのはまあ仰る通り偏見寄りのイメージではあると思います。声のクソデカい反フェミニズム派のオタクが悪目立ちしているだけで、特に何も言ってないオタクがしれっと上野千鶴子とかセジウィックを読んでいる比率は一般人がそうしている比率とそう変わらないと僕は思っています(ソースなし)。

 

870.ゲーマゲの桜井さんって日系ですか?

欧米圏と日本のハーフかクォーターという説はあります。というのも元々桜井さんはジュリエットと同一人物という裏設定があって、ジュリエットがドイツ系の血を引いていた設定が引き継がれているためです。

ただ同一人物設定と国籍設定は両方ともオフィシャルに生きている設定ではないので確度は微妙なところです(最悪破棄してもいい設定)。

 

871.確定申告してて思ったんですけど、ヴァルタルさんから白花への報酬(報酬ではない)って源泉徴収とかされてるんですか?

全くされていません。その場で渡して完結する非課税のお小遣いです。

そもそも正式な契約を介さずに公務員が個人に金銭報酬を伴う業を行わせていることに加え、ブラウの個性で商売をすること自体も禁止されているため、これは作中世界でもかなりの違法行為です。

ただヴァルタルさんは杓子定規な規則より現場の事情を優先するタイプの公務員なので、お互いにウィンウィンなら別にいいだろうと思っているし、実際そうやって場を綺麗に収めることに長けているので周囲からもスルーされているだけです。

 

 

何か買ってもらえると嬉しいです。

www.amazon.jp