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24/4/12 お題箱回152:エイプリルフール同性婚、美少女キャラのリアル職業路線etc

お題箱回152

934.異性愛主義への反発からではなく、その百合カップリングを本気で推しているためそれに少しでも「嘘」属性が付いてしまうことが許せずに、美少女VTuber同士の婚約エイプリルフールネタにブチ切れる百合豚

存在しない大喜利への回答みたいになってますけど、いるかいないかではいるんですかね? ちなみにこれはエイプリルフールに限ったことでもありませんが、大抵の冗談には嘘ではあっても完全な荒唐無稽ではいけないというパラドックスめいた性質があります(さいきん髪が薄くなってきたオッサンが「朝起きたらハゲてたわ」と言うのは冗談として通るが、ロングヘアの女性が「朝起きたらハゲてたわ」と言うのは冗談というよりはシンプルに意味不明)。

 

935.エイプリルフールの同性婚ネタ問題についてご意見いただけますか?

最初に立場をはっきりさせておくと、僕はエイプリルフールの同性婚ネタについて「別にやってもよい派」です。

そもそもこの話で争点になっているのは「その行為を個人的にどう解釈するか、社会にどういう影響を及ぼすと想定するか」という二次的なコードとしての機能の話です。言い換えると、同性婚自体に生理的な嫌悪感を持っている凝り固まった保守派でもない限り、これは回転寿司店での醤油舐めのような直接的な行為の是非を巡る話ではないということでもあります。

基本そういう解釈はどうとでも言えるので各自で自分の世界観と経験を元手にして構築していくしかなくて、一方には「エイプリルフールで同性婚をジョークとして扱うことはいま真剣に議論されている同性婚の話を茶化している(茶化して良いという印象を社会に与える)」と感じて憤る人もいれば、もう一方には「他のジョークと同じように単なる属人的で局所的な冗談に過ぎず他の誰かを間接的に茶化すものではない(特に何の影響も社会に与えない)」として問題視しない人もいるというだけです。これは状況依存のグラデーションなので正解があるわけではありません。問題視する人の方が多いから言わない方がいいと思えば言わなければいいし、問題視する人が少ないから言ってもいいと思えば言えばいいです。

今回に関して大雑把に言えば、ざっくり同性婚があまりにも有り得なさすぎる人かあまりにも当たり前すぎる人は問題視せず、その中間で同性婚は微妙なフェイズだという認識の人が問題視する傾向があるように思います。

特にSNSを見ていると、「エイプリルフールに異性婚をジョークにすること」との比較が一つの試金石になっているような気がします。同性婚が異性婚とは全く異なる完全なフィクションだと思っている派閥にとっては100%ジョークなので問題になりませんし、逆に同性婚を異性婚と全く同じように認識している人も「昔から社会的にありふれた婚姻関係がジョークに使われている」というだけなので問題にしません。「同性婚『だから』ジョークになっている」と感じるためには、同性婚もリアルな関係であるにも関わらず異性婚と異なる不当な扱いを受けているという認識の前提が必要です。

補足520:特にエイプリルフール同性婚反対派の人がした「エイプリルフールで同性婚ネタを楽しんでいる人はジョークに使われているのが異性婚でも同じように楽しむのか?(いやしない、茶化してよいのは同性婚だけだからだ)」というツイートが多く賛同されているのは僕にとっては意外でした。異性婚でも同じように楽しむんじゃね?

 

936.これはお題箱に対するメタみたいになってますが、LWさんに度々「お絵描きや音楽やりませんか?」というお題が来るのは、学習能力と言語化がずば抜けている人による習熟過程のレポートが期待されているのではないかと思います。
ただ裏返せば、絵も音楽も複数人からそれらが期待されるほどには理論化も言語化もガバいというか、これって職人集団のお役立ち知識の延長じゃない?みたいな部分が結構あります。特に音楽。この概念の判別って個々人のお気持ちレベルじゃんってのが初心者向けから平気な顔で出てきます。
ですから「マジで暇になったらやるかも」という回答は真っ当だと思います。1ファンの私としては、LWさんに宝くじが当たるのを祈っています。

ありがとうございます、確かにそんな気はしますね。就活もほとんど全ての人がやっているはずなのに一回適当にやっただけの知見を言語化したらめちゃめちゃ伸びたし、そういう需要があるのはわかります。

ただ消費コンテンツとかもそうですが、僕はそういう事柄については人に無償で頼まれても自分からやりたいと思わない限りは動かないタイプなのでまあという感じではあります。

 

937.カードゲーマーだった頃の男の半生も聞きたいです

それはあんまりないですね……

もともとバチバチにCS出まくる方ではなくて、カードゲーマーとしてもブログを書く方がメインでした。15年前くらい前までよく書いていた遊戯王のブログも消していないので読みたければ探してみてください。

ネットの知り合いは遊戯王で記事を書いているうちにけっこう増えたものの、本格的にリアルでの交友に繋がるようになってきたのはMtGのリミテッドをやり始めた頃からのような気がします(タルキール覇王譚以降なのでそれも10年前くらい)。

 

938.フィクションに励まされたり勇気もらったりした経験が全然思い当たらないんですけど、LWさんはそういうのありますか?

思い出せないだけかもしれませんが、あまり思い出せません。フィクションの範疇として好きだったり元気になれたりすることはけっこうありますが、リアルでの糧みたいな文脈で励まされたり勇気をもらったりみたいなことはあまり記憶にありません。

 

939.LWさーん。おすすめ映画教えてー!

加齢の影響でハードルが上がってきたのとナンバリング系は勧めにくいので3年前くらいに聞かれたときとあまり変わっていませんが、ファニーゲーム、トーキングヘッド、巨神兵東京に現る、悦楽共犯者、田園に死すあたりです。

 

940.人生(将来)の不確実性と向き合うこととその意義について、なにか思うことがあれば教えてほしいです。

大抵の人生はデフォで不確実でよくわからないので特に向き合うという感じでもなくて、望むと望まざるとに関わらずもうその渦中に飲み込まれてしまっています。ただ事前に正解がわからないとしても後から振り返ったら勝手に正解になっていることはよくあって、結局のところ「ゲームでも勉強でもナンパでもとにかく目の前にあることを真剣にやれ、何をしてもいいから手抜きや冷笑だけはするな、何でもやらないよりはやる方を選べ」みたいなよくある話に着地してきます。

そういう感覚になってきたのはそろそろ人生の収穫期に入ってきたという加齢の影響でもあります。ゲームとか受験とか昔は「これ意味あんのかな?」と内心では思いつつやっていたことが全部実ってきて「これ昔やってよかったな」ってなるフェイズがいずれ来ます。ただそのタイムラグが平気で15年とか20年あるのが人生の度し難さでもあって、またジジイみたいなことを言ってしまった……

 

941.NIKKEのキャラデザ評価回(2023/04/08)やブルアカのヘイローについての言及(2023/09/05)を読んだのですが、他ゲームやアニメなどで「これよく思いついたな〜」と思う美少女キャラがいれば教えていただきたいです。ビジュアル以外の文脈も大歓迎です。(例えば、性格設定がすごい、ヒロインとしてすごい、二次創作適性がすごい、属性の成長余地がすごい、など)

まだ書いてなくてパッと思い付くところだと、原神の胡桃(フータオ)と崩壊スターレイルのトパーズはかなりの傑作キャラクターだと思います。

胡桃(フータオ)

トパーズ

すごいポイントは職業設定で、フータオが「葬儀屋」、トパーズが「戦略投資家」です。PVがわかりやすいので今ここで見てください(どちらも2分弱)。

www.youtube.com

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もともと大陸系ソシャゲは学園や戦闘組織の内部役職に留まらない一般的な職業を担っている美少女キャラが登場しやすい傾向がありますが、その中でも特に完成度が高いのがこの二人です。最大のポイントは、彼女らの職業人としての描かれ方に社会的なアクチュアリティが強く伴っていることです。

ゲームキャラに職業を紐づけること自体はソシャゲが生まれる遥か以前から行われてきたことですが、どちらかというと能力を示すための属性的な設定として扱われることの方が多かったように思います。

例えば、もっと月並みなソシャゲならフータオは「ネクロマンサー」、トパーズは「行商人」だったはずです。そして彼女らはそういうジョブに由来する能力を持っているところに設定の力点がある、つまりネクロマンサーのフータオは蘇生スキルを、行商人のトパーズはドロップ増加スキルを持っていたはずです。それは社会的な職業というよりはゲームシステムとしてのジョブの描き方で、リアルには存在しないファンタジージョブの方が収まりがよいのはそのためでもあります。

しかし翻って、実際には彼女らは「葬儀屋」と「戦略投資家」という実在するシリアスな職業を与えられています。リアルな職業は彼女らのキャラクターに対してゲーム的なスキルというよりは業務内容や職務規範に由来する人格を与え、それはPV内でも一貫して強調されています。更に言うと、原神や崩壊スターレイルは最初から葬式や投資をテーマにした作品では全くなく、あくまでも作品内に存在しうる職能の一つとしてそうした社会活動が営まれているにすぎません。職業人としてのキャラクターたちが世界の社会システムや経済システムを描く窓口になることで、実際に彼女たちのような社会人によって構成されている世界を細部まで描くことにも繋がります。

フータオもトパーズも美少女キャラクターであるにも関わらずそういう「ゲーム的なジョブ属性」とは似て否なる「リアルな社会的職業」を有しているのが衝撃的で、一定掘り尽くされたと思っていた美少女キャラクターのキャラ設定にまだそんな描き方が残っていることに感心しました。「ネクロマンサー」や「行商人」のようにリアルで遭遇しないファンタジージョブでもなく、かといって「音楽家」や「漫画家」のように最初からフィクションと親和性の高いクリエイティブ系の職能ではなく、「教授」や「医者」のようにテンプレートな類型が確立している仕事でもなく、リアルな社会をきちんと支えているが属性としてあまり扱われてこなかったシリアスな職業としての「葬儀屋」と「戦略投資家」です。

僕も最近チャリを漕いでるときとかにフータオとかトパーズみたいなリアル路線の職業人キャラをよく考えていて、例えば「気象予報士」あたりはどうでしょうか。

ファンタジーの発想だとついついワンピースのナミみたいに「天気を操る能力」を与えたくなってしまいますが、フータオとトパーズの秀逸なリアリティを踏まえるならばそれは良くない方向性でしょう。何故なら気象予報士のリアルな職能と責任は「天気の予想を的中させること」にあるはずで、自ら天気を制御できるのであればむしろ的中の意義は小さくなってしまうからです。あくまでも天気そのものはアンコントローラブルという前提の下、それを言い当てることに社会的な意義があり、かつ、キャラクター自身もそれに価値や誇りを見出して内面化しているような造形が必要です。

【ギリ原神にいそうな気象予報士キャラ(仮)】

概要:天候変化が極めて激しい地域で唯一の気象予報士を営む24歳女性。

背景:その地域では昔から嵐による出漁中の溺死や日照りによる不作での餓死が絶えなかったが、彼女が気象予報士に就任してからは死亡率が大きく低下した。一度も外すことなく天候を当てて的確な対策を立て続けることで町の人々からの信頼を得て、今では信仰に近い慕われ方をしている。

性格:自らの判断が大勢の生死を分けるという責任感を強く持ち、特に空模様には常に気を配っている(フィールドの立ちモーションで首が少しだけ上向きになっている)。いつも自信ありげな断言調で喋るが、それは予報を信じてもらうための見せかけが身体に沁みついたもの。実際にはいつか予報を外すことを心から恐れて毎晩のように悪夢を見ている。自分と同じように大勢の命を救う医者や薬師には敬意を払って交流する一方、他人の運命を無責任に語る占い師を嫌っている。

戦闘:天気を操るかのように空気中の光や水を操作して攻撃するが、それは彼女にしかわからない難解な気象条件をクリアしたときに限ってごく局所的な天候操作もどきを行えるだけ。予報を根底から覆して大勢を死の運命から救うほどの力はないという限界を示すものでもあり(そういう悲しい過去エピソードがある)、内心では常に歯痒さを抱いている。

 

 

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