レビュー続き、前回まではコチラ
読んだ女性主人公ラノベリスト(再掲)
- 評価
俺が好きだったか否かの主観評価。5だからといって作品として優れているとは限らないし、他人にオススメできるわけではない。5:心に残る
4:読んで良かった
3:読んでも良かった
2:読まなくても良かった
1:こんなん売らないでほしい - 百合:百合要素があれば+、無ければ-。
- ヘテロ:ヘテロ要素があれば+、無ければ-。
No. | 書名 | 著者 | 出版社 | 発行月 | 評価 | 百合 | ヘテロ |
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1 | 氷の国のアマリリス | 松山剛 | KADOKAWA | 2013/04 | 2 | - | + |
2 | あまがみエメンタール | 瑞智士記 | 一迅社 | 2009/03 | 4 | + | - |
3 | あかね色シンフォニア | 瑞智士記 | 一迅社 | 2009/11 | 2 | + | - |
4 | みすてぃっく・あい | 一柳凪 | 小学館 | 2007/09 | 4 | + | - |
5 | 私たち殺し屋です、本当です、嘘じゃありません、信じてください。 | 兎月竜之介 | 集英社 | 2016/08 | 2 | + | - |
6 | 黒百合の園 : わたしたちの秘密 | 秋目人 | KADOKAWA | 2013/12 | 2 | - | - |
7 | 四人制姉妹百合物帳 | 石川博品 | 星海社 | 2014/12 | 4 | + | - |
8 | おとめ桜の伝説 : 小峰シロの物ノ怪事件簿 | くしまちみなと | 一二三書房 | 2012/12 | 2 | - | - |
9 | 結成!聖(セント)☆アリア電脳活劇部 | 御門智 | 一迅社 | 2011/11 | 4 | + | - |
10 | サムライエイジ | みかづき紅月 | 徳間書店 | 2008/06 | 5 | + | + |
11 | サムライエイジ : 乙女たちの初陣っ! | みかづき紅月 | 徳間書店 | 2008/10 | 5 | + | + |
12 | サムライエイジ : 恋せよ戦乙女たちっ! | みかづき紅月 | 徳間書店 | 2009/06 | 5 | + | + |
13 | 特別時限少女マミミ | 斧名田マニマニ | 集英社 | 2014/04 | 4 | + | - |
14 | 声優ユニットはじめました。 | 藤原たすく | 小学館 | 2014/01 | 1 | + | - |
15 | マイノリティ・コア 絶対無敵の女剣士と甘えたがりの機織り娘 | みなみケント 泉彩 | ポニーキャニオン | 2014/07 | 1 | + | - |
16 | 乙女革命アヤメの! | 志茂文彦 | メディアファクトリー | 2008/11 | 2 | + | - |
17 | マジカル†デスゲーム1 少女は魔法で嘘をつく | うれま庄司 | KADOKAWA | 2014/03 | 3 | + | - |
18 | マジカル†デスゲーム2 反証のアーギュメント | うれま庄司 | KADOKAWA | 2014/05 | 2 | + | - |
19 | 誰よりも優しいあなたのために | あきさかあさひ | 一迅社 | 2012/02 | 2 | + | - |
20 | .(period) | 瑠璃歩月 | 一迅社 | 2008/08 | 3 | + | - |
21 | 東京地下廻路(アンダーサーキット) | 小林雄次 | オーバーラップ | 2014/09 | 2 | + | + |
22 | 乙女は花に恋をする : 私立カトレア学園 | 沢城利穂 | 一迅社 | 2009/05 | 2 | + | - |
23 | スーパーヒロイン学園 | 仰木日向 | ポニーキャニオン | 2014/12 | 3 | + | - |
24 | いらん子クエスト 少女たちの異世界デスゲーム | 兎月竜之介 | 集英社 | 2015/07 | 3 | - | - |
25 | ウィッチマズルカ (1).魔法、使えますか? | 水口敬文 | 角川書店 | 2006/07 | 3 | + | - |
26 | ウィッチマズルカ (2). つながる思い | 水口敬文 | 角川書店 | 2006/11 | 3 | + | - |
27 | えびてん : 綺譚奇譚 | SCA自 | 角川書店 | 2012/10 | 3 | + | - |
28 | 桜色の春をこえて | 直井章 | アスキー・メディアワークス | 2011/11 | 3 | + | - |
29 | 彼女は眼鏡holic | 上栖綴人 | ホビージャパン | 2008/07 | 3 | + | - |
30 | 不完全ナックル | 十階堂一系 | KADOKAWA | 2012/08 | 3 | - | - |
31 | 不完全ナックル2 | 十階堂一系 | KADOKAWA | 2012/11 | 3 | - | - |
32 | 虹色エイリアン | 入間人間 | KADOKAWA | 2014/11 | 4 | - | - |
33 | 世界の終わり、素晴らしき日々より | 一二三スイ | KADOKAWA | 2012/09 | 5 | + | - |
34 | 世界の終わり、素晴らしき日々より2 | 一二三スイ | KADOKAWA | 2013/01 | 2 | + | + |
35 | 世界の終わり、素晴らしき日々より3 | 一二三スイ | KADOKAWA | 2013/06 | 3 | + | + |
36 | 超次元ゲイム ネプテューヌ おぶ・ざ・ないとめあ? | 八木れんたろー | KADOKAWA | 2013/08 | 1 | - | - |
37 | ヒマツリ : ガール・ミーツ・火猿 | 春日部タケル | 角川書店 | 2010/12 | 2 | - | + |
38 | ヒマツリ アイスドール・ウォーズ | 春日部タケル | 角川書店 | 2011/04 | 2 | - | + |
39 | サイハテの聖衣 | 三雲岳斗 | KADOKAWA | 2011/12 | 3 | - | - |
40 | サイハテの聖衣2 | 三雲岳斗 | KADOKAWA | 2012/12 | 3 | - | - |
41 | 魔よりも黒くワガママに魔法少女は夢をみる | 根木健太 | エンターブレイン | 2011/03 | 2 | + | - |
42 | 魔よりも黒くワガママに魔法少女は夢をみる2 | 根木健太 | KADOKAWA | 2011/09 | 2 | + | - |
43 | ワイルドブーケ : 花の咲かないこの世界で | 駒尾真子 | 一迅社 | 2008/08 | 3 | + | - |
44 | ワイルドブーケ : 想いを綴る花の名は | 駒尾真子 | 一迅社 | 2009/01 | 3 | + | - |
45 | 超次元ゲイムネプテューヌ : TGS炎の二日間 | 八木れんたろー | メディアファクトリー | 2013/05 | 1 | - | - |
46 | 塔の町、あたしたちの街 | 扇智史 | エンターブレイン | 2007/04 | 5 | + | - |
47 | 塔の町、あたしたちの街2 | 扇智史 | エンターブレイン | 2008/05 | 5 | + | - |
48 | あるゾンビ少女の災難 I | 池端亮 | 角川書店 | 2012/07 | 4 | + | - |
49 | あるゾンビ少女の災難 II | 池端亮 | 角川書店 | 2012/07 | 4 | + | - |
50 | 雨の日のアイリス | 松山剛 | KADOKAWA | 2011/05 | 4 | - | - |
51 | ぴぴっと!! | 和智正喜 | メディアファクトリー | 2007/06 | 3 | + | - |
52 | しずるさんと偏屈な死者たち | 上遠野浩平 | 星海社 | 2013/07 | 3 | + | - |
53 | しずるさんと底無し密室たち | 上遠野浩平 | 星海社 | 2013/09 | 3 | + | - |
54 | ブギーポップは笑わない | 上遠野浩平 | KADOKAWA | 1998/02 | 4 | - | - |
55 | 原点回帰ウォーカーズ | 森田季節 | メディアファクトリー | 2009/01 | 3 | - | - |
56 | 原点回帰ウォーカーズ2 | 森田季節 | メディアファクトリー | 2009/05 | 4 | + | - |
57 | ノートより安い恋 = The love that is cheaper than a notebook | 森田季節 | 一迅社 | 2012/04 | 3 | + | - |
58 | あまいゆびさき | 宮木 あや子 | 一迅社 | 2013/04 | 3 | + | - |
59 | 空に欠けた旋律(メロディ) 1 | 葉月双 | ソフトバンククリエイティブ | 2012/08 | 4 | + | - |
60 | 空に欠けた旋律(メロディ) 2 | 葉月双 | ソフトバンククリエイティブ | 2012/12 | 4 | + | - |
61 | 空に欠けた旋律(メロディ) 3 | 葉月双 | ソフトバンク クリエイティブ | 2013/08 | 4 | + | - |
62 | ストロベリー・パニック!〈1〉 | 公野櫻子 | メディアワークス : 角川書店 | 2006/03 | 3 | + | - |
63 | ストロベリー・パニック!〈2〉 | 公野櫻子 | メディアワークス : 角川書店 | 2006/08 | 3 | + | - |
64 | ストロベリー・パニック!〈3〉 | 公野櫻子 | メディアワークス : 角川書店 | 2006/12 | 3 | + | - |
65 | 鹿乃江さんの左手 | 青谷真未 | ポプラ社 | 2015/01 | 3 | + | - |
66 | OBSTACLEシリーズ 激突のヘクセンナハトI | 川上稔 | KADOKAWA | 2015/08 | 2 | - | - |
67 | よくわかる現代魔法 | 桜坂洋 | 集英社 | 2003/12 | 3 | - | + |
68 | よくわかる現代魔法 : ガーベージコレクター | 桜坂洋 | 集英社 | 2004/05 | 3 | - | + |
69 | よくわかる現代魔法 : ゴーストスクリプト・フォー・ウィザーズ | 桜坂洋 | 集英社 | 2004/09 | 3 | - | + |
70 | よくわかる現代魔法 : Jini使い | 桜坂洋 | 集英社 | 2005/01 | 3 | - | + |
71 | よくわかる現代魔法 : たったひとつじゃない冴えたやりかた | 桜坂洋 | 集英社 | 2005/05 | 3 | - | + |
72 | よくわかる現代魔法 : Firefox! | 桜坂洋 | 集英社 | 2009/03 | 3 | - | + |
73 | 魔法少女育成計画 | 遠藤浅蜊 | 宝島社 | 2012/06 | 5 | - | - |
74 | 魔法少女育成計画restart | 遠藤浅蜊 | 宝島社 | 2012/11 | 5 | - | - |
75 | 魔法少女育成計画restart | 遠藤浅蜊 | 宝島社 | 2012/12 | 5 | - | - |
76 | 魔法少女育成計画episodes | 遠藤浅蜊 | 宝島社 | 2013/04 | 4 | - | - |
77 | 魔法少女育成計画limited | 遠藤浅蜊 | 宝島社 | 2013/11 | 4 | - | - |
78 | 魔法少女育成計画limited | 遠藤浅蜊 | 宝島社 | 2013/12 | 4 | - | - |
79 | 魔法少女育成計画JOKERS | 遠藤浅蜊 | 宝島社 | 2014/08 | 2 | - | - |
80 | 魔法少女育成計画ACES | 遠藤浅蜊 | 宝島社 | 2015/09 | 2 | - | - |
81 | 魔法少女育成計画episodesΦ | 遠藤浅蜊 | 宝島社 | 2016/04 | 3 | - | - |
82 | 魔法少女育成計画16人の日常 | 遠藤浅蜊 | 宝島社 | 2016/10 | 4 | - | - |
83 | 魔法少女育成計画QUEENS | 遠藤浅蜊 | 宝島社 | 2016/12 | 2 | - | - |
84 | 先輩と私 | 森奈津子 | 徳間書店 | 2011/05 | 4 | + | - |
女性主人公ラノベレビュー【4/4】
マイナー古ラノベはどうせ誰も読んでおらずただ感想を書いても共有できない可能性が高いため、皆が手に取りやすいようにあらすじを引用している。
ネタバレ配慮は特にしていないので気になるものは先に読んでほしい。俺も読んだんだからさ……
昔けっこうあった不条理系ラノベ
おかしな人間ばかりが通う私立御伽坂学園には、当然のようにおかしな事件ばかりが起こる。そんな学園の平和を守るため、日々戦い続ける男・それが山崎章夫だ。ある時は失踪した天才音楽家の行方を追い、ある時は密室殺人の謎に挑み、またある時は突然美女と化した同級生の秘密に迫り、そしてことごとく“命を落とす”。そう、これらはすべて『彼ら』の陰謀なのだ! 章夫の幼なじみであるアキラは、なんとか章夫の“結末”を変えるべく、学園の三奇人と共に『彼ら』に立ち向かうのだが――。ツッコんだら負けの、<運命ねじ曲げ系>奇天烈学園ファンタジー!!
【評価: 3】【百合: -】【ヘテロ: -】
割とよく女性主人公を書いている森田季節の最初期の作品。
最近では異世界転生量産マシーンという印象もあるが、15年前くらいは京大文学系出身らしく尖った作品をよく書いていた。これも深崎暮人の可愛いキャラデザの割には不条理系のライトノベルで、フィクションに囚われた世界で勃発する荒唐無稽なイベントを更に上を行く荒唐無稽なキャラで押し切っていく。昔は萌えの立て付けを逆手に取った不条理系ライトノベルというジャンルが存在していたが(『消えちゃえばいいのに』『インテリぶる推理少女とハメたいせんせい』等)、今も残っているのだろうか?
二巻はけっこう百合要素があって当時のスレで盛り上がっていた記憶がある。主人公が惚れ薬でモテモテになってしまう騒動回で傍若無人の美少女上司にだけは効かなかった(元々好感度が高い人間には惚れ薬が効かない)というTwitterで無限に見るアレがあったため。
一迅社変革期の先鋒
コミック百合姫発・ノベルシリーズ第一弾 わかってる。 この道をどれだけ行ったとしても その先に、あなたはいないんだ。 森田季節が描く、少女たちの様々な思い。 恋かもしれない、何か。 苦くて切ない、冷たくてあたたかい彼女と彼女の関係、 覗いてみませんか? 百合姫掲載4 編に加え、書き下ろし多数で刊行。
【評価: 3】【百合: +】【ヘテロ: -】
こちらも森田季節だが、一迅社らしくもっとゴリゴリの百合もの。
2012年頃はゆるゆりの大ヒットを受けて一迅社の百合系コンテンツ(特に百合姫)が男性をキャッチする方向へと舵を切りつつあった時期で、この小説も古くから女性向けでポジショニングしてきた一迅社アイリス文庫ではなくコミック百合姫の系譜として新たに創設されたレーベルに属している。
それを受けてかどうか、サクッと楽しめるエモい話を集めたエモ短編集で、概ね男性でも楽しめそうなTwitterっぽい現代的な立て付けだ。特に共通したテーマは設けられていないが強いて言えば自他の区分みたいなところがテーマになっている話が多い。俺は女子大生が女子小学生にちょっかい出す話が好きだった。
こっちはレズビアン小説の系譜
幼い少女ふたりの邂逅。過酷な生き方を余儀なくされた思春期少女たちは、もがきながら互いを希求し続け…。切ない欲望が交差する、ふたりのビルディングスロマン。百合長編小説。
【評価: 3】【百合: +】【ヘテロ: -】
こちらも元は百合姫絡みで出ていたやつだが、後々ハヤカワからも出た(俺が積んでいたのは百合姫版だが何故かリンクが張れない)。
「百合長編小説」と自称しているが、こちらは百合小説や少女小説というよりはレズビアン小説の系譜であるように感じる。家庭環境がめちゃめちゃ悪い被虐待児の少女二人が色々な諸々を乗り越えてなんやかんやでくっつく話で、治安の悪い世界で虐げられるポジションからの立ち上がりという基本線が通底している。最終的に渡米してLGBTコミュニティに属していくあたりにも現実的なマイノリティの生存戦略にかかる視点がある。
個人的には現実のマイノリティに係る苦難にはそれほど関心がないので萌えファンタジーの方が嬉しくはある。
ヤンデレ大戦争
「魔女さんのことが、好きです」 百年以上前から泥沼の戦争が続く世界。レイは単騎で敵を撃墜し続ける銀色の魔女、クッキィに恋をした。彼女への憧れから士官学校を卒業後、パイロットとしてクッキィのいる基地へとやってきたレイ。配属早々の戦闘のさなか、敵軍のエースに撃墜されたクッキィを救うため、レイは戦線を離脱する。ところが戦域から離れた場所で、死を望んでいるかのようなクッキィの言動に、思わず告白してしまう。そんなレイに、クッキィは銃口を向け、甘くささやく。 「世界を変えてみない?」 絶望的な世界のなかで、疾走する空戦と恋の旋律。GA文庫大賞《奨励賞》受賞作。
【評価: 4】【百合: +】【ヘテロ: -】
これかなり好きです。名作。
あらすじだけだと百合要素は特に感じられないが、実は主人公のレイが女性。「女性ヒロインと恋愛する、一人称が『僕』の主人公」が僕っ娘の女性主人公であることがかなり遅れて発覚する謎の叙述トリックは、「女性主人公と百合は売れないからあらすじで露見しないように隠されるのだ」という当時の陰謀論を補強することになった。
シリアスな戦時下で繰り広げられる軍事系戦闘美少女ものだが、主人公を筆頭にLOVE最優先の重度ヤンデレキャラが多く、戦闘や行動にかかる判断がいちいちナチュラルにバグっているのがかなり独特で魅力的。その前提として、ラノベ的な温い恋愛描写では必須の「主人公とヒロインの距離を縮めるパート」が全てショートカットされているのが面白い。冒頭の主人公からヒロインへの告白が普通に通って普通に付き合い始め、既に恋人同士という前提の下で重すぎる愛の交錯がスタートする。
甘いラブコメパートが存在しない代わりに重いヤンデレパートが恋愛要素のほぼ全てを占めており、泥沼の戦争状態の中で「死んだり殺したりするのは構わないが、LOVEだけは絶対に裏切ってはいけない」という激重価値観が蔓延している。主人公はヒロインに少しでも危害が及びそうだと見るや即決で味方上官を殺害するし、ヒロインもフレンドリーファイアを一切躊躇しない。主人公がヒロインをガチで殺そうとすることも割と多く(LOVEは命より重いため)、幼馴染のサブヒロインや敵国の軍人も揃って戦争状況より自分のLOVEやPROMISEを優先して戦う謎の誠実さを持っている。
強いて言えば戦闘描写がよくわからないことや台詞回しが粋すぎて若干寒いという欠点は無くもないが、恋愛脳を極めすぎたヤンデレ大戦争にはそのくらいがちょうどいいのかもしれない。
レジェンド百合コンテンツ正典
乙女の聖域に秘められた恋…。『シスター・プリンセス』の公野櫻子氏が、正統派百合ノベルを華麗に書き下ろし。舞台は、名門お嬢様学校が3校建ち並ぶ、緑豊かなアストラエアの丘。ごく普通の15歳の少女・蒼井渚砂は、3校の中で最も伝統ある聖ミアトル女学園に編入し、3校の寄宿舎・いちご舎へと入寮する。桜の花びらが舞い散る、登校初日。渚砂は最上級生の花園静馬と出会い、その麗しさに息を呑む。“エトワール”の弥号を持つ静馬は、全校生徒から憧憬の視線を浴びている至高の存在。そんな静馬に気に入られた渚砂は、恋と波乱の女子校ライフを送ることに…。
【評価: 3】【百合: +】【ヘテロ: -】
昔読んだしアニメも全話見たが、まとめて積まれていたのでついでに再読。
百合がスーパーライト化した現代から見ると相対的にコアなユーザー向けの正統派百合コンテンツにも感じるが、当時は比較対象が『マリみて』だったためかなりライトユーザー向けの百合作品というポジションだった。今振り返ると電撃G's系コンテンツはレジェンド公野櫻子が牽引しながら「シスプリ→ストパニ→ラブライブ」という流れを辿ってきていて(マリロワってあんまり流行らなかったね)、ラブライブが男性主人公をオミットしたところには百合要素の明確な貢献があった。
正伝系に属するライトノベル版はエトワール選を進めるという体裁でスタートするが、途中から主人公ペアを含めた参加者が勝手にドロップしたりして開催自体が危ぶまれていくという流れは邪道じみている。最終的にはスピカ組くらいしか残らなかったので消化試合になってしまい、試合内容が碌に描かれないのはかなり面白かった。
カップリング的には一番人気(諸説あり)(俺も一番好き)の光莉&天音ペアがめちゃめちゃ優遇されており、ライバルの妨害が入りつつも最終的に光莉と天音がくっついて良かったねという話に収束していく。逆に主人公ペアは取って付けたような退学騒動とか過去話に振り回された挙句にドロップしていてあまりぱっとせず、面白かったところは最強お姉さまであるはずの静馬が妙にキャピキャピしていてモノローグでいちいちハートマークを飛ばしたりするお茶目さを見せることくらいだ。
ゆる日常ミステリ
ある女子校で起こる“不思議で残酷な出来事"を描く3つの連作短編集。「この学校には魔女が棲んでいて、どんな願いごとも一つだけ叶えてくれる」という噂。絵空事と思っていた生徒の前に、ある日魔女を名乗る女性が現れて……(「からくさ萌ゆる」)。
【評価: 3】【百合: +】【ヘテロ: -】
なかなか面白かった。ポプラ文庫はさすがにラノベではないと思うが、たぶん当時のスレの流れでギリギリでラノベ判定を食らって積まれていたのだろう。一般寄りのちゃんとした小説としてのクオリティが高い。
「魔女が出てきて少し不思議なイベントが起きるが最終的に合理的な説明が付いてしまって魔女は何だったのかはよくわからない」というギミックの構築はかなり巧みだ。一見すると不明瞭な幻想にきっちり理由を付けていく手振りはミステリに近い趣きもあり、その中で少女同士がワチャっとしたりしなかったりする百合要素もゴリゴリにある。個人的には謎の肉弾戦が発生するところが好きだった(男の子なので)。
俺が知らない文法で書いてある
ここは【黒の魔女】に支配されている地球。かつてこの世界を滅ぼそうとする魔女を、人類は月に封印することに成功したが、その力は今もなおこの世界に傷跡を残していた。 十年一度のヘクセンナハトの夜、月に封印された魔女を裁くのは一体誰なのか。少女達はその座を争い、ハートを燃料に高速で激突。砲弾が大地を割る。世界を救うために!! 「月刊コミック電撃大王」連載中のコミックを原作者自ら長編小説化! 『境界線上のホライゾン』川上稔が贈る、新たなる魔法少女の物語!!
【評価: 2】【百合: -】【ヘテロ: -】
唯一明確に合わなかったラノベ。クオリティの問題ではなく、文章の癖が強すぎて全然読めなかった。特に説明されない固有名詞や固有動詞が無限に出てきて、何のために何が起きているのかわからないバトルが一生展開され続けていて何が何だったのか最初から最後まで全然わからない。普段俺が読んでいる文章と違う文法で書かれている。
今あらすじを見て初めて知ったが、元はコミックらしいので細かいところはコミックで補完する前提なのかもしれない。確かにずっと戦闘描写が続いている様子はコミック映えしそうではある。
最強美少女主人公の造形は明確によくて、何でもできる割に常に上から目線な口調はかなり良かった。
All You Need Is Killはわしが育てた
自分を変えたい! ドジでお子さま体型のこよみは、現代に生き残る魔法使い美鎖(みさ)からPCを使った魔法を学ぶことに。でも、こよみの魔法は変に発動してしまい…異世界の魔物(デーモン)まであらわれた!? その頃、ネットワーク型大規模魔術により各地で異変がおき始める。天才魔法少女・弓子や理系委員長の嘉穂(かほ)も巻き込んで、こよみの大活躍がはじまる!
【評価: 3】【百合: -】【ヘテロ: +】
最近すっかりちゃんとした小説家になってしまった桜坂洋の出世作。
全五巻で一旦完結したもののアニメ化したあたりで新装版や第六巻が出てコンテンツが続きそうな気配を出していたが、同作者の『All You Need Is Kill』が世界中で大ヒットしたことによって日本でちょっとアニメ化した程度のライトノベルにかかずらっている場合ではなくなり続編は絶望的になった。
当時は若干ハマった記憶があるのだが、今読むと思ったより地味でパッとしないという感想は否めない。主人公の造形がかなり萌え萌えしている割には本当に話を動かす中核にいるのはプログラマーのオッサンたちばかりで、唯一プログラミングを扱える萌えキャラである「美鎖」に物語上の負荷のほとんどが集中している。主人公のような純萌えキャラたちがおっさんたちと正面から敵対するシーンもそれほど多くなく、萌え文脈と硬派SF文脈が断絶していて今読むと本当はもっとちゃんとした小説を書きたかったんだろうなと邪推してしまう。
変則能力バトルものとして見ようとしても、完全無効化系能力者が味方陣営に二人もいるために直接的な戦闘の次元ではほとんどバトルが成立しなくなっている(こよみと聡史郎)。一応はクライマックスでは主人公のこよみを活躍させたい事情もあり、バトル的にはこの二人で全て収拾できる話が多い。
当時割とハマっていたためまとめて積まれていた関連書籍も再読したが、アニメファンブックである『よくわかる現代魔法が256倍よくわかる本』が必読。原作を読むなら絶対に目を通した方がいい。
結局のところ、このラノベの白眉は「プログラミング」と「魔法」を発動領域がシリコンか肉体かが異なるだけの同じ理論体系であると見做すアナロジーにあるのだが、実際に「コード」と「詠唱呪文」がどのように対応しているのかはこのファンブックにしか解説がない。例えば「『めぐれめぐれ、ゆらぎの数無くなるときまで』という詠唱が疑似コードにおいてはDO WHILE文に対応している」というような最重要情報が具体的に紹介されている。
正直に言えば、萌えコンテンツとしては原作イラストレーターで漫画家でもある宮下未紀本人による漫画版が「顧客が本当に求めていたもの」だったような気がする。
プログラマーのおっさんたちが策略を巡らせるパートを全てオミットして美少女キャラ同士がワチャワチャするコメディにする潔さ。宮下未紀はかなり古参の百合漫画家ということもあって基本的に萌え漫画が上手く、原作では仲良し程度だったこよみと弓子が明確にカップリング扱いになっているあたり、桜坂洋はあまり関心がなかったであろう萌えのツボがきっちり押さえられている。
補足445:宮下未紀はかなり昔から男性向けの絵柄で女性主人公や百合をやっていた非常に貴重な漫画家の一人で、無期休載されている『ピクシーゲイル』が一部で伝説になっているように男性向け百合界隈では確固たる立ち位置を確立していた(諸説あり)。俺も昔からファンで、『よくわかる現代魔法』が流行った頃に便乗して昔成年漫画家だった頃の古いエロ漫画『キスきゅー』『シトロン・ヴェール』に表紙描き下ろし新装版が出たのが激熱だった話とか色々な思い出がある。
群像劇能力バトルデスゲームの完成形……だった
大人気ソーシャルゲーム『魔法少女育成計画』は、数万人に一人の割合で本物の魔法少女を作り出す奇跡のゲームだった。幸運にも魔法の力を得て、充実した日々を送る少女たち。しかしある日、運営から「増えすぎた魔法少女を半分に減らす」という一方的な通告が届き、16人の魔法少女による苛烈で無慈悲なサバイバルレースが幕を開けた……。
【評価: 5】【百合: -】【ヘテロ: -】
limited編まで読んで止まっていたので全部読み直した。
エンタメとしては今回読んだ83冊の中で断トツで面白かった。だいぶ前にアニメ化してから続刊がしばらく止まっていた時期があったが、最近またリブートして続編のアニメ化も決まったらしく楽しみにしている。
というわけで朗読劇の最終公演終了後、ついに発表されました『プロジェクトrestart』!
— 月刊魔法少女育成計画 (@monthlyMGRP) 2023年1月29日
新規映像化を含めた様々な企画が進行中です!
まだ詳細を具体的にお伝えできないのですが、発表できるようになりましたら随時お知らせしていきますので、乞うご期待! です!
どうぞよろしくお願いします!!!
一作目(無印)の完成度が傑出しており、群像劇能力バトルデスゲーム作品の完成形の一つと言ってもいい。
やはり「魔法少女を半分に減らすポン」という立て付けがよく出来ている。一人生き残り型のデスゲームではないので徒党を組む協調インセンティブがあるが、一人蹴落とし型のデスゲームではないので殺せそうなところから殺していく対立インセンティブもあり、これによって色々なキャラが相互の信条に応じて交渉や闘争を行うようになる。
そうやって十六人もの魔法少女が参加するデスゲームでありながら、各キャラが非常によく立っていて性格や関係のバリエーションが豊富。同じバトルマニア系の魔法少女でも正々堂々いくか不意打ちを許容するか、利己主義の魔法少女でも常に貫徹できるかいざとなると怖気づいてしまうか等の違いがきちんと解像度高く設定されている。
こうしたデスゲーム参加キャラのバリエーションを担保している要石は、「どんな人間でも魔法少女になれる(魔法少女は変身前の外見や年齢や性別を全く保持しない)」という魔法少女の変身ギミックを逆手に取った設定だ。この設定によって、変身後はおしなべて美しい魔法少女だとしても、変身前は男子高校生や女子小学生など色々な人間像を扱えるようになる。例えば一般人を虐殺する最もヤバい魔法少女「カラミティ・メアリ」の変身前は子供を虐待しているアル中主婦だが、この造形は単に女子高生の萌えキャラである限りは年齢的に不可能なものだ。
このおかげで「一人に一つ固有の魔法」というベタな能力バトル用の設定にもキャラがしっかり結び付いて立体的な味わいが出てくる。魔法少女のデスゲームでありながら本質的には様々な人生を背負った一般人が殺し合う二重性にこそ優れたフォーマット上の技巧があり、この工夫は商業的な都合でビジュアル的には女子高生前後の美少女をメインキャラクターにせざるを得ない萌えコンテンツの抜け道としても優れている。
また、スピーディーにデスゲームを進めるペース配分も凄い。具体的に言えば、そこまで厚くない280ページの文庫本一冊に16人が参加するバトルロイヤルが収まっている。単純に16で割っても一人あたり僅か18ページしかなく、この分量で世界観設定や物語進行まできちんとこなしているのがあまりにも不思議で一度分解して研究してみた(この研究成果は今は書かないが、いずれ自分の創作に活かされるかもしれない)。
俺が今まで読んだ中で最も優れているライトノベル魔法少女育成計画の構造研究を開始 pic.twitter.com/GQqxVlNUji
— LW (@lw_ru) 2023年1月14日
ただ、二作目のrestart編までは相変わらず面白いのだが、三作目のlimited編あたりからやや微妙になってきて、その続きのトランプ三部作はちょっと読めたものではなかった。面白くなくなった理由は全くはっきりしていて、戦いが「一般人のデスゲーム」から「職業軍人の戦争」にシフトしていったことだ。
limited編くらいからデスゲームのバックにいた巨大ファンタジー組織「魔法の国」が本格的に描かれ始め、それまで戦っていた「ある日いきなり魔法少女になってしまった一般人」に代わって「魔法の国から出向している役人」や「魔法の国に勤務する戦闘要員」が戦うようになってくる。
こうした役人や構成員は突然デスゲームに巻き込まれたのではなく、既に自分の意志で戦争に参加している職業軍人だ。この作品の武闘派キャラは総じて覚悟が完了しており、いちいち戦いに動揺したりせず政治的な立場で形式的に戦えてしまうのでドラマの盛り上がりが犠牲になる。彼女らは魔法少女への変身前後を問わず魔法組織にコミットする人生を送っているため、「変身前後のギャップ」という最も優れた設定も特に活かされない。
更には魔法能力が軽視されるようになり、代わりに各人が使い慣れた固有武装で物理的に殴り合うことが増えていく。初期は一般人たちが「一見微妙な能力は使い方で活かす」という典型的な能力バトルをやっていたのだが、後発の職業軍人たちは「微妙な能力を持っている場合は汎用性が高い武装と腕力による戦闘スキルで補う」という身も蓋もない判断をしてしまい、それによって生まれるバトルはあまり魅力的なものではない。
特にトランプ編から出てくるようになった「シャッフリン」という魔法少女が本当に良くない。この作品を終わらせた戦犯はシャッフリンだ。「キャラの画一化」「変身のオミット」「能力の軽視」というトランプ編の悪いところが全部詰まっている。トランプをモチーフにした「シャッフリン」は自己意志を持たないが無限増殖する能力を持つ無名の兵隊魔法少女であり、シャッフリン戦は常に質的な戦いではなく量的な戦いになるため交戦に伴うドラマが全く生まれない。いまやスタメン化したシャッフリンが敵味方問わず戦場の空白を埋める役割を担ってしまっているのは悪夢としか言いようがない。
初期は傑作中の傑作だったが、正直なところトランプ編で作品が進むべき方向をめちゃめちゃに間違えている気がしてならない。巨大な組織闘争を描くより、優れた立て付けが最も活かされる一般人のデスゲームにこだわるべきだったのでは?
男性向けお気楽レズビアン官能小説
T女子大学好色文学研究会の会員・光枝は、会長の阿真理先輩(ロリ巨乳系)に淡い恋心を抱いている。それを知ってか知らずか先輩はつれなくて、オナニーによる女性の真の自立と解放を叫ぶのみ。光枝は仕方なく、エッチな小説を書いて自らを慰める、しょんぼりな毎日。そこへライバルサークルの会長、華代の魔の手が。笑いとエロスが奇跡の融合を遂げた、著者の真骨頂。女だらけの官能小説。
【評価: 4】【百合: +】【ヘテロ: -】
純粋なレズビアンR18官能小説だが、表紙イラストが割とキャッチーということで百合ラノベ判定されていた。
しかし内容は表紙に合ったラノベ調のものでサクッと読めてかなり面白い。レズビアン官能小説というとねっとり重くなりがちな印象もあるが(偏見)、それに抗して森奈津子は男性が笑って読めるレズビアン小説を目指した旨があとがきで語られており、その目論見は完全に実現されていると思う。
ロリ巨乳で文学の才能があって堅い口調でオナニーに関して一家言あるという、いかにも男性向けに造形していそうな属性モリモリの「先輩」が普通にかなり萌えで良かった。先輩が一番好きなので個人的には金持ちのレズキャラをいじめるパートがちょっと長く感じたが、監禁凌辱とかやっている割には重くならないコメディタッチが巧み。