LWのサイゼリヤ

ミラノ風ドリア300円

23/1/9 重い腰を上げて10年前に積んだ女性主人公ラノベ83冊を崩した【2/4】

レビュー続き、前回はコチラ

saize-lw.hatenablog.com

読んだ女性主人公ラノベリスト(再掲)

  • 評価
    俺が好きだったか否かの主観評価。5だからといって作品として優れているとは限らないし、他人にオススメできるわけではない。
    5:心に残る
    4:読んで良かった
    3:読んでも良かった
    2:読まなくても良かった
    1:こんなん売らないでほしい
  • 百合:百合要素があれば+、無ければ-。
  • ヘテロヘテロ要素があれば+、無ければ-。
No. 書名 著者 出版社 発行月 評価 百合 ヘテロ
1 氷の国のアマリリス 松山剛  ADOKAWA 2013/04 2 - +
2 あまがみエメンタール 瑞智士記  一迅社 2009/03 4 + -
3 あかね色シンフォニア 瑞智士記  一迅社 2009/11 2 + -
4 みすてぃっく・あい 一柳凪  小学館 2007/09 4 + -
5 私たち殺し屋です、本当です、嘘じゃありません、信じてください。 兎月竜之介  集英社 2016/08 2 + -
6 黒百合の園 : わたしたちの秘密 秋目人  KADOKAWA 2013/12 2 - -
7 四人制姉妹百合物帳 石川博品  星海社 2014/12 4 + -
8 おとめ桜の伝説 : 小峰シロの物ノ怪事件簿 くしまちみなと  一二三書房 2012/12 2 - -
9 結成!聖(セント)☆アリア電脳活劇部 御門智  一迅社 2011/11 4 + -
10 サムライエイジ みかづき紅月  徳間書店 2008/06 5 + +
11 サムライエイジ : 乙女たちの初陣っ! みかづき紅月  徳間書店 2008/10 5 + +
12 サムライエイジ : 恋せよ戦乙女たちっ! みかづき紅月  徳間書店 2009/06 5 + +
13 特別時限少女マミミ 斧名田マニマニ  集英社 2014/04 4 + -
14 声優ユニットはじめました。 藤原たすく  小学館 2014/01 1 + -
15 マイノリティ・コア 絶対無敵の女剣士と甘えたがりの機織り娘 みなみケント 泉彩 ポニーキャニオン 2014/07 1 + -
16 乙女革命アヤメの! 志茂文彦  メディアファクトリー 2008/11 2 + -
17 マジカル†デスゲーム1 少女は魔法で嘘をつく うれま庄司  ADOKAWA 2014/03 3 + -
18 マジカル†デスゲーム2 反証のアーギュメント うれま庄司  ADOKAWA 2014/05 2 + -
19 誰よりも優しいあなたのために あきさかあさひ  一迅社 2012/02 2 + -
20 .(period) 瑠璃歩月  一迅社 2008/08 3 + -
21 東京地下廻路(アンダーサーキット) 小林雄次  オーバーラップ 2014/09 2 + +
22 乙女は花に恋をする : 私立カトレア学園 沢城利穂  一迅社 2009/05 2 + -
23 スーパーヒロイン学園 仰木日向  ポニーキャニオン 2014/12 3 + -
24 いらん子クエスト 少女たちの異世界デスゲーム 兎月竜之介  集英社 2015/07 3 - -
25 ウィッチマズルカ (1).魔法、使えますか? 水口敬文  角川書店 2006/07 3 + -
26 ウィッチマズルカ (2). つながる思い 水口敬文  角川書店 2006/11 3 + -
27 えびてん : 綺譚奇譚 SCA自  角川書店 2012/10 3 + -
28 桜色の春をこえて 直井章  アスキー・メディアワークス 2011/11 3 + -
29 彼女は眼鏡holic 上栖綴人  ホビージャパン 2008/07 3 + -
30 不完全ナックル 十階堂一系  ADOKAWA 2012/08 3 - -
31 不完全ナックル2 十階堂一系  ADOKAWA 2012/11 3 - -
32 虹色エイリアン 入間人間  ADOKAWA 2014/11 4 - -
33 世界の終わり、素晴らしき日々より 一二三スイ  ADOKAWA 2012/09 5 + -
34 世界の終わり、素晴らしき日々より2 一二三スイ  ADOKAWA 2013/01 2 + +
35 世界の終わり、素晴らしき日々より3 一二三スイ  ADOKAWA 2013/06 3 + +
36 超次元ゲイム ネプテューヌ おぶ・ざ・ないとめあ? 八木れんたろー  ADOKAWA 2013/08 1 - -
37 ヒマツリ : ガール・ミーツ・火猿 春日部タケル  角川書店 2010/12 2 - +
38 ヒマツリ アイスドール・ウォーズ 春日部タケル  角川書店 2011/04 2 - +
39 サイハテの聖衣 三雲岳斗  ADOKAWA 2011/12 3 - -
40 サイハテの聖衣2 三雲岳斗  ADOKAWA 2012/12 3 - -
41 魔よりも黒くワガママに魔法少女は夢をみる 根木健太  エンターブレイン 2011/03 2 + -
42 魔よりも黒くワガママに魔法少女は夢をみる2 根木健太  ADOKAWA 2011/09 2 + -
43 ワイルドブーケ : 花の咲かないこの世界で 駒尾真子  一迅社 2008/08 3 + -
44 ワイルドブーケ : 想いを綴る花の名は 駒尾真子  一迅社 2009/01 3 + -
45 超次元ゲイムネプテューヌ : TGS炎の二日間 八木れんたろー  メディアファクトリー 2013/05 1 - -
46 塔の町、あたしたちの街 扇智史  エンターブレイン 2007/04 5 + -
47 塔の町、あたしたちの街2 扇智史  エンターブレイン 2008/05 5 + -
48 あるゾンビ少女の災難 I 池端亮  角川書店 2012/07 4 + -
49 あるゾンビ少女の災難 II 池端亮  角川書店 2012/07 4 + -
50 雨の日のアイリス 松山剛  ADOKAWA 2011/05 4 - -
51 ぴぴっと!! 和智正喜  メディアファクトリー 2007/06 3 + -
52 しずるさんと偏屈な死者たち 上遠野浩平  星海社 2013/07 3 + -
53 しずるさんと底無し密室たち 上遠野浩平  星海社 2013/09 3 + -
54 ブギーポップは笑わない 上遠野浩平  ADOKAWA 1998/02 4 - -
55 原点回帰ウォーカーズ 森田季節  メディアファクトリー 2009/01 3 - -
56 原点回帰ウォーカーズ2 森田季節  メディアファクトリー 2009/05 4 + -
57 ノートより安い恋 = The love that is cheaper than a notebook 森田季節  一迅社 2012/04 3 + -
58 あまいゆびさき 宮木 あや子 一迅社 2013/04 3 + -
59 空に欠けた旋律(メロディ) 1 葉月双  ソフトバンククリエイティブ 2012/08 4 + -
60 空に欠けた旋律(メロディ) 2 葉月双  ソフトバンククリエイティブ 2012/12 4 + -
61 空に欠けた旋律(メロディ) 3 葉月双  ソフトバンク クリエイティブ 2013/08 4 + -
62 ストロベリー・パニック!〈1〉 公野櫻子  メディアワークス : 角川書店 2006/03 3 + -
63 ストロベリー・パニック!〈2〉 公野櫻子  メディアワークス : 角川書店 2006/08 3 + -
64 ストロベリー・パニック!〈3〉 公野櫻子  メディアワークス : 角川書店 2006/12 3 + -
65 鹿乃江さんの左手 青谷真未  ポプラ社 2015/01 3 + -
66 OBSTACLEシリーズ 激突のヘクセンナハトI 川上稔  ADOKAWA 2015/08 2 - -
67 よくわかる現代魔法 桜坂洋  集英社 2003/12 3 - +
68 よくわかる現代魔法 : ガーベージコレクター 桜坂洋  集英社 2004/05 3 - +
69 よくわかる現代魔法 : ゴーストスクリプト・フォー・ウィザーズ 桜坂洋  集英社 2004/09 3 - +
70 よくわかる現代魔法 : Jini使い 桜坂洋  集英社 2005/01 3 - +
71 よくわかる現代魔法 : たったひとつじゃない冴えたやりかた 桜坂洋  集英社 2005/05 3 - +
72 よくわかる現代魔法 : Firefox! 桜坂洋  集英社 2009/03 3 - +
73 魔法少女育成計画 遠藤浅蜊  宝島社 2012/06 5 - -
74 魔法少女育成計画restart 遠藤浅蜊  宝島社 2012/11 5 - -
75 魔法少女育成計画restart 遠藤浅蜊  宝島社 2012/12 5 - -
76 魔法少女育成計画episodes 遠藤浅蜊  宝島社 2013/04 4 - -
77 魔法少女育成計画limited 遠藤浅蜊  宝島社 2013/11 4 - -
78 魔法少女育成計画limited 遠藤浅蜊  宝島社 2013/12 4 - -
79 魔法少女育成計画JOKERS 遠藤浅蜊  宝島社 2014/08 2 - -
80 魔法少女育成計画ACES 遠藤浅蜊  宝島社 2015/09 2 - -
81 魔法少女育成計画episodesΦ 遠藤浅蜊  宝島社 2016/04 3 - -
82 魔法少女育成計画16人の日常 遠藤浅蜊  宝島社 2016/10 4 - -
83 魔法少女育成計画QUEENS 遠藤浅蜊  宝島社 2016/12 2 - -
84 先輩と私 森奈津子 徳間書店 2011/05 4 + -

 

女性主人公ラノベレビュー【2/4】

マイナー古ラノベはどうせ誰も読んでおらずただ感想を書いても共有できない可能性が高いため、皆が手に取りやすいようにあらすじを引用している。

ネタバレ配慮は特にしていないので気になるものは先に読んでほしい。俺も読んだんだからさ……

 

迫真のハッテン場描写に草

ふと気がついたら美しい女の子になっていたのでびっくりした――。どういうわけか瓜二つの容姿を持つ、花時雨学院のアイドル的存在である姫子と記憶喪失のアヤメ。品行方正、成績優秀で誰からも慕われている姫子だが、本当は学院の支配をたくらむ腹黒の陰謀家だった!! そのことを偶然知ってしまったアヤメは、記憶を取り戻すのに協力してもらうかわりに姫子の影武者として利用されることになってしまい……。右も左もわからぬまま「姫子」にされたアヤメの運命やいかに!? 波乱が波乱を呼ぶ体当たり的スクランブル身代わりコメディ第一弾!「失敗したら──許さないわよ」

【評価: 2】【百合: +】【ヘテロ: -】

「主人公が記憶喪失」「しかも容姿まで変わっている」「しかもヒロインと同じ外見」といういかにも古ラノベっぽい不思議設定がいくつも悪魔融合されており、設定の掴みは強力。

だが、期待して読み進めるもちょっとした事件を解決しただけでストーリーが終わってしまい、それらの謎は全く解決しなかった。あらすじにも「第一弾!」と書いてあるあたりもっと壮大なストーリーの序章という位置付けだろうが、これだけ主人公の出自に謎を集中させるなら一つくらいは消化してほしかった。

なおTSを女性主人公に含めるか否かには古来より激しい論争があるが、俺は含めない派だった。このラノベはTSのような気はするのだが、少なくとも一巻の範囲では主人公の元人格が一切明かされないためギリギリ女性主人公判定が出て購入リストに入っている。そういう意味では主人公の出自を一切明らかにしなかったことで読者を一人増やした正しい判断だったと言えなくもない。

突出して妙に面白かったポイントとして、学院のアンダーグラウンドに存在するハッテン場の描写が異様にリアル。

「ここは、ある種の社交場。もっとありていに申しますと、非合法のナンパカフェ、女の子同士のハッテン場なんです。花時雨学院では、生徒同士が過度に親しくなることも禁止で、学生らしく節度を保った友情を育むよう定められてるでしょう? でもここでは、そんな規則は関係ないんです」

こうして文中で「ハッテン場」と明言されており、「薄暗くて顔は見えない」「声かけを待っていてもいいし誰に声をかけてもよい」「プライベートに踏み込む会話は禁止」「他の人が口説いている間は割り込み禁止」などと新宿二丁目の如くガチすぎるルールが設けられている。しかもハッテン場はギャグ描写ではなく、割と事件の核心付近にある施設だ。いわゆる秘密の花園における反動的な舞台設定として、マジのハッテン場をブチ込んでくる手配は確かに正しいと言えば正しい。需要はあるから……

 

魔法少女育成計画の完全劣化

「この中に一人、嘘をついている魔女がいます。皆さんには、その魔女を見つけて、“処刑”してほしいのです」魔法少女を育成・管理する魔法学園。その教室に呼び集められた13人の魔法少女たちは、妖精フィアから招集の理由を告げられて困惑する。明るさがとりえの魔法少女・愛葉レナも、その中の一人だった。魔女だと思う人物に投票するという魔女探しのルールに従い、最初は気軽な気持ちで投票を行うけれど…!?生き残るのは魔女か、魔法少女か―愛らしい13人の少女たちによる、運命のデスゲーム!

【評価: 2】【百合: +】【ヘテロ: -】

かなり露骨な『魔法少女育成計画』フォロワー。

魔法少女同士のデスゲーム」「一人一つ素朴な魔法が使える」「表裏のある進行役の妖精」という基本設定を全て流用する潔さ。「一人だけいる魔女を探す」という人狼ゲーム風の脚色が加えられているように見えて、この2年前に出た魔法少女育成計画restart編も「一人だけいる魔王を探す」というルールだったため言い逃れようがない。

一応読者としては「二次創作だと思えばいいし話が面白ければパクリは不問に付そう」というスタンスだったのだが、話も普通に面白くなかった。キャラ立ちが浅くて魅力に欠け、能力バトル的な駆け引きもイマイチ冴えず、1巻で提示された謎の真相も「流石にそれはない」というちゃぶ台返しで終わる。ゲーム設定が人狼ゲームであることに対応して主人公が「自分の言葉を本当だと信じさせる」という人狼ゲーム最強能力を持っているのはかなり面白いと思ったのだが、頭脳戦が薄いためそこまで活かされなかった。特にラスボス周りってペチカのパクリだよね?

 

綾波レイみたいなやつが救われる話

私は、誰からも必要とされていない人間だった。もちろん研究所にとって不可欠な存在だったはずだけれど、それは一個人であるメイ・オータムをではなく、あくまでも被験体ナンバー5ACを必要としているだけのことに過ぎなかった。そんな私が生まれて初めて経験した、その気持ちとは―これはメイとみまり、二人の少女が描くハートウォーミングな物語。

【評価: 2】【百合: +】【ヘテロ: -】

別につまらなくはないし丁寧に書いてはいると思うが、あらすじに話が全部書いてあってそれ以上でもそれ以下でもない話なので、追加で思うところがない。

まだアニメとかをあまり見たことがなくて「綾波レイみたいな境遇のキャラが良い感じに居場所を見付けられて良かったねという話」と言われて「ああそういうやつね」と思い当たる節が無い人は読んでみるとけっこう楽しめると思う。

 

20年前に流行ったタイプの美少女ガンアクション

かつて暴力でイタリアを支配してきたマフィアは、今や市民の生活に静かに、だが奥深く根付いていた。マフィアへの復讐に燃える若き女性警官・ビアンカは、警察への復讐に全てをかけるマフィアの手先・ニコラと運命的な出会いを果たす。絶対に相容れない者同士が闘いの中で互いを認め、惹かれ合っていく…。宿命を背負った少女たちに待ち受けるものは、憎しみを超えた愛か、それとも死か。絶望の連鎖を断ち切る闘いが始まる…。

【評価: 3】【百合: +】【ヘテロ: -】

令和の美少女バディガンアクションと言えば『リコリコ』だが、その源流にある『NOIR』とかの系譜に属する作品。なんかヨーロッパとか中国あたりの裏社会が舞台になっていて、若干臭いけど粋な台詞回しでシリアスな美少女ガンアクションをやるのが流行っていた時代があった。

展開はスリリングだし緊張感もあって良いが、話がちょっと長くて終盤かなりダレるという欠点はある。主人公とバディの信頼関係が構築されてからもけっこうどうでもいいチェイスをしているパートが長く、「もう終わりかと思ったら追加ステージが始まる」という展開が二回くらいあった。

ちなみに前回のブログに「女性主人公と言えばコバルトとか角川ビーンズもあったのでは」というコメントもぼちぼち付いていたが、それらは完全に女性向けという認識であまり購買対象になっていなかった。コバルトや角川ビーンズは顎の尖ったイケメンとの恋愛とかがメインなのに比べて、一迅社アイリスはこの作品のようにアクション要素が入っていたりと男性でも楽しめるライン取りをしていたため、ギリギリ男性界隈でも嗜まれていた。

 

御当地とメディアミックスの悪いとこ全部出てる

未知なる世界には、素晴らしい宝物が眠っている―。そんな言葉を残して消えた祖父を探すため、人口300人の孤島、東京都御蔵島から渋谷へとやってきた御蔵美波。都会で途方に暮れる美波を助けたのは、東京を守る魔法少女、小張凛。「…こんなに広い東京の真ん中で、あたしたち魔法少女が巡り会うなんて!」経験は浅いながらも、美波もまた、御蔵島の加護を得てご当地を守る魔法少女だった。凛の協力を得た美波は、50年前の地下鉄路線図を手掛かりに祖父を探しを始めるが、やがて二人は何かに導かれるように地下廻路へと迷い込んで行く。東京を守りたい―その想いがひとつになったとき、少女たちの絆がかつてない魔法を発動する!そして魔法少女は、かけがえのない宝物を手に入れる―。

【評価: 2】【百合: +】【ヘテロ: +】

大して流行らずにサ終したブラウザゲーム魔法少女大戦』のラノベ版。遊んでもいないゲームのノベル版を「女性主人公だから」という理由だけできっちり買っているあたりに当時の女性主人公枯渇状況を感じる。

魔法少女大戦』も平成中期に流行った御当地ものの一つで「全47都道府県に配置された御当地魔法少女が活躍する」という内容だったが、アニメも大して面白くなかった記憶がある。この作品に限ったことでもないが、御当地もののジレンマとして「御当地要素を反映しないといけない」「どっかの地域だけ印象下げるわけにもいかない」という事情によってそれっぽい要素をツギハギしただけで尖ったところのない魅力に欠けるキャラが出力される傾向がある。しかもメディアミックスともなれば本筋に影響の大きい生き死にが絡むような話をガッツリ進めるわけにもいかないという縛りまで加わり、何も残らないホワイトノイズみたいな作品が生成されてしまった。

 

小学校に置いてありそう

女の園、私立カトレア学園の入学式。迷子になって泣いていた、ひなを助けてくれたのは『氷のプリンス』大城翼先輩。みんなの憧れのプリンス・翼先輩は、なぜかひなを気に入り、カトレア祭で自分のプリンセスになってほしいと申し込んできてーー!?翼先輩のパートナーとして認められるため、乙女の試練に立ち向かうことになったひなだけど…。男子禁制の乙女の花園でひそやかに咲く、乙女たちの甘くて切ないスイート・ラブ。

【評価: 2】【百合: +】【ヘテロ: -】

これ児童書ですよね?

「面白くなかった」と言ってしまうのは大人気ないのではないかと不安になってくるほど、内容から想定される対象年齢が低い。当時なら青い鳥文庫、現代なら角川つばさ文庫あたりから出るべきものが何かの誤りで一迅社アイリスから出てしまったとしか思えない。

一応主人公は女子高生のはずだけど、その年齢で生徒会が学園のどっかに隠した指輪を手紙のヒントを謎解きして探すゲームとかやってるのはちょっと異様すぎる。話自体に大きな瑕疵があるわけではないので、女子小学生のマインドを持っている自信がある人は全然楽しめると思う。俺も仮面ライダーとかたまに見るしね。

 

僕のヒーローアカデミア美少女版

ヒーローを育てる女子校『ヒロインアカデミー』に通う亜依と悠美とハルカ。
シェアハウスで共同生活をしている三人のもとに、噂のA級スーパーヒロイン、熊瀬川リンが加わることになった。
あれ?でもなんだかこの子、すんごく弱いし大人しいし、全然ヒロインっぽくな
いぞ…! ?

ヒーローやヒロイン達の住む大都会“バスターポリス"で繰り広げられる、
新米スーパーヒロイン達のドタバタ&ほんわかコメディ!

【評価: 3】【百合: +】【ヘテロ: -】

WJでやってる『僕のヒーローアカデミア』をそのまま美少女版にしたもの。「ギフトを持つ学生たちがプロヒーローを目指して養成学園に通って犯罪者と戦う」という基本設定はそのまま、「表向きには隠蔽されているがプロヒーローに弱体化の兆しがある」「過度に潔癖で殺害も辞さないダークヒーローが登場する」「しかもダークヒーローは他人の血を吸収することで発動する能力を持っている(ステイン?)」など細部まで清々しくパクっている。

ただ美少女キャラ要素を活かしやすいコメディとして書かれていることが奏功しており、キャラ自体は独自のものとして割とよく立っていて生き生きしているのでそれなりには面白く読める。『僕のヒーローアカデミア』より面白いことは無いが、『僕のヒーローアカデミア』がめちゃめちゃ面白い100点の漫画なので70点くらいには仕上がっており、悲しいけどオリジナルで60点のラノベよりは評価が高い。

 

異世界で異次元のギスギス

あなたは『いる子』? 『いらない子』? どこにも居場所がない中学生、狩屋友恵(かりやともえ)は自分のことを誰にも必要とされない『いらん子』だと思っていた。ある日、友恵は見覚えのない異世界に飛ばされてしまう。 友恵を召喚した黒騎士と名乗る謎めいた存在は語る。 「いらん子クエストの世界へようこそ。みなさんには今日を含めて三日間、冒険者のパーティーに扮して凶悪な魔物たちと戦ってもらいます。合計三回の『いらん子バトル』を生き残った方々は、そのまま元の世界にお帰りいただけますからご安心を……」 7名の少女が生き残りをかけてゲームに挑む。だが、『いらん子クエスト』にはまだ怖ろしい秘密が隠されていた……。絶望と希望が織りなす異世界デスゲーム開幕!!

【評価: 3】【百合: -】【ヘテロ: -】

たぶん一般的にはあんまり面白いラノベじゃないけど、俺はわりと好きな枠。『私たち殺し屋です』でだいぶ下がっていた兎月竜之介の評価が持ち直した。基本的に俺はデスゲームものがかなり好きで相当評価が甘くなるらしい。

「全員いらん子」というコンセプトがしっかりしており、少女キャラが7人もいる割には揃って性格がクソ悪く人間関係も最悪で終始めちゃめちゃ険悪。デスゲームは「クエストをこなしつつ一番いらなかった人を投票で決めて処刑する」というかなりベタなルールだが、全員性格がカス寄りなのできちんと足を引っ張り合っている感じが良い。最後の最後に特に伏線なしで唐突に現れるヤバいサイコ女が全てを回収していくセコい締め方をするが、それも嫌いじゃないぜ。

 

古き良き学園魔法ファンタジーバトル

失われた強大な力―魔法。だが、その力は形を変え「偽りの魔術」として現代にも受け継がれていた。高校生の綾白未玖とその過保護な姉である夏咲も“力”を使うことができる「魔女」の姉妹。しかし魔女を守るはずの組織「連盟」が二人を襲い始めたとき、未玖から魔術起動の象徴・八重桜が大量に舞い始める!そこには未玖の持つ「偽りの魔術」を根底から覆す秘密があった!強く優しき魔女たちによる運命の踊りが今、始まる。

【評価: 3】【百合: +】【ヘテロ: -】

かなりちゃんとした古き良き学園魔法ファンタジーバトルラノベ。「昔の王道ファンタジーラノベってこんな感じだったよね」という歴史的なイデアの趣きがある。抜群に面白くはないがアベレージは高い、教科書に載ってそう。

きちんと練られた世界に係る組織の力関係とか魔法体系の設定をベースに、いきなりセカイ系で処理せずに割とローカルな人間関係をクリアしていくところが古き良きを感じるポイント。

きょうだい関係を大きなテーマとしているため、登場人物のほぼ全てが何らかのきょうだい関係を所有して話に一貫性を添えている。きょうだい関係というのはキャラクターの間に関係を強制発生させる便利アイテムでもあり(ソシャゲにおけるきょうだい設定の多さを見よ!)、やはりそれ自体面白いというわけではないが堅実なドラマを提供してくれるものだ。

 

歴戦のゲームライター感

「蓮實、謎はすべて解けたわ!! ……ってアレ!?」「一生懸命なのになかなか謎が解けないで困っている結花さん、はぁはぁはぁ……」海老栖川高校に次々と起こる怪事件。その謎に伊勢田結花×大庭蓮實コンビが挑む! 伊勢田の膜を賭けた二人の推理勝負がいま始まる!! 「って、今膜を賭けてとか言った!?」──コミックよりもすかぢ的な「大庭が鼻血を出しながら伊勢田をハァハァ見つめる事が主題のミステリー(どんなやねん)」誕生!!

【評価: 3】【百合: +】【ヘテロ: -】

男性主人公ラノベ『えびてん』の女性主人公スピンオフ。

ラノベで主人公の次に人気のキャラは女性ヒロインに決まっているため、スピンオフが女性主人公になることはかなり多い。よって俺のような女性主人公マニアが本編を読んでいないにも関わらず「女性主人公だから」というだけの理由でスピンオフを購入していることは珍しくなかった。

ふつうにライターの力量が高くて緩い日常ミステリとしての完成度が高いので、変に挿入された浅めの変態百合要素がかなり浮いている。この手の日常ミステリは発覚してしまえば大した話ではなかったという経過を辿ることが多いが(大した話だった場合は非日常になってしまうので)、謎自体が何らかのバイアスの産物であること自体がテーマになっており、それが個人のルーツにまで遡っていく組み立ては見事。

ノベルゲームテキストの感覚で書いているのか、鍵括弧で区切って連続する会話台詞を同じキャラが発していることが多く「そんな書き方していいんだ」と驚いた。あとがきで「狗神煌先生のイラストが強いからどうせ売れるでしょ」という身も蓋もないことを書いているのも歴戦のゲームクリエイター感がある。

 

クラスメイトと謎同居して仲良くなるやつ

「あたしの家にくればいいよ?それで全て解決でしょ」高校入学とともに一人暮らしをはじめるはずが、手違いにより部屋を失った真世杏花に救いの手が差し伸べられる。救い主の名は澄多有住。杏花の同級生でもある彼女は、かわいい名前に反してぱっと見は不良、停学歴アリ。一緒に暮らし始めても無愛想でわがままでおまけに生活能力もない。杏花は折り合いをつけるのに難儀するが、時折ちょっとした優しさやかわいげが垣間見え…。これってもしかして、ツンデレ?二人の少女が織りなす、感動の同居×青春ストーリー。

【評価: 3】【百合: +】【ヘテロ: -】

割と好きだし、たぶん大抵の人が割と好きだと思う。

「あまり親しくないクラスメイトと何故か同居することになって最初は険悪だが距離が縮まっていく」というヘテロラノベでよくあるやつの両方女性だった版で、ベタな話ではあるが手堅くまとまっている。二人とも強気なタイプなのでどちらか一方が男役を引き受けているわけでもなく、過度な力関係が生じずに拮抗しているのがいい感じだ。

たまたま目に入ったAmazonレビューが興味深い(→)。

注・百合ではない
2012年10月28日に日本でレビュー済み

百合好きが間違えて買わないように、注意を喚起する目的でレビューさせていただきます。

女子高生二人がルームシェアするという設定から、百合要素を期待している方がいたら、それは大失敗なので注意して下さい。

百合要素はひとつもありません。女の子同士の友情は確かに少しありますが、そこに百合を妄想できる余地はほとんどありません。

物語のメインはそれぞれの女の子が過去に体験した、辛い記憶の回想です。

確かに二人とも性嗜好はたぶんヘテロだし性関係or恋愛関係に至ることは特にないため、但し書きとして一定の効力はある。とはいえ俺は「友達として仲良くなる話」に対して百合というフレーズを使うことに抵抗がないし、恐らく令和だったら満場一致で百合判定される内容だろう。当時の百合界隈では百合の定義に一家言ある人が非常に多かったことを思い出した(俺はかなりの穏健派だったが、この人は中庸寄りの過激派)。

 

ちゃんとした眼鏡フェチ

不思議な力を持つ眼鏡“魔鏡”の収集・保全を行なう秘密組織“アルハゼン”のエージェントにして“眼鏡使い”の深鏡めめこ。彼女は眼鏡にまつわる事件が起こっているという御園学院に転入し、調査をすることになった。幼い頃から孤独だっためめこは学園での生活に戸惑うが、眼鏡を掛けた美しい少女・黒野亞衣と出会い、心を開いていく。

【評価: 3】【百合: +】【ヘテロ: -】

新妹魔王の契約者』の作者のデビュー作だが、なるほど確かに完成度が高くて作者の力量を感じる。

「主人公が眼鏡フェチ」という設定が、浅い一発ネタではなく強い思想と行動を伴って一貫している。裸眼では歪んでいる世界を眼鏡を通して正しく見ることの価値が示されたり、知覚を支配する眼鏡をかけさせる行為を対人関係における重要な儀式にしたり、眼鏡を用いたアクションの意味付けがいちいち練り込まれていて関心させられる。あるテーマに対して様々な価値や表象的なイメージを探り続けるのは「○○の哲学」みたいなタイトルの書籍でよくあるパターンだが、その水準に達している。

ただ、眼鏡の哲学に対して誠実だった代わりに実際に起きている事件の描写が犠牲になっている節もある。「眼鏡狩り」とかいう割とどうでもよさそうなイベントを裏世界のエージェントが対処する温度感がよくわからなかったり、メインヒロインに主人公に執着されている以上の価値が見出せなかったりという違和感はないこともない。

 

一人称群像劇がうまい

空手系暴力女子だった過去を遠い彼方に葬り去り、夢にまで見た文化系女子ポジションを獲得すべく日々奮闘中の女子高生・雅野京歌。しかしそれなのに、京歌は何の因果か素人ばかりの空手部の創部に付き合わされてしまうことになって……。やる気はあるけど軟弱な部長にカラオケ要員系元気ガール、心優しきヤンキー娘に果ては名参謀としてならした病弱軍人娘まで!? 個性豊かすぎる仲間たちに囲まれた京歌は、あくまでも文化系女子への道を歩み続けるのか、それとも――。ゆるっと本気な青春+部活ストーリー!

【評価: 3】【百合: -】【ヘテロ: -】

メディアワークス文庫ラノベに含めるかどうかには諸説あるが、これはかなりラノベ寄りの小説。あらすじ通りにちゃんとした青春小説として女子高生がワチャワチャやる話で、キャラが多い割にはキャラ立ちが強い。

それを象徴するように、デスゲームでもサスペンスでもないのに一人称群像劇形式でグリグリ視点が変動していく挑戦的な構成が面白い。単に一人称に差異があるだけではなく、地の文が割と丁寧に書かれている割には各人の内省的な部分もよく書き分けられているために混乱も少ない。例えば必ず謎の格言から始めるキャラがいたり、思考が杓子定規で真面目なタイプのキャラがいたりと、一人称群像劇形式を上手くやればラノベらしくキャラを立てていくのにもかなり有効らしい。

 

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