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21/11/24 お題箱回91:機械学習というワードのニュアンス、少子化とサステナビリティ、コンテンツの性感帯etc

お題箱回91

354.機械学習の記事を見て、面白そうなので手を出してみたいのですが、そういう順序で進んでいったらいいでしょうか?
インターネットがどういう仕組みで動いているか理解していないレベルなので、ここら辺からだとは思うんですが、、、https://www.amazon.co.jp/%E3%82%AD%E3%82%BF%E3%83%9F%E5%BC%8F%E3%82%A4%E3%83%A9%E3%82%B9%E3%83%88IT%E5%A1%BE-%E5%9F%BA%E6%9C%AC%E6%83%85%E5%A0%B1%E6%8A%80%E8%A1%93%E8%80%85-%E4%BB%A4%E5%92%8C03%E5%B9%B4-%E3%81%8D%E3%81%9F%E3%81%BF%E3%82%8A%E3%82%85%E3%81%86%E3%81%98/dp/4297117819/ref=zg_bs_502776_1?_encoding=UTF8&psc=1&refRID=TSDYGCP9GATEDGYJQ9DV

機械学習の記事はこのあたりでしょうか。ありがとうございます。

saize-lw.hatenablog.com

saize-lw.hatenablog.com

機械学習はかなり面白い上に有益なのでオススメです。最近Twitterでよく見る魔法みたいな謎技術の背後には大抵は機械学習があると言っても過言ではありません。特に最近ではイラスト自動描画、イラスト3D化、文章自動筆記といったオタクの創作に関わるシーンでも存在感を増し続けており、サイゼミでも詳しくない人への普及を試みる意図で機械学習回が開催されたのでした。

リンクを貼って頂いたのは基本情報技術者の資格教本ですね。僕はその資格を持っていますが、機械学習の理解には不要だと思います。「手を出す」というのが「実装する」という意味ならばいずれ必要にはなりますが、「とりあえず知りたい」くらいの意味であればパソコンやインターネットがどう動いているかは知らなくても構いません。

たぶん「機械学習」という名前が致命的に良くなくて、そこで混乱を招いている気がします。「機械学習とはおそらく機械の学習のことだからまずは機械について勉強しよう」というのは全く自然な流れですが、「機械学習」という単語で力点があるのは「学習」の方で、「機械」は修飾子に過ぎません。そしてそれもコンピュータのような具体的な機械を指しているというよりは、「機械的」という形容として解釈した方が正しいニュアンスに近いです。それはどういうことかという話をします。

まず、「もともと学習は人間にしかできないと考えられてきた」という大前提があります(ここで言う「学習」とは「外から情報を取り込んで自らをアップデートすること」くらいの意味です)。
人間は本を読んだり人から話を聞いたりすることで、前は解けなかった問題が解けるようになったり秋田犬とハスキー犬を見分けられるようになったりする能力があります。その一方、機械は基本的には渡されたタスクを言われた通りにこなすことしかできません。例えば、昨日は足し算しかできなかった機械が今日は掛け算をできるようになっていたとしても、「機械が自ら掛け算の式を見て掛け算という概念を学んだのだろう」とは普通は考えません。「持ち主が計算ソフトをアップデートしたのだろう」と考えるのが自然です。機械には自己アップデートなんて出来ないので人間様が手取り足取りアップデートしてあげるものであるというのが常識的な感性であり、今でも大抵の人はそう思っています。

しかし、「実はこういう手順で計算させれば機械にも学習みたいなことができるっぽいぞ!」ということが発覚し、その計算の手順をまとめたものが「機械学習」です。つまり「決まったことしかできない機械でも学習ができる」、すなわち「人間が介入しなくても機械的な手順で学習ができる」という点が最も重要なニュアンスであって、メモリがどうとかレジスタがどうとかいう具体的な機械のテクノロジーは少なくとも原理的にはあまり関係がありません。
よって、気合さえあれば機械学習は人間でもできるというのは端的に事実です。何故ならば「こういう手順で機械的に作業すれば学習っぽいことができる」という知見が機械学習ですから、その手順に従って紙とペンの上で手を動かせばそれだけで機械学習と全く同じ営みが可能だからです。

ただし機械の勉強は不要な代わりに数学の勉強は必要です。
というのは、人類史において定量的な作業を表記する手段としては(自然言語ではなく)数式が選択されてきたため、機械的な学習の手順は全て数式で記述されるからです。具体的にどういう数学が必要であるかは以下の本が偏執的なまでに正確にまとめているので参考になります。ただ、これはかなりちゃんとした本なので初手からやるにはハードかもしれません。

いずれにせよ、機械の勉強よりは数学の勉強をするという意識で始めるのが無難だと思います。極端な話、理系ではない人が機械学習を本気でやるのであれば、最初に触れるべきが高校数学の検定済み教科書であることは間違いありません。

 

355.好景気になった程度で個人主義自由主義が生まれた時から身体に染み付いている現代人が本当に少子化を解消(具体的には出生率2.0超えを果たす)できるのか疑問です。

僕も同感です。子作りという選択肢を選びたくても選べないのではなく、そもそも子作りという選択肢自体を魅力的だと考えていない層をどう誘導するのかという議論があまり行われていない印象はあります。

補足397:僕は「国家は自らを維持しなければならない」とまでは言いませんが、「国家は自らの維持を目的の一つにしても構わない」と考える方です。よって、(国民がそんなに望んでいないとしても)国家が子作りを誘導して自らの維持に必要な国民の質と量を確保しようとすること自体への批判はあまりありません。

ただ、「人々が子作りという選択肢をどのくらい魅力的だと思っているのか」というような事柄を推測する僕のセンスはボロボロですから、僕や投稿者が勝手にそう思っているだけで、実際には「潜在的に子供を作りたい層」はたくさんいて、彼らはお金が手に入ればポコポコ子供を生み始めるのではないかという疑念は拭い難くあります。そもそも現在の特殊合計出生率の値1.35も僕の直観とは全く合致していません。僕の感覚だと0.85くらいです。

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これに関連して最近非常に面白いと思ったのが、少子化が世界のサステナビリティを破壊するのではないかという話です。

ta-nishi.hatenablog.com

今まで当たり前のように言われてきていた「我々の世界はなるべく良い状態で未来に温存されるべきである」という大前提、つまり「百年後の地球を守るために環境破壊をやめよう」というような道徳は、実は「子持ち」という特殊な属性を持つ人々だけが共有できるローカルなイデオロギーであって、そうではない人々は全く参入する動機がないということです。
「自分の死後の世界が悪くなっても全く構わない」と考える人が増えた場合、そういう人が寿命を迎えるたびに世界は少しずつ悪くなっていきます。ここに「悪い世界では子供を生むべきではない」という判断が加わると、子供を生まない→世界のサステナビリティが志向されない→世界が悪くなる→子供を生まない→世界のサステナビリティが志向されない……という発散型のフィードバックループが成立します。

よって少子化は貧困とかリベラルな価値観の普及みたいな他の要因から発生する結果ではなく、結果と同時に原因にもなれる再帰的な因子であるとするならば、我々がたまたま足を踏み外してしまったこの時点が終わりの始まりであると思うのはかなり夢がありますね。

 

356.少年漫画と少女漫画の非対称性

「少年漫画」と「少女漫画」で対称なのは名前と遥か昔に想定されていた読者層くらいで、内容的には特に対称でもないという印象はあります。「対称ではない」というのは「同類である」という意味でもなくて、アクション漫画と推理漫画が別ジャンルであるのと同じくらい独立してそれぞれの文法を持っているという意味です。
とはいえ僕は少女漫画にはあまり詳しくないので、誰かもっと詳しい人が史実を絡めて語っていそうな感じはします。

 

357.LWさんは作品の文脈やその内部の部品の成り立ちといった形式で作品を評価していますよね。アニメーションを見ているようで見ていないというか。それを除いた、多くのオタク達が行っているようなビジュアルやストーリーそのものを鑑賞することはないのでしょうか?

仰る通りです。
基本的にお話ベースで作品を評価するので、小説でもアニメでも映画でもコメントに大差がなく、そういう意味でアニメーションを見ているようで見ていないというのは僕もそうだなと思います。それ故にいわゆるアニメーションオタク(監督や作画、制作技術等に詳しい人)とは関心が合致していません。
また、ここで言われている「ストーリーそのもの」というのは、たぶん(僕がよく評価している整合性とか新規性という文脈ではなく)新しくなくても整合していなくてもいいからキャラクターたちが確かに存在するはずの「そういうものとしてのお話」という意味ですよね。確かにそういうやり方で「共感して泣いた」みたいな感想を書くことはほぼありません。

しかし、僕がビジュアルやストーリーを鑑賞していないというのは大きな誤解です。鑑賞しているし大いに心を動かされているが、それをブログで発信する意味を感じないのでそうしないというだけです。
実際、僕は(主に美少女キャラクターの)ビジュアルをTwitterでよくリツイートしていますし、discordやLINEのような閉じたコミュニティでは何が好きで何が嫌いで~という話やカップリング萌え語りもかなりやります。

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(↑原神の新キャラでカップリングを真剣に検討している)

ただ、それは極めて個人的な好みですから、僕の理解を深める役には立っても作品の理解を深める役には立ちません。よって親しい友人にだけ共有すれば済むことで、ブログで公に書く意味はありません。

補足398:こういう「共有する意味のない極めて個人的な好み」のことを僕は「性感帯」に喩えて若干軽蔑的な文脈で使用することがあります(例:「性感帯の話をしても仕方なくない?」)。

ただ、自分で創作をしたときの経験で若干気持ちが変わりつつはあります。僕は自分の創作ですら自分の性感帯を発信する意味はないと思っていたので、「僕はこういう感じのキャラが好きで~」みたいな話はせず、徹底して「このキャラはこういう役割で~なんとか主義者で~」という話しかしませんでした。
しかし、会ったこともない人にネット上で「こいつ好きー」とか言ってもらえるのは普通にかなり嬉しかったので、なんか性感帯語りにも実は結構ポジティブなパワーがあるなという気付きがありました。今でもわざわざ単独の記事で書くことはあまりありませんが、消費コンテンツまとめ記事とかでは一言二言「こいつが好きです」とか割と書くようにしているのはそういう心境の変化があります。

 

358.マイクラの建築ガチで上手いですね
ツイートした奴以外にも作ったものがあれば見せてほしいです

タイミング的にこれですかね? ありがとうございます。

これはたまたまマルチプレイのサーバーに紛れ込んだときにとりあえず自分の家を建てたやつですが、以前は二年くらいソロプレイで延々とプレイしていてそれなりにヘビープレイヤーでした。この辺がなかなか上手く出来ていると思います(「ツイートした奴」って上のツイートのやつ一つのことか、それとも過去にツイートしたやつ全てを含むんですかね?)。

村人の取引の仕様が変わったあたりでよくわからなくなってあまり触らなくなりましたが、勉強し直して久しぶりに触ってもいいかもしれません。