LWのサイゼリヤ

ミラノ風ドリア300円

21/11/8 2021年8・9月消費コンテンツ

2021年8・9月消費コンテンツ

8月はコロナ禍で精神のバランスが破壊されてコンテンツ消費どころではなかったので9月とまとめます(感染はしてない)。十年後とかに見直したい気もするし、コロナ禍の諸々もいずれ記事にしてもいいかもしれない。

元気がなかったのでAmazonPrimeとかUnextで適当にズアーッと一覧から面白そうなものをピックするという普段はやらない見方をしていたのだが、意外と粒揃いの映画が見られて悪くなかった。

 

メディア別リスト

書籍(5冊)

統計学を哲学する
発狂した宇宙
図解雑学多変量解析
多変量解析のはなし
図解でわかる多変量解析

映画(6本)

LOOP
メンインブラック
大誘拐
残酷で異常
トランス・ワールド
ダーク・スター

アニメ(13話)

ウマ娘2期 全13話

 

良かった順リスト

人生に残るコンテンツ

(特になし)

消費して良かったコンテンツ

統計学を哲学する
ウマ娘2期
LOOP
ダーク・スター
残酷で異常

消費して損はなかったコンテンツ

発狂した宇宙
メンインブラック

たまに思い出すかもしれないくらいのコンテンツ

大誘拐
図解雑学多変量解析
多変量解析のはなし
図解でわかる多変量解析
トランス・ワールド

以降の人生でもう一度関わるかどうか怪しいコンテンツ

(特になし)

 

ピックアップ

統計学を哲学する

かなりの良著。賛否両論なのは理解できるが、俺は全面的に賛寄り。

タイトル通り統計学と哲学を架橋しようとする一冊。哲学サイドから見れば哲学的な理念が統計学においてはどのように実践として営まれているかを見ることになるし、統計サイドから見れば統計的な概念が実際のところどのような哲学的含意を持つかを見ることになる。俺は理系の人間なので主に後者として読んだが、いずれにしても高度な異分野交流はほとんど達成されているように思われる。

俺が観測した範囲での批判としては、統計学サイドからは意味論の議論について、哲学サイドからは認識論の議論について疑問の声が上がっているようだ。例えばこの本では確率の意味論としてベイズ流においては確率は主観的な確信度を意味するという古典的な主張を前提しているが、それを額面通りに受け取ってしまえば、ベイズ流の手続きを用いた科学論文は全て実験者の主観的な確信度を報告するエッセーであることになってしまう。一方、認識論の方はベイズや古典統計といった実践的な流儀の背後に内在主義や外在主義といった認識論的態度を見ることにアナロジー以上に何の意味があるのかが疑問に付されているらしい。

だが、それらの批判はむしろこの書籍の議論が第一次近似として問題なく機能しているが故に提出される第二次以降の建設的な調整項であるように思われる。俺はこういうことはとりあえず決め打ちで叩き台を敷設することが決定的に重要なのだと考える方だし、現状では解像度がそこまで高くないことは著者にも認識されている。

個人的には「確率変数及び分布とは結局何なのか」に答えを与えようとする存在論に関する議論が最も面白かった。自然の斉一性を踏まえて適切に世界を分節するための仮説的な自然種として統計モデルを理解することにより、他の自然科学と一貫する形で解釈を与えられる点が素晴らしい。純粋数学よりは現実の実体と接続しているが、実証科学よりは抽象の道具立てを用いる統計学において、虚数よりは現実的だが角運動量よりは抽象的な正規分布という概念は結局何なのかという存在論的な把握はどれだけ漸進的な改善の余地があるとしても最大の価値を持っているだろう。

一応注意として、この本が事前に要求する統計学の知識はそれなりに高い。少なくとも古典統計の検定論とベイズ推定の基礎くらいはわかっていないと中盤はまともに読めないと思われるが、徐々に難しさがランクアップしていく方式なので読めるところまで読んで諦めてもいい。

 

ウマ娘2期

saize-lw.hatenablog.com

書きました。
ライスシャワーが虐められる話だけは局所的に良かったが、全体としては虚無寄りではある。アグネスタキオンが出なくて悲しかった。

 

LOOP

良作。タイトル通りのループもの、繰り返される世界でバッドエンドを回避するために主人公が頑張るよくある話で、最後のどんでん返しも含めてシナリオ自体にはそこまで光るものはない(普通に面白いレベルではある)。

「おっ」と思ったのは、この作品では「ループの継ぎ目」が絶対に描写されないところだ。ループものであるにも関わらず、主人公が「このループはダメだったか……!」とか言ってギュルルルとSF的なゲートを通って最初に戻る描写が無いのである。
登場人物全員が同じ世界を繰り返すタイプのループなので必ずどこかで過去に戻るポイントが全員にあるはずだが、映像はずっとシームレスに遷移していて、気付いたときには何故かヌルっとループしている。死んだキャラはいつの間にか蘇生するし、記憶を引き継いで次の周回に突入する主人公ですらどこで次の周回に入ったのかがよくわからない。映像を見る限りは円環状の時間がグルグルと回っているようにしか見えず、リスポーンポイントがどこなのかがよくわからない。

見終わってからしばらく考えてようやくわかったのだが、キャラクターによってループの継ぎ目(過去に戻ってリスポーンする点)がズレており、かつ、リスポーン地点を映さないようにカメラが移動しているのがトリックだ。ループもの特有の円環タイムラインを図にするとこんな感じになっている。

f:id:saize_lw:20211107201548p:plain

ループものなので時間軸は環状時計回りに進むことにしよう。主人公もヒロインも時計回りに進むのだが、一周が終わって次の周回に入るタイミングが異なっているのだ。主人公は0時からスタートして12時間後にループして過去に戻るが、ヒロインは6時からスタートして12時間後にループする(ちなみにこれは説明のために一般化した図式を作っただけで、別に作中でこういう時刻であるわけではないし、主人公とヒロインの二人にしかカメラが注目しないわけでもない)。
カメラが主人公だけを追っていると12時の時点で過去に戻る描写が入ることになるが、それを回避するために12時よりも前にカメラが追うキャラクターがヒロインに変わる。このヒロインは6時にはリスポーンするが、やはりそこに入る前にカメラが主人公に変わる。よってヒロインが過去に戻るシーンも映らない。これを繰り返すことで、画面では誰もあからさまにループすることなく気付いたら何故かループしていたという映像が可能になる。この仕掛けは物語を連続的に再生し続けられる映画によく適合しており、なるほどと感心した(小説でこれをやってもあまり効果的でないだろう)。

 

ダーク・スター

ダーク・スター(字幕版)

ダーク・スター(字幕版)

  • ブライアン・ナレル
Amazon

全体としてはそこそこしんどいが、最後のオチだけ有り得ないくらい面白かった。

ただそれは構成が優れていたとかではなく、シンプルに一発ネタとしてオチが面白かっただけだ。ここに内容を書くとただのオチの説明になってしまうので書かない。君の目で確かめろ!

 

残酷で異常

良作。ヤンデレ主人公が宗教的な倫理を踏み越えて勝利するみたいな良い話だったが、ヤンデレ主人公が萌え美少女ではなくパッケージ右側のデブ男というのはネックではある。

内容とあまり関係ないのだが、ロボアニメのコックピットでたまにある「モニター越しに目を合わせて会話する」というギャグ演出が活用されていたのが良かった。

samepa.hatenablog.com

ここで紹介されている、アスカとシンジが何故かモニター越しに目を合わせて会話するやつ。エヴァでは物理的にはそうはならんけど何故かそうなっているというギャグなのだが、この映画ではモニターの先にいる会話相手が超越的な存在であることを示す表現としてシリアスに活用されている。例えばこのシーンがそうだ。

f:id:saize_lw:20211107211131p:plain

右が主人公、左のモニターに映っているおばさんが死後の世界にいる神的な存在である。このおばさんは罪人である主人公たちに極めて高圧的に振る舞うのだが、その一環としてモニターの中から主人公を睨みつけているのだ。物理的にはモニターの中から直接外側を見ることは有り得ないのだが、それをナチュラルに行うことでこのおばさんが常識を超えた異常な存在であることを示している。更には遠くにいながらも至近距離で監視してくるという神的な存在の恐ろしさも表現されており、アニメのギャグではなく実写でこんな使い方があったのか!と感動した。

 

メン・イン・ブラック

人気映画らしく安定感ある名作。

地球を宇宙人から守る秘密組織のコメディ映画だが、キーアイテムである記憶消去マシンの扱いが抜群に上手い。記憶消去マシンは最初から一貫して治安維持のために事件を目撃した一般人の記憶を消す用途で使われており、その乱暴っぷりに主人公の陽キャ黒人が異議を申し立てたりもするのだが、最後のシーンで役割が反転する。主人公を勧誘した秘密組織の先輩が引退する際、このマシンで記憶を消すことによって情報漏洩の恐れがなくなり安全に組織を抜けられるのだ。ここに来て記憶消去マシンは救済アイテムに姿を変える。

つまりコメディの裏テーマとして描かれているのは忘却の二面性であるわけだ。途中までは忘却は強権的に隠蔽を行う暴力として描かれる一方、最終的には忘却は安寧に至る救いでもあると再定義される。反転したマトリックスというか、記憶の消去はブルーピルではあるのだが、ブルーピルなりの安寧もあるのは確かにそうなのだ。

 

生産コンテンツ

ゲーミング自殺、16連射ハルマゲドン

趣味で書いている小説の進捗報告です(前回分→)。8・9月は第九章「白い蛆ら」と第十章「MOMOチャレンジ一年生」を完了しました。
ついでに毎月キャラ紹介とかコンテンツを置いときます(ここに書く設定等は進捗に応じて変更される可能性があります)。

字数

219236字→247058字

各章進捗

第一章 完全自殺マニュアル【99%】
第二章 拡散性トロンマーシー【99%】
第三章 サイバイガール【99%】
第四章 上を向いて叫ぼう【99%】
第五章 聖なる知己殺し【99%】
第六章 ほとんど宗教的なIF【99%】
第七章 ハッピーピープル【99%】
第八章 いまいち燃えない私【90%】
第九章 白い蛆ら【99%】
第十章 MOMOチャレンジ一年生【99%】
第十一章 鏖殺教室【1%】
第十二章 別に発狂してない宇宙【1%】
第十三章 パラノイアエスケープ【0%】

 

キャラ紹介⑥ 此岸さん

主人公である彼方の実姉です。容姿は彼方とよく似ていてクールな美人です。

彼方が物心付いた頃から病気によって植物状態で、現在は彼方が住んでいる家の隅にある巨大ベッドでずっと眠り続けています。妹の彼方ですら、此岸と会話したことはおろか、目を開けている様子すら一度も見たことがありません。世界的な名医からも治療は不可能だと匙を投げられており、同居している彼方を除けば世界の誰からも忘れ去られた存在です。

しかし、彼方が家に帰ってくると此岸が作った夕食が用意されていることがよくあります。彼方が置いていったゲームを遊んだ痕跡があったり、家中の掃除が済まされていたりもします。それどころか彼女自身が寝ている布団の交換や点滴薬の補充までもが定期的に行われており、寝たきりであるにも関わらず介護は全く必要ありません。更には枕元に置かれた虹色の便箋を通じて簡単な意思疎通を行うことすらできますが、彼方が家にいるときは此岸は常に寝息を立てています。

彼方が見ていないところで此岸が明らかに目覚めて活動していることは一つの医学的な奇跡です。此岸の身体を研究すれば世界中で同じ病気で寝たきりになっている人がたくさん救われるかもしれません。しかし人間全般に関心が低い彼方は「そういうこともあるのだろう」くらいにしか思っておらず、この奇跡に大した興味を持たないまま放置し続けています。今日も彼方は此岸が作ってくれたオムライスを食べますが、彼女がそれをいつどうやって料理したのかは謎のままです。