LWのサイゼリヤ

ミラノ風ドリア300円

22/7/23 2022年5月消費コンテンツ

2022年5月消費コンテンツ

データサイエンス・統計系の資格を取りまくっているのもコンテンツ消費なので今月から記載することにした。合格して初めて消費した扱いとする(例:応用情報技術者は4月に受験して6月に合格したので6月の消費コンテンツ扱い)。

試験というのも作者が思いを込めた一つの作品であって、映画やアニメと同じように鑑賞対象になる。という見方は試験に馴染みのない方には奇抜に聞こえるかもしれないが、受験業界ではわりと常識的なものだ。
試験においては作者がどんなスキルをどうやって確かめたいかという意図が問題の形で表現されている。映画でもこんな作品を作りたいという監督の目的が具体的な動画の形で表現されるのと同じだ。どんな意図が背後にあったか、それは上手く表現されているか、意図を超えた効果は生じているかといった見方で鑑賞できるのは試験も映画も同じだ。

だから受験業界でも優れた問題は高く評価されて後世に残っている。オタクに「まどマギの3話がさあ」とだけ言えば「そこから続く逆張りサブカルチャーがさあ」とか勝手に語り出すのと同じで、熟練の受験戦士に「東大2003年数学問6がさあ」とか言えば「当時の風潮に対する問題意識がさあ」とか勝手に語り出してくれることだろう。

補足419:ただし試験問題が学術的に優れていることはまずない。試験は新しい知見を生み出す機能を持たないからだ。

補足420:なお個々の問題は月並みでも、どんな問題を集めるかという出題範囲によって作者の意図が表現されることも多い。それは機械学習のためのデータ収集の法的な扱いにも似ている。データ収集において個々のデータには著作権が認められないが、それらを一定の目的の下に集めた体系的なデータセットには研究者の意志が反映されていると見なされ著作権が生じうる。

よって難易度の低い資格試験については(パスするのは前提として)作品として鑑賞するのも大きな目的の一つになっている。どう考えてもノー勉で合格できる難易度であることは試験範囲を勉強しない理由にはならないし、少なくともオフィシャルテキストが刊行されている場合はまえがきも含めて熟読することにしている。
そうすると資格の色々な表情や格が見えてきて一定の評価と感想を生む消費コンテンツになってくるものだ。例えば「これは流行にいっちょ噛みしたいだけの資格だな」とか、「これはこの分野に特化しようという強い意志があるな」とか、「これはまだ新しい資格だがこれからデファクトスタンダードになるだけのポテンシャルがあるな」とか色々ある。

メディア別リスト

漫画(65冊)

ゴールデンカムイ(全31巻)
進撃の巨人(全34巻)

書籍(5冊)

知への恐れ
退屈なことはPythonにやらせよう
データサイエンティスト数学ストラテジスト上級公式問題集
ディープラーニング活用の教科書
あたらしいPythonによるデータ分析の教科書

映画(2本)

シン・ウルトラマン
タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら

資格(2個)

データサイエンティスト数学ストラテジスト上級
Python 3 エンジニア認定データ分析試験

良かった順リスト

人生に残るコンテンツ

進撃の巨人

消費して良かったコンテンツ

退屈なことはPythonにやらせよう

消費して損はなかったコンテンツ

ゴールデンカムイ
Python 3 エンジニア認定データ分析試験
あたらしいPythonによるデータ分析の教科書

たまに思い出すかもしれないくらいのコンテンツ

タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら
シン・ウルトラマン
知への恐れ
ディープラーニング活用の教科書

以降の人生でもう一度関わるかどうか怪しいコンテンツ

データサイエンティスト数学ストラテジスト上級公式問題集
データサイエンティスト数学ストラテジスト上級

 

ピックアップ

進撃の巨人

先週記事を書いた。

saize-lw.hatenablog.com

めちゃ面白かった。これは日本を背負って立つ漫画。

 

ゴールデンカムイ

5月頭頃にあった全話無料公開期間中に読んだ。

なかなか面白く、キャラクター群像劇漫画としてよくできていた。脱獄囚を筆頭に各キャラが魅力的であることに加えて、組み合わせをガンガン変えていって掛け合いをすればするほど面白くなる。各キャラに部分的に協力するインセンティブを与える設計が上手い。

ただ、局所的なキャラクターの起源やモチベーションの描き方には納得感がある一方で、タイトルにもなっている金塊を巡る騒動については最後まですっきりしないところがあった。金塊争奪戦は群像劇としては、つまりそれぞれの個人レベルの欲望によってドリブンされているものとしては読めるが、もっと大きなレベルとして明らかにテーマとなっている民族独立問題が上手く描けていたのかは微妙なところだ。
もっとはっきり言えば、金塊の行方が結局のところアイヌ独立という歴史的な空白に落っこちていって特に何にもならず消滅したことに大きな不満がある。冒頭から一貫してアイヌの暮らしや風俗を丁寧に描いていたリアル路線と、アクション漫画を動かすために架空の金塊を存在させてしまったフィクション路線の間で、虚実の落としどころを付けられていない印象がある。

とはいえ俺もアイヌの歴史には全く詳しくないため、もっと詳しい人からすると史実とシナジーした上手い読みみたいなものがあって、俺がそれに到達していないだけなのかもしれない。この漫画に関しては明らかに実社会の知見が評価に絡むので、煮え切らない気持ちのまま判断を保留したい。

 

タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら

ぼちぼち面白かったがかなり惜しい映画。

序盤から一貫して見た目と内面の食い違いがテーマになっていて、中年男二人が本当は割と善人であるのに見た目で大学生や警官たち初対面の相手からは徹底的に怪しまれてしまうという困難がはっきり設定されている。
その中で唯一解決のキーを握っているのがヒロインの女子大生で、彼女が中盤でラスボスの男子大学生と話し合いの場を設けたシーンはかなり良かった。その場に限っては一旦外見を脇に置いて、少なくとも彼らから見た限りでの真相をお互いに語るという歩み寄りの中で、男子大学生側は実は単に外見ではなく彼の中の真相に従って行動していたという捻りも魅力的だ。
一見すると勘違いから発生した戦争を描くアンジャッシュ的B級スプラッターであるように見えて、話し合いをソリューションとするギャップには独自性がある。

しかし、そこでこの映画は事実上終わってしまう。火事が起きてラスボスが発狂したことによって残りは残飯みたいにチープなB級アクション映像が流れて終わりだ。
主人公が開き直って勘違いされることを受け入れて戦ってしまい、女子大生と付き合えてよかったねというカスみたいな終わり方へと一直線に進む。実はラスボスすら勘違いに囚われていたというテーマが再び顔を出すのだが、そんなことは特に関係なくどついて終わらせてしまう。

この手の途中からいきなりテーマを放棄して終了する作品を俺は「脚本の人が途中で死んだ作品」と呼んでいる。

 

シン・ウルトラマン

面白くなくはなかったが、ウルトラマンが好きな人向けのFDで俺は想定層ではない。

ただ正直に言えば、『シン・ゴジラ』の格が事後的にちょっと下がったなという気持ちはある。
シン・ゴジラ』には官僚的対応のコメディ描写においてゴジラ映画の枠を超えた独特の強い魅力があったが、『シン・ウルトラマン』では同じようなものが試みられていた割には単に劣化していたからだ。『シン・ゴジラ』という映画に固有の魅力だと思っていたものが実は「シン」シリーズの作風であって、しかも二作目で劣化することもあり得ることが示されてしまった。これによって『シン・ゴジラ』が「単発の超名作」から「シンシリーズの中ではたまたま上手くいった方の映画」に格下げされてしまったような気はする。

 

知への恐れ

『有限性の後で』が面白かったと言ったら勧められたのだが、これは正直かなり微妙だった気がする。確かに新しい実在論の潮流と志を同じくしているし問題提起は鮮やかで平易だが、それだけ。

全体的に肝心の論証に成功しているとは思えない。例えば「真でない命題のみで成り立つ認識体系が真であることは受け入れ不可能である」というテーゼが主張されるが、俺はそれは普通に受け入れ可能であるように思う。別に個々の命題が本当に真であるという確信までは持たなくても、個別判断を一旦留保して暫定的にプラグマティックな結論を信じているフリをやっていくことは十分可能なように思われるし、少なくとも自然科学の一部はそのような態度で回っている。
また、「結局我々から見て現実的・整合的な体系しか受け入れられない(ので受け入れ可能な体系は見た目よりも遥かに少ない)」という主張も論証が論点先取であり納得感はない。マルクス・ガブリエルとよく似た、重要な点については常識的な感性で片付けようとするタイプの議論だ。

 

Python 3 エンジニア認定データ分析試験

www.pythonic-exam.com

名前通りPython3でのデータ分析技能を証明する資格。難しくはなく、60分の試験が10分で終わって97.5/100点だった。
これを取ったからといって何かができるわけでもないが、これも取れないようだと何もできない。俺は元々エンジニアではないし実装は専門外なので若干の勉強にはなった。

とにかく実務志向が強く、環境構築からコーディング規約まで試験範囲に含まれているのは思想の強さを感じる。また、Pythonでのデータ分析には標準ライブラリではなくサードパーティ製のライブラリが使われるのが一般的なことを受けて、Pythonというよりはそれらの特化したモジュールについて問う試験となっている。
これからPythonでデータ分析をする予定があるなら取ってもよいが、使う予定はない人や単にPythonの勉強をしたいというレベルの人には微妙なところ。

 

データサイエンティスト数学ストラテジスト上級

www.mathdatascience.jp

「データサイエンス数学ストラテジスト」は、データサイエンスの基盤となる数学スキル、リテラシーを学び、その理解度・習熟度を測定することで、データサイエンスにおける数学を扱う技能を認定する資格です。

(公式HPより)

データサイエンスの数学部分をフォローするらしい資格。難しくはなく、37/40点で最高評価☆☆☆だった。

正直なところ、「データサイエンスブームに数学検定協会がいっちょ噛みしてきた」という印象の資格。出題範囲が適当に寄せ集めているだけであまり思想を感じない。
公式テキストに書かれている分野はかなり広く、二次方程式の解法からパリティチェックまでかなり満遍なく出るが、ドメイン知識とか言ってこじつけてるだけの問題も多い。三角形の外接円の求め方とか積分の漸化式処理をデータサイエンスで何に使うつもりなのか俺にはよくわからない。
ただ思想がフニャフニャなせいで無駄に範囲が広くなっており、もともと理系ではない人や高校数学が怪しい人にとっては相当しんどいだろう。

ちなみに今も掲載されているサンプル問題があんまりにもあんまりな内容なのでTwitterでバカにされていることが悪名高いが、これは概ね罠である。

確かにこのレベルの問題も出るには出るが、難易度の上下ブレが異常に広い中で最低ラインの難易度。上はArctanマクローリン展開くらいまでは範囲なので、シグマの定義を知っているだけで戦えると思ってかかるとさっくり弾かれることになるだろう。

 

生産コンテンツ

ゲーミング自殺 16連射アルマゲドン

趣味で書いている小説『ゲーミング自殺 16連射アルマゲドン』の進捗報告です(前回分→)。
一旦最後まで終わったので二周目に入って要らない部分を捨てたりする改修を続けています。5月は表紙イラストを依頼できるイラストレーターの方を探してメールやメッセージを出し続けていましたが、ようやく6月に引き受けて頂ける方が見つかり、10月くらいには投稿の目途が立ちました。めでたい。

字数

329125字→343166字

各章進捗

第一章 完全自殺マニュアル【99%】
第二章 拡散性トロンマーシー【99%】
第三章 サイバイガール【99%】
第四章 上を向いて叫ぼう【99%】
第五章 聖なる知己殺し【99%】
第六章 ほとんど宗教的なIF【99%】
第七章 ハッピーピープル【99%】
第八章 いまいち燃えない私【90%】
第九章 白い蛆ら【99%】
第十章 モモチャレンジ一年生【99%】
第十一章 鏖殺教室【99%】
第十二章 よくわかる古典魔法【99%】
第十三章 神っぽいか?【99%】
第十四章 別に発狂してない宇宙【99%】
第十五章 世界の有機構成【80%】
第十六章 パラノイアエスケープ【80%】

キャラ紹介⑧ 趙ちゃん

プロゲーマーのヒロインで、怪しい中国語を使うチャイナガールです。一人称は我、二人称は汝です。

誰よりも不真面目なプロゲーマーであり、金に魂を売っている拝金主義者です。
試合のたびに高額で買収を受け付けることを公言しており、僅かでも勝率を上げたいどこかのプロゲーマー事務所が匿名で振り込み、それを確認して試合開始直後にサレンダーしていることが多いです。当然ボコボコに批判されますが、Youtube謝罪配信という名目で開き直って歌って踊って有耶無耶にするところまでがいつもの流れです。

しかしこの滅茶苦茶な買収が成立しているのは、趙と正面から戦えば勝算は薄いと考える人が相当数いる程度には彼女が実力を認められているからでもあります。
シンプルな暴力性能に特化した彼方とはまた別のベクトルで趙は最近接戦闘を得意としており、雑な合気っぽいやつで全てをふんわり投げ飛ばしてしまいます。彼女に有効打を届かせるのは彼方でも至難の業で、最近接距離で彼方と相対して確実に無傷で抜けることができるのはプロゲーマー界広しと言えど趙くらいのものです。

そうやって正面からの殴り合いを回避しているからというわけではありませんが、彼方との仲は割と良好で、会えば少しお茶をする程度の仲ではあります。
もちろん彼方は本気の趙と戦いたいと思っているものの、趙があまりにも不真面目であるために却って諦めが付いて呆れ半分に肩の力を抜いて話せる相手となっています。全てが適当に見えて大局的には意外とベターな方向に進んでいることが多いのは趙が持つ数多い長所の一つです。