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23/8/1 『席には限りがございます! (にはりが)』大反省会(2/2) エピソード振り返り・全体総括・FAQ

にはりが大反省会、前回の続きです。引き続きネタバレを含みます。

本編リンク↓

www.alphapolis.co.jp

前回↓

saize-lw.hatenablog.com

サムネ用花梨さん

エピソード振り返り

読者アンケートではポジティブorネガティブな印象のエピソードについてもお聞きしました。ネガティブについてはだいぶバラけた一方、ポジティブについては以下が人気エピソードでした。

・姫裏の蘇生~病院脱出
・姫裏 vs 涼&穏乃
・姫裏 vs 花梨&理李&小百合&穏乃
・ラストバトル全般(特に大オチのギミック)
・エピローグ

全体的にキャラ人気とエピソード人気にはそれほど関係がない印象を受けます。人気が高い小百合や撫子が活躍するシーンを抑えて人気8位の姫裏が圧倒的なエピソード人気を占めているため、ライトノベルは長大なキャラクター紹介文という信条を改めた方がいいような気がしてきます。

前回も書いた通り、姫裏が圧倒的なバトル人気を誇る理由は能力が戦闘向きではないために展開が読めないからです。病院脱出シーンでも、即決で妹を裏切ることで「えっこの話これからどうすんの?」という引きを作ったために一気に関心を取れたとのことでした。ムーブが読めない異常者はキャラ人気はそれほど高くなくてもプロット上では強いです。

そしてラストバトルと大オチのギミックはポジティブなエピソードとして挙げられることが最も多かったです。ラストを最初に確定させてから多くのキャラや能力や設定を逆算で配置していますが、既出情報だけで予想されないギミックを組むには「他の伏線回収に使われて終わったと思われていた情報がもう一回伏線になる」みたいな感じのリサイクル方式が便利だと思いました。

反面、ネガティブなエピソードとして挙がりがちだったのは龍魅の回想シーンや姫裏が灯に好意を持つシーンです。これらはただ単によくわからなかったという理由なので改善の余地があります。

 

全体総括

概ね問題なく良かった

全体的に評判が良く、「普通に面白い話を書く」という目的はざっくり達成された気がします。解説編(→)で書いた物語の枠組みはそれ自体で面白いわけではなく(一応テンポが良かったとか飽きなかったという感想に反映されてはいますが)、キャラとかギミックの内容的な部分が本題なのでそこの評判も良くて良かったです。

前回の『ゲーマゲ』の反省によって今回はヘイト管理を徹底しており、各キャラが人命を尊重するようにしました。遺体は必ず埋葬する、殺すモブはこいつ絶対死んだ方がいいだろくらいまで好感度を下げる、動物を含めて殺人対象にはなるべく合意を取る等が『にはりが』のヘイト管理ルールです。何もせずに虐殺しまくって怒られまくった彼方の犠牲は大きい。

隙あらば露悪的な展開を入れようとする癖もなるべく抑えています。例えば姫裏を倒すシーンは穏乃の蘇生と爆発を無限に繰り返す予定もありましたが、それはちょっと絵面が痛すぎると思って避けました(でも二回爆死させただけで「人の心が無い作戦」みたいな感想がけっこう来てました)。最後の大オチも実はその場で強姦してもギミック的には問題ないのですが、『にはりが』は読後感が良い普通に面白いラノベなので胸糞展開を避けました。

 

チート能力を通じて現実を知る話

読者会で文学に詳しいブロッコリーマンから「異世界転移を試みることを通じて逆説的にチート能力の限界とかままならなさを実感して現実を知ってちゃんと生きられるようになる話だよね」みたいな全体評があってめっちゃいい読みだな~と思いました。俺はそんなに考えてなかったです。

最強のチート能力を得たところで独りよがりに生きていくことは出来なくて、世界には色々な人がいて自分の意志とか行動はどこまでも自分でマネジメントする必要があります。席には限りがあるなら戦うしかないし、何もかも魔法のように上手くいくわけではありません。結局のところ生きていく以上、現実に残るにせよ異世界に渡るにせよ、チート能力それ自体がどうこうというよりもっと本質的な自分の弱点を克服したり新しい目標を見付けたりして素朴に頑張っていくことになるという、異世界転移無双ものに対して逆張りした話だったような気もします。

 

バカキャラ書けない問題

今回残った唯一最大の問題が「バカキャラ書けない問題」です。僕は昔からバカキャラを書くのが苦手で、「バトロワでキャラたくさん出せるしいい機会だから練習しよう」と思って切華、霰、霙をバカ枠にする予定でした。が、全て上手くいかず結局は全員頭良くなってしまいました(脳筋と天真爛漫の予定が文武両道とクールロリになった)。

ほぼ同じ問題として、キャラが勝手に頭良くなりすぎて常に理詰めで動いてしまう問題もあります。読者アンケート感想にも「キャラが全員揃って頭が良すぎる」「キャラのムーブが合理的すぎる」という感想が極めて多いですが、僕としては「普通こんくらい考えて動くだろ」という認識であまり意図したものではなく頭脳戦はコンセプトでもありませんでした。上ブレしているのは良いことですが、アンコントローラブルな限界であることに留意する必要はあります。

読者会で相談してみたところ、「花梨はきちんとバカキャラをやっていたので良かったのでは」という指摘があってそれは確かにと思いました。最序盤で状況把握が遅い花梨は理李に説明される形で読者への解説を担っており、理李との知能差が問題なく描かれています。また、龍魅も裏切りを懸念していた割にはケアせずに突っ込んで『爆発』が直撃するバカ寄りのムーブをしているし、陽には意識していなかったところでちゃんとキャラに合った知能低めのムーブが発生している気もします。

そもそも「どうすればバカっぽくなるかを考えるのではなく、バカキャラがバカなりに魅力的になるシーンや発言を描く方向で考えた方がいい」的なアドバイスを貰ってかなり頷けました。僕はバカキャラのことを表面的に「考えが足りないキャラ」くらいにしか思っていなかったのですが、キャラである以上はどこかで長所を描くことがマストです。例えば典型的なバカキャラの良ムーブが「俺はバカだからわかんねえけどよお~」から始まる本質を突く発言で、バカだから状況把握が遅れているが故に状況を単純化して目から鱗の提案が出来るという描き方です。まあ現実ではそういうことは起こらないのですが、フィクションなので視野が狭いなりの強みという発想が有り得て、前提知識の違いに注目して考え方の違いを導くのが一つモデルケースです。

また知能的な描写以外にも、「キャラが合理的すぎる」というのは「情で動かなさすぎる」ということの裏返しでもあるという指摘もありました。一応、小百合には理と情の間の揺れがかなりあるほか、理李は「理では花梨を切るべきだが情で切らない」という判断をしていますが、情部分はモノローグよりはムーブとして発言や描写で示せた方が魅力的かもしれません(「だが断る」が実はそういうシーンだというのは腑に落ちました)。

 

没キャラ集

「キャラクター紹介シート以外にキャライラストはないのか」というコメントがありました。正規のイラストはそんなに余っていないですが、nijijourneyで生成したけど使わなかった没キャラをあるだけ貼って供養します。左から順に「原案メモ」「没キャラ」「本物キャラ」です。

没小百合

没案はちょっと弱弱しくて病人すぎます。身体が弱くて線の細いキャラが『身体強化』を得るというギャップ自体はとても良いのですが、言うて初手から自殺する胆力はあるし性格的にも意外と直情的で頑張るのでもう少し生気のあるものを選びました。

没切華

没案は立ち姿がやや内股気味にも見え、ラインの入ったオシャレな模様が町娘っぽい感じです。ガチ武闘派につき実際の剣道着に近い方がキャラに合うため、装飾を排したシンプルな意匠を選びました。

没撫子

没案は本物より幼くぽややんとしすぎています。撫子は自身の年齢を隠しているわけではないし、外見が幼いだけで実際にはシャキっとしていて頭が良いのでもう少しシュッとさせました。ちなみに撫子だけ私服ではなく制服を着ているのは、いい年をして女子高生をやっているキャラであることを強調するためです。

没月夜

没案はメスガキっぽいというか悪戯好きそうな表情をしています。現役中学生だしこんなもんかなという感じもしますが、特に悪戯っぽい要素はなく、厨二病でも素朴に良い子なのでもう少し落ち着いた表情のものを選びました。ラフが下手すぎる。

没龍魅

没案の方が立ち姿に余裕があってちょっと気さくそうな感じです。実際にはけっこう方言がいかつくて言葉の少ないキャラであるため、もっと硬めに警戒して立っているようなものを選びました。あと一目でわかる長身の方が望ましいです。

没涼

没案もユニセックスな感じの女性ではあるのですが、モードな方向に美意識が高い女性という印象です。もっとスパダリな彼氏役っぽいビジュアルの方がキャラに合うため、男性的なジャケットを着た王子様っぽいものを選びました。

没穏乃

没案は病み成分が強くて暗そうな感じです。序盤においてメンヘラで病んでるところに注目した造形ですが、本格的に動き出す後半では相当気が強くてビンタとかしてくるのでそちらに合わせてもっと高飛車でキツそうなキャラにしました。

没灯

没案のアンニュイで秘密の多そうな白髪美人お姉さんが個人的にはかなり好きなのですが、常識人の社畜というキャラであるため、いかにも人目を引きそうなビジュアルはやりすぎだと思ってもう少し地味なものに抑えました。

没神庭姉妹

これは割とどっちでも良かったですが、「旧家だから育ちが良いけどネグレクトされてるから育ちが悪い」みたいな微妙な立ち位置なので、綺麗すぎない方がいいかなと思って髪がモシャってる方を選びました。ちなみにnijijourneyは双子が異常に得意で、Twinsと入れるだけで常に良い感じの双子を出してくれます。

没姫裏

没案の方が目線が鋭くて構図的にも実力者っぽい感じです。実際のキャラとしては没案の方がイメージに合致しますが、そういう姫裏の本性は作中で開示していく部分であって最初に読者に見せるビジュアルとしては「何でもできるスーパーお姉ちゃん」の方が良いと思って右の優しそうな方を選びました。ただ、異常者ムーブがビジュアルと合致しなかったという意見も少数あったのでこの判断は諸説です。

没女神

没案は正統派ヒロインすぎます。なろう系を皮肉った超長文演説を披露するため、見た目も少し底知れなさがある方が良いと思って目を閉じた笑顔を採用しました。

没AA

没案は笑顔を浮かべていて優しそうな感じがします。淡々と仕事をこなすマシーン的な立ち回りなので、もっと感情が見えない無表情なものを選びました。

 

FAQ

アンケート・お題箱・読者会で発生した質問への回答集です。

設定については明確に決めている箇所とそうでない箇所があります。僕は設定をガチガチに詰めることへの興味が薄いため、作中で不要なものについては決めていないことがけっこうあります(使うときに決める派)。

 

能力について

(『龍変化』について)

龍は具体的にどのようなスペックなのか。

ファンタジーにおける平均的な龍くらいです。
自衛隊と交戦したら甚大な被害を与えはするが最終的には討滅される程度だと思います。強い生物というだけなので凄い物理攻撃で殺せます(概念系である小百合の『身体強化』と違って『爆発』で死亡したのもそのため)。

 

(『龍変化』について)

龍魅がドラゴンになっているときに服ってどうなってたんでしょうか?

どうとも取れるように明示していませんが、一応は服ごと変身している想定です。
いちいち服を破壊して全裸になっていたら取り回しが悪すぎるというだけです(龍魅はそんなに気にしなさそうですが)。

 

(『蘇生』について)

対象になる「お姉ちゃん」の厳密な定義は何か。戸籍は参照されないのか。そもそもチート能力を自然言語で記述することによる曖昧性はどのように解決されているのか。言語を持たない種族はチート能力を手に入れられないのか。

対象を厳密には設定していません。戸籍が参照されるかどうかも不明です。
結局のところ、チート能力は女神の独断で与えられます。女神はなるべく願いを叶えようとはしますが、それは単に女神がそういうスタンスを取っているというだけです。望まれたチート能力を100%正しく与えるシステムはありませんし、女神自身もそこまで強く正確さにこだわっていません。よって自然言語を用いたコミュニケーションが誤る可能性は常にあります。言語を持たない種族に対しては女神が推測したりボディランゲージを使ったりしてある程度は何とかなりますが、何とかならないケースもあります。

 

(『動物使役』について)

人間も動物なので、霙がその気になれば人間も操れそうなのですが霙(とLWさん)の認識はどうでしたか?

人間も使役できます。作中では霙が一度も思い至らなかっただけで、人間も動物なので普通に適用対象です。
ただしあくまでも「心を通わせて共闘する」能力なので、反目している人間を洗脳して完全に操れるわけではありません(設定上の安全弁)。

 

(『動物使役』について)

動物使役や植物使役は食事や消化物にも使えるのでしょうか

どのくらい原型を留めているかによりますが、全く使えないことはないです。
『動物使役』や『植物使役』は生物学的な意味での厳密な区分ではなく、感性的なそれっぽさによって使役の精度が決まります(例えばワカメは厳密には植物ではないが、見た目かなり植物っぽいし植物扱いされがちなのでけっこう使役できる)。食事も見た目ベースで決まってきて、新鮮なサラダならそこそこいけるが味噌汁に入ってたりするとキツイみたいな感じと思われます。

 

(『無敵』について)

阿久津らは例の作戦の前に無敵能力のテストをしなかったのか

涼と穏乃が廃電波塔を倒してみせたデモンストレーションが一応『無敵』のテストに相当します。
そこで涼は「確かに身体が触れている相手は無敵化する」という嘘を小百合と龍魅に確かめさせました。撫子くらいの観察力があればその場で過大申告に気付けたのですが、龍魅も小百合も観察が強いタイプではないのでその簡易テストで騙されてしまったということです。

 

(『模倣』について)

月夜の能力は模倣できなかった?

できません。
撫子の『模倣』は話が進むごとにどんどん強化されていきますが、「対象にする能力の発動そのものか発動の痕跡を目視しなければならない」という限界があります(芝居の観察は視覚ベースであるため)。『無敵』をコピーしたときも涼の発動を半秒はちゃんと見ていますし、『操作』をコピーしたときもdiscord上にある発動の痕跡は穴が開くほど凝視しています。
とはいえ、それは撫子が演技をする上での都合であってチート能力にかかっている制約ではないので、撫子があのまま『模倣』を使い続けていれば伝聞だけでコピーできるようになっていた可能性もあります。

 

(『加速』について)

加速の能力で思考速度上げて攻撃の軌道を読む等して回避するのは可能?

ある程度は可能です。
ただし攻撃がゆっくり見えるだけで身体動作が早くなるわけではないため、限界はあります。『加速』を使っている理李の運動神経はかなりいい方ではありますが、姫裏や切華のようなガチ強者勢には『加速』を使っても瞬殺される程度の水準です。

 

(『加速』について)

今思えば8話で理李が即座に能力が使える事を叫んだのも真の能力の伏線?

仰る通りです。伏線というほどではないですが、後からでも整合性が取れるように描写したシーンです。
実際には理李はその場で自分の思考が加速できることを確認して「使えるぞ」と叫んでいますが、問い質されたら「ちょっと爪で皮膚をひっかいて『治癒』が使えるか試した」とか言って誤魔化すつもりでした。

 

(『蘇生』について)

生前に面識のない人でも蘇生できる?

できます。
作中では支援能力として使われていましたが、その気になれば地平線まで埋め尽くす軍団を何度でも作れるため実は一人で世界を滅ぼせる戦闘力があります(蘇生者を操れるわけではないという点さえクリアできれば)。

 

(『即死』について)

月夜の『即死』は鏡で見た自分にも有効ですか?

有効です。鏡や水面を介した視認でも発動しますし、自分自身を対象から外す制約は特にありません。
しかし実は『即死』は自動発動する能力ではなく月夜が自分の意志で起動する能力なので、右目で鏡が見られないことは特にありません。月夜が眼帯を付けているのは「何かの間違いで『即死』が暴発したら危ないから」「いつでも殺せる状態で人と会話をするのは失礼だから」みたいな安全弁と優しさ、あと単にかっこいいからです。
ただ「『即死』は自動発動型ではなく起動型である」ということは他の転生候補には周知されておらず、理李や切華は念のために保険をかけて『即死』は自動発動(眼帯を外したら周囲一帯の生物が即死する)と想定して即決で殺害しています。

 

(『爆発』について)

穏乃の『十メートル先まで巻き込む大爆発を起こす能力』は厳密には「自爆能力」では無く自分が巻き込まれない場所に爆発を起こせるのではと思ったのですが実際はどうなのでしょうか?(「巻き込む」という文言に自爆という意味が含まれているのでしょうか?)

必ず自分が爆心地になる能力です。仰る通り、「巻き込む」という文言が「(自爆に)巻き込む」という文意になっています。

 

一度考えたけどボツにした能力はありますか?あればボツにした理由も合わせて紹介して欲しいです。

撫子の能力は元々『魅了(テンプテーション)』でした。

初期メモ

子持ちで大人の女性だから魅了という安直な発想で、「相手の理想の女性を演じることで相手を魅了して洗脳できる」みたいな能力でした。ただ通れば勝ちのワンキル系能力なので使いどころが難しい、女性間で魅了が機能するのは流石に説明が必要な気がする、個人的に色気溢れる大人の女性に興味が無いのでやる気が出ないなどの理由によって没になりました。最終的にロリキャラになった撫子の芝居設定は能力が『魅了』だった頃の名残でもあります。

 

作中設定や作中描写について

転移は来年の4/1を待つという選択は無かったのか

ありません。来年以降も同じ世界でやる保証がないからです。
確かに女神は「異世界転移のリクルートは毎年場所を変えてやってる」と発言していますが、それは必ずしもこの世界だけではなく色々な世界の色々な場所でやってるという意味のつもりでした(去年の姫裏のケースが同じ世界でやったのはたまたま)。

 

姫裏さんが蘇生した分異世界の枠が1人増えなかったのか

増えません。
転移が三枠しかなくなってしまったのは単に女神の事務的な不手際に過ぎず、それが現状で用意できる上限です。希望者の人数に応じて増減できるものではありません。

 

姫裏さんが涼さんのクッキーを食べたのは迂闊ではないのか

迂闊な行動ではあります。が、姫裏自身の責任においてここに罠はないと判断したということです。

 

撫子以外はレズ?

まあそうです。少なくともバイで、撫子もバイです。
女性同士の恋愛にわざわざ言及する発想がないほどそれが当たり前の世界なので、作中では同性愛者という概念自体がほぼ無いと思います(「女性が好きな女性」に「カレーが好きな人」くらいの情報量しかない)。『すめうじ』も『ゲーマゲ』も何の説明もなくそれでやってきて今回初めてツッコミが入ったのけっこう凄いですね。

 

撫子の二人目の子供の親は学生?

そうです。ちなみにもう別れました。
撫子はやれること全部やっとくみたいな好奇心マインドが根底にあって、「女子高生やってるから一応彼氏くらい作っとくか」くらいの温度感でそこまで彼氏君に興味なかったです。子役時代に子供作ってるのもそういう流れです。

 

連絡手段がdiscordである必要はあった?(女子高生はLINEとかインスタじゃない?)

その説はあります。あまり深く考えておらず、僕が普通に使っていてdiscordの方が便利なので適当にdiscordにしてしまいました。
一応設定上での後付けの言い訳としては、discordは参加者ではなくAAが判断して導入したものです。他のバトロワ参加者が日常的にdiscordを使っていたわけではありません。

 

もし転生枠が一つしかなかった場合、切華や撫子はお互いを切ることができたのか。

やむを得ない状況であれば切れます。
まず、撫子と切華は親子にせよクラスメイトにせよふつうに人間として仲が良いので、お互いに情はかなりあります。撫子は演技家だからといって情を全部消せるほど割り切れるわけではないし、切華も自分のためだけに親しい相手を切るほど自己中心的な性格ではありません。
ただ、それはそれとして互いに互いが自分と同じ求道者気質であることを知っているため、「まあお互いに納得尽くで他に手が無いのであればやむを得ない」くらいの温度感ではあります。そもそも切華のストイックな性格も撫子から遺伝したところが大きいです。
とはいえ、今回が本当に「やむを得ない状況」に該当するかどうかは微妙なところです。撫子の異世界転移モチベーションは好奇心ベースで他の参加者の中でも割と緩い方なので、まあ切華を殺すほどではないかな~と思って降参するような気はします(降参はするけど面白そうだから協力はします)。

 

小百合が龍魅の背中の刺青を見ることができたのはなぜ?

単に龍魅は自宅ではかなり薄着で過ごすタイプだからです。
暖かい季節ですし、たぶん丈の短いタンクトップ一枚くらいで寝ていたのでしょう。ただ龍魅と小百合がセックスかそれに近い肉体的な距離の行為をしていたと匂わせる描写と解釈されるのは本意ではないので、やや迂闊な描写だったかもしれません。

 

素の身体能力は揃っているのに頭脳、性格、外見が揃っていないのはどのような意図、仕組みなのか。

頭脳、性格、外見は女神の祝福によってバフされる身体能力に含まれません。
設定的なことを言えば、女神の祝福は指定したステータスを超自然的な力によって底上げするバフであって、筋量や脳神経が物理的に組み換わるわけではありません。

 

トラックの破片で切腹したら「轢かれて死んだ」扱いになるのか。

なりません。AAがトラックの基準について聞かれたときに「現地での常識的な判定による」的なことを言っているように、厳密に論理的に決まっているというよりは現地の常識基準での判定です。
身も蓋もないことを言えば、重要なのは設定的にどうかというよりは読者がそれで納得してくれるかどうかです。トラックの破片で切腹する描写は「そんな抜け道が!」じゃなくて「いやそれはないだろ」という感想になると思うので無しです。

 

主人公たちのいる世界にも他の世界からの異世界転生者がいるのか。その場合その異世界転生者がまた転生したら2つ目のチート能力がもらえるのか。

特に考えていなかったですが、実はいるかもしれないし再転生もできるかもしれません。
少なくともAAやZZZから見て主人公たちのいる世界が特別である理由は特にないので、そういうことがあったとしてもおかしくはありません。

 

ZZZやAAは彼方と似たタイプの存在者?

そうです(裏設定)。
にはりがで言う上位存在はゲーマゲで言うところの貫存在(トランセンド)であり、世界を貫いて異世界を管理する能力を保有しています。

 

切華さんの小指はその後復活したのか

不明です。続編があったときの状況次第でどちらとも取れるようにエピローグで明示していません。
『蘇生』は発動時に遺体の損壊をほぼ完全に修復しますが(バラバラになった穏乃の身体も戻したりしている)、死因とは関係なく前日に切断した小指まで戻すかどうかは微妙なラインです。

 

涼さんが死んだら自動的に穏乃さんもリタイア(殺されるor後を追って自殺)する&先に穏乃さんが殺されたら無敵の涼さんに姫裏さんが殺される、という点で人質作戦は筋が通っていないのではないか。

涼が先に死んだら穏乃が勝手に死ぬのは単に一石二鳥なので良いのではないでしょうか。
確かに穏乃が先に死んだケースでは『無敵』の涼を相手にするのは厄介ではありますが、姫裏は強いのでタイマンでも涼には負けません。クロスボウを突き付けたときも姫裏は別に涼が死ぬと確信していたわけではなく、どっちが死んでも構わないと思っています。姫裏は涼を殺したときは余裕すぎて『建築』を全く使っていませんし、戦力的には全然本気じゃないです。

 

エピローグの霰は何だったんですか?

霰にも穏乃と同じメンヘラヤンデレ系の血が流れているので灯への巨大感情を拗らせています。
もともと霰がマイペースな性格だったのは生来の性格というよりは他人との交流経験に乏しかっただけで、異世界で他人と交流するようになって人並みに感情を持つようになった結果です。
争奪戦を通じて霰も花梨のように姉から影響を受けて成長して諸々最悪寄りの教訓を学んだのもありますし、冒頭付近で女神とAAが発した「チート能力者が同じ異世界に転移すると碌なことにならない」という警告の回収でもあります。

 

頭が回る撫子が理李の能力偽装や最後のギミックに気付かなかったのは何故?

理李については接触が少なかったからです。
初手の接触で肋骨を折るところまでは通ったということは「まあそんなに大した能力ではないだろう」とざっくり優先度を下げており、その後も交戦が生じなかったので特に更新する機会がありませんでした。生徒会長の小百合と違って撫子には別学年との人脈はそんなにないので理李の普段の様子を知らなかったというのもあります。
最後のギミックについても、櫻家は花梨との接触機会が少なく「『蘇生』なら攻撃に使われることだけ警戒していればいい」という程度の想定に留まっていました。これに関しては逆にこのアイデアに到達した花梨の方が偉くて、もうドロップする前提で「敵を倒す」という発想を捨てたからこそ思い付けた策という感じです。

 

最後の撫子のムーブは「自分よりも切華の転生だけは確実にしたい」という親心だったということですか?

概ねそうです。
戦闘を開始した段階では可能なら自分と切華の二人を『操作』で飛ばしたトラックで轢こうと思っていたのですが、小百合の投石を受けて「二人揃っては無理だな」と判断して切華一人で妥協しました。もともと撫子は転移のモチベが高いというよりは自分の命が安い人で、参加者の中では相対的にモチベーションが低いので、いざという時は譲れるくらいの温度感ではあります。
ただ親心というよりは普通に親しい友達感覚の方が近いです(お互いに親子という意識はあんまりない)。

 

作品外の事情やコンセプトなどについて

章タイトルはやる夫スレを意識しているのか

いえ、やる夫スレではなく異世界転生系でよくあるタイトルという文脈です。
「~は最強なようです」「~で無双するようです」みたいなやつです。何故伝聞調なのかはよくわかりません。

 

各キャラの声のイメージ(あの作品のあのキャラとか)があれば教えてほしい

小百合はCV早見沙織、花梨はCV佐倉綾音です。

 

細部をガーッと描写してゴア的な雰囲気出すのって趣味なんですか?

まあ趣味です。
ゴアが好きなつもりはあまりないですが、主人公が無麻酔四肢切断されるシーンを毎作入れているあたり普通にそういう趣味という説もあります。

 

花梨が主人公の小説か、それとも群像劇かどちらのつもりで書いた?

群像劇です。そのために花梨が活躍しすぎてバランスが崩れないように中盤で気絶させました。

 

運営にゴネないのは何故? 定番展開ではあるが、上位存在へ反抗してルール自体をひっくり返そうとするキャラ/展開が欲しかった。結果的に失敗してもいいけど、みんな物分かりが良すぎる。

「vs運営の構図にしない」という方針は強い意図の下で明確に設計したもので、まず設定レベルのことを言えば、運営にゴネないのは特に意味がないからです。
バトロワが始まった直接的な原因は女神が転移枠を用意できなかったことですが、ここは完全なポカミスであって裏の陰謀や思惑は特にありません。だからゴネたところで女神は「本当に申し訳ないと思っています……」とか言うだけで何も解決しません。実際、女神と天使はかなり誠実なロールバック対応をしていますし、ドロップする権利は最初から全員にあって、黙ってちょっと遠くに逃げて連絡を断てば殺される危険は一切なくなります。
ちなみに女神と天使も参加者に殺し合いをしてほしいとは全く思っていません(するならするで止めないというだけです)。第14話でAAが発した「我々は異世界転移に関して可能な限り誠実な対応をしています。仮に皆様の判断によって殺し合いのような状況が生まれたとしても、それは我々の関与するところではありません」という台詞は責任逃れではなく本心から「何やってんだこいつら……」と思っています。
意図レベルのことを言えば、vs運営という視点を排除した理由は二つあって、一つは定番すぎて面白くないからです。そもそも原典の『バトル・ロワイアル』の頃から定番すぎて今更わざわざ紙面を取ってやることではないと判断しました。もう一つは前作ゲーマゲが「プラットフォームのちゃぶ台を返す」というムーブを何万回も繰り返す話だったので、同じことをやりたくなかったからです。
参加者全員の物分かりがいいのは、根っこのところでは皆「他人と殺し合う理不尽なゲームに参加させられている!」ではなく「他人と殺し合うにせよ割の良いゲームに参加できている!」と思っているからです。皆初手で自殺する狂人なので、異世界に転移できるという大きすぎるリターンに対して他人を殺したり自分が死んだりするリスクは全然許容できる範囲であり、運営に文句を言うインセンティブが特にありません。全編を通じて参加者と運営ははっきり協調関係です。

 

「チート能力以前の〜」というフレーズが多用された割に意図を読み取れてない。強いていうなら身体強化オフにしたシーンの盛り上げ?

チート能力はあくまでも願いを叶えるための補助輪に過ぎず、最も重要なのはチート能力を得る前から持っていた願いやこだわりです。
にはりがでは「なんか最強のチート能力を得たからいい感じに使おう」というよくある感じではなくて、「元々自殺するほど強い動機があって、それに合致するチート能力を得て利用しよう」という逆の順序です。チート能力があって人生が進むのではなく、チート能力を得る以前からチート能力ではない願いや能力があり、それは最初から自殺できる程度の胆力であったり、現実でも異世界でも譲れないこだわりだったりします(特に灯や切華や姫裏あたりはそれがとても強い)。
よってチート能力による殺し合いはチート能力と共に押し付けられたものではなく、チート能力があろうがなかろうが自らの意志によって自発的に参加するものです。だから運営と利害が一致していて対立しませんし、殺し合いを度外視できる局面では仲良くBBQをしたり一緒に住んだりすることができます。

 

なぜあのキャラが転移成功したのか、生き残ったのか、死ななければならなかったのかということに関するメタ的な(テーマ的な)理由が見出せなかった。席には限りがあるように世の中は理不尽で特に理由なく生きたり死んだりするという解釈でもいいが、前2作と比較してテーマ性が薄くて不満。

今回は文学的なテーマの一貫性よりもバトロワとしてのエンタメの面白さを優先しているため、キャラの生死に理由はありません。一般的にテーマ性とエンタメ性が矛盾するとまでは言いませんが、バトロワジャンルでは恐らく衝突するのではないかと思います。
バトロワものを面白くするための要件として「誰が死ぬか」は読めるべきではありません。人間の屑でも意地汚く生き残れるし、聖人でも死ぬのがバトロワです。よって「テーマ的に支持される正解の思想があってそれに沿っているものが勝つ」という設計にはしていません。
ただしキャラごとの生死をテーマレベルではコントロールしない代わりに、結果として生き残った者たちに対しては何らかの軸を通すというローカルなテーマを与えてはいて、それらは概ね自立と成長というテーマに包括されます。例えば花梨が姉離れして自立していたり、小百合が弱さと向き合ってしぶとさを手に入れたりしているのがそれです。

 

どうしても譲れないものがあって、しかしそれを実現する力が足りないときはどうするに対する回答があれば教えていただきたいです。36話の灯のセリフですが、作中で明確な回答が得られた感じがしません。

回答はありません。強いて言えば「回答がない」というのが回答です。灯は回答がなくて完全に詰んだことを正しく認識してしまったので誠実に自殺しました。

 

この作品にlwさんの思想や価値観は反映されているのか、そもそもこの作品が伝えたかったメッセージみたいなものは存在するのか

今回は普通に面白い話を書くことが目的なので、僕自身の思想や価値観は特に反映されていません。強いて言えば「チート能力を入手したからってそんな気持ちよく無双できるわけなくない?(世界も人生もそんなに単純なものじゃなくない?)」みたいな価値観はあるかもしれません。
この作品を通して伝えたかったメッセージも一切ありません。一応、花梨を中心に成長と自立のテーマを持たせていますが、それは「結局この話って何だったの?」とモヤモヤすることを避けてエンタメとしての強度を確保するための便宜的なものであって、僕自身は興味ないです。