LWのサイゼリヤ

ミラノ風ドリア300円

20/12/24 表紙が三枚あるノートを特注した話

トリプルカバーノート

大抵の二者択一には第三の選択肢が隠れているように、ノートの表紙も表と裏だけではない。

俺はいわゆるメモ魔である。
常にノートと赤ペンを携帯し、いつでもどこでもメモを取らずにはいられない。食事しながら何か書いているくらいならまだいい方で、歩いている最中や電車に乗っているときに突然ノートを取り出してメモを取り始めることも珍しくない。机が無い場所でメモを取るのは日常茶飯事であり、その場合は立ったままノートを空中に保持してペンを走らせることになる。
更に、俺にはノートにびっしり文字を書き込まないと気が済まないという悪癖もある。食べ物は平気でトイレに流す割にノートの紙面は非常に大切にしており、小さな文字を端から端まで書き込まなければ気持ち悪くて仕方がない。

この「空中でメモを取る」&「文字をびっしり書き込む」という二つの性質が融合したとき、「右ページの右端に書き込めない問題」が発生する。「右ページの右端に書き込もうとすると右手が宙に浮くためにペン先が安定せず文字が書けない問題」と言葉で説明するより、写真で見た方がわかりやすい。

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まず、こうして左ページに書く分には問題ない。ペンを持つ右手を右ページに置いて支えられるので、ある程度表紙が硬いノートでさえあればペン先はブレない。

問題は右ページだ。

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これである。
右手を置く場所が無いので右手が宙に浮いてしまい、ペン先が安定しない。空中で書きものをしたことが無い人は今ここで試してほしいのだが、この体勢で文字を書くのは難しい。

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今まで苦肉の策としてカッターマットを持ち歩いてノートと一緒に持つことでどうにか「右手置き場」を確保する技を使っていたが、面倒臭いし疲れるし変な人だしであまり良いことがない。最後の手段として左手で文字を書く訓練をして両利きになるという手も検討したものの、この文字サイズを自在に操るには何十時間を投資するのか想像もつかない。

俺が両利きになるよりはノートの方を改造した方が手っ取り早い。
この前ちょうどノートを使い切って新調する機会があったので、「右ページの右端に書き込めない問題」を解決するノートを特注することにした。要するに「右手置き場」をノートに一体化してしまえば良いわけで、俺にはそれを実現するアイデアがあった。あとはノートを特注できる専門店で制作してもらえばよい。

資本主義への反発かどうかは知らないが、いまどき「一点ものの受注」というコンセプトは多くのプロダクトでニッチ産業として成立している。特に手頃で身近なノートのオーダーメイドを受け付けている専門店はいくつもある。どこでも良かったのだが、原宿の『HININE NOTE』が一番近かったのでノートを片手に自転車を走らせた。

hininenote.jp

公式HPに記載があるオーダーメイド項目は①サイズ②カバー③リング④中紙⑤留め具等オプションの5つだけで、そこから外れた特殊規格のノートを作れるかどうかは不明だったが、店で相談すると快く引き受けてくれた。
応対してくれた技術者のお姉さんは見るからに有能そうな職人で、口頭で2分ほど説明するだけでノートの仕様と目的を完全に理解した。「なるほど……(作るのが)楽しそうですね」というコメントにはかなりの強キャラ感があった。

そして完成したのがこのノート。

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正面から見てすぐわかるようにリングが本来あるべき左側だけでなく右側にも付いており、触手の如き異形の風格を漂わせている。

肝心の構造は上から見るとこの通り。

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普通のノートの裏表紙にもう一つリングを接続して「三枚目の表紙」を取り付けている。なお、折り畳んだときにリングに重ならないように三枚目の表紙は他の表紙よりも少し短く裁断されている。

全部開いて持つとこんな感じ。

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通常のノートが持つ「左ページ」と「右ページ」に加え、「右ページ」の更に右側に「超右ページ」が出現する(三枚目の表紙)。この「超右ページ」の存在によって、ノートの両面開きには

①左ページと右ページを開く
②右ページと超右ページを開く

の二つのモードがある。動画で見ればすぐにわかる。

動画では①から②へのモードチェンジを撮影している。②では「右ページ」が相対的に左ページに置き換わると共に、「超右ページ」が右ページとして右手置き場に使用できる。

補足367:ちなみにゴムバンドも通常とは裏表を逆に付けるように特注している。本来はゴムの両端を裏表紙に留めて表表紙を渡るようにバンドをかけるのだが、
・三枚目の表紙もまとめて留めたい
・片手だけでバンドを外してノートを開けたい
という二つの理由によってゴムの両端が表表紙に留められている。

値段は税込みで3610円。特注に伴う技術費・加工費はかかっておらず、通常オーダーに加えて必要になった表紙やリング等の材料費のみの加算となる。他のどこでも買えないという価値に鑑みればかなり安い買い物だったと思う。

この三枚表紙ノートを使い始めて一ヶ月ほど経つが、全く問題なく意図通りに使用できている。2020年買って良かったランキング一位はこのノートで間違いない。

補足368:一応注意しておくが『HININE NOTE』のHPには特注に関する記載はなく、本来のオーダーメイドを超えた特殊仕様をどのくらい受け付けているかはわからない。常識的に考えて値段や可否は仕様や制作状況ごとにケースバイケースだと思われる。特注は自己責任で。