LWのサイゼリヤ

ミラノ風ドリア300円

21/1/16 お題箱回:こづかい万歳、二項対立、人狼etc

お題箱76

217.こづかい万歳読んでるんですか?

たまに無料公開される最新話くらいですが読んでます。かなり面白いと思います。

comic-days.com

漫画ビューワーをブログに埋め込めることを初めて知りました。

僕は『こづかい万歳』に通底している 「制約が物事を面白くする」という思想にはかなり共感する方です。ひたすら自由なオープンワールドゲームが意外と面白くなかったり、適度に労働している方が趣味が捗ったり、時間の限られた朝の方が作業がよく進んだり、そういうことはいくらでもあります。
だから40代のおっさんが100円そこらのお菓子を買うかどうかで頭を悩ませてる様子も巷で言われるほどグロテスクではないというか、まあ人生ってそういうものだよねみたいな感じはあります。更に言えば「家庭を持ったり子供を作ったりするのもあえて金銭や時間に制約を設けて縛りプレイを楽しむためなんじゃないですか」とかついつい口を滑らせそうになりますが、それは僕とは無縁の話なのでよくわかりません。

あとキャラクター漫画としてもよく出来ていて、キャラクターを徹底的にエピソードで語る構成がすごく上手いなーと思います。
創作の一般論として「キャラクターの異常さを語る際には、それを口で説明してはいけなくて、とにかくエピソードで語れ」みたいなものがあって、僕はそれはかなり真実だと思います。「あいつは動物が嫌いなんだ」って会話で説明するくらいなら、登場シーンで猫の一匹でも縊り殺した方がいいです。「申し遅れました、わたくし月n万円でございます」みたいに異常者の自己紹介が毎回申し遅れるのにも理由があって、それはプロフィールよりもエピソードを優先して先に描いているからです。エピソードが先に来る都合でプロフィールが遅れるんですね。
ちなみに、とりあえず異常性を披露してからプロフィールを開示するという構成はジョジョのスタンドバトルと同じです(あちらもとりあえず何か極めて異常なことが起きて、それに遅れて本体が出てきて自己紹介をするという順番)。初登場のキャラクターにはとにかく最初に異常行動をさせてキャラを立てるという手法、逆に言うと、初登場時に異常行動もできないようなキャラクターは既にキャラ立てに失敗しているのでリテイクした方が良さそうです。

 

218.これまで読んだジャンプ漫画でLWさんが好きな作品ベスト10を教えてほしいです

特に深い理由はなく、ただ気になっただけです。少年漫画に拡張してもいいし、ベスト20くらいまで挙げてもらってもいいです。(多いほど嬉しい)

週刊少年ジャンプなら『ネウロ』と『めだかボックス』の二強です。理由はシンプルにそれぞれ主題が犯罪と政治だからで、逆張り精神の賜物ではあります。
とはいえ有名なジャンプ漫画はだいたい全部好きです。『ワンピース』『NARUTO』『BLEACH』『鬼滅の刃』『DEATH NOTE』『SLAM DUNK』『幽遊白書』『るろ剣』『封神演技』『北斗の拳』etc、とりあえずこのあたりは全部同列三位でいいです。ある程度売れているジャンプ漫画で「うわつまんな!」と思った例外は『ブラッククローバー』くらいしかないです。

 

219.二項対立を考える時に0か1かみたいなデジタルよりの話をされることが多いように感じるのですが、それは分かりやすさの問題ですか?

そんな気はします。
恐らく僕が理系の教育を受けた影響で、物事を二項対立に還元して明晰に対比させるような書き方はよくやっていると思います。というかそれは手段と目的が逆で、明晰に語るために二項対立を用いていると言う方が正確かもしれません。

しかし二項対立にはデジタルな0/1のように完全に切り分けるだけではないケースもいくつかあります。そうした例外のうちで特によく出てくるものを二つ挙げると、二項対立がアナログで連続的なケースとか、二項対立の対自体を崩したいケースがあります。

一つ目の「連続的な二項対立のケース」というのは、例えば物理的な「黒/白」対です。
白と黒というのは明度の問題ですから、黒を明度MIN=1で白が明度MAX=0とすれば、間に明度0.1や0.2のような項目が設定できます。具体的には灰色とか白ですね。また、近年のポリティカルにコレクトな世界観では「男/女」対も中間項を取るグラデーションやスペクトラムとして見る方が標準的です。
ただし、このケースでも話をする際にはとりあえずデジタルな0か1に切り分けてから論を進めると思います。これは単にレトリックの問題で、いくら0~1の間を取る値が可能であるとしても、最初に0と0.2から話を始めてしまったら何を言いたいのかわからなくなります。最初はそれぞれの極にある明確な対立を示して、その後で「実はその間に連続的な値を取ることもできます」と進めるのが話の筋というものでしょう。

二つ目の「二項対立の対自体を崩したいケース」というのは、例えば物理的な「青/赤」対です。
青と赤の物理的な定義は可視光線の波の長さで与えられていて、青は500nmくらい、赤は700nmくらいの波長を持つ光です。このように波長で見ると赤と青はある一定の値を示しているだけで、白と黒のように何かが最大値や最小値を取るような極同士の関係ではありません。よって通常我々が思っているのとは異なり、赤と青ではそもそも最初から何かが対立しているわけではありません(ただし、これはあくまでも波長の数値に色を還元する場合の話であり、文化的な含意やデザイン的な印象を考える場合はその限りではありません)。
この手の「実は二項対立が成り立っていない」という論理展開は人文分野でも頻出します。「弁証法」とか「脱構築」とか色々なバリエーションがありますが、特に僕が好きなのは「陰陽太極図」のモチーフです。
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この図で示されている「陰極まれば陽に転じ、陽極まれば陰に転じる」というフレーズは一度は聞いたことがあると思います。つまり対立しているはずのものを極めると何故かそれは反対のものに変わってしまうため、それをデジタルな二項対立として考えることはできないということです。そうやって捉えられるものには「民主主義/全体主義」対とか「暴力/友愛」対とか色々なものがあります(練習問題:どういう論理展開をすればこれらが太極図の論理に収まるかを考えてみてください)。
とはいえ、またレトリックの話をすると、こうした「本当は二項対立が成り立たない」という事態について語る場合でもまず最初にはどういう二項について論じたいのかをはっきり提示し、その後で「実はこの二項は成り立ちません」という順番で話を進めるべきです。最初から二項をきちんと立てないうちから二項の崩壊を書くのは、単に理解しにくい下手な文章だと言わざるを得ません。

結論として僕が言いたいことは、二項対立にも明確に成り立ったり曖昧に成り立ったり実は崩壊していたりと色々なケースがありますが、いずれにせよ最初は明確に成り立っているところから話を進めるのが論理の筋だということです。
無論これは僕が理系の輩であるためにどこまでも明晰な論理展開を好むというだけの話ですが、その結果としていつもデジタルな話をしていると思われている節はあるような気はします。

 

220.まえせつ!がつまらないのは美少女とお笑いの相性の悪さもあると思います(そもそものクオリティが低いのは否定しません…)

確かにそうですね。
「美形とお笑いの相性が悪い」というのは(あまり芸能に関心のない僕でも)たまに聞く話です。鳥居みゆきやイモトアヤコは芸人をやるには美人すぎるからあえて顔を崩すメイクをしているだとか、男性の漫才師も顔が良いと大成しないとかよく言いますね。漫才師の平均顔はフットボールアワーの岩尾みたいな感じだと思います(偏見)。
商業的には『まえせつ!』をバチバチの美少女キャラデザでやればそれはそれで今の悲惨な再生数よりは人気が出たような気もしますが、かなりデフォルメに寄せた美水かがみキャラデザだったのは、イモトアヤコのようにお笑いというテーマに対して誠実だったと言えなくもないかもしれません。

ちなみにTwitterでは「まえせつ全然面白くなかった」みたいなことを書いたような記憶もあるんですが、お笑いパートは実は結構面白かったです。

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僕は滑り芸がまあまあ好きなので、「泉こなたがやるしんちゃんのモノマネ」とかいうこの世の終わりの言い換えみたいなヤバすぎるネタをしつこくしつこく擦り続けたのは普通に笑って見ていました。どちらかと言うと何も生まない会話パートとかあまり魅力を感じないキャラ設定の方が厳しくて、絶望的な滑りネタをずっと擦ってたらむしろ見た可能性はあります(石ダテコー太郎のアニメとか割とそういうところないですか? 僕はそれもかなり好きですが……)。

 

221.たしかに人狼って遊びのくせに遊びが無いっていうか、むしろ競技って感じで息苦しいとこありますもんね

それはあります。

最初に言っておくと僕は人狼が有り得ないくらい下手で、盛り抜きで全日本人の下位0.01%くらいだと思います。僕はゲーム中に何をすればいいのかが何一つわからないため、会話も投票もサイコロを振ってランダムにしか行動しません。
現在「投票パートではランダムに投票を行ってはいけない」ということだけは辛うじて理解していますが、それも東大OBやプロゲーマーを含む10人くらいから5時間くらいレクチャーを受けてようやくわかりましたし、実はまだ「本当にそうか?」とちょっと疑っています。

その状態で人狼を語るのは恐縮ですが、仰る通り、人狼は変に競技的になったせいで訳のわからないことになっているという印象があります。たぶん本来マーダーミステリーのように勝敗を競わないロールプレイゲームとして作られた遊びが、ローカルなコミュニティの中でのローカルルールを皆が内面化してしまった結果、あたかも論理的に勝敗を競えるゲームであるかのように誤解されてるんじゃないですかね?

僕の考えでは、人狼というゲームで論理的に意味のある部分は一つもないです。
辛うじて認知的な意味があるのが投票パートですが、議論パートは完全に無意味です。無意味というのは「判明する情報が少ない」という意味ではなく、「何を喋っても誰も何も喋っていないのと同じ」という意味です。よって人狼の議論パートで用いられる一定の推論規則も実は全く論理的なものではないんですけど、皆がそれを定石として内面化しているために機能しているように見えているだけです。
「実質的には空虚だけど皆が内面化することで機能しているルール」というのは、例えば「道路は左車線を走る」という交通ルールが該当します。本当は車が走るのは右車線でも左車線でも別にどっちでもいいんですけど、とりあえずどちらかには統一しておかないと事故が起こります。よって、「左車線を走る」というルール自体が本質的に事故回避に寄与しているわけではないのですが、皆が全く同じルールを内面化していることによってのみ事故が避けられるわけです。
人狼もそれと同じです。狼が占い師を騙ろうが市民を騙ろうが狼をCOしようが本当は全くどうでもいいんですけど、とりあえず「まずは市民と言っておくのが定石、占い師騙りという上級戦略がある、狼COは荒らし」とか適当に決まっているルールを皆が共有して内面化しているため、何となくパッと見では議論らしきものの見せかけが成立しているんですね。

 

222.自分はLWさんに触発されて平成仮面ライダーを555までイッキ見した者ですが、LWさんは剣以降の平成ライダーの視聴は続けられていますか?自分はもういいかなって気がしてきました。

その気持ち、かなりわかります。
仮面ライダーって毎週漫然と見ることを想定したコンテンツで、後になってハイペースで追いかけることを想定していないので、イッキ見は厳しいところがあります。これは秘密ですが、実は禁断の1.5倍速視聴とかも使いながら見ました。
剣以降も見るのがいつになるかわかりません。とりあえずディケイドまで見たいと思ってはいるものの、ディケイドまでって50話×10=500話ありますからね。銀河英雄伝説も目じゃない物量です。

ネットカルチャーだと仮面ライダーって全作品がオタクの一般教養みたいになっている節もありますが、アレって「クウガ~555まで見たオタク(僕や投稿者)」や「剣~電王まで見たオタク」や「キバ~オーズまで見たオタク」みたいな層が世代別に一定数ずついるだけなんでしょうね。ネットではそいつらのコメントがまとめて可視化されるため、「仮面ライダーを全作品見ているオタク」がたくさんいるかのような幻影が浮かび上がっているというのが恐らく真相です。

 

223.https://wolf.fandom.com/ja/wiki/LW

上に書いた通り、僕が人狼をやると早々にリア狂認定されて誰も真面目に話を聞いてくれなくなるので市民でも狼でもあまり違いはないです。

 

224.完全に興味本位なんですけどボーボボみたいな滅茶苦茶で筋が通ってないような作品でも記事って書こうと思えば書けますか?

全然書けると思います(僕はそんなにボーボボに関心がないので多分書きませんが)。
特に詳しくないですが、「不条理もの」っていう作品ジャンル自体普通にありますしね。それにボーボボは巷で言われているほど破綻した作品でもないと思います。読者がキャラの設定とか目的をちゃんと認識できる程度にはプロットがありますし、難解で知られるギャグパートも一定のパターンがあるような気はします。

 

225.読書をしている際に、その本を読む意味が薄いと感じた時(本のレベルが低いと感じたり、あるいは難しすぎて理解できないと感じた時)、その本を最後まで読みますか?それとも途中で辞めますか?

基本的には最後まで読みます。

まず「本のレベルが低いケース」は恐らく「そもそも著者のレベルが低い」か「(著者のレベルは高いが)内容で想定している読者層のレベルが低い」の2パターンだと思います。
前者の「著者のレベルが低い」ケースなら途中で読むのを辞めてもいいですが、著者のレベルは読み始める前に本を選ぶ段階で経歴等からチェックしておくべきなので、基本的には起こらないです。万が一、経歴から推測される著者のレベルと文章から受ける著者のレベルが異なっている場合は僕は経歴の方を信用します(権威主義)。
問題なのは「内容で想定している読者層のレベルが低い」ケースですが、この場合でも最後まで読んだ方がいいと思います。本当に知っている内容ならば、労力も時間もかけずにすぐ読み終えられるはずだからです。「これは対象層のレベルが低いから読まなくていいな」という判断は慢心を生んで読むべきものも読まなくなりがちなので、「簡単な本はどうせ簡単に読めるので読んでおく」というスタンスの方がいいです。

次に「難しすぎて理解できないケース」にも色々ありますが、基本的には「頑張って読めばわかる場合は頑張って読むし、頑張って読んでもわからない場合は諦める」という方針ではあります。ただ、「頑張って読めばわかるかどうか」は頑張って読むまでわからないので、とりあえず頑張って読みます。
それでわかれば万々歳、わからなくても大抵は三周くらいすれば「意味はよくわからんが重要な単語はわかる」とか「論理展開はよくわからんが前提と結論はわかる」くらいの状態にはなるはずです。そうやって何となく部分的にわかっていたことが後々繋がったりするので、やっぱり可能な限り頑張って読んでおいた方がいいです。
とはいえ、あまりにも難しすぎてテレビの砂嵐を見ているようだとか、これ以上は苦痛すぎて読みたくないみたいなときは諦めます。お金をもらって読んでいるわけではないので、そこが趣味の限界です。

 

226.読んだ本の記録を取ろうと心掛けているのですが、読書に没頭することと記録することとの両立が難しいです。LWさんはどのようにコンテンツのインプレッションを残しているのでしょうか。

僕にとってはその二つは相反するものではなくて並立するものです。
没頭するためには記録が必要だし、記録を元にして没頭するみたいな感じです。それは一般書籍でもフィクションでもあまり変わらないです。

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これは鬼滅の刃を読むときに取っていたメモの一部ですが、別に研究とか記録のためではなく、普通に娯楽として楽しむためのメモです。
僕は細かい設定とか描写はメモしておかないと忘れます。意外と重要だった設定を忘れたまま読み進めてしまうと「こいつ誰だっけ? 目的は何だっけ?」みたいになって没頭できなくなってしまいますし、また戻って説明を探して再収集するのも面倒です。メモしているおかげで「あーこいつ珠世の横にいた変なやつか」みたいにきちんと思い出して没頭できるようになります。
よってメモしている内容は微妙に忘れてしまいそうな伏線とか、あとでどういう扱いになるのか覚えておきたい部分的なテーマとかです。逆に「炭治郎の目的はネズコを人間に戻すこと」とかあまりにも基本的な設定は別にメモしなくていいと思います。それはメモしなくても忘れないので。