LWのサイゼリヤ

ミラノ風ドリア300円

20/7/15 お題箱回

 ・お題箱67

148.原作遊戯王の最新映画について何か言及ってされてましたっけ。されてなかったのでしたら是非お話を聞きたいです。

『THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』はかなり面白かったです。原作ラストの「決闘の儀」からの流れを綺麗に継いでいて、過去に呑まれた海馬を描く目の付け所は素晴らしいと思いました。
原作をよく読むと、実は海馬って決闘の儀には立ち会っていないんですよね。過去編を除けば彼が闇遊戯と最後にデュエルしたのはバトルシティ編準決勝です。決闘の儀で闇遊戯をきちんと葬送できた表遊戯とできなかった海馬の明暗がはっきり分かれてくるあたり、喪の儀式の重要性が身に沁みます。

元々、「死者蘇生で蘇る亡霊」は原作のキーモチーフの一つであり、ラー=闇マリクの死者蘇生使い回し戦術と、オシリス=闇遊戯が最後に発動した死者蘇生を通じて、古代エジプトを巡る問題の象徴として描かれていました。
それに対抗する立ち位置を与えられているのがオベリスク=海馬であり、それが最もはっきり示されたのがイシズ戦でのオベリスクリリースです。闇マリクや闇遊戯が神を墓地からフィールドに蘇らせる一方、海馬だけは神をフィールドから墓地に送ります。決闘の儀でようやく表遊戯が行った蘇生の拒絶を、海馬はイシズ戦の段階でやっていたと言ってもあながち間違いではありません。

しかし、過去に憑りつかれたオベリスク=海馬が「死者蘇生で蘇る亡霊」と化したのがエジプト遺跡での藍神vs海馬におけるオベリスク召喚シーンです。あのシーンって応援上映で「神だ!!」とか叫んで喜んでる場合じゃなくて、原作を踏まえるならば海馬が狂ったことがはっきり明示される狂気的なシーンです。
彼がエジプトの地面=死者の世界からオベリスクを呼び戻すのが象徴的な意味での死者蘇生であることは明らかです。しかもその際にリリースされるモンスターはブルーアイズ3体であり、オベリスクをリリースしてブルーアイズを召喚したイシズ戦の構図が完全に裏返り、ブルーアイズをリリースしてオベリスクを蘇らせる事態が描かれています。闇マリクがラーを、闇遊戯がオシリスを死者蘇生したように、劇場版では遂に海馬がオベリスクを死者蘇生してしまい、これによってエジプトの亡霊と化した海馬とエジプトの亡霊を葬送する表遊戯との対立が決定的なものになります。

とはいえ、海馬が偉いのは表遊戯に説得されずに最後まで狂っていることですね。未来のテクノロジーで過去に戻る、前向きに後ろ向きという、なんか弁証法っぽい雰囲気のエンディングが良かったです。

149.LWさんが自分の出身高校(あるいは中学)のことをどう思ってるのか詳しく聞きたい

日本で最も良い高校の一つだったことは確かですが、僕は学校という制度自体が嫌いなのでそこそこしんどかったです。キノコ嫌いの人は世界で一番美味しいキノコでもなお不味いみたいな感じです。思い入れ自体が薄いので語りたいことはあまりないです。
ただ、今でも強く思うことが一つだけあって、それは「当時の狂気はどこに行ってしまったのか」ということです。中高の頃は同級生に狂人が多くいたような気がするんですが、大学に入ったあたりで皆どんどんまともになってしまって、僕だけが取り残されたという強い疎外感があります。皆がまともになる方法をそれぞれ発見したのか、それとも最初から終わっていたのは僕だけだったのかということが、高校について思い出すたびに考えざるを得ない唯一のことです。

www.nicovideo.jp

これは僕が高校を回想するときのテーマソングです。

150.LWさんが東大で学んだものを語って欲しい

具体的な知識は色々ありますが、ほどほどに一般的なことを一つ言うなら「無知の知」だと思います。というか、僕に限らず学部卒レベルで学ぶべきことってだいたいそれに集約されると思いますが。
「知らないということを知る能力」、つまり「世の中には自分が知らないことがある」という認識をアクチュアルに持っていれば、不可解なことや理解できないことに出くわしたときにも一度立ち止まって冷静に俯瞰することができるはずです。その意味では「知らないことに検討を付ける能力」と言い換えてもよくて、「この分野はまだ詳しく知らないがだいたいこのあたりに知りたいことがある気がする」「俺は知らないがこの人は概ねこういうことを知っているんだろう」みたいな想像力だけが新たな知識へのアクセス可能性を担保できると言っても過言ではありません。

逆に無知の知を学べていない場合に悲惨なのは、自分が知らないことは端的に存在しないことだと考えてしまうことです。「世の中には自分が知らないことがある」ということをわかっていない手合いというのは、例えばTwitterでたまにいる「専門家でもないのに専門家をバカにする人」とかのことです。仮に専門家が一見するとバカみたいな意見を言っていたとして、その理由が「その専門家が本当にバカだから」である可能性は非常に低いです。大抵の場合、「自分の知識が足りないから専門家の言っていることが理解できなくて彼をバカだと誤認してしまっている(バカは自分の方)」が真相ですが、それに辿り着くにはまさに「世の中には自分が知らないことがある」という前提が必要不可欠です。

151.喧嘩商売と喧嘩家業っていう漫画読んでますか?絶対LWさんが好きな漫画だと思います。

『喧嘩稼業』は新巻が出るたびに購入している数少ない漫画の一つです。体調が躁寄りのとき部屋で煉獄打つ練習してるくらい好きです。一番好きなキャラは佐川睦夫、次が工藤です。
嘘喰い』『喧嘩稼業』みたいな暴力と知がシームレスに融合した漫画は本当に好きです。結局のところ、物理的な暴力も精神的な知力も等しく目的を達成するための道具立てに過ぎません。だから暴力と知力は対立関係ではなく、むしろ状況に応じて適切に選択してどちらも使いこなすようなものであるべきです(ニーチェが言うところの「力への意志」というやつです)。純粋なバトル漫画も純粋な頭脳漫画も嫌いではないですが、やっぱりどうしても「なんでここで騙さないんだ……?」「なんでここで殴らないんだ……?」っていう瞬間があります。騙す方が楽なときは騙せばいいし、殴る方が楽なときは殴ればいい。
とはいえ、それをエンタメとして統合するのって多分かなり大変なことだと思うので、高いレベルで実現している漫画はやっぱり凄いと思います。なんか他にも同系統の漫画あったら教えてください。

152.就活でブログの話をしたって本当ですか?

ブログの話というか、ブログに書くような話をしたことはあります。
一時期エンジニアのマッチングイベントみたいのに参加してたんですが、コードを書くことには興味がないし実績も無かったので「J・L・オースティンの言語行為論を用いてPepperの身体性を捉えるならプログラム上の真偽値的な論理体系を遂行性の論理体系として読み替えることができるはずで~」みたいな話をしてました。プレゼンの評価は高かったんですがどこも雇ってくれなくて、「君は働くのに向いていないのでパトロンを見つけてください」とか「君の行く末を非常に楽しみにしています」とか就活イベントとは思えない意味不明なコメントを大量に貰いました。

中でも一番意味不明だったのが某検索エンジン会社の人事が「君のことは絶対雇わないけど、とても面白いから是非本社に来てもらってお話ししたいです」って言ってきて、本当にその後本社ビルに行って就活と関係ない内容を2時間くらい話したことですね。マジで就活と一切関係ない話をして「非常に楽しかったです、それでは」とか言われて帰されました。「追加のカジュアル面談をした結果不合格だった」みたいなやつでもなくて、開幕で「君のことは雇わないつもりなので、これは就職とは関係のない雑談です」って念押しされましたからね。「本当に就職する意志があるなら真剣に面談するので別個に連絡をください」とも言っていましたが、アレは何だったんですかね?

書いてみると就活のヤバいエピソード割とありますね。今働いている会社だって履歴書の志望動機を空欄で提出しましたし(面接のときに「現状で御社を特に志望していないので志望動機は書いていません」と説明しました)、今思うとよく雇ったなと思います。