LWのサイゼリヤ

ミラノ風ドリア300円

23/12/3 お題箱回130:引用RT、文体の模倣、競技TCGの巧拙etc

お題箱回130

729.地方在住の中年公務員です。いつも楽しく拝見しております。
就活エントリーが好きです。

好奇心から、昨今のサブカルチャーの先達としてのサイゼリヤさんに聞いてみたいことがあります。

1.アマプラで「ノック 終末の訪問者」を鑑賞してぼんやり考えましたが、
個人において結婚や子育て等家族を形成していく行為が完全に社会的要請と切り離され、常態化した場合、物語をはじめ多くの創作物のエンジンであったはずの「家族愛」はもはや普遍的な前提として作用しなくなるものと思われます。
そうなった場合、漸次的にではあれ、多くの創作物はかなり大きな構造転換を迫られると思うのですが、サイゼリヤさんはどのように考えているのでしょうか。大きな価値観は失われ、様々な価値観に基づいた創作物が島宇宙的にひしめき合うような多元的な環境になるのでしょうか。

2.「イクサラン:失われし洞窟」についての所見をお伺いしたい。

以上、暇なときにご回答いただければ幸いであります。

ありがとうございます。昨今のサブカルチャーの先達ではないですが、以下の通りです。

 

1.家族愛の衰退について

確かに、ざっくりした傾向として家族愛モチーフが衰退するような気はします。結婚や子育てを行う人が減ってきていることは統計的な事実ですし、親しみの薄いモチーフが商業的に安牌ではなくなってくると考えるのも妥当でしょう。キャプテンアメリカが時代によって反共産主義者だったりそうでもなかったりするのと同じです。

とはいえスマホに置き換わったガラケーほどには完全消滅しないだろうと思う理由も二つあって、一つはいくら家族層のボリュームが減ったとしても皆無になることはまず有り得ないからです。手堅いマーケティング対象としての層を成す程度の勢力は今後も存在し続けるでしょうし、リベラルな潮流自体ここ数年のブームでしかないので二十年も後には普通にどうにかなっているかもしれません。

もう一つは、古典的な家族関係を放棄した人でも似たような機能を持つ「家族みたいな関係」は依然として保持する傾向にあるからです。いわゆる家族関係を持たないからといって人生の基盤となる人間関係が完全に消滅するわけではなく、同性愛だったりネット関係だったりで代替され続けるでしょう。

この辺りの傾向は雑に語っても胡散臭くなりがちですが、たぶんちゃんと調査するのもそれほど手間ではない気がします。例えば流行った作品の上位百個くらいについて家族関係の強さを定量化してチェックすれば傾向が見えるでしょう。あとは各論ついでに触れる分には手頃ではあって、非常に安直な例を挙げるならスパイファミリーなんかは擬似家族関係によってアップデートされた家族ものとしてファミリー作品のようなポジションを取りつつあります。

 

2.「イクサラン:失われし洞窟」について

僕はMtGはリミテッドしかやらず、今フルスポイラーにざっと目を通してアリーナで2回くらい遊んだ程度です。最近は就活とか創作が佳境に入っているのであまり遊べない気がします。

なので環境はわかりませんが、ざっくりしたプレイ感としてはいつにも増して段階的なギミックが多くて難しい環境だとは思いました。落魄なら墓地肥やし、作製なら場か墓地に種、洞窟なら土地のように入念な下準備をピックから要求するアーキタイプが多く玄人向けな感じはします。この手のリミテッドは決め打つなら簡単ですが、一直線に走れない場合に他のアーキタイプにスイッチしていくところで腕が出ると思います。

 

730.自分の打てる手の少なさから、将棋よりもオセロの方が早く最善手を繰り出し続けるプレイヤ―が登場してくると予想するものなのでしょうか

ざっくりそんな気はします。

ゲーム戦略にも計算理論にもそれほど詳しくないので適当に答えていますが、「打てる手が少ないので最善手を繰り出しやすい」というのは確率的に言って概ね妥当な推論のように思われます。例外があるとすれば「オセロには一見すると悪手としか思えないが、超長期的に効いてくる極めてわかりにくい最善手が存在する」のようなケースでしょうか。

ただ一方で現実問題として最善手を繰り出し続けることは極めて難易度が高いため、机上の空論の域を出ない気もします。例えば1億kmのサイクリングと1億kmの遠泳だと前者の方が容易であることが予想されますが、現実問題としてどちらも達成できる人類は現れないので、1億km漕ぐ選手が登場するとは予想しないのと同じです。

 

731.純粋な疑問なんですが、なぜ引用リツイートではなくリツイートしてから感想や意見を述べるのですか?
個人的には過去ツイ漁ったときになんの話題か知りたいので、引用の方が助かります。

完全な肯定以外の文脈で引用リツイートされることを嫌がる層が強固に存在するからです。僕自身は引用リツイートされても気にしませんし、利便性の面からするとそうすべきというのは完全に仰る通りだと思いますが、繊細な人への配慮を優先しているということです。

普段はそこまで配慮を行うタイプではありませんが、SNSは街角などの公共空間に比べて公と私の境が曖昧な場であり、私的に楽しく使いたいだけなので公的に知らない人から意見を述べられたくないという気持ちも一定理解できます。公私の垣根を破壊するムーブはパブリックエネミー度が高い危険なムーブであるため、ここは安全に倒しているという感じです。

 

732.しげすぎちゃんさんのいいね欄からエッチなネタを仕入れることはありますか?
僕はあります。

まあまああります。暇なときタイムライン代わりに知り合いのファボを見ていることはけっこう多いです。

 

733.美少女ゲーム(ここではギャルゲーやエロゲーを総称しています)のシナリオを作りたいと考えています。そのために既存の美少女ゲームのシナリオを分析し、模倣することを試みていますが、難航しています。具体的に何を、どのように、どのような手段を使って分析すればよいのでしょうか。何かお考えがあれば賜りたいです。
ちなみに、LWさんの入間一間の文体を分析し、模倣していたツイート(ポスト)が念頭にあります。

分析して模倣したいのがプロットか文体かで話が変わってきますが、入間人間の文体について考えていたときのツイートを念頭に置いているとのことなので、とりあえず文体の話であると想定します(プロットの方は魔法少女育成計画の話が参考になるかもしれません→)。

素人なのに小説講座みたいなことを言うのも気が引けますが、僕ならこうやるというかやったことを書きます。

  1. 分析したいシナリオからシーンを一つ選ぶ(特に文体の癖が強いシーンだとベター)
  2. 自分でそのシーンを書いてみる
  3. 元の文章と自分で書いた文章を見比べて、後者を前者に一致させるために必要なルールを書き出す
  4. 書き出したルールを整理して体系化する

これをやると「こうすれば自分で書いた文章を元の文章に一致させられる」というマニュアルを入手できるので、それを使えば未知のシーンでも模倣元の文体で文章が書けるはずです。要するに地道にルールを調べてマニュアル作りをしましょうというだけの話で、アクロバティックなセンスの問題ではなく単に泥臭い作業です。理想的には、元の文章を一度も読んだことがないやつでも運用できる完成度のマニュアルが手に入ると嬉しいです。

自分で書いてみる段階ではシーンをまとめて書いてもいいし一文ずつ書いてもいいですが、ルールを書き出す段階では一文ごとに「この一文ではビジュアルが強い色彩的な比喩を使っている」「この一文ではショッキングな結論から見せたいので倒置法を使っている」みたいなことを全部具体的に書き出しましょう(「比喩のセンスが良い」みたいな曖昧な書き方はやめた方が良いです)。あとまとめて書いていて文章自体の過不足に気付いた場合も「会話に入る前に心情描写が二文入る」とかちゃんと書いておくとよいです。

例えばこんな感じです。入間人間はけっこう素直に教科書的な技法を使う人なので、ルールというよりは使っている技法を一つ一つ書き出しています。

こうして手に入れた膨大なルールはマニュアルとして運用しやすいように適度に体系化してください。どういう技法をどのくらい使っていたのか定量化したり、同じ目的意識を持つルールは整理して圧縮したりしましょう。例えば「語り手の推測を混ぜ込む」と「語り手の価値観を滲ませる」というルールは「内面的な傾向を語りの地の文に反映する」というより一般的な上位ルールに包括できるはずです。ちなみにこういう作業をしているとどうしても綺麗な演繹的論理階層にまとめたくなりますが、例外も結構あるのが文体の深さなので例外は例外としてちゃんとまとめておいた方が良いと思います(何が原則で何が例外か把握するのが大事)。

この作業をシナリオ全部に対してやる必要はなくて、二~三シーンくらいでも割とちゃんとしたマニュアルが出来ると思います。また、ある程度慣れてきたらいちいち自分で書く段階はスキップして「恐らくこのルールが必要だろう」ということを元の文章から一文ずつ調べるのでも良いと思います。

直で書き込んでるパターン

 

734.マウントを取り合うだけじゃない友達の作り方を教えてください

似たような質問として就活の記事を書いたときにも「社会の真実をきちんと教えてくれる社会人の友達はどうやって作るんだ」みたいな反応はぼちぼちあったのですが、僕は自覚的に友達を作ろうとした経験があまりなく(少しあるけどあんま上手くいかなかった)、これらについてはクリアな回答がありません。

一応構造的には明確な答えがあって、良質な友達の友達はだいたい良質なのでそっちとも友達になって連鎖していくケースが良いのですが、最初の連鎖が走り始めるところをどうやるのかが未解決問題です。ゲームでクソ強いとかブログがバズってるとか一個わかりやすいバリューを持ってるとやりやすいんですが、基本的に友達いるやつの方がゲーム強いしバズりやすいという現実もあって、じゃあ友達がいない場合に最初の一手をどう打つの? という部分に再現性のある回答は見つかっていません(友達を一人作るためには友達が一人いないといけない問題)。

 

735.https://saize-lw.hatenablog.com/entry/2021/12/04/185156#N95%E3%83%9E%E3%82%B9%E3%82%AF
ブログ内にある「異常思考の展開パターンと精神の守り方」というのを教えて頂けないでしょうか。
万が一精神がぶっ壊れた時の参考にしたいです。

saize-lw.hatenablog.com

まず大前提として、精神がぶっ壊れたときは精神科に駆け込むのがベストです。

しかしそうはいっても向精神薬を飲むと副作用の吐き気とか不眠とか勃起障害がダルいし、精神的不調の原因が明確かつ時間経過による軽快が目に見えているので自力で凌ぎたいケースがあるのもわかります。例えば僕がコロナ禍で精神に不調を来したときも感染者数が減ってくれば軽快するのが明らかだったのでわざわざ病院に罹りたくなくて、そういうとき限定の話です。

基本的には異常の現状把握に努めてなるべく抗わないのが良いです。異常な思考は自分で異常だとわかっていても修正できないのですが、「これをやるとヤバい行動」とか「これを考えるとヤバい思考」みたいのはある程度把握できるので、なるべくそういうものを避けるようにします。足折ったときに痛み自体は消えないけど「ここを曲げるとヤバい部位」とかは把握できるので触らないようにするのと同じです。

ただしそうはいっても後から思い返せば全然把握できてなかった異常行動も結構ありますし、これは素人の一時凌ぎに過ぎないので原則としてはまず精神科に行ってください。

 

736.VISION のカードを入手するなら、ヤフオクかメルカリ等で引退勢が放出したのを探すのが良いかと思います。
公式の構築済みデッキは存在しない(あるにはあるけど、構築済みデッキという名前の再録カードセットなので、回してもしょうもない)一方、個人出品のものは在りし日のデッキがそのまま残っていることもあるので、その点でもヤフオク・メルカリあたりが狙い所かと。

ありがとうございます。オークション系のサイトはあまり使わないので抜けていました。

ただあんまりやり込むつもりはないのでちゃんとオタクが組んだデッキではなくゲームシステムがざっくりわかるくらいで十分で、買うならストラクでいいとは思っています。強いデッキって一つのコンセプトに特化している分だけ平均的なゲーム体験から離れていることが多いので、むしろ紙束っぽい方がシステムを把握しやすいみたいな感じです。

 

737.ブログを拝見しました。2023-11-09の687.に対する返答に違和感があり、
>>ただ僕は休日サイクリング趣味でチャリに乗っている人ではなくて、日常的に使う最も基本的な移動手段がチャリです。ラーメン食って帰りに図書館でも寄るかみたいな感じで気軽にノートPCをカゴに突っ込んでチャリに乗るため、いちいちデカいキャリアを導入するのは現実的ではありません。
とありますが、キャリアというのは自転車の荷台のことを指しているのではないでしょうか。荷台の中でもスポーツ自転車に後付けするものを特にキャリアを呼ぶようです。ここで使ったらどうか?と提案されているのはママチャリの荷台に引っ掛けることのできるバッグ(パニアバッグ)のことだと思います。重心位置が低いので走りも安定しますし、片側だけ付けても左右の重量差は走り始め5秒で慣れます。背中に汗シミが出来なくなって快適ですよ~

saize-lw.hatenablog.com

なるほど! 自転車のキャリアって外して持ち運ぶものかと思っていましたが、付けっぱなしにする感じだったのですね。ありがとうございます。

ちなみにこの件については最終的にiPadを購入してノートPC代わりにすることにしました。iPadとかiPhoneが振動で壊れたという話は聞かないので、まあいけるでしょという感じです。

 

738.紙・デジタルを問わず、カードゲームを競技的にプレイしてる人のうち、上達する人とそうでない人(身も蓋もない言い方をすれば勝ってる人とそうでない人)の違いは何だと思いますか?

勉強や仕事と同じで、本質的にはちゃんとPDCAが回っているかどうかだと思います。つまり仮説を立てて検証して誤っている部分があれば都度修正という作業を正確にこなせているかということです。もちろんそのために必要な知識量とか推論精度の問題もありますが、それは副次的な要素でしかなくて、最終的にはPDCAを回せているかどうかに帰着されるはずです(ただ例外的に感覚派の人もいる)。

まあちゃんとやると大変ですし、別にPDCAを回すつもりがない人とか回している気分になりたいだけの人でも結構楽しめるのがゲームの懐の深さではあります。僕もハースストーンのラダーは何も考えずに好きなデッキを持ち込んで何となく手慰みでタップしているだけなのでかなり弱いです。