LWのサイゼリヤ

ミラノ風ドリア300円

21/7/4 2021年5月消費コンテンツ

2021年5月消費コンテンツ

5月も小説を懸命に生産していました(生産コンテンツ参照)。

メディア別リスト

映画(2本)

HELLO WORLD
田園に死す

アニメ(12話)

リゼロ二期(第39~50話)

書籍(2冊)

論理パラドクス 論証力を磨く99問
戦略的データサイエンス入門

漫画(8冊)

大奥(12~19巻)

良かった順リスト

人生に残るコンテンツ

田園に死す

消費して良かったコンテンツ

Re:ゼロから始める異世界生活 二期(39~50話)
戦略的データサイエンス入門
論理パラドクス 論証力を磨く99問
HELLO WORLD

消費して損はなかったコンテンツ

(特になし)

たまに思い出すかもしれないくらいのコンテンツ

大奥(12~19巻)

以降の人生でもう一度関わるかどうか怪しいコンテンツ

(特になし)

ピックアップ

田園に死す

寺山修司は若干衒学的なアニメオタクがよくやいやい言っているので(「<何らかのアニメ作品・アニメ監督>は寺山修司から影響を受けている」系の話はちょっと調べただけでも無限に出てくる)、「流石にそろそろ見とくか」くらいの感じで見始めた。
面白!!……くはなかったが人生に残る名作。思ったより普通にオタクの映画で、押井守とか庵野秀明がたまに撮る実写映画と同じテンションで見られる。

序盤は延々と戦前ぽい農村での暮らしが描かれ、なんかよくある地味で意味わからん古い邦画かと思っていたのだが、中盤でここまでが映画作品だったことが発覚してタイムラインが現代に戻るシーンから圧倒的に面白くなってくる。実は序盤に流されていたのは良いように脚色され理想化された暮らしで、主人公は本当は幼少期にはもっとままならずどうしようもない世界を生きていたのだ。主人公が過去に戻って幼い自分と接触し、過去を変えようとしながらも諦念の中で人生の寄る辺無さを改めて噛み締める会話は圧巻。

全体的に「これが元ネタの元ネタか」感が強く、ネット文化に触れたあとにジョジョ一部とかガンダムファーストを見て「あっこれかあ!」となる感じに近いものがある。ここまで俺がアニメを見てきた遍歴が概ね『田園に死す』を見るための伏線だったような気すらしてくる。確かにサブカルの源流とか言われるのも納得だ。
数多のアニメで散々見てきたような「親とのアンビバレントな確執」「理想と現実のギャップ」「幼児性を持ち越してしまった大人」というテーマが執拗に描かれ、そうしたジレンマが高度経済成長に伴う文化環境の変化に由来しているのは驚きだ(そこから来ていたのか!!)。また、いかにもアニメ的なパラレルワールドのモチーフと、古い農村・老いた母・恐山の口寄せのような和風で泥臭いモチーフの組合せのアンバランスさを新鮮で面白く感じたが、こういうことをやった人の大元に寺山修司がいるのであれば順番が逆なのだろう。

寺山修司の他の作品も気が向いたときに適当に見ておこうと思う。

 

論理パラドクス 論証力を磨く99問

パッと見ではよくある子供だましのパズルを並べたしょうもない新書と見分けが付かないが、この本は本物。著者は東大教授で哲学者の三浦俊彦であり、論理への偏執的な解像度の高さが遺憾なく発揮されている。取り上げている題材は一度は聞いたことがあるようなものだが、しょうもない本が「不思議だね」で終わらせてしまうところでも精緻な議論を突き詰めていきただでは終わらない。

補足383:と言っても、俺が芸術学の講義を受けたり分析哲学系の著作の方を先に読んだりしたから彼に対してアカデミズムの人間という印象を強く持っているだけで、世間的には「一般向けの書籍をよく書いているタイプの研究者」みたいなポジションだという説もある。

補足384:ちなみにこれはこの前潰れた本郷三丁目の大学堂書店で購入した→

例えば、「クレタ人のパラドックス」くらいは誰でも知っているだろう。「クレタ人が『クレタ人は嘘しか言わない』と言うのは嘘か本当か」という話があって、大抵の書籍では「もし本当なら嘘しか言わないはずなのに本当のことを言っているから矛盾、もし嘘なら本当のことを言うはずなのに嘘を吐いているから矛盾、どっちでもおかしくて不思議だね」くらいの適当な考察で終わってしまう。
しかし、この本ではきちんと「全称命題の否定は単称命題の形式を取るので『クレタ人は嘘しか言わない』の否定は『あるクレタ人は真実を言うこともある』であって、嘘であるとして何の問題も無い(あるクレタ人は真実を言うタイミングもあるのだが、少なくとも今ここにいるクレタ人は嘘を吐くタイミングだった)」という厳密な正解に辿り着く。
それすらも自己言及のパラドックスに関する一連の考察のスタートに過ぎない。様々な問題を検討しながら「真でも偽でもない」と「真でも偽でも『真でも偽でもない』でもない」をきっちり区別していったり、一見すると矛盾した奇妙な事態を引き起こす不合理が制度と存在のどちらにあるのかを考えてみたり、書き口は平易でありながら高い精度で分析が進んでいく。

取り上げられるトピックは極めて多岐にわたっており、言語哲学周りではグルーのパラドックス、知識概念に関するゲティア問題、心身問題にトロッコ問題、最近PCR検査周りでよく取り上げられたベイズの定理に至るまで、粘着質な考察を一通り読むことができる。こうなってくるとどこかで聞いたことがある題材が多いのも嬉しいところで、「不思議だね~」程度のレベルでポップに消化されがちな哲学問題に対して射程と奥行きをきちんと把握してワンランク上に行けそうな一冊。 

 

HELLO WORLD

ジェネリック新海誠映画(軽いSF風味を加えたセカイ系っぽい青春恋愛アニメ)の一つくらいに思っていたが、なかなか面白かった。脚本が野崎まどなので少し贔屓目に見ているかもしれない。

ベースにある「今いる世界が実は作られたシステム世界で、上位のシステム管理者と戦う」というあらすじは『マトリックス』以来の手垢塗れのものだ。ここに「上位の管理者に連れ去られたヒロインを助けに行く」というストーリーラインを足すことで青春アニメ感を出している。
ただし、それだけお膳立てしておきながら「上位存在を打倒してめでたしめでたし」という無難なハッピーエンドを途中で放棄し、むしろそれに逆行する形で話をまとめていることが興味深い。「上の階層にいる方が優位だ(だからレッドピルを飲め)」という暗黙の前提が成立しておらず、むしろ下の階層=作られた世界をポジティブに捉えようとする姿勢が強く押し出されている。
タイトルの「HELLO WORLD」で示されている「新しい世界」とは「今新しく作られた世界=下の階層の世界」であり、作られた世界がむしろ今新たに作られたが故に可能性に満ちた新しい世界であることを歓待する意図が込められている。「どの世界でもとりあえず頑張ってやっていき!」という気持ちがHELLO WORLDというフレーズに集約されており、この前向きさは不毛な袋小路に陥りがちな世界の懐疑論に新しい風を吹き込むものだ。
「今いる世界の階層は大して重要ではない」という思想は最終的に裏主人公が救済されるオチが付くところにもよく表れている。この映画の話が全て月面基地みたいなところで展開していたシミュレーション世界だったことが発覚したとして、それで話が矮小化されるわけでもないのだ。この作品は世界がシミュレーションであることに動じない。

正直もっとカスみたいな新海フォロワー映画だと思っていたので相対的にかなり楽しめた。「シミュレーションか否か」という伝統的な論点自体をズラし、作られた世界を肯定的に捉えていくという意味では、非常に上手く脚色してエンタメ的にも成功した世界線ドラゴンクエストユアストーリーという感じもある。

 

戦略的データサイエンス入門

理系っぽい本を読む気運が高まっているので読んだ。

かなりの名著で、人によってはバイブルになるだろう一冊。数あるデータサイエンス系の書籍の中でも実用に向けて合目的的に執筆されている点が特長的。というのは、「実用的な手法をまとめている」という意味ではなく(データサイエンスに「実用的でない手法」などあるだろうか?)、「実用から逆算して体系化している」という意味だ。
一般的な情報科学の教科書では知識のトピックは羅列されているが、それがいつどのように何故どうして使うべきかまではなかなか記載されていない。例えば教科書には分類木の説明に「属集合全体の乱雑度の指標としてエントロピーを~それを踏まえた情報利得の計算方法は~」みたいなことがつらつら書いてあるからといって、実際にデータを渡されてさあ分析しようというときに「とりあえず教科書に書いてあった分類木の手法を使えそうなので使ってみます」ではお話しにならない。そのレベルから脱却してテクニック集を体系的なプランニングに変換していくための方法論が記されており、内容的には既に知っていることが多かったが退屈せずに読めた。

特に付録A・Bの二点にこの本の素晴らしさが集約されており、良すぎて印刷してノートに貼ってしまった。

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付録Aにはこの本で議論されてきた、データサイエンス手法を実際に適用する際の注意事項がチェックリストのようにまとめられている。それは「関係者への正当化及びインパクトの測定は可能か」「現実的に標本にバイアスがかかるのは仕方ないとして、それを把握して修正するサブプランがあるか」といったビジネス上での振る舞いから、「目的変数を値域込みできちんと定義しているか」「業務知識に基づいた評価関数のプランはあるか(どうせ精度測定は現実的には役に立たないので)」等のモデリング上での数理的な警告にまで及んでいる。
付録Bではデータ分析計画のサンプルを提示し、一見すると問題なさそうな提案書に潜む技術的な問題や言葉遣いの問題を複数指摘している。「何故離脱した顧客のみモデリングして離脱しなかった顧客をモデリングしないのか」「何故損失期待値ではなく損失確率でランク付けするのか」「第一種過誤と第二種過誤の違いを峻別しなければ評価が意味をなさない」等、実践レベルで考えなければ見過ごしてしまいそうな様々なダメ出しを読むことができる。

 

Re:ゼロから始める異世界生活 二期後半クール

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やはりリゼロは面白い、このパンツ履いてなさそうな人好き。

前半の感想は以下。

saize-lw.hatenablog.com

二期後半クールは基本的には前半クールの答え合わせなのであまり付け加えることはないが、スバルが死に戻りの活用を咎められたことによって一度も死に戻りせずにクリアしたのはさすが。話作りが図式的に極めてはっきりしている割にはエンタメとしてのまとまりが良く、やはりリゼロはよく出来ている。

後半クールは「スバルが死に戻りを行わないことで生じる負担をエミリア、ガーフィール、ベアトリスに分散させる話」と要約してよい。この三人は戦力的にも結界編を突破する要であり、「ここまでスバルが一人だけで懸命に頑張って死に戻って問題を解決してきたやつをもうやめましょう」という前半クールの提案を履行する過程がきっちり描かれている。

第一にエミリアは負担の分散が最もわかりやすく描かれており、今までならばスバルがエミリアのために尽くして何とかしていたところ、今回はもうスバルは死に戻りをやらないのでエミリアが自分で頑張る羽目になる。
その過程でエミリア自身もスバルと類似した他者への加害の罪を背負っていたことが明らかになるが(森一帯を人間ごと凍結したこと)、スバルの問題系が自分の犠牲と幸福に寄っている一方で、エミリアは人の上に立つ者として他者への贖罪と信頼がテーマになっていくのだろう。

第二にガーフィールにおいては、スバルの協力者になるために解決しなければならない問題として、自らを置いて出ていった母親が直後に死亡したエピソードが挿入される。
すなわちガーフィールのポジションは「死者に置いていかれた者」であり、ガーフィールを置いて死亡した母親が平行世界を置いて死亡したスバルとパラレルであることは言うまでもない。ガーフィールが母親の亡霊と折り合いを付けることは、ここまで死に戻ってきていたスバルが第二の試練で直面した罪に対して一定の赦しを得ることでもある。
この、パラレルワールドの問題について対応した葛藤を持つキャラを使って疑似的に解決する処理には舌を巻いた。リゼロはシュタゲ等と違ってジャンルがSFではないため、平行世界で「実際に何が起きているのか」を詰めることの旨味が少ない。よって第二の試練の説明でもそれが実際にあったことかどうかは特定できないようにぼかされていたが、ここで代わりに最高戦力であるガーフィールに回想させることでこの問題を結界編解決の要として位置付けることができたわけだ。

第三にベアトリスもまたスバルが死に戻らないことによる負担を一部背負う形で「その人探し」を諦めることになる。
謎が多かったベアトリスは寿命の長い人生を永遠に満たしてくれる「その人」を見つけなければならないという強迫観念に苛まれていることが明らかになるが、それもまた死に戻りによってベストルートを目指さなければならないと思っていたスバルの強迫観念とパラレルなのだ。永劫のベストケースを諦めるという刹那主義への転換がスバルからベアトリスにも感染しており、このモチーフは唐突にも思われたラムの恋心にもそれが見て取れる。人心は変わりゆくものであるからベストケースを目指す必要は無いという姿勢は一期のペテルギウス周りで描かれた信仰にかかる問題へのソリューションでもあり得る。

三期以降も楽しみにしています。

 

生産コンテンツ

ゲーミング自殺、16連射ハルマゲドン

趣味で書いている小説の5月進捗報告です(前回分→)。5月は第七章「ハッピーピープル」と第八章「いまいち燃えない私」を概ね完成させました。
ついでに毎月キャラ紹介とか何かコンテンツを置いとく予定です(一応、ここに書く設定等は開発段階のものであり進捗に応じて変更される可能性があります)。

字数

170725字→190042字

各章進捗

第一章 完全自殺マニュアル【99%】
第二章 拡散性トロンマーシー【99%】
第三章 サイバイガール【99%】
第四章 上を向いて叫ぼう【99%】
第五章 聖なる知己殺し【99%】
第六章 ほとんど宗教的なif【99%】
第七章 ハッピーピープル【99%】
第八章 いまいち燃えない私【90%】
第九章 白い蛆ら【5%】
第十章 MOMOチャレンジ一年生【1%】
第十一章 鏖殺教室【1%】
第十二章 (未定)【0%】
第十三章 (未定)【0%】

 

キャラ紹介③ VAISさん

主人公である彼方の師匠で、怪しいカタコトで喋る長身の外人お姉さんです。黒一色の外套と車掌帽を纏っており、長い金髪がよく映えます。
ただし、彼方とVAISが出会うのは現実世界ではなくVR空間です。VAISはハンドルネームだし外人の容姿もアバターのそれなので、実際にはVAISがどんな人間なのかは誰にもわかりません。

VR空間において、VAISは彼女が『次元鉄道(エルライン)』と呼ぶオリジナル違法MODを使います。
『次元鉄道』とは虹色のレールの上を走る漆黒の超巨大なSL列車であり、上に腰かけたVAISと共に出現したが最後、周囲に甚大で復旧不能な被害を巻き起こします。勝手に敷かれるレールとSLの巨体によってワールドの建造物は問答無用で破壊され、轢殺されたアバターたちのデータと共に全てデリートされます。
これが犯罪相当の悪質なハッキングであることは言うまでもありません。あらゆるセキュリティウォールを踏み潰しながら、VAISは『次元鉄道』に乗っていつでもどこにでも現れます。

VAIS自身は気の良い陽気なアメリカンお姉さんですが、彼方の師匠だけあって彼方よりも戦闘が強いです。そして彼方以上の暴力原理主義者であり、「人生とは暴力と想像力の両輪である」という思想を持つ強火のアナーキストです。
すなわち「想像したことを実現する暴力と、暴力を運用するための想像力の二つさえあれば何でもできる」という確信が彼女の人生哲学です。実際、彼女が『次元鉄道』で何もかも破壊しながら現れるのは、まさしく違法MODを作り出す想像力と、それがもたらす暴力の二つを誇示するために他なりません。