LWのサイゼリヤ

ミラノ風ドリア300円

21/6/5 お題箱回:進振り、車椅子利用etc

お題箱83

278.進振りでの文転って考えてましたか?

全く考えていませんでした。
進振りの時点では行きたいところが一切無く、点数的には工学部ならどこでも行けたので適当に当時底点が一番高かった計数に希望出して進振りが終わりました(僕の頃から情報系はまあまあ人気でしたが、最近は更にインフレしてるらしいですね)。
ただ、当時に戻れるなら絶対に文転して文学部か後期教養のどっかに行きます。当時それを考えもしなかった理由は、単に自然科学より人文科学の方が面白いし関心があることに気付いたのが進振りの後だったというだけです。

僕は大学入学当初から保健センターの精神科に通院しており、本郷キャンパスに移行してからも気が向いたら馴染みの主治医がいる日に予約を入れて診察を受けるキャンパスライフを送っていました。本郷の保健センターは医学部ゾーンのあたりにあって工学部ゾーンから割と遠いので、診察予約時間よりも早くに医学部ゾーンに着いてしまったときはゾーン内で手頃な休憩所として医学部図書館で時間を潰していました。

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医学部図書館って医学部通いのハイソの連中が利用するからか設備が他学部図書館より明らかに充実していて居心地が良いんですよね。入って右奥のあたりに一人用ソファにもたれかかって手塚治虫の全作品を読める謎のスペースがあって、僕はそこでよく『火の鳥』を読んでいました。

補足381:在学中は他の人が読みに来ると嫌だからずっと秘密にしてたんですが、もう卒業したので書きました。

また、入口ゲートを入って左側の方にあるゴツい扉で閉ざされている書庫にも実は自由に出入りでき、探険気分でよくそこに一人で潜っていました。どうせ解剖とか外科とか物理的な人体を扱う専門書籍は門外漢が読んでも全然わからないので、辛うじてわかりそうな精神疾患系の本が積まれているエリアをフラフラしていることが多かったです。そこで『分裂病の精神病理』というシリーズをたまたま手に取ったのが人文学的なものとの出会いだったように思います。

だから僕が最初に関心を持ったのは実は『動ポモ』ではなく日本の精神医学、特に分裂病とその周辺の現象学です。
批評界隈でスキゾフレニアと言えばまず西洋のフロイトラカンドゥルーズガタリが来て、構造主義からの流れの中にある図式において不可能性や破綻というネガティブな属性の中に回収されていきます。しかしこのシリーズから伺われる日本の精神医学界隈ではもっと現象学的な観点から患者の心象風景を虚心坦懐に捉えてポジティブに記述しようとする姿勢が強く、読み物として非常に面白いです。
もちろん木村敏の「イントラ・フェストゥム」とか安永浩の「ファントム理論」のように図式的な整理は頻繁に行うのですが、その根底にあるモチベーションは近代科学的な分類と整理という手法を用いたいからではなく、病者の歪み切った主観世界に少しでも近付くためには何とかしてそれを体系的に捉えることが必要だからという極めて実践的な試みです。周りでこの論文集を僕以外に読んでる人見たことないですが、オタクはそういうの好きだと思うので結構オススメです。

補足382:ここで言うネガティブ/ポジティブというのは悪い/良いという意味では全くなく、否定形/肯定形というニュアンスが近いです。ネガティブというのは何らかの図式の中で何かが充填されていないという欠落によってそれを否定形で語ること、ポジティブというのは逆に図式の中に何かを充填することで明確な位置付けを肯定形で語ることです。「ドーナツには穴がある」「ここには女性がいない」という穴と女性の語り方がネガティブ、「あんぱんにはあんこがある」「ここには男性がいる」というあんこと男性の語り方がポジティブです。ちなみに「穴」という概念は定義上ネガティブにしか語れないという顕著な性質を持ち、存在論的にも興味深い題材です。

なんか思ったより脱線しましたが、要するにその本郷キャンパスの医学部図書館で論文集を読んでから進振りで文転しておけば良かったと思うようになったという因果の流れなので、進振り時にはどうしようもなかったという話です。学生の方は暇だったら他学部図書館書庫を探険してみると人生を変える出会いがあるかもしれません。

 

279.「○○が問題だ」という主張に対して「でも××のほうが問題だ」という返し方をするの日常生活でもよくあるけど、政治な話題、特に人権や自由といった文脈で使うのはとてつもなく危険なのを認識したほうがいいです
このようなツイートを見かけました。このような論法はいたるところで見受けられ、自分も上のツイートと全く同じ考えを持っているのですが、その理由を私はうまく説明できません。上の文の(書かれていない)前提合意、背景の解析、本当に上の考えは妥当なものなのか、もし可能であれば分解し解説していただけないでしょうか

僕もその考えは妥当だと思います。
「でも××のほうが問題だ」系の反論って一見すると社会的な物事について優先順位を冷静に説いているように見えますが、実際にはマジョリティが享受している既得権益を温存するために支配体制に加担しているだけですからね。というのは、その社会的な物事についての優先順位自体がもともとマジョリティの合意で形成されたものだからです。

女性でも黒人でも何でもいいですが、最近話題になったので車椅子利用者の権利でも例に出しましょうか。
「車椅子の人が駅利用時にスロープが無くて苦労するのが問題だ、だからバリアフリーを拡充すべきだ」という主張に対し、「その問題は重要性が低いのではないか、何億円もかけて僅かな車椅子利用者をちょっと便利にするよりは他に解決すべき問題があるのではないか」という反論は少し前に実際に何度も聞いた話です。
ただ、そもそもなぜ車椅子の人が苦労しているのかと言えば、「車椅子利用者が快適に過ごすことは比較的重要度が低い問題である」と考えている人が多いからです。もしそうでなければ、車椅子利用者は社会的合意によって自然に生成されたスロープによって既に快適に駅を利用できているはずです。
よって「車椅子利用者の権利よりももっと重要な問題がある」という反論は「車椅子利用者が軽視されている」という前提の再確認に過ぎません。循環しており反論として機能していないのはこのためです。
そして元はと言えば、この抑圧的な前提は「健常者はスロープがあろうがなかろうがどうでもいいのでもっと他のことに金を使ってほしい」という健常者=マジョリティの利害から発生しています。マイノリティの主張を「社会的重要性」という理由で弾くのは、大抵はマジョリティが既得権益を死守してマジョリティにとって有利な世界を維持したいだけというのはそういう意味です。

だからマイノリティ側はこの手の反論に付き合ってはいけません。現在流通している重要度の優先順位を精密に確認しても、現状の困難が生まれている理由が追認できるだけで勝ち目がないからです。「でも××のほうが問題だ」と言われたら「お前の問題認識は聞いてねえんだよ」と吐き捨てて交渉の椅子を蹴り飛ばし、こちら側も何らかの倫理や利害を動員した鮮烈なアジテーションによってマジョリティの一部を味方に付け、優先順位という支配体制それ自体を革命しなければなりません。
その点、強硬策を取って波風を積極的に立てていく車椅子利用者サイドの戦略は、(ネット上では健常者にかなり攻撃されていますが)僕は頑張ってるなと思って見ています。革命が必要だというのに健常者に阿っても未来はありませんから、戦争を吹っかけていくのが正着手です。

 

280.百合が一番でヘテロが最後みたいなツイートについてですが、
これって好みの話ですか? 
それとも何か確信を持つに至る考えがあるのでしょうか

自分はTwitterで百合漫画見ても男女だったら良いのにと思うくらいヘテロ派なので気になります

これは完全に好みです。ヘテロものは全部根本に性欲が介在している前提で見るのでそういう含みがノイズになる場合は同性同士にしてほしいみたいなところはありますが(だからエロに限ってはヘテロでも可です)、僕がエロ人間というだけの話かもしれません。

 

281.魔女の旅々の話、詳しく書いて欲しい

書きました! 二期を楽しみにしています。

saize-lw.hatenablog.com

 

282.LWさんはワナビではない?

どうですかね? 夢に向かって日々努力~みたいなスタンスは取っていないですが、小説を書いてネットに公開してる素人という時点でワナビではないと言い繕うのもかなり難しい気がします。
ありがたいことに(?)DMとかお題箱で「LWさんの小説をこの賞に投稿してください(応募URL添付)」みたいな依頼(?)がときどき来るんですが、仮にその賞に投稿していたとしても、そのことを公言するのは何らかの選考を通過したときだけでしょう。落選はわざわざ報告したくないという程度の見栄は僕にもあるからです。

 

283.クソつまらないアニメ見たときのメンタルリセットってどうすれば良いんすかね…(神様になった日視聴後)

クソつまらないアニメは無数にありますし、ノートにクソでしたとか書いて忘れます。
個人的には、逆に迂闊に神映画とか神回に当たってしまってしばらく他のコンテンツを消費する気になれないみたいな状態の方がコンテンツ消費ペース的には厄介ではあります。

 

284.なんではみるとんさんにブロックされてるんですか?

一応別垢からDMで聞いてみたんですが返事が返ってきませんでした。
しかしそのブロックされた理由がわからないから聞きに行くというまさにその他人が自分に感じている不快感への疎さと無頓着さこそが、一般に人間がブロックされる理由のかなりの部分を構成しているような気はします。知り合いの知り合いくらいのYPにブロックされてること結構ありますけど、ブロックされた理由がわかったこと一度も無いですからね。

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285.シグルリどうでしたか?(ワルキューレとかオーディンとかわざわざ美少女の目の前で格好つけてから死んでいくモブ達とか)

これも書きました!

saize-lw.hatenablog.com

やっている試み自体はまあまあ面白かったと思うんですが、キャラデザが良い美少女4人メインの割には萌えパートの感性が古すぎて時代的な断層の上で終始滑りまくっており萌えアニメとして微妙だったのが結構辛かったです。

 

286.新条アカネって結局LWさん的には上手くヴィランとして処理されたんですか?

いや全然ですね……結局「ちょっと捻くれてるけど根は悪人じゃない普通のオタク女子」くらいのところに落ち着いた気がします。今思えば「雑スギィ!!」が最大瞬間風速でした。
ダイナゼノンもグリッドマンみたいなやつなら見なくていいかなと思って見てないですが、話題になったら最初から見ていたフリをしようと思います。

 

287.LWさんのフォローしてるブログが知りたいです(既出でしたらURLおねがいします)

それはあんまり無いですね……正直に言って僕は自分のブログを書くことに比べて他人のブログを読むことへの関心が恐らくかなり低いです。
よく読むのはカードゲームのブログと知り合いのブログくらいです。ここで言う知り合いというのも「ブロガー友達」みたいなやつでは全然なくて、古いカード関係の知り合いとか面識のある知り合いとかで、あいつが書いてるならまあ読んどくか~みたいな内輪なやつです。
いずれにしてもLWのサイゼリヤという文脈においてこれがオススメですと胸を張って言えるブログはあまり思い付かないです。