LWのサイゼリヤ

ミラノ風ドリア300円

24/5/9 2024年4月消費コンテンツ

就職先も無事に決まったので4月は本を読みまくっていた。ガチって1ヶ月で消費可能なコンテンツ量はたぶんこのくらいが上限だと思う。

メディア別リスト

漫画(78冊)

バオー来訪者
暗号学園のいろは6
カラダ探し(全17巻)
カラダ探し解(全5巻)
一ノ瀬家の大罪(全6巻)
ジャガーン(全14巻)
食糧人類Re: -Starving Re:velation-(全7巻)
ダンジョン飯(全14巻)
宝石の国(全13巻)

書籍(13冊)

訂正可能性の哲学
訂正する力
あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠
統計的因果推論の理論と実装
悪童日記
10年戦えるデータ分析入門
ビッグデータ分析・活用のためのSQLレシピ
確率思考の戦略論
仕組みと使い方がわかる docker&kubernetesのきほんのきほん
東京都同情塔
ロジカル・プレゼンテーション
RとStanではじめる ベイズ統計モデリングによるデータ分析入門
StanとRでベイズ統計モデリング

良かった順リスト

人生に残るコンテンツ

一ノ瀬家の大罪

消費して良かったコンテンツ

ダンジョン飯
StanとRでベイズ統計モデリング
悪童日記
食糧人類Re: -Starving Re:velation-
ロジカル・プレゼンテーション
ビッグデータ分析・活用のためのSQLレシピ
暗号学園のいろは6
RとStanではじめる ベイズ統計モデリングによるデータ分析入門
訂正する力
あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠

消費して損はなかったコンテンツ

ジャガーン
仕組みと使い方がわかる docker&kubernetesのきほんのきほん
確率思考の戦略論
訂正可能性の哲学

たまに思い出すかもしれないくらいのコンテンツ

バオー来訪者
東京都同情塔
宝石の国
10年戦えるデータ分析入門

以降の人生でもう一度関わるかどうか怪しいコンテンツ

カラダ探し
カラダ探し解

ピックアップ

ダンジョン飯

saize-lw.hatenablog.com感想記事がけっこう伸びた。アニメもちょっと見ているが漫画と同じくらい面白い(加齢の影響でちゃんと最初から見ないでニコニコのランキングで目についた回だけ再生している)。

訂正可能性の哲学等

saize-lw.hatenablog.comサイゼミで読んだ。『訂正する力』と『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』も同枠。

データ分析系書籍

saize-lw.hatenablog.comまとめて書いた。

一ノ瀬家の大罪

タコピーに続いてめちゃめちゃ面白かった。タイザン5、お前は天才だ……

タコピーの頃から人心の奥にある「嫌な感じ」を引きずり出すのがやたら上手かったが、最も親密なはずの家族関係をモチーフにしたことでそれが順当にアップグレードされている。距離が近ければ疎ましく、疎遠でしか仲の良さを装えない。素だとうまくいかないが、取り繕えるほど器用でもない。全て上手くいきそうになるたびにちょっとしたことで全部ダメになる。
単に露悪的なだけではなく、人間関係不信に裏打ちされた陰陽太極図のような往復運動が手を変え品を変え繰り返し描かれる。特に貧乏ごっこをしていたお嬢様がかなり良く、一見何の問題もなく幸福そうな人にまで「幸福への罪悪感」というままならなさを見出すのは素晴らしい。あと主人公が食卓をひっくり返すシーンで『家族ゲーム』のクライマックスを思い出して気持ちよかった。

ただ何となくギスギスしているだけの話にはならないよう、定期的に問題をセット・リセットするためのギミックとして記憶喪失と夢のギミックが投入されているのも上手い。おかげで話がガンガン動くので飽きも来ず、記憶喪失の真相を巡る大筋の話もよくできている(最終的には便利な薬に頼った感じもあるが、そこは何でもいい部分なので目を瞑ろう)。

一気読みすると感動的な大作である一方、本誌掲載時の評価が低かったことも理解できる。話のメタレベルを巻き込んで人間関係が目まぐるしく変わること自体が作品の大きなテーマになっているので、普通の漫画ならそう大きくは変わらない大前提の設定や関係が一話で転覆してしまう。少し読み飛ばしたり忘れたりしただけで何もわからなくなるのはいまどきあまり優しくない。
ただそういうままならなさが根本的に面白さを担保している以上、それも作品としてやむを得ない。この内容なら電子媒体にすべきだったというのは編集の配慮不足だ。タイザン5は悪くないので次回作も楽しみにしている。

ジャガーン

6巻まではめちゃめちゃ面白かったがその後は並だった! 6巻を区切りにして前後で評価がはっきり分かれる漫画(いわゆる前期ジャガーンと後期ジャガーン)。
補足533:いわゆらない。

前期では「欲望」というテーマの描き方が非常に巧みで面白かった。敵も味方もイカれた欲望に支配された紙一重の「壊人」であるという仮面ライダー風の基本設定がまずあり、個人のエゴと社会の安定が徹底的に折り合わない。そんなアンビバレンスが「警官としての善性」と「強い射殺欲求という悪性」を併せ持つ主人公の秀逸な造形に集約され、壊人騒動の中でも一向にポジションが定まらない。
迷っているうちにトリックスター・散春が盤面を最悪にかき回し、正義を求めるミソギデオンは自壊するし、家族思いのマッドランクは妻を殺してしまう。ホラー漫画のようなインパクト重視の画風も相まって、敵味方すら定かではない混沌の中で繰り広げられる血みどろの戦いが独特かつエキサイテイングな傑作だと思いながら読んでいた。

のだが、6巻を境にして後期は「よくある面白い少年漫画」になってしまった。別につまらなくはないのだが、それまでの混沌ぶりからすると何もかもお行儀がよすぎて独自性が薄い。主人公はSKATとかいう国立壊人対策機関に所属して安定した正義ポジションに収まってしまうし、後期から登場するキャラもいちいちかっこよすぎる。三日土さんも雪丸くんもイケメンすぎて前期の醜さが完全に脱臭されてしまった。
確かに前期のような「破滅と隣り合わせの葛藤」は後期でも繰り返し扱われるが、しかし決定的に変わったのは「誰かのために」という欲望が肯定されてしまったことだ。前期では欲望とはすなわち個人的エゴであり、何を望んでも結局のところ破滅的な自慰行為でしかないという矛盾が混沌を生み出していた。しかし後期の主人公はベルちゃんのために戦えてしまうし三日土さんは息子のために闇落ちできる。それは論点の止揚というよりは単なる破棄であり、何よりありきたりなのがとても良くない。

特に「サブ主役」の交代は前期と後期の切り替わりを象徴する。確かに前期でサイドストーリーを担当していた「ロバちゃん」はストーカーだし逆恨みするしレイプ魔だし良いところが何もないカスの性犯罪者だが、そうはいっても「ここまでのカスですら欲望を完全に満たすことはできない」という露悪的な文脈で欲望のままならなさを強力に描く一翼を担っていた。ロバちゃんが死亡したあとに登場した「ヤドルくん」も善良な女子大生の人生を乗っ取っているそこそこのカスではあるが、ロバちゃんほどの悪性は備えておらず、欲望に苦しむというよりは欲望との折り合いをつける方向で他人と関わっていく。

ただ後期にも秀逸な要素が二つあり、一つはバトル漫画としての質の高さだ。ホラー風だった前期の頃から画力はかなり高かったが、後期になってそれはスタイリッシュな方向に洗練されて存分に活かされている。いちいちかっこいい敵クリーチャーや戦闘構図が生み出され、特に三日土さんが絡む戦闘は外れがない。
もう一つはTSものとしての完成度である。さっきも触れたサイドストーリー担当のヤドルくんは元々は冴えない弱者男性だったが変身能力で美人女子大生の人生を乗っ取り、恋愛や性欲に巻き込まれる中で女としての自覚を育てていく。最初は散々葛藤していたのが最終的にはハニートラップ担当になったり男とくっ付いたりというTSストーリーがやたら濃密に描かれるため、TSオタクはヤドルくん目当てで読んでもいい。

悪童日記

欲しいものリストからいただきました。ありがとうございます。

顔が良く才能に溢れた双子が戦時下をしたたかに生き延びる話で、キャラ萌え小説としてかなり良かった。
彼らは生き延びるためには大人たちを騙したり陥れたりすることも全く躊躇わない恐るべき子供たちだが、決して生まれついてのサイコパスではないというキャラ造形が秀逸。確かに努力すればサイコに振る舞える程度には適性があるのだが、かといって『悪徳の栄え』のジュリエットのような生来の悪党ではない。

彼らの生存戦略は「主観的な価値判断を全て排し、客観的なTODOに基づいて行動する」なる思想、すなわち人工サイコパスとして作中冒頭で提示され、実現のために様々な自主訓練が実施される。それは痛みに動じないためにお互いに暴力をふるい合う訓練だったり、他人を騙すために聾や唖の真似をする訓練だったり、感情を表に出さないために直立不動で決して動かない訓練だったりする。過酷な環境に頑張って適応する姿がそれほど悲惨に見えないのは、彼らがあまりにも幼いからということもあるだろう。子供のスポンジのような吸収力を持ってすれば意外と「そういうもの」として生きていけてしまうのかもしれない。
彼らは決して誰にも絆されたりしないが、同じく誰にも絆されない同類であるババアに対しては一段ガードが下がるのも萌えポイント。「心を開かない」という一点において協調して心を開いているという矛盾した連帯が見どころで、特に全員で結託して可哀想な障碍者のフリをして通学を回避するエピソードはその到達点だった。

本編を通じて双子が離れることは一度もなかったが、最後に父親の死体を踏み台にして国に留まる者と逃れる者で今生の別れを迎えるエンディングはショッキングだった。時間があるときに続きも読みたい。

食糧人類Re: -Starving Re:velation-

一時期やたら広告でよく見たやつの続編。実は前作も既読でぼちぼち面白かった。

今回の舞台は前作の数百年後で、タイトルにもなっている「食糧人類」を描くにあたって基本全体状況が大きくアップグレードされている。前作では食肉工場で目覚めるところからスタートするパニックホラー展開だったが、今回は「人間が嬉々として上位存在に食われる」という常識がおかしくなった社会での日常系ホラー(?)としてスタートする。伴って閉鎖空間からの脱出が目標だった前作とは異なり、今作では異常な社会の中で階層上位にいる公務員(「管理者」と呼ばれる)同士の戦いがメインになっていく。

そしてこのバトルがめちゃめちゃ熱い!!!
管理者たちはお役所勤めのホワイトカラー公務員でありながら、社会の治安を維持する暴力要因として軒並み高い戦闘能力を備えてもいる。だから年齢層が高めで中年やジジイがスーツを纏ったまま戦う上、社会の都合で火器が使えないので全員が素手で人を殺せるレベルの身体能力と高い暗器技能(ワイヤーや仕込み棘など)を備えるという非常に渋いバトルが展開する。特に最強格のジジイは細い鉄線を介した微弱電流による神経操作とかいう完全にバトル漫画向けの戦闘スキルを保持している(レガートブルーサマーズ?)。格闘漫画ほどリアルではないが、能力バトルほどファンタジーでもない、嘘喰いくらいのリアリティのバトルが高い画力で描かれるのは見ごたえ十分。

そして管理者も一応人間サイドではあって、人類を食糧とする上位存在に支配されていることをヨシとしているわけではない。それでも「世界を守っていくためには何が最善か」という点で戦うに値する見解の相違があり、はっきり人類の敵である悪役は実は一人もいないだけにバトルにも人間的な深みが出てくる。

ラストのオチがあまりにも適当すぎるきらいはあるが、パニックホラー漫画ではなくバトル漫画として優れているのでそれも気にならない。良作バトル漫画。

バオー来訪者

流石に古すぎて全然面白くなかったが、ジョジョに繋がるエッセンスは垣間見えたのでその点で目を通す価値はあったかもしれない(例えば作画面では円柱のような独特な銃弾軌道がこの時代から一貫しているのは面白い)。本編だけではなく、あとがきで「ロックな感じで身体を描く」とか「能力に最低限の理屈は付けたい」みたいなマインドを語っているのも波紋やスタンドに繋がりそうな趣がある。

東京都同情塔

ブロッコリーマン主催の読書会で読んだ(単行本ではなく全文収録した文藝春秋の方)。

オッサン向け時代認識アップデートコンテンツであるところの芥川賞らしく、現代社会特有の息苦しい空気を感じながらついでにAI出力も体験できる欲張りな作品。「芥川賞受賞作にAIが使われている」というニュースで一瞬話題になったが、主人公がChatGPTを使うシーンがあるだけで地の文で使われているわけではない(「芥川賞もAIで執筆される時代」などと言っている人は100%読んでおらず、エアプ語りを炙り出しやすい)。

設定自体はなかなか面白く、「全ては人ではなく環境のせい」という人権意識が高まりすぎた挙句に犯罪者が「最も同情されるべき人々」と見做されるようになり、犯罪者に最大の福祉を与える刑務所(?)が新宿の真ん中に君臨する近未来が舞台。「ギリギリ有り得るかも」と思わせる露悪的な時代感覚と共に、ラノベでも通用しそうな水準の説得力とインパクトを備えた舞台装置はかなり強力だ。

主人公は言ってしまえば「社会規範を真に受けてしまっている人」で、「障害者ではなくしょうがい者と書く」みたいなルールを内面化してプライベートでも徹底して従おうとする。そういう人は自分の中では倫理的であろうと一生懸命努力して整合を取っているのだが、それは他人への配慮というよりは自罰的な自己満足に過ぎないため、周囲から見ると単に会話しにくいだけのコミュ障であって高潔な人格という印象も特に与えない。こういう感じの人はTwitterとかにも割とよくいる。
冒頭から主人公が延々と内省しているのでそのまま最後まで行くのかと思いきや、途中で主人公のヒモ男に視点が移る。こちらは逆に社会規範をあまり真に受けずにスルスルと生きられるタイプで、規範に真っ向から反骨することもなくうまく受け流して世の中を渡っていける。主人公の悩みに勘付きつつもあまり突っ込まなかったり、しれっと主人公を超える言語能力を発揮したり。真逆の性質を持つ他キャラに視点が移ったことでこの作品が単なる「人権派文学」ではなく多様な視点を内包していることがわかってくる。
より露悪的なポジションとしてFワードを使って毒づいてみせるジャーナリストのデブ白人も登場するが、彼も「自分はレイシストではないが」と留保して人並みにインタビューをこなす程度の理性が残っているのは良い塩梅だ。特に俺のお気に入りは殺害された幸福学者で、演説では聞こえのよいことを言っている割にはプライベートでは差別発言を平気で絶叫できるあたり、倫理を真に受けている主人公とは別タイプの人種であることが示されているのが秀逸。

というように、息苦しい社会と向き合う様々なスタンスのキャラが登場するのはぼちぼち面白いのだが、最大の問題はイベントらしいイベントが特に何も起こらないために根本的に「ダーウィンが来た」みたいな人物図鑑でしかないことだ。刑務所が建つという物理的に大きな変化があるとはいえ、スタンスの異なるキャラクターたちが相互作用を起こすこともなく顔見せで終わってしまう。確かにコミュ障の主人公にせよ軟体派のヒモ男にせよジャーナリズムのデブ白人にせよ、コミュニケーションしないこと自体に一貫性があると見ることも不可能ではないが、俺はエンタメ派閥なので何か事件が起きてほしかった。

カラダ探し

ジャンププラスに長いこと載っていたやつ。続編の解も含めて今更読んだがあまり面白くなかった。タイトルにもなっている「カラダ探し」がかなりデジタルゲームチックなのでずっとホラーゲーム原作のメディアミックスだと思っていたのだが、原作はネット小説らしい。

「カラダ探し」というゲームのルールはシンプルで、要するに「赤い人」という怪異の妨害を避けながら校舎内に散らばった身体の断片を回収すればクリアとなる。赤い人とは要するに「めっちゃ力が強い女の子」で、呪いとか精神攻撃ではなくエンカウントすると物理的に殺してくるだけなので、戦闘技能がある人がガチればしばらく戦って足止めできる(なんだそれ!)。
他にも細かいホラーゲーム風のルールが色々とあり、「振り返ると目の前に赤い人が現れて即座に殺される」もその一つだ。これは迂闊に振り返れないようにすることで「背後に何かいるが確認できない」みたいな恐怖を煽るためのルールなのだろう……と思ったらその用途ではあまり使われない。ではどう使われるのかと言うと、「自ら振り返ることで、自分の死亡と引き換えに今ここに赤い人を即時召喚する技」として使われるのが相当面白い。殺したい人間が近くにいるとき赤い人を呼んで道連れで殺してもらったり、強制的に赤い人が移動することを利用して遠方で襲われている人を救ったりできるのだ。ホラー漫画で怪異のルールをハックすな。

そんな感じで「精神的な恐怖」や「不明瞭な謎」というよりは「物理的な応戦」と「明確なルール」によってホラーゲーム(?)が展開していく感じはけっこう独特で面白いのだが、逆にそのせいでゲーム進行がシステマチックで淡々としすぎていて見どころが特にない。結局は毎回校舎内を順番に探すローラー作戦で身体を順次発見していくだけで、探す身体が他人から自分に変わったり死体が動くようになったりと若干のマイナールールチェンジは色々あるものの、基本的に最初から最後までやっていることが同じなので普通に飽きる。

ゲーム外のストーリー要素もイマイチ興味を引かない。この呪いゲームはもともと姉妹喧嘩から始まったという真相が早めに開示されるがそれ以上深い話に進むことがなく、最終的に退魔バトルをやるが「黒くて怖い人」という最大の元凶については何も明かされずに何となく終わった。

ただ、最終盤にめっちゃ都合よく駆け足で進むやん……と思ったら続編の「解」でその裏にあったワチャワチャが描かれるという情報の出し方はけっこう良かった。ただ解の内容を途中で挟んだら中だるみしてもっと面白くなくなっていた気がするし、多少強引でも伏線回収みたいな感じで読ませると脳の快感が大きくなる。