LWのサイゼリヤ

ミラノ風ドリア300円

5/10 子供の頃、つるぎのまいは真っ先に忘れさせてた

・世界認識について

名前が似ているだけで内容は全然関係ないけど、昨日ファントム理論の話をしたときに書くかと思ったので書く。

水素水とか重力野菜みたいなもの、インターネッツでは科学的に根拠がないという理由で批難したり馬鹿にする向きが強いが、俺はそんなに悪いとは思わない。
世界を認識するために使用している世界観が人によってまちまちというだけだ。

通常我々が使用している世界観は、「人類が積み上げてきた科学の結論を支持する」という科学的世界観だ。
仮説と実験を繰り返し、現象を説明できると思われる理論を立てるというものだが、これはこれで一つのスタイルに過ぎない。あまりにも当たり前すぎてよくわからないかもしれないのでそうでない例を挙げると、「火山の噴火は神々の怒り」という神々的世界観ではこういう実験&実証スタイルは採用されていない。

科学的世界観が他の世界観と比べて優れている最大唯一の特長は、精密な予測可能性を持つという一点である。これに従えば天気がわかるし、ちゃんと走る自動車が作れるし、ちゃんと病気を治せるし、なんかいいこと尽くめなので今の世界ではこれが支配的になっている。
神々的世界観ではこうはいかない。天気について思いを馳せるとき、科学的な世界観では人工衛星のデータを参考にするが、神々的世界観では代わりに雨乞いをすることになる。
このとき、人工衛星を使った場合は高い精度で明日の天気がわかる一方、雨乞いをしたところで別に雨が降る確率は変わらないし特に何もわからないという違いがあり、これは実績の有無とも言い換えられる(俺は雨乞いをしたことが無いので、本当はちょっと変わっている可能性もあるかもしれないが)。

補足14:さっきも少し触れたが、本当はこの実験&実証というスタイル自体が科学的世界観に準拠しているためにその物差しで測るのはアンフェアだ。
しかし、特に効果を持たない雨乞いについて「気持ちの問題以上の役には立たない」くらいのことは言ってしまってもよいような気がする。


ただし、現在の科学的世界観の問題点として、精密さと引き換えに直感的な理解の可能性を手放してしまっていることがある。
物理学では当たり前のように水素原子とか電磁波とか(ここで言う「水素」は水素水ではなく物理的に正確に定義されている意味)いう概念が使われるが、我々はそれを見ることもできないし、感じることもできない。普通の人はスマホがどういう原理で動いているのか知らないし、風呂の追い炊きの後ろにある熱力学も知らない。

じゃあどうするのかというと、「難しいことは偉い人に任せてその能力を信頼する」というのが現在の科学的世界観における大衆的な信頼獲得の様式である。
例えば、「自然派ママは火傷を温める」とかいう記事が最近大炎上していたが、実際にデータを取って「火傷に保温は禁物」という事実を証明するか、そこまで行かなくても体験レベルで知っている人間すら日本に0.01%もいないだろう(現代の常識的な人間は火傷を温めないからだ)。反論者の根拠は「科学的にそういうことになってるから(科学者たちがそう証明したらしいから)」という権威性に集約されているはずだ。

要するに、科学的世界観を担保する基盤は、一般への普及レベルにおいては、もともと根幹にあったはずの実証が放棄され、政治的なポジショニングにすり替わるのだ。
それでも天気予報のように、すぐに結果がわかるために信頼を獲得できる場合はまだいい(人工衛星の原理を知らなくても、コンスタントに天気を当ててくれる天気予報士がとりあえず「正しい」っぽいことは直感的にわかる)。これが原子や電波の話となってくると、もはや普通に生活していては権威以外の方法ではどうやっても信憑性が得られなくなってくる。

この状況で、大衆たちの取れる「改善策」には2パターンある。

一つは信頼されるところの権威をすり替えることである。
水素原子10個が酸素にくっついた超水素水!を販売しても、直感的にその正誤がわかる人はいない(水素原子二つと酸素原子が結合している様子を実際に見たことがある人はまずいない)。感覚的なわからなさで言えば教科書と大差ないので、あとは各種バイアスが付けば優劣は逆転する。

もう一つは、権威への依存を放棄して、直感的に理解できるレベルのわかりやすい説明を作り出すことだ。
何度も引き合いに出しているが、神々の世界観はこれに該当する(具体的な宗教名を出してもいいのだが、信者の方に不快な思いをさせてしまうかもしれないので、シリアスな信者がいなさそうな日本の八百万の神々みたいなものをイメージして書いている)。火山が噴火するときに地球の組成とか地下プレートみたいな話をするより、神が怒ったことにした方がまだわかりやすい。

いずれにせよ、これら改悪的?発展の原因は自然科学がもはや直感的には理解できなくなっているということにある。
これからも科学が発展するだろうが、それが一般レベルでわかりやすくなる方向に進むことは無いだろうから、これからも(むしろ発展すればするほど)水素水や重力野菜は現れてくるだろう。

さて、世界観についてつい色々書いてしまったが、ここまでの話はもう100回くらい言われているだろうし、割とどうでもいいことだ。

補足15:書いてから言うのもなんだが、この「もう100回くらい言われているが」タイプの保険のかけ方はあまり良くない。
数十億もの人間がいる地球上で真に自分が初出の発言など、人生を通して1回あれば奇跡だろう。「発言」を「公に発表したこと」に限定したとしても、インターネットが発達した現代では事情はあまり変わらない。
個人の発言のレベルを「誰かが先に言ったかどうか」という新規性で制約すると何も言えなくなってしまうので、そもそもそういう基準で物事を考えるべきではないのだ。二番煎じを恐れるな。


色々な世界観の話をしたが、予測可能性を取るなら科学的世界観、権威性?が欲しいなら似非科学的世界観、わかりやすさが欲しいなら神々の世界観というように、目的に応じて世界観を選択することが可能という言い方もできる。
何を選ぶかは個人の好みの問題と言ってしまえば、重力野菜を愛好する人たちだって我々とそう大きな違いはない。

そうではなくて、何の世界観も持たない、徒手空拳で世界に立ち向かうが如きスタイルの連中が結構いるような気がするという話が次回以降に続くかもしれない(続かないかもしれない)。

・バフについて

RPGのバフについて思うところがあるので書く(バフとはステータスのプラス修正のこと。攻撃力やスピードをアップするアイテムとか呪文全般を指す。具体的には、「つるぎのまい」とか「プロテス」。対義語はデバフ)。

バフの説明文を「攻撃力がアップする。」としか書かないゲームが結構あるが、そういう風に詳しい言及なしで使われるバフには、実際には概ね次の二種類がある。

A.パーセントバフ
元々の攻撃力を参照してパーセンテージで修正すること。
例:「攻撃力を30%アップする」。このパーセントバフを攻撃力100のキャラに使用した場合、攻撃力は130になる。

B.定数バフ
元々の攻撃力に関係なく、固定値で修正すること。
例:「攻撃力を30アップする」。この定数バフを攻撃力100のキャラに使用した場合も、攻撃力は130になる。

バフがどちらなのかによって使用感は全く変わってくる。
思い付くままにいくつか挙げる。

1.耐久性
バフが冒険の最初から最後まで使えるかどうかということ。

具体的な数値で説明しよう。
ゲーム開始時の攻撃力が100だったとする。この段階では「攻撃力を30%アップする」「攻撃力を30アップする」バフはどちらも攻撃力を130にするので大差ない。
しかし、終盤で攻撃力が1000まで上がったとき、パーセントバフでは攻撃力1300、定数バフでは1030だ。もはや定数バフでは攻撃力が3%しか変わらず、ほとんど使う意味がない。

一般に、定数バフは基本ステータスがインフレすると力不足になる。

2.連続攻撃
2人のキャラを考える。

攻撃力100で1ターンに1度攻撃する勇者ネムルと、攻撃力10だが動きが素早いので1ターンに10回攻撃できる盗賊ミントン。ネムルが1ターンに出すダメージは100×1、ミントンは10×10でどちらも100だ。バフをかけない状態では総ダメージ量は変わらない。

それぞれに対して「攻撃力を30%アップする」パーセントバフを使おう。ネムルが攻撃力130で1回攻撃、ミントンが攻撃力13で10回攻撃する。どちらも総ダメージは130であり、やはり同じだ。
しかし、「攻撃力を30アップする」定数バフを使うと事情は大きく変わってくる。ネムルが攻撃力130で1回攻撃のままなので130ダメージだが、ミントンは攻撃力40で10回攻撃するのでなんと400ダメージを叩き出す。

一般に、定数バフは固定値の修正が累積する連続攻撃と相性がいい(逆にパーセントバフは何度攻撃しても総ダメージが変わらない)。

3.ステータス差
レベル差のある3人パーティーを考える。
攻撃力100の勇者ネムルと、攻撃力50のビギナーシゲス、攻撃力200のレジェンドカシデク(ちなみに、今回は皆1回攻撃しかしない)。

それぞれに対して「攻撃力を30%アップする」パーセントバフを使ってみる。
ネムル:攻撃力130、シゲス:攻撃力65、カシデク:攻撃力260。
次に「攻撃力を30アップする」定数バフ。
ネムル:攻撃力130、シゲス:攻撃力80、カシデク:攻撃力230。

ネムルはどちらでも同じだが、シゲスは定数バフ、カシデクはパーセントバフの方が効率がよいことがわかる。キャラのステータスによって、かけるべきバフは変わってくるのだ。

一般に、強いキャラにはパーセントバフ、弱いキャラには定数バフをかけた方がいいことが多い(数値にもよるので一概には言えないが)。


まとめると、パーセントバフか定数バフかで戦略性や使い道が変わってくる。
プレイヤーによって考え方はまちまちだろうが、俺は「うまくやっている感」はゲームのキモの一つと考える派閥なので、適当ではなく確信をもってベストのバフをかけるために仕様を説明文にちゃんと書いて欲しいような気がする。
殊勝なゲームプレイヤーはいちいち実験して仕様を調べるのかもしれないが、どちらも数値が上昇するのは同じだし、色々と条件を変えて試さないとわからないのでなかなか検証しにくい(さっきの例だと、ネムルでバフの仕様検証をしようとしても修正値が一致してしまうのでどっちだかわからない)。仕様が明示されていない属性補正やランダム補正があった場合には尚更だ。

ちなみにパーセントと定数の違いはバフに限ったことでもなく、回復アイテムなどでも同じことが言える。
ポケモンの「きずぐすり」は定数の20回復なので終盤は役立たずになるが、ネプテューヌの「ネプビタン」はパーセントの30%回復なので序盤から終盤まで使える。

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