LWのサイゼリヤ

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3/24 続・ガヴドロとメイドラゴン

・昨日の続き/ガヴドロとメイドラゴンの感想

 

・関係性について

人間関係が豊富なほど類型化していない傾向があるとは言ったが、だいぶアバウトな傾向なのでそうとは限らないことも多い。スクフェスのストーリーなどは例外的に悪い例で、確かに色々な組み合わせで会話は行われるものの、紙ペラのように中身のない取って付けたような話しかしないので類型度が低いとは感じない。
 
ガヴリールドロップアウトでは、1話を見た感じではサターニャとラフィエルが見るからに固定カップリング的(そもそも二人のキャラクターの起源が共依存的である)なのでこの二人は常にセットで出てきてコメディをやるんだろうなあと思っていたのだが、直後にヴィーネとラフィエルの関係を掘り下げる回をやったので見直した記憶がある(類型度が低い)。
 
関係性という部分ではメイドラゴンの類型度が低いとは感じない。トールと小林さんの関係はテンプレートのお手本で、特に見るべきところはない(小林さんが女性であるということを除けばだが、小林さんが女性でならなければならない理由はたぶん別のところにあり、どう見ても役割は男性的なので今は深入りしない)。作品の中核を成すドラゴン勢の人間に対する価値観は独特だが、これは特定のキャラクター同士の間の関係というよりは社会全体に対するスタンスと言った方が適切なので、キャラクターの特徴に括って語った方がいいだろう。
 
・キャラクターについて
キャラクターの類型度の評価について、客観的な指針を立てるのはとても難しいような気がする。

例えばいわゆる「属性」は明らかに類型的な要素だが、これを持って類型度を測定するのには大きな問題が二つあり、本当に類型的でない性格など描きようがない(現実的に、性格を設定した時点で既存のどれかの属性には該当してしまう)というのが一つ、逆の属性を併せ持ったとしてもなおそれらがまとめて類型の一つとして吸収されてしまうことが珍しくないというのがもう一つだ。

前者は読んだままわかると思うので、後者について補足する。ラブライブ二期で星空が女の子らしい服を着て喜ぶような回があったはずだ。これはボーイッシュで活動的という今までフィーチャーしてきた属性に、ガーリッシュでピュアピュアな面もあるという正反対な属性を付けてみせたわけだが、だからといってこれを「パターンから脱している!」と感じた人はあまりいないと思う。ボーイッシュなキャラが胸の奥底で女性的なものに憧れているという設定はありふれている(ラブライブ二期ではこういう構造の掘り下げが多かった。意外にも勝負に弱い園田、意外にも乙女な面を持つ東條……)。こういう、「○○であるが故に正反対の××に対する欲求を持つ」というタイプの、属性だけ見れば完全に矛盾した内面ですらも類型的である以上、もはや何を設定しても抜け出せない。

テンプレの話をしているのに属性の話が出来ないということになってくると、いよいよ何を判断基準にすればいいのかわからなくなってくるので、ここは順序を逆にして、感想を書きたいアニメについて探りを入れてみる。

 

まずメイドラゴンについて、類型度の低い順にメインキャラを並べると

トール<ファフニール<<ルコア<一角獣みたいな人<カンナ

(※「低い順」なので不等号がちょっと不自然だが、トールの類型度が最も低く、カンナの類型度が最も高い)

トールの魅力(ひいては作品全体の魅力)は彼女が本当に登場人物を殺害する心持ちで生きているところにある。トールが発するギャグではない「殺すか」を聞くたびに、彼女のオリジナリティをひしひしと感じて俺は嬉しくなる。それに対して、カンナの「どのアニメにもいそう感」はすごい。カンナに限らず、年齢の低いキャラが一度「子供枠」に収まってしまうとそいつの類型度は発散し、テンプレートな行動しかとれなくなってくるような印象がある。

 

ガヴリールドロップアウトではトールほど顕著ではないが、それでも多分概ね合意が得られるのではないかと思う程度には4人を並べることができて、

ガヴリール<ヴィーネ<ラフィエル≦サターニャ

の順番になる。サターニャは常に弄られ役でなければならないが、ガヴリールは何かを失敗するにしても成功するにしてもキャラからずれない懐の深さがある。ちなみに、全編を通して最も類型度が高いキャラは11話で出てきたメイド。

 

大雑把に言うとガヴリールドロップアウトは関係性、メイドラゴンはキャラクターの類型度が比較的低かったというのが中盤までのそれぞれのざっくりした評価だった。ただ、ガヴドロもメイドラゴンも、最近は猛烈にテンプレ的になってきている。特にガヴリールドロップアウトでは里帰り以降がアニオリらしいが、そこから本当に取って付けたような展開とキャラクターの連打で類型度は急激に上昇し続けていて、漫画家とアニメ会社の器量の差を感じてしまう。

 
アニメの感想は終わって、結局、類型度が高い/低いと俺の評価というか好き嫌いはどうなるのかという話をもう少し続ける。
原則的には類型度が低いと評価は上がる傾向にあり、それは見ていて退屈ではないからという理由なのだが、例外も結構あって、例えば、俺はラフィエルがわりと好きだ。
ラフィエルはサターニャに次ぐ類型的なキャラで、行動の自由度もさほど高くない。運動会回では珍しく困惑したり逆襲されたりしたが(この一時的な逆転はラブライブ二期の星空回と同じような反転までひっくるめた類型度なのではないかという話はあるが)、俺は二話くらいからラフィエルが好きだった。
 
えーところで、最近俺は

 

 

(有アフィ)

これを買った。買った漫画の感想も独立したトピックにする予定だったのだが、言おうと思っていたことが似通っているので今やることにする。

この漫画はキャラも展開も類型度はかなり高く、話もそれほど面白くない。のだが、こういう画風のこういうキャラ(主人公の梅衣堂ひよちゃん)↓

がどうしても好きなので、買わずにはいられなかった。
 
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このひよちゃんやラフィエルに対する評価の高さは明らかに類型度の高さに由来しているのだが、原則的には類型度が低い方が評価が高いということを言ったばかりである。
「基本的には退屈だけど特に好きなケースに限ってはあるとうれしい(好きだから)」というだけの話なのだが、この若干矛盾する様相が一本の数直線上にある本来は打ち消し可能な値が(何故か)共存しているタイプのものなのか、それとも独立した変数として二次元平面上にプロットするのが適切なものなのか……ということは次回に続く。