LWのサイゼリヤ

ミラノ風ドリア300円

9/23 UnderTale、Ever17、ハーモニー、クララ殺しの感想

・感想ラッシュ

最近消費した

・UnderTale
Ever17
・ハーモニー
・クララ殺し

の感想を書きます。ネタバレを含むので全部追記。
「ハーモニーのネタバレは読みたいけどUnderTaleのネタバレは読みたくない」的な人に配慮して各項目名タイトルをクソデカピカピカ赤文字+青背景にしたので、薄目で目的タイトルを探してください(本当は一作品一記事が望ましいんだけど、サイゼリヤだし)。
ネタバレと言ってもいつも通り「犯人は××!」みたいな一目でヤバいネタバレはしてないから大抵の人はあんま気にしないと思うけど(この前「ネタバレどころか作品について喋ってないやん」って言われた)、俺がどんなネタバレも避けたいタイプの人間なので。

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(更新ツイート用画像)

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・UnderTale

Undertale Soundtrack
Materia Collective
2016-06-03


(ゲームはAmazonに売ってないので代わりにサントラ)

ニコニコ動画で大人気のインディーズゲーム、PS4で配信されたし一応やっとくか~的な感じでやった。Nルート→Pルート→Gルートまでクリア。
作者のアメリカ人オタクは東方とMOTHERに影響を受けたらしいが、その中でも特に東方的な部分について語るためにしばらく東方の話をする。

東方の隆盛は主にはキャラコンテンツのそれとして語られるけど、原作STGがゲームとして革新的だったのは弾幕にいちいち技名を付けたところにある(らしい。東方やったことないし、STG史にも詳しくないから本当に東方が最初だったのかはよく知らない)。
東方では名前のあるキャラが攻撃するときには技名(スペルカード)が表示され、技の発動として弾幕が発生する。名前が付くことによって何が起こるのかと言うと、弾幕が持つ印象がシステムからドラマに近付く。

補足64:ここで言うシステムとは、ゲーム世界内部には属していないもののゲームプレイのために便宜的に設けられた要素(ステータスやメニュー画面、現実世界系に所属)。ドラマとは、まさにゲーム世界内部に属している要素(ユニコーンの生態やハイラル王国の情勢、物語世界系に所属)。誰かがもっと適切な呼び名を付けている気がするのだが、俺は知らないのでとりあえずそう呼ぶことにした。
「システムが語るドラマ」とはステータスや技名でゲーム世界が語られることを指す。例えば、新たに加入したキャラの攻撃力ステータスだけが異常に高かったらそれだけで「こいつはめちゃめちゃ腕力があるキャラなのか?」「ひょっとしたらパーティーに紛れ込んでいる暗殺者ってこいつなんじゃないか」などと物語設定について予想できる。


弾幕はシステム的にはゲームがゲームであるためにプレイヤーが手元のコントローラで自機を操作して避けるべき障害の一つだが、ドラマ的には実際に主人公に迫りくる脅威であり、名前を付けることは後者の役割を強調することに相当する。
何気なく放たれただけの弾幕はただ「反射神経や操作精度に関するゲーム難易度」として黙々とシステマチックに処理される一方、マスタースパークという名前付きで放たれた弾幕は相対するプレイヤーに「うおーやべえ、あの魔理沙のあのマスタースパークじゃん」というドラマを与える。また、美しい弾幕の見た目も技名と同じ機能を持っており、「確かに弾幕がキャラクターによって意思を持って放たれた」という証左としてドラマ的な部分を後押しする(らしい。東方はやったことが無いのでやや適当に喋っている)。

結局、東方は「弾幕に語らせた(本来システム寄りである弾幕の技名設定と視覚的美しさによってドラマチックなキャラを構成した)」点がSTGプラスキャラゲーとして突出していた要素の一つである(らしい)。

UnderTaleにもこの「弾幕に語らせる」マインドが受け継がれている。
UnderTaleは一見コマンドバトルの体裁を取りつつも実際の戦闘はSTG風の避けゲーであり、敵が繰り出すオブジェクトをひたすら避けることになる。このとき敵が繰り出すオブジェクトが秀逸で、敵によって形もパターンも動きも全く違う。STG的な空間に涙を降らせる敵がいれば、斧で切り付ける敵もいるし、自分自身が出現して暴れる敵もいる。敵のダメージ状況や主人公との関係性によっても攻撃は刻々と変化し、常に攻撃がそのキャラを雄弁に語る。
「モンスターと戦闘しながらコミュニケーションする」というコンセプトに物語(ドラマ)を弾幕(システム)に組み込む東方的な発想がシナジーしている。

あと全然違う話として、悪意の話をしたい。
いくつか前の記事でした「悪意のうち、敵対関係が明瞭な段階は不愉快ではない」をGルートにも感じたんだけど、どうでしょう。

 


このツイートはGルートプレイ中にしたやつで、二番目のツイートはパピルスを指す。

上のツイートで全部喋ってしまったから改めて喋ることはあんまりないけど、不屈のアンダイン戦ってあんまり嫌な感じしないじゃん。「*ヒーローが現れた。」とまで言われると、「おうヒーロー、ぶっ殺してやるぜ」みたいな気持ちになるじゃん。明確なヒーローに対して明確な悪役になりきることは難しくないし、それは全然嫌な感じではない。こっちがヒーローでいるときとあまり大きな差がない。
それに比べて、「お前はやり直せる」と言ってくれるパピルスを殺すときの嫌な感じは凄まじい。俺でもちょっと躊躇った。

他にUnderTaleの特徴としてよく出てくるアンチRPGとかメタフィクション的な部分は珍しくも新しくもない(前者はmoonとかMOTHER、後者はネタバレになるので喋れない)から、いいか。

補足65:一つのジャンルとしてもう既に普通に成立しているから辞書を引けば済むという意味。
まあでも、「コマンド画面に攻撃を仕掛けてくるゲームの名前を挙げよ」って言われても「なんか見た記憶あるしどっかにあんじゃね」くらいですぐにはタイトルが出てこないから、もしかしたらUnderTaleがパイオニアだったりするのかもしれない。


そういう無数のギミックを綺麗に活かした上でストーリーも面白かったし、完成度の高い良いゲームだった。人気が出るのも納得。
そういえばBGMもめちゃめちゃ良くてサントラ購入した。俺は基本的にBGMに興味が無くて、よく限定版とかに付いてくるサントラも基本開けずに放置するタイプの人間なので相当。

Ever17


高校生の頃に買ってたまに進めて忘れて最初から~っていうのを何度も繰り返してたんだけど、ようやく一念発起してクリアした。
Ever17って多分オタク的重要古典名作コンテンツベスト20くらいには入るゲームで、(オタクが大好きな)メタフィクションの話が出るたびに話題に上る。しかもネタバレが致命的だから「一刻も早くクリアしなければならない!」と思いつつもクリアできずにいた理由はただ一つで、核心に迫るまでの話があまりにもつまらなさすぎる。

盛り抜きで、開始15時間くらいのプレイは人生で最も苦痛な時間の一つだった。
単純にストーリーが面白くないこともかなりあるけど、キャラがキツすぎる。ガイジ1・ガイジ2・情緒不安定・情緒不安定ガイジ・精神疾患が集まっている中で比較的健常寄りのキャラも二名いるけど、それにしたってそこまで良いわけでもない。キャラに魅力がないキャラゲーがこんなに辛いものだとは思わなかった(ここでいう「キャラの魅力」は「ギャルゲー的萌えキャラ的魅力」という意味ではなく、「人間一般に対して普通に感じる魅力」)。

しかし、核心部分(八神ココルート)は伝説になるだけあって本当に面白かった。
詳細は省くけど、俺は元々かなり伏線には鈍い方の人間で、ラストで明かされる衝撃の真実に全部「マジか!」みたいな反応ができたのが良かった(時間軸のズレにも普通に気付いてなかった)。今まで「Ever17」という文字が出た瞬間に端末を破壊したり本を破り捨てたりして徹底回避して生きてきたのが活きた(前に動ポモ2を図書館で借りたとき、前書きでEver17という文字列を見てその場で返却した)。

新たなる地平を切り開きフォロワーを大量発生させるようなパイオニア的作品には

1.ある領域を開拓したことは認めるが、フォロワーに比べるとクオリティが低く、新規性にしか価値がないもの(今見たら駄作と思っても仕方ないもの)
2.ある領域を開拓したことに加えて、フォロワーに劣らぬ魅力を持ち、現代基準でも感動できるもの

の二種類があるんだけど、Ever17は2と言っていいでしょう。
前半が異常者ラッシュだったのも伏線としてそうせざるをえなかった部分が大きい。これはしゃーない、許せる。

(虚無に耐えて耐えて耐え続けるとリターンが来るという意味)

・ハーモニー


姉から見ろと言われたやつ。

ミァハの思想って自分が好き・自分が大切(だから自殺する)っていうロジックで駆動しているんだと思って見てたけど、後半部を見るに彼女は自分が好きなわけじゃなくて自分以外の世界が嫌い(だから自殺する)という方が正しいのか。
ハーモニーを見る直前に自殺サークル(どっちも数百人規模の同時多発自殺が起きる映画で微妙に内容が被る)を見ていたせいか頭が固くなっていて、しばらくミァハの行動原理がわからなくて混乱してしまった。

わざわざ長い時間をかけて神格化されたミァハが今更エヴァみたいなありきたりなことを言い始めたあたりで幻滅しなかったと言えば嘘になるけど、ラストはかなり良かった。
ミァハとトァンが同じように世界を嫌っているように見えても、ミァハはミァハを好きじゃないけどトァンはミァハを好きっていう明確な違いがあって、それがそのまま自殺と均一化に対する見解の一致・不一致になるっていうのは、構造がキレイでいいね。

Yubit映研流に言うと80点くらい。サブカルメンヘラ女子大生みたいなコンテンツ、あまり嫌いじゃない(音楽で言うとアーバンギャルドとかチャラン・ポ・ランタン)。基本的にトァンが少女漫画ばりの勢いで女子大生かOLみたいなことをダラダラダラダラ自分語りしまくっててウゼ~のも許せる。
原作ファン的には映画は物足りない部分も多いらしいので(正直映画の内容がこのコンテンツの全てなら過大評価だなとは思った)暇があったら原作も読んでみたいけど、俺は小説があまり得意じゃないからかなり先になりそう。

・クララ殺し


アリス殺しは面白かったのに、こっちは残念ながら明確につまらなかった。
理由は明らかで、前作で作ったハードルを全く越えられていないため。具体的には、アリス殺しで大どんでん返しとして機能した

1.アーヴァタールの対応関係
2.世界の優先順位

っていう二つの要素がそのままオチとしてリサイクルされているせいで劣化再生産以外の何物にも見えない。(変則的とはいえ一応)推理ものなのでクライマックスは謎解きなんだけど、そのロジックが前作と同じとなるともうどこを見ればいいのかわからなくなってしまう。
まあでも、アリス殺しに免じて次作にも期待。