LWのサイゼリヤ

ミラノ風ドリア300円

8/26 打ち上げ花火下横の感想

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・打ち上げ花火、下から見るか横から見るか?

ネタバレを含むため追記

==== LW的には普通に面白かった。
面白いコンテンツにも「俺は面白いと思うけど万人がそう感じるわけではないだろう」タイプと「誰が見ても80点くらいだろう」タイプの二種類があってこの映画は後者じゃない?と思うけど、Twitterでは評判が良くないような情報ばかりが流れてきている。確かに俺は基本逆張りStyleみたいなところはあるが、ここまでか!?

というか、見る前日まで全然知らなかったけど、キャラデザがぽよよんろっくで製作がシャフトなんだね。あんまアニメ製作に詳しくない俺でも「これはオタクの映画だな」と感じる布陣だから「評判が悪いのは一般がオタク向け踏んで死んでるのかな?」とも思ったけど、実際に映画を見るとそういう感じでもなかった。
テーマがはっきりしているし、わかりにくいところも特になくて一般への配慮を感じる。

配慮っていうのは、全体的に説明過多だった。
「そこまで説明する?」と思ったシーンは3つあって、

1.初めての世界転移後、主人公が親友の発言の改変を回想するところ(花火は丸いに決まってるだろ→平べったいに決まってるだろ)
2.「もし電車で見つからなかったら」の世界転移後、電車が海上を走るあたりの長セリフ
3.最後の世界転移後、主人公が現状と心境を整理するセリフ

この辺、盛り上がる場所なのに説明とか描写がくどかった。
深夜アニメとかちょっとうまぶってる映画なら多分省くだろうけど、オタク向けじゃないしちゃんとやっとくかみたいな感じなのかもしれない(知らんけど)。

とはいえ、明らかに典型的な青春映画の体裁を嫌っている部分もあって、一番はヒロインの(表面的な)キャラでしょう。
わざとらしく幼い男性陣に対して、ヒロインがいちいち不明瞭な物言いや意図が見えない挙動をするので、オタク臭さが鼻に付く。「ヒロインが意味深な挙動をする」というのはヒロインには規定不能であってほしいというオタクの願望の表出で多分あまり深い意味は無い(と俺は思う)けど、そういう感覚に慣れていない人から見れば意味不明かもしれない。ヒロインの恋に恋する乙女っていうキャラとも噛み合ってないし混乱を招くだけじゃない?とは思いつつも、俺はそういうヒロインが好きだから嬉しかった。

ラストシーンもかなりオタク臭かった。
ラストシーンの話をする前にそこまでの復習をすると、一般にファンタジーにおいて現実に対置される虚構要素がこの映画では可能世界なんだけど、逆に言えば可能世界は虚構でなければならないという強迫的な要請がまず最初にある(タイトルにもある打ち上げ花火の役割は明らかに虚構性のインジケーターなのに、最後の世界転移後は世界に透明な天幕がかける描写で代用するから「そこは花火でやれよ!」って突っ込んでしまった。その辺の描写も含めて説明過多)。

補足55:「可能世界」は様相論理学の用語から引っ張ってきてるけど、「有り得たかもしれない世界」「パラレルワールド」くらいの理解でいい。

可能世界間を転移する能力を手に入れる作品は他にも結構あるけど、この映画ではそれが虚構の象徴であるために、主人公とヒロインの間で虚構の継続性に対して価値観の不一致があるところが見どころかもしれない。それが最後の問答の噛み合わなさ(ヒロインの質問に主人公は答えていない)に繋がるんだけど、それはそんなに重要じゃない(いわゆる考察なので)。

俺が興味があるのは現実へのカウンターとして出現した虚構がどこに向かって収束するのかという部分で、花火師のおっさんによって虚構が破壊されたあと、現実に復帰したときに誰も幸せになってない(なってるかもしれないけど、少なくとも描写はされない)のは評価できる。
ちょっと雑すぎる気もするけど、現実→虚構→現実という転移の過程としてひとくくりにして語っていいなら、最後に(報われないわけではないにしても)劇的に報われる要素がないという意味ではラストシーンに『君の名は』との明確な相違点を感じることができる。

『君の名は』タイプのハッピーエンドを見ると俺が少し不愉快になるのは、「現実で幸福になれるなら最初から虚構に転移するなよ」というやっかみによるのだが、一般に虚構を踏み台にして現実で幸福になることはハッピーエンドの類型として認められているため、俺はわりと頻繁に不愉快になる。
なまじラストをぼかしているだけにつまんねーこと言ってねーだろうな~と思って一応パンフレットを買って確認したけど、特に致命的なことは言っていなくて安心した(面白いことも言ってなかったけど)。


なんか皆があまりにもつまらないつまらないって言うから擁護寄りの書き方になったけど、悪くはないくらいで別に持ち上げるほどでもない(冒頭にも書いた通り、突き抜けた面白さはないけど癖のない優等生な映画)。
yubit映研流に点数を付けるなら70点くらい。