LWのサイゼリヤ

ミラノ風ドリア300円

19/4/16 動ポモを読め

・空白の3月

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かつてないほど更新の間が空いて気付けば3月をスキップしてしまった。わたてんも終わってしまった。
理由としては「日本興行収入映画トップ100を見よう」というのをやり始めて、時間が空けばとりあえず映画鑑賞という暮らしをしていたので少しブログから足が遠のいたのがある。
しかも興行収入上位に来るような映画は見ても語りたくなることが少なく、感想を書こうという気持ちにもあまりならなかった。まあ、それでも面白かった映画は無くは無いのでその辺は近いうちに書くかもしれない。

・お題箱47

80.よりもいのスカジャパ的構図がティーンエイジャーの青春志向に由来するのであれば、大抵いい大人がやっているスカジャパ自体とは性質が異なるのではありませんか?

「由来が異なる」という意味では「性質が異なる」というのは仰る通りです。しかし、それを踏まえて、むしろ違う由来を持つのにも関わらず結果的には似た構図を共有しているのが面白いということです。

「スカッとジャパン(番組名)」では恐らくリアル生活で迷惑な人々に抑え付けられた鬱憤が噴出して痛快撃退ストーリーが発生した一方、「よりもい」では倫理を投げ捨てた若い青春への意欲が痛快撃退ストーリーという構図を選択したという経緯があります。前者は社会に揉まれたいい大人が、後者はむしろ社会を知らない子供が担い手になるという点で対照的です。しかし、実際に番組として作られたときにはどちらも同じようなストーリーになるというのはちょっと面白いという趣旨です。マッシュポテトを揚げたらコロッケが出来たみたいな感じですね。

前回「スカジャパ」と書いたときに「テレビ番組のスカッとジャパン」を指したり「痛快撃退ストーリー一般」を指したりまちまちだったのがわかりにくかったかもしれません、すいません。

81.lwさんのアニメの考察とかに出てくる社会学?的な専門用語をある程度把握した状態になりたいんですけど、おススメの書籍とかwebサイトはありますか?
一つずつ調べる作業を続けていればその内分かってくるかと思っていたのですが、一度で理解できないこともあり流石に時間が勿体ないかなぁとなってきました。
あと文章を書く上でのコツとかありますか?

サブカルオタクが用いるボキャブラリーを把握できる情報源についてですね。
社会学?」というハテナマーク付きなのは「社会学っぽいけど本当にそうなのかわからない」という疑念だと思われますが、それは正しいです。サブカルオタクのボキャブラリー(この言葉便利だな……)に含まれるものには芸術学や宗教学や哲学etcがあり、語っている人や対象によってまちまちです。とはいえ、恐らくこの質問はタイミング的にピンドラの感想に対してのもので、ピンドラ語りは戦後日本社会みたいな文脈に置かれるので、当初の質問通り社会学について書きます。

補足175:主に人文学的な背景を持って小難しい話をするオタクをサブカルオタクと呼んでいますが、理系的な背景を持って小難しい話をするオタクはそう呼べるか微妙なところです。科学的な知識を用いて作中のテクノロジーとかサイエンスについて検証するタイプのオタク(空想科学読本的なやつ)って、サブカルというよりはマニアとかギークって感じがします。

補足176:単語を一つずつ調べて全体の把握を目指すのは、不可能な上に誤読の危険が大きいので本当にお勧めしません。まずは全体に相当する論や本を読むべきです。インフェルニティデーモンの強さはインフェルニティデッキを回しているのを見ればすぐにわかりますが、インフェルニティデーモンのテキストだけを読んでいても一生わからないのと同じです。しかし、現実的にはある用語がどの論の文脈に由来しているのかわからないということがよく問題になるのですが……

「これ一冊で全て済む」という万能の本はありませんが、入り口として勧めるとすればやはり東浩紀動物化するポストモダン』(動ポモ)でしょう。もう20年ほど前に出版された古典で、オタクについて学術的に語る可能性を切り拓いた本として、引用を目にする機会も非常に多いです。
最近Yubit映研にも同じことを聞かれて同じように動ポモを勧めたのですが、読んだ人からは「頭に残らない」「ピンとこなかった」という感想を聞きました。これは無理からぬところがあって、この本は自らが置かれている文脈をあまり丁寧には説明していないため、予備知識のない状態で「オタクの本」と思って読むと話の意義や流れを掴めない可能性がわりと高いです。僕もそれがうっすらわかるようになってきたのは読んで結構経ってからなので、わかりにくそうなポイントについて書いておこうと思います。

動ポモはまずオタクの定義から始まります。これは出版当時はオタクというワードの意味が今ほど自明ではなかったからで、最近の本よりもかなり丁寧に書いています。まあ、そこまでは良いのですが、次に何故か敗戦後の日本が抱えるアメリカコンプレックスの話が来ます。恐らくここが謎ポイントで、「何故いきなり敗戦国の末路について語り始めた?政治的に偏った思想?」と頭を捻る人も多いと思います。
この話の流れは見田宗介という人が論じた「戦後日本反現実論」なるものに由来しています。これは戦後日本の(サブ)カルチャーにおいて反現実がどのように推移してきたかを論じるもので、日本が文化的にアメリカのフォロワーだったことを前提にしています。例えば、戦後日本の敗戦のショックは、あのマッカーサー天皇のツーショットによって天皇の首をGHQに挿げ替えることで無効化されました。これによってアメリカ的な生活が日本人にとっての理想となり、それを達成することで高度経済成長頃には夢の時代が到来したわけですね(「理想の時代」から「夢の時代」へ)。で、この本で主張する「動物化の時代」とはそうした「〇〇の時代」という戦後日本反現実的な時代論を拡張するものとして提示されているので、オタク文化アメリカからの影響を受けていることを指摘する必要があったのだと思います。

次に本筋のポストモダン論は内容自体は難しくないはずですが、それにどういう意義があるのかというのが理解しにくいポイントだと思います。「エヴァをデータベースで理解できるのはわかったけど、それをすると何が嬉しいの?」という話ですね。これを理解するためにはこの本の戦略を知る必要があります。この本は自らの学術的な新規性を主張するために

1.オタクコンテンツをポストモダン論を反映したサンプルとして提示する
2.オタクコンテンツを説明可能なデータベースモデルを構築する
3.データベースモデルをポストモダン分析の新しいモデルとして提示する

という手順を踏んでいて、最終目標はオタク分析ではなく社会学的なモデル構築にあります。作者が本当に言いたかったことって2じゃなくて3なので、2の「萌え要素はデータベースだ」で終わってしまうと「それが何なの?」という感じでイマイチピンと来なくなってしまいます。より具体的にはリゾームモデルではなくデータベースモデルを提示しているところが新規性で、むしろそこから導くものとして萌え要素的な解釈等があります。
わからなかったらまた聞いてください。僕も間違ってたらすいません。なお、ウテナやピンドラを語るために動ポモの次に読む本としては宇野常寛ゼロ年代の想像力』『リトル・ピープルの時代』や大澤真幸『不可能性の時代』『虚構の時代の果て』がオススメです。

文章を書くコツについては、最近は「論理的に破綻のないように書く」こと以外にないんじゃないかという気がしています。「てにをは」とか「係り結び」みたいな文法が間違っている文章も読みづらいですけど、実際のところその程度のミスで文章の意味がわからなくなることはないですよ。結局、文章が意味不明なのは論理が不明なときだけです。
読めない文章ってだいたい論理が破綻しています。「論理が破綻」と言っても数式みたいに厳密な何かが崩れているという意味ではなくて、「前後との繋がりが存在しない文章がある」という意味です。具体的には小学生の国語の時間にやったやつを思い出してください。「不要な文章を発見して取り除きましょう」的な問題で取り除かれるべき文章が存在していたり、「意味が通るように文を並び替えましょう」的な問題で提示する文章のように順番がメチャクチャだったりすると、文章は読みにくいです。言いたいことを頭の中でよく噛み砕けば多分文章も勝手に読みやすくなります。小手先の文法とか修辞はどうでもいいので、まず最初に論理をしっかりすべきです。
まあ、ここまでの話は全部僕の持論なので、もっと信頼できる本を提示しておきます。これ読みやすくてオススメです。



82.軽くサイゼリヤカルボナーラでも食べに行くか〜ぐらいの気持ちで読みに来たんですけど「フランス産トリュフと白舞茸の蒸しコンソメスープロワイヤル仕立て」みたいな記事しか出てこなくて正直このブログタイトルはどうかと思います

仰っていることはわかるんですが、僕がブログに書くような話をする場所ってやっぱりサイゼリヤなんですよね。本当にしています。今日は「鴨居つばめが本当に棚上げにしたかったのは彼女自身のセクシャリティなのだがそのために行ったルッキズムの正当化が破綻した脚本を呼んでいて……」みたいな話をマシンガントークしていました。
実際、ドリンクバーとかあってダラダラ溜まれる飲食店じゃないとこういうグダグダした話はしづらいところがあります(メニュー名が長いフランス料理屋なんてあんま行くことないですけど)。最近取り留めもない感じの記事は減ってきた感はありますが、ファミレスでするような話をするブログを目指す精神は健在のつもりです。