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18/4/8 サイレントヒルの感想/新世代バーチューバーライブ

・新世代バーチューバーライブ

ニコニコ大百科によればバーチューバーはもう1000人を突破したらしいが、その中でも新世代を代表するにじさんじ勢の特徴として、生配信時の独特のライブ画面がある。
新世代のなんかウミウシの人と旧世代のミライアカリの生配信動画を並べてみよう。



旧世代の特徴として、
・背景が無い
・顔しか動かない
・身体が動かない
ことが挙げられる。
その理由は単ににじさんじアプリ(今調べて初めて知ったのだが、「にじさんじ」とはLive2D配信アプリの名称であり、その中でも公式配信者として認められた人たちがいわゆる「にじさんじ勢」らしい。ここでは配信アプリの意)の技術的な限界である。全身キャプチャする金がある旧世代と比べて新世代はスマホアプリで稼働しているために顔しか取れず、企業戦略としても質より量のAKB戦略を採用しているためにこれで十分だと考えているんだろう。

しかし、この現実的な制約によって生まれた特徴によって、発言の階層が不明瞭になる現象がよく発生している。

代表的なものが、委員長の有名な「洗濯機の上から配信してるんですよ」発言(3:50~)である。
これは旧世代なら絶対に言わないものだ。言わないというか、言えない。全身が配信されているので、モデルが実際に洗濯機と向かい合っていない以上は単に意味不明な発言になってしまうからだ。一方、委員長は配信画面ではどう見ても洗濯機から配信しているようには見えない。画角的に洗濯機の上にスマホを置いていることも有り得ないわけではないと反論するのであれば、実家で撮影していると主張している割には無地の背景は明らかに実家ではないと言うこともできる。

誤解しないでほしいのだが、俺は新世代の発言が不整合だと言い立てるつもりはない。
これはお約束的な了解として一応説明できるからだ。このコンテンツがにじさんじアプリを用いて配信されていることは自明に前提されているため、落語において扇子を箸や皿に見立てるのと同じように、背景がないことについても「実際にはそのようには見えないけれども、(キャラという)ストーリーの上では適切に補完されているものと理解するべき」という解釈は妥当である。

ただ、技術的な限界に起因する「見立て」が許されれば、以前から指摘してきたような発言のリアルとバーチャルの二重性にもそのファジーさが適用されてくる。一見して配信画面と整合しない発言をした場合、それが見立てによって随意に解釈されればバーチャルな発言となるが、リアルに由来する事情であると解釈されればリアルな発言となる(というか、そもそも配信画面と不整合な発言が可能になったというのが革新の本質である)。洗濯機で言えば、見立てを適用すればキャラクターアバターが洗濯機で配信していることになるし、リアル由来であるとすれば彼女のアバターがそうであるということになる。
実情は不可知ではあるが、上位勢はそれを利用して立ち回っている節もあり、まさかこんな形でリアル立ち回りスタイルが可能になるとは全く予想していなかった。

サイレントヒル1


この前突然ホラーがやりたくなってサイコブレイクを買ったんだけど、難しすぎて最初の敵で詰んでしまったのでもうちょっと楽そうなホラーを代わりにやるか……という感じでプレイ。そういえばSIRENもクリアできなかったし、派手な殴り合いではなくスニーク系の繊細な動作が要求されるゲームが苦手なのかもしれない。戦闘民族だから、俺は。
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ホラーにしては怖くはなかったが、世界が変貌する(裏世界)っていう発想は良かった。
おかしくなる前後の世界をそれぞれ攻略するように作られていて、おかしくなる前の世界を知っている状態でホラー世界を探索するので、いちいち「ここがこんなことに!!」みたいな反応ができて楽しい。それもムービーとかで済ませるのではなく、おかしくなる前の世界もダンジョンとして探索させているのがなお良い。ホラーゲームとしてはレッドシーズプロファイルでも同じようなことをやっていたが、発売時期と知名度を考えれば向こうが(わりと露骨な)フォロワーなんだろう。まあこっちがパイオニアなのかは知らんけど、少なくとも代表作ではあるはずだ。

さて、レッドシーズプロファイルでは平和なイギリスの田舎街が闇と怪物の常世に変貌するという単純な仕掛けだった一方、サイレントヒルの世界は厳密には三段階ある。異常度の低い順に並べると、

1.完全に平常な世界
2.怪物が歩き回る世界(表世界)
3.血と金網の世界(裏世界)

ダンジョンでは、2の世界を攻略したあとに世界変化が起きて3の世界を攻略するというのが一つのパターンになっている。注意点としては、表世界の時点でもモンスターは普通に出てくるし、壁に血文字が書いてあったりして全く尋常の世界ではない(世界変化によっておかしくなる前の世界もモンスターの世界である)。本編が開始した時点で既に街はモンスターが潜む霧に包まれているため、本当に平常な世界(1の世界)はオープニングムービーくらいにしか出てこない。

この、スタートが1じゃなくて2っていうのがサイレントヒルの慧眼だと思うね。
表世界の時点でもホラーダンジョンとして成立する程度には異常であるというのが一つのポイントで、怪物の世界を攻略して「まあこれでこのダンジョンは終わりか」と思っているところで更にもっと異常な裏世界になるから驚きが大きい。スタートが1だとこうはいかなくて、いくらネタバレを避けたところでサイレントヒルがホラーゲームということくらいはどうしても知っているから、まあどっかで怪物が出てくるようになるんだろうな……くらいの予想はついてしまう。
裏世界という発想を使うとして、並のゲームは平常vs異常で終わってしまうところを異常vs更なる異常という形にしたところがサイレントヒル1の秀逸さなんだろう。見た目の落差は小さいが、驚愕の落差はこっちの方が大きい。

そういえば関連する話題として……

追記にはニーアオートマタの結末に関わる重大なネタバレが含まれるので、ニーアオートマタを最後までクリアしていない人(特に眠ととりで)は絶対に読まないでください。 ====
2週間前くらいのインタビューでヨコオタロウ氏がニーアシリーズについてそんなようなことを言っていた(→)。
レプリカントから続く周回システムは一見上限であるような枠を確定してから自らそれを破壊することでマッチポンプ的に自由を確保するという思想で作られているらしく、通常を見せてからそれを塗り替えるという点では裏世界と同じと言ってよいと思う。
俺もプレイキャラクターが2Bから9Sに変わるところくらいまでは「いつもの感じか」と思って遊んでいたけど、まさかA2に変わった上で更に続くとは全く思っていなかったので非常に驚いて興奮した記憶がある。完全に記事に書いてある通りにヨコオ氏の手の平の上で踊ってしまった。

補足124:シリーズファンでない人は9Sパートあたりで「何でもう一回やるねん」ってダルくなってきて投げてしまうことが結構あって「主人公変わって続くからそこまでは耐えろ!」って言いたくなるんだけど、それを言ってしまうと(ゲーム内容ではなくプレイ体験的に)最大のネタバレになるというジレンマがある。彼らが自分でやる気になる日を待つしかない。

ところで俺が意外性基準で喋ってきたのに対してヨコオ氏は自由について注目しているが、記事の中でもGTAに言及されている通り、オープンワールドゲームでは特にそれが顕著だ。
というのは、初期段階から無限に近い自由度で世界を移動できるタイプのオープンワールドアクションは実はそれほど解放感を感じないところがある。例えばグラビディデイズやprototypeは左右だけではなく上下にすら自在に街中を移動できるので見える場所全てに簡単に行けるのだが、そのプレイ感覚は普段日常的に感じる「新宿の空を自由飛べたら爽快だろうなあ~」という夢とはいまいち結び付かない。これは街の移動に手間取っている段階があって初めて自由に動き回る爽快さが際立つからで、更に言えば初めから無限に移動できる場合はプレイ感覚が拡大するのではなく街の方が矮小化されてしまうからとも言える。日本語的にはまず自由があって不自由がアンチとして発生するような印象を持つが、少なくともゲーム体験としては逆なのかもしれない。

補足125:このように見たときの自由⇔不自由の依存関係は、ポプテピピックの感想で何度か触れた条理⇔不条理とちょうど反対だ。不自由なき自由はなく、条理なき不条理はない(〇〇と不〇〇の位置が逆になっている)。

最後に全然関係ない話をすると、俺が前に「明確に嫌いだ」と書いたスタッフロールの応援要素はやはり現実の発想で作られていたことがインタビュー記事からわかった。記事にある通り対立国にメッセージを送るという内容だったら、俺は本当に激怒したと思う。思いとどまってくれたのはよかったが、それでもアレが何かの間違いではなく明確な指針を持っていたことに強い脅威を感じる。そういうのはいいから、マジで。