LWのサイゼリヤ

ミラノ風ドリア300円

25/7/6 情報処理安全確保支援士(旧セキスペ)合格体験記 IPAの一次情報を熟読しろ!!!

情報処理安全確保支援士入手


情報処理安全確保支援士(支援士)(旧セキスペ)(長い)を取得した。
仕事では特に使わないし登録もしないが、試験はぼちぼち面白くて良かった。あとついでに取ったセキマネと合わせて、会社からけっこうな額の資格インセンティブが貰える。

セキュリティ分野とかいうPvPコンテンツ

セキュリティ分野の良いところは、本質的にPvPコンテンツであるところだ。情報系の中でもこれほど露骨に対人戦を扱う分野は他にない。

セキュリティとはそもそもが敵の脅威に対抗するための戦闘用技術であり、データベースや機械学習などの他分野が「新たな価値を生み出すため」「業務を効率よく実現するため」などという生温い平和的な目的を持っているのとは問題意識がまるで違う。システマと筋トレくらい違う。
そしてゲーマーなら誰でも知っていることだが、PvPに絶対評価は存在しない。全ては敵との相対的な力量差で決まる。例えば世界にCSRFという攻撃手法を知っている人が存在せず、今後も存在しないことが保証されているのなら、Same-Origin Policyなどという自由度を下げる縛りも、stateパラメタなどというHTTPに紛れ込むゴミも要らない。
しかし敵側のメジャーな戦略として確立してしまっている以上、対策を打たなければこちらが負けるだけだ。セキュリティは常にどちらが愚かかを決める戦いであり、事例集からも「こいつはここがバカで負けてる」「これはかなり賢い対策だったが更に上を行かれて死んだ」という人間的な鍔迫り合いが見えるのが面白い。

リアルワールドバグハンティング

とはいえ資格教本に書いてあるような無味乾燥な一般論ではPvP要素を肌で感じることはなかなか難しいので、エキサイティングな事例集としてこの本を強く勧める(前に感想を書いたときの記事→)。

エシカルなハッカー目線でのリアルな脆弱性の発見模様が豊富に楽しむことができる。ただ初手で読むにはやや重いので、資格教本の一冊くらいは一応読んでから取り組んだ方がいい。
補足591:「(セキュリティの理論書だけではなく事例集を読んだ方が面白いのは)ゲームに触らずにファミ通の攻略本だけ読んでいてもつまらないのと同じだ」みたいなことを言いかけたが、ゲーム攻略が企業wikiやYoutubeに移行して久しい昨今、もはや「攻略本」という概念自体が老ゲーマーやブックオフの寂れた棚の中にしか存在しない過去の遺物なのかもしれない。

IPAの一次情報を熟読しろ!!!

実は去年の秋に一度落としていて、今年の春で取り直した(そのせいで2年前にデスペで取った午前Ⅰ試験免除が消えて早起きする羽目になった)。
色々な資格を10個くらい取ってきた中で落としたのは人生で初めてなので驚いたが、冷静に思い返すと大学も落ちて浪人しているし、下振れすればこういうこともある。もう少し若かったら一切触れずに黒歴史として葬ったかもしれないが、もういい年齢なので普通に発信できる。

唯一最大の敗因は、直近で時事ネタ知識の出題比重が急速に上がっていることにある。
直近で話題になった脆弱性や流行したマルウェアをテーマにした出題は昔からよくあるが、そうではなくてシンプルに「セキュリティの最新事情を把握していますか?」ということを問うだけの問題が増えている。
百聞は一見に如かずということで例を貼ると、こんな設問が午後試験で平然と出てくる。

そんなもん聞くなよ

「CVSSの最新のバージョン番号」や「KEVカタログのフルスペル」など、「それ言うほどセキュリティか?」という出題が連続している。推測が効く後者はともかく、前者は知っているかどうかの問題でしかない。
ちなみに別の設問ではわざわざ「CVSSv3」というバージョン付きの記載が存在しており、これを見て「おっ助かった、v3だな」と答えた参加者を振り落とすギミックまで仕掛けられている(正解はv4なので)。罠設置すな!

ここトラップ

俺はセキュリティ業務をやらない野次馬として参加しているので「そんな内輪の暗記項目より論理的な手順や技術について聞いてくれや」という気持ちになるが、実際に組織で活躍する支援士にとっては最新のニュースをチェックする技能こそが最も重要なのだ、という出題趣旨は十分に理解できる(だから面倒な登録制度をいちいち更新する仕組みにしているのだし)。一般的な試験で言えば相当な悪問だが、支援士試験の趣旨を踏まえれば良問ではある。

以下のツイートが本当に正しくて、俺の敗北から伝えたい魂のアドバイスもこれしかないので記事タイトルにも書いておいた。


試験の趣旨が静的な理論というよりは現在の実務上で重要なトピックの動的な把握へとどんどん移ってきている。理論の勉強をするのもいいが、直近のニュースや資料類を最低1年分くらいは頭に入れておいた方がいい。
IPA公式の「情報セキュリティ」の項目には目を通した方がよく、特に厳選された情報が常に更新されている「重要セキュリティ情報」は見逃せない。
www.ipa.go.jp

書籍など

実際に読んだ書籍についてまとめておく(感想は過去記事をコピペ改変しているものもある)。
たださっき強く注意した通り、現環境においては静的な理論を抑えるだけでは時事出題に対応できないので、これらで勉強すると共にIPA公式HPのクロールも並行した方がいい。鮮度の高い事例集として実際勉強になるだろう(バージョン番号やフルスペルを覚えておく意義まではよくわからないが!)。

資格教本類

令和06年【春期】【秋期】 情報処理安全確保支援士 合格教本

メインウェポンとして使用。
内容は可もなく不可もなくという感じで、特に優れてもいないが困ることもない。続けて紹介する二冊に比べると相対的に情報量が少ない印象もあるが、ここから始める一冊としてはすっきりまとまっているという言い方もできる。
購入特典として午前Ⅱ問題演習用WebアプリのDEKIDASとかいうやつが付いているのだが、これはほとんど役に立たない。問題ごとの解説がないしUIも悪い。過去問道場の完全下位互換なので、DEKIDAS目当てで買うくらいなら神サイト過去問道場を利用しよう。
情報処理安全確保支援士過去問道場🥋|情報処理安全確保支援士.com

情報処理教科書 情報処理安全確保支援士 2024年版

サブウェポンとして使用。こちらの方が全体的に記述が詳しく、詳細が気になった項目はこちらを読む運用で使った。
同社同シリーズのデータベーススペシャリスト版の午後過去問解説が素晴らしかったので(褒めた記事→)、この本にもそれを期待していたのだが、その点はかなり期待外れだった。単に解説の質が悪く、例えばjavaで明示的なメモリ解放が必要な変数を答えさせる問題の解説に「該当する変数を探すと、14行目にあるinであることがわかる。」としか書いていなかったりする(令和5年春季午後1-1)。解説を名乗るならどんな基準で探せばいいのかを書いてほしい。

2025 情報処理安全確保支援士「専門知識+午後問題」の重点対策 重点対策書シリーズ

直上と同様、記述がやや詳しめなタイプの本。
内容的なカバー範囲は最も充実しており、やりすぎなくらいに色々語られている。後から見返すための網羅的な単語まとめが用意されているのも嬉しいところで、サブウェポンとしてはこちらの方が向いているかもしれない。午後問題を深く解説しているのもタイトル通り。
ただ個人的に少し合わなかった点として、4070円で850ページ近くというボリュームにやや水増し感がある(一部はオンラインコンテンツにでもパージして2980円で600ページくらいが適正な価格とサイズであるように感じる)。実質的な情報量が見た目ほどは多くない。
例えば、驚くべきことに序盤の100ページ近くがセキュリティとは直接関係のない勉強方法の話で占められている。対策講座を開いている作者が普段から「勉強の仕方を教えてもらわないと勉強ができない人」を相手にしていてそのターゲットには必要なのだろうということはわかるが、高度試験の資格教本を本屋で買う人にそのレベルの手取り足取りが必要なのかは疑問が残る。
また、いちいち大量の過去問全文がいちいち収録されているのもやや気になる。試験慣れしていない人は問題の実物を紙面でページ分けとかも込みで見ておかないと本番で困るからいう意図はわかるが、それも言ってしまえばあまり勉強したことがない人向けのフォローではあって、そのために本が無駄に重く高くなっている印象は拭えない。

うかる! 情報処理安全確保支援士 午後問題集[第2版]

Ixy本。良くも悪くもオーソドックスな解説をかなぐり捨てた特殊な本だが、俺はかなり好き。
既に知識は十分ある前提で答え方がわからない人向けとターゲッティングしており、「ズルい問題集」「初学者お断り」という露悪的な売り文句が並んでいるが、見た目に反して表面的なテクニック集ではなくエッセンスをしっかり抽出している。
もともと午後問題は理論ドリブンではなく事例ドリブンで作られているため、問題によってレベル感が乱高下したりアドホックな答えに終始したりすることが多く、「解説を読めばわかるがそれに辿り着く方法がよくわからない」という状態に陥りやすい。そこのところ、この本は午後問題を跨いで一般論としてパターンをまとめて体系化している情報整理の価値が高い。
「(知識を得るというよりは)答え方を考える」という趣旨に合わせて、別解について頻繁に掘り下げられているのも嬉しいところ。これは支援士に限ったことでもないが、高度試験ともなると現実に即した複雑な状況を扱うことが多くなるため、抜け道っぽい別解が色々発生しがちだ。他の本は正答しか解説しないことが多い中、この本は「この状況なら経営側の承認があるから事業ごとサーバーを止める判断も恐らく許容される」「オペレーションを聞いているのだから技術というよりは作業手順でどうにかすべき」というように納得感のある理由を掲載しており、その点で他の午後問題解説と一線を画する価値がある。
総じて良著。勉強と過去問が一通り終わったあとに読むのがオススメ。

トピック別

コンピュータネットワーク 第6版

ネットワークの名著。単独での感想記事は以下。
saize-lw.hatenablog.com支援士を取りたいだけならややオーバーキルな感もあるが、セキュリティに限らずITをやるならネットワークの知識が必要なシーンは無限にあるのでとりあえず読んでおいて損はしない。面白いしかなりオススメ。

DNS & BIND 第5版

DNS & BIND 第5版

DNS & BIND 第5版

Amazon
特にDNSについて知りたければ読んでもいい(過去記事感想→)。後半は実装の話になるので、理論を解説している5章くらいまでは読んでおけばよさそう。

実務で使えるメール技術の教科書

下記の公式書籍紹介の通り、メールの理論について体系的に解説した地味に貴重な本。

SNSやメッセージアプリに押されている印象のメール。
しかし、ほとんどのSNSやWebサービスのアカウント作成にはメールが必要です。ビジネスシーンでは、メールで連絡をする人がまだまだたくさんいます。

つまり、システムやサービスの開発・運営において、メールはいまでも不可欠なインフラなのです。

ところが、メール技術全般について体系立てて説明された情報源は、いつの間にかほとんどなくなってしまいました。結果として実務の現場は、必要な知識だけをインターネットで調べたり、先輩に聞いたりして、「その場をしのぐ」「綱渡り状態」になっているのが実態です。

そのような状況では、システムやサービスの開発・運用に不安が残ります。障害発生などのトラブル時には、原因を特定するだけでも苦労するでしょう。加えて、近年はセキュリティの観点からもメールを軽視できません。

本書では、メール技術の歴史や、メールサーバーを構築するための手順、迷惑メールを防ぐための取り組みまで、体系的に整理して解説しています
メールサーバーの構築をするエンジニアの方、メールマガジンの配信・管理などをしている管理者の方はもちろん、さまざまなシステムやサービスと関わる方に役立つ、いざというときに便利な1冊です。

個別的な実装や仕様ではなく、一般的なメール技術体系について広く浅くさらっている本は他にあまりない。一応オライリーにもメールを解説した本は存在するが(『電子メールプロトコル』→)、25年ほど前の本で流石に古すぎるので、少なくとも支援士くらいの目的感で読むメールの本は実質的にこれ一択だと思う。