LWのサイゼリヤ

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99/99/99 LWのサイゼリヤにようこそ

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24/4/20 ダンジョン飯の感想 なぜファリンを蘇生したのは黒魔術なのか?

ダンジョン飯

注:アニメ版ではなく漫画版の感想です
  漫画最終巻までのネタバレを含みます

完結していたので全巻読んだ。かなり面白かった! 個人的にはミスルン隊長が一番好き(アニメ未登場)。華奢な割に突出した異常な強さを持つエロい男、推せる。

Web漫画にありがちな一話完結っぽいタイトルに反してハードなファンタジーとしてのストーリーがしっかりしている。一話冒頭でいきなりパーティーが全滅するところから始まり、「最深部でドラゴンに食われた妹・ファリンを取り戻す」という明確なゴールに向かって迷宮を下っていく。ファリンの蘇生と救出は四巻で早くも達成してしまったかと思いきや、実はそこまでがプロローグだったことが判明する。

ファリンはキメラと化して再び主人公パーティーの手を離れてしまい、彼女を追いながら本格的に迷宮の謎を探るストーリーがいよいよスタートする。プロローグでも顔を見せていたカブルーやナマリのパーティーを呼び水に、西方のエルフや狂乱の魔術師、果てには異世界の悪魔までをも巻き込んで迷宮の命運を巡る覇権争いへ。

 

ああダンジョン飯

スケールがスライドしていくストーリーの中で最初から最後まで一貫しているのはまさしくタイトルの「ダンジョン飯」だ。ダンジョンに出現する魔物を現地調達で飯にしていくからダンジョン飯なわけだが、調理される魔物がこの漫画のオリジナルではないことは面白さの大きなポイントと言える。

スライムやマンドレイクやバジリスクのようにファンタジージャンルでは典型的なクリーチャーを料理していく過程で、読者にうっすら共有されている想像力にそれっぽい肉付けが与えられていく。調理とはいわば解剖の上位種であり、対象の物理的な組成のみならず毒性や効用までしっかり理解していなければ立ち行かない。有名な魔物たちを攻略対象というよりは食糧という切り口で扱うことで、可食部や生活環といった生態的なディテールが明らかになっていき、個別的な生態の合理性が体系的に収斂する地点としての生態系さえ精密に描かれる。

この親近感と新規性が両立する題材選びがまず傑出しており、「うっすらとは知っているが誰も詳しくないものを丁寧に解説していく」という独特な味わいはオリジナルな魔物を食うのでも現実に存在する動植物を食うのでも出てこない。架空とは知りつつも、図鑑を読んでいるときの知的好奇心が満たされていくような感覚すらある。

 

被食者を蘇生するから黒魔術

そんなダンジョン飯を道中で食いながら展開するストーリーのラインは主に二つある。一つはドラゴンに食われた(そしてキメラになった)ファリンの救出、もう一つは迷宮を巡る覇権争いである。

そしてその二つを結び付けるのはやはり食だ。というのも、二つのストーリーが同時に展開する唯一の舞台である迷宮では「食の掟」が絶対的なルールとして世界を支配しているからだ。8巻でセンシが語っているように、「他の生物に消化された肉は自己を失う それはこの生と死が曖昧な迷宮の中で唯一明確な掟」なのだ。食の掟は生命の理よりも明確に重く、迷宮内では何度死んでも蘇生できる一方で食われて消化されたものはもう取り戻せない。「生きるか死ぬか」ではなく「食うか食われるか」が迷宮のルール。

しかし主人公パーティーはプロローグの最後で食の掟を破ってしまう。それはファリンの蘇生である。

ファリンはドラゴンに食され、主人公たちが迷宮を下っている間に胃袋で完全に消化されて骨になっていた。それは主人公たちにとっては決して受け入れられない運命だったとしても、迷宮のルールからすれば正しい食物連鎖の流れに過ぎない。空腹状態でドラゴンに挑んだ人々が食物連鎖の上位にいるドラゴンに食われた、つまり衰弱した被食者が充実した捕食者に食われたことは全く正しい道理である。ファリンが生命の理ではなく食の掟によって失われたのであれば、その喪失を覆す手段は存在しないはずだった。

しかしマルシルの黒魔術は捕食されたファリンを蘇生してしまう。というより、単なる死者の蘇生ではなく「被食者の蘇生」だからこそ最大の禁じ手であり、それ故に黒魔術の発動なのである

迷宮に通底する鉄の掟「食うか食われるか」に背いてしまった以上、ファリンが元通りになってめでたしめでたしとは問屋が卸さない。ファリンは生命が混乱したキメラと化して狂乱の魔術師・シスルに連れ去られてしまい、主人公パーティーはシスルと戦いながら黒魔術の代償を支払って贖う方法を探すことになる。

「食の掟」という視点から見ると、ダンジョン飯は罪と罰と禊のストーリーでもある。主人公パーティーはドラゴンに被食されたファリンを蘇生したことで食の掟に背いた罪を背負い、ファリンがキメラ化して狂乱の魔術師の配下となる罰を受け、そこから黒魔術を禊いで真にファリンを取り戻す方法を探ることになる。

 

充足と渇望のダイナミクス

ファリンを連れ去った狂乱の魔術師・シスルもまた食の掟に背く存在である。

迷宮の主であるシスルは黄金郷を永遠に守りたいあまりに食の存在しない世界へ幽閉してしまう。シスルに支配された黄金郷の住人たちは、永遠の命を手に入れている代わりに食事を味わうことができない。食の存在意義を抹消したシスルは、被食者でありながら蘇生されたファリンと同じく食の掟に背いたポジションにいる。だから彼女たちはヒールとして連帯するのだ。

迷宮の真相が明らかになるにつれてシスルの背後に無限の異世界から悪魔が現れ、食欲は欲一般へと拡大解釈されていくが、そこに通底しているものはやはり食の掟だ。常識的に考えれば食欲とは欲一般の一ジャンルに過ぎないのだが(欲>食欲)、ダンジョン飯においては欲一般の方が食欲とのアナロジーで語られる(食欲>欲)。

実際、ダンジョン飯で描かれる欲の在り方は食欲の抱える二面性と常にパラレルだ。二面性とはつまり、充足と渇望のダイナミクスである。

食事とは不思議なもので、三十分かそこらも食い続ければ「もうこれ以上は要らない」と思える割には、また少し時間が経てばもう「食べずにはいられない」。どんなに素晴らしいものをどんなにたくさん食べても一日もすれば腹が減ってくる。充足したと思いきや渇望し、渇望したと思いきや充足する。

充足と渇望のダイナミクスこそが大いなる食の流れであり、相転移を破棄して充足だけを取り出すことは誰にもできない。満たされたかと思っても満たされず、永久に惑い続けるしかないからこそ悪魔が巣食って救っていく。黄金郷の住人が食事から追放されているのは、永遠という不動の状態は食のダイナミクスを持ちえないからだ。

そしてそれは悪魔ですらも例外ではない。悪魔の欲でさえ食欲の支配下にあることを看破したライオスは食欲ごと悪魔を飲み込んだ。悪魔はシスルと同じように欲望が常に満たされる幸福な世界を目指そうとするが、食欲から充足の一面だけ都合よく取り出すことは決してできない。それは魔物ですらも無差別に食らう悪食王・ライオスの方がよく知っていた。

 

禊としてのカニバリズム

ライオスが悪魔を食らったことで迷宮の覇権争いには収拾がついたとして、ファリンを蘇生した罪の方はどうなったのか。悪魔ですらも抗えない食の掟に背き、被食者を蘇生した罪はどのようにして贖えばよいのか。

それはファリンを食うことによってである。黒魔術によって癒合したドラゴンの魂を追い払ってファリンの蘇生を改めて成功させるためにはドラゴン部分を食わなければならない。

つまり、食の掟に背いて混乱した生命を元に戻すには、やはり食という絶対のルールに従って修復を試みるしかないのだ。ファリンを人間としてきちんと蘇生することは、この迷宮においては黒魔術によって食の流れから追放されてしまった者を正しく引き戻すことである。きちんと食われなかった者はきちんと食うことによってのみ救済できる

決して断腸の思いでカニバリズムに至るのではない。最初から最後まで唯一の正解はカニバリズムしかないのだ。ライオスがファリンを殺す肉親殺し、そしてライオスがファリンを食らう肉親のカニバリズムそのものですら、正しい食の掟に対しては単なる過程でしかない。絶対なのは生死でも倫理でもなく食の掟、それが食欲によって生まれた迷宮の論理。禁忌ではなく禊としてのカニバリズムという転倒した儀式は本当に面白く、この作品の到達点として感嘆に値する。

 

対立と和解のダイナミクス

また少し別の視点として、ファリンを食らう宴はあらゆる種族のキャラクターたちが食卓に集うフィナーレとなっていたことにも注目したい。

ダンジョン飯では作品全体を通じて種族の違いが幾度となく描かれていた。種族の差異に起因する思想の差異は食事のメニューから世界の覇権に至るまで様々な対立と和解を生み、ダンジョン飯を貪る横では明らかに種族間のダイバーシティが一つのテーマになっている。しかしそうして描かれる対立と和解のダイナミクスもまた、根底に存在するのはやはり食なのだ。

ここにはまた別の食の二面性が顔を出す。すなわち食事とは誰もが同じように食べて味わうという営みの同質性を備える一方で、何を食べるかという具体的な好みは無限に存在して一致しない異質性も備えている。一緒に食卓を囲めば誰でも仲間になれる一方で、好みが一致しなければ誰とでも諍えるという矛盾した二面を持つのが食事だ。

そして食の好みとは論理的な信条ではなく全く説明できない純粋な趣味なのが厄介なところでもある。どんなに仲が良い相手でも料理だけは受け入れられなかったり、逆に料理が意外と美味かったというだけで理由もなく同調できたりもする。そういうダイナミックな和解と対立の契機は食事の中に既に含まれているため、悪食王のライオスが意外にも多様性を受け入れる王の器を持っていたことにも頷ける。

この食における対立と和解のダイナミクスは、先に触れた充足と渇望のダイナミクスとも強く結び付く。どんなに対立した緊張状態だったとしても、しばらく武器を下げて食事に向かうことだけは誰にもやめられない。時間が経てば腹は勝手に減るからだ。充足と渇望によって人は食事を望み、対立と和解が渦巻く混沌の舞台に否応なく足を踏み入れざるを得なくなる。

魔物料理に当初は引いていたマルシルがじきに慣れていったように、誰もがファリンを食らうカーニバルに参加するポテンシャルを持っている。魔物の肉だろうが人肉だろうが、一仕事こなして腹が減ってしまえば結局は饗宴に戻っていくしかない。飢餓からは誰も逃れられないから。

充足と渇望のダイナミクスによって誰もが腹が減れば食わざるを得ないし、和解と対立のダイナミクスによって異種族間にも協調の契機がある。こうして食の掟が支配する世界の中、カニバリズムという禊によってファリンを大きな食の流れに取り戻すことでダンジョン飯は完結する。傑作。

24/4/14 お題箱回153:瞬時に会話するコツetc

お題箱回153

942.東大出ててもバカはバカですか?

いや~そんなことはないと思いますよ。

東大出てるやつはさすがに頭良いがちで、知識だけではなく地頭も普通に優れています。確かに公共料金を支払わずに電気や水を止めたり電車の乗り換えミスって一時間遅刻したりする東大卒は周りに多いですが、それはスタンスの問題であって知性の問題ではありません。

ただ僕の知り合いは「東大が当たり前」みたいなタイプに偏っているような自覚は若干あり、全東大卒がオールマイティに優れていると断言する自信まではないです。話だけならよく聞く類型として「地方の進学校とかから猛勉強して東大に入ったが、周りとのレベル差にすっかり自信を喪失して講義や研究にも全くついていけなかった」みたいな人も割といるらしいですが、そのタイプには会った記憶がありません。

 

943.うつ病だったんですか? どうやって乗り越えましたか?

正確に言うと抑うつ状態です。確定診断まではしていませんが、精神科医の見立てでは恐らく適応障害の発現として抑うつ状態が生じているとのことでした。

原因ははっきりしていて研究室の環境があまりにも終わりすぎていてしんどかったというだけなので、投薬治療してもあんまり意味なかった代わりに退学して研究室から離れると勝手に回復しました(長期休みとかでも勝手に回復していた)。

 

944.地頭が悪いため、会話の際に相手の喋っていることを整理してそれについての自分の意見を瞬時に話すことができません。lwさんは人の話を聞いて意見をする際、何か意識してることはあるでしょうか?

まず前提として、瞬時に相手の会話内容を整理してレスポンスする人が「相手の発言終了から自分の発言開始まで」の数瞬で全ての回答を組み立てていることは多分ありません(脳のクロックは人それぞれなので断言はできないものの、少なくとも僕の感覚ではあり得ない寄りです)。

そうではなく「相手が喋り終わる前に回答を作り終えている」か「自分が喋り始めてから回答を作っている」のどちらかです。要するに回答作成に要する時間を前か後ろにズラしているだけで、別に頭の回転が有り得ないくらい速いわけではないと思います。

まず一つ目の「相手が喋り終わる前に回答を作り終えている」というのは、相手が喋っている途中からもう暫定回答を頭の中に作っておくということです。相手の話がどういう感じで終わって自分がどういうことを答えるかは会話の途中でもうだいたい予想が付くと思うので、途中で相手の話に応じて微調整しつつそのまま答えにできる暫定回答を常に保持しておくと答え始めるまでの時間が要らなくなります。

特にチャットアプリの会話だと入力テキストが実際にそういう挙動をしているのでわかりやすいと思います。相手がチャットを送ってくる前にもう既にその内容がわかるので受信を待っている間に回答を書き終えることができて、相手のメッセージが到着したのを3秒で読んで「やっぱこの話か」と思いつつそのまま送信ボタンを押すのでレスポンスが速いという原理です(タイピングが超速いわけではない)。

補足521:麻雀がわかる人なら「自分の手番を待っている間にもう捨て牌を決めておくのと同じ」という説明がわかりやすいです。相当な初心者でもない限りは自分の番が来る前から「特に何もなければこれを切る」みたいな第一候補ってもう決まってるはずで、そのまま何もなければ自分の手番が来たときそれを切ればいいし、途中で相手の捨て牌とか自分のツモがクリティカルだったときだけ軌道修正すれば済みます。軌道修正するにしても「もし中をツモったら切る牌は中から一索に変えよう」みたいな方向性は事前にある程度考えておけます。会話も同じで、何もなければ出す回答はもう決まっていて、途中でなんか条件が変わってもそっちで来るならこっちに変えるみたいな感じで対応します。

二つ目の「自分が喋り始めてから回答を作っている」というのは、自分でも自分の回答の全容がわからないうちに見切り発車で喋り始めて、喋っている途中に回答を確定させてそのまま最後まで答えきるということです。これを淀みなくやりきることができれば、傍目からは全てを一瞬で考えて喋ったかのように見えます。

これをやるためには「まだわからんけど、俺ならたぶん喋りながら考えれば間に合うだろ」という確信を持ってぶっ放す必要があるのでけっこうな自己理解が必要で、たぶん個人差も大きいと思います。僕がよくやるパターンとしては、例えば「結論だけは直観的にわかっていて、その理由はまだわからないがすぐわかる確信がある」みたいなケースでは理由がわからないうちから「それはAですね、何故なら~」と喋り始めたり、逆に「結論はまだわからないが、喋りながら推論していけば自動的に正しい結論に到達する確信がある」みたいなケースでは結論が頭に生成されるのを待たずに「つまり今の状況としては~」と喋り始めたりします(こっちの方が簡単)。

補足522:これは自分語りですが、僕がこの「見切り発車で喋り出して上手く着地する」というスキルツリーを解放したのは新卒の頃に岐阜の某ゲーム会社に見学の1dayインターンに行ったときです。ボーッとしてたらいきなり「LWさんはどう思います?」って社員から話振られて、答えないわけにもいかないので「そうですね、例えばさっき見たものだと~」って無策で喋り始めたら意外とうまく着地できて、ああこういう喋り方いけるんだという成功体験を得ました。

 

945.先日バズったアンパンマン図書ツイートに、世間知らずですね、という失礼なリプライがきていました。
私がLWさんの立場なら、イラッとしてしまいます。こういう人は一定数いるし、気にするのは時間の無駄だと理性ではわかっていても、少しの時間引きずります。
ネットで発信していると避けられない雑音だと思います。どのように心の中で処理していますか?また対応の際に決めていることなどありますか?

これですかね?

たまたま料理中で暇だったので適当にリプしたのですが、そのあと知らない味方が現れてなんかボコってくれました。

それはそう

最近はこういうときに持つ感情が怒りより哀れみにシフトしていて結果的に怒らなくなっている気がします。哀れなテトラポットさんにせめて形だけでも同調してあげた方がいいのでは……みたいな気持ちがあって一応「たしかに」とか言って四文字だけ同調しています。

これは別に「こういう風に処理するのがよい」みたいなマインドセットの話ではなく単に加齢の影響で、世の中には精神的に恵まれない人もたくさんいて皆必死に生きているということがわかってきたというだけです。

 

946.過学習を利用してi2iもどきのような事って出来るんでしょうか

「もどき」の解釈を含めてたぶん諸説はありますができると思います。

とはいえ著作権的には過学習してプロンプトで出したイラストもi2iで出したイラストも問題があれば同じようにしばける方向で固まりつつあるはずですし、それが活きる状況はそんなにはないような気はします。

 

947.糸電話は、電話の発明以前には何と呼ばれていたのでしょうか?

こういう用途でChatGPTを使うべきではない

なんかwikipediaにも電話発明以前から糸電話はあったとか書いてある割には当時の名称は書いてなくて割と謎ですね。

 

948.「クレジットカード会社の自主規制は共同被告にならないための防衛策だろうから間接的に権力による規制だ」みたいな意見どう思いますか

向こうの司法の感覚だとDLsiteみたいなタイプのアダルトサイトを認めたくないのは理解できますし、間接的に権力による規制が生じているとは思います。

ただ我々の社会に存在すべきでないと判断したものを規制するのは権力の正当な機能なので、相当ラディカルなアナーキストかリバタリアンでもない限りは「権力による規制だ」と言うだけでは権力の定義を確認しているだけで何の主張にもならず、結局のところはやっぱり個別具体的に見て「その規制が正当と考えるか」という話に帰着されるのではないでしょうか。そういう意味で別に不当だと思わないので「そうだね権力による規制だね」と言うだけで終わりです。

 

949.ブルアカの翻訳を元に戻すべきと不満を持つ者はセクシー田中さんの原作改変に文句は言うべきではない?

そんなことはないでしょう。

ディベート会場でもなければ「一般に原作改変に文句を言うか否かのどちらかを必ず主張しなければならない」みたいなルールは特に存在しないので、「ブルアカの原作改変には文句を言わないがセクシー田中さんには文句を言う」で特に問題ありません。

問題が生じるとすれば自分から一般論みたいなものを主張してしまっていたケースに限られると思いますが、それもたぶん「基本的にはダメだが面白いならセーフ」とか「基本的にはダメだが原作者が納得してるならセーフ」とか留保的な追加規則があるだけなので、後付けで条件を付けて更新すれば済むことです。

 

950.カードゲーマーの「デッキを回す」というのはPDCAサイクルを回すという事で合ってますか?

違います。「仕事を回す」の「回す」と同じで「物事を進行させる」みたいなニュアンスで、単に「このデッキを使う」くらいの意味です。

ただ調整会の場で「このデッキ回す」と言ったらそれはそのデッキを研究するという意味になるので、状況によっては結果的にPDCAを回すというニュアンスを含むこともあります。

 

951.バトルグラウンド・デュオは面白そうだと思いますか?(デュオに期待はしていますか?)

正直なところ今はあまり面白そうだと思っていません。バトルグラウンドは麻雀と同じで自分の中で一手一手を切り詰めていく自分との闘いみたいなイメージなので、パートナーと一緒にワイワイやるイメージを持てていません。

ただ今までに全然なかった遊び方でイメージが持てないというだけで、論理的にダメな理由があるわけではないので、遊んでみたら普通に面白い可能性は全然あります。

 

952.「夜桜さんちの大作戦」の26歳に興味を持たれてましたが、
「じいさんばあさん若返る」というアニメはどうですか?
ババアが体だけ若返って見た目もLWさん好みだと思います。

存じ上げていますが、シンプルに20後半~30前半くらいの美少女キャラが好きなだけなのでいわゆるロリババアにはあまり興味ありません(それらは完全に別の属性です)。魔法などのファンタジーが介入せずに説明なしで美少女の場合だと更に良いです。

 

953.就職先はオタク業界系のとこですか?
プライバシーに関わる質問なのでスルーしてもいいです

別に答えてもいいような気もしますが、一応安全のために少なくとも当面は就職先についてはデータ分析職である以外のことは書かない予定です。

 

 

何か買ってもらえると嬉しいです。

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24/4/12 お題箱回152:エイプリルフール同性婚、美少女キャラのリアル職業路線etc

お題箱回152

934.異性愛主義への反発からではなく、その百合カップリングを本気で推しているためそれに少しでも「嘘」属性が付いてしまうことが許せずに、美少女VTuber同士の婚約エイプリルフールネタにブチ切れる百合豚

存在しない大喜利への回答みたいになってますけど、いるかいないかではいるんですかね? ちなみにこれはエイプリルフールに限ったことでもありませんが、大抵の冗談には嘘ではあっても完全な荒唐無稽ではいけないというパラドックスめいた性質があります(さいきん髪が薄くなってきたオッサンが「朝起きたらハゲてたわ」と言うのは冗談として通るが、ロングヘアの女性が「朝起きたらハゲてたわ」と言うのは冗談というよりはシンプルに意味不明)。

 

935.エイプリルフールの同性婚ネタ問題についてご意見いただけますか?

最初に立場をはっきりさせておくと、僕はエイプリルフールの同性婚ネタについて「別にやってもよい派」です。

そもそもこの話で争点になっているのは「その行為を個人的にどう解釈するか、社会にどういう影響を及ぼすと想定するか」という二次的なコードとしての機能の話です。言い換えると、同性婚自体に生理的な嫌悪感を持っている凝り固まった保守派でもない限り、これは回転寿司店での醤油舐めのような直接的な行為の是非を巡る話ではないということでもあります。

基本そういう解釈はどうとでも言えるので各自で自分の世界観と経験を元手にして構築していくしかなくて、一方には「エイプリルフールで同性婚をジョークとして扱うことはいま真剣に議論されている同性婚の話を茶化している(茶化して良いという印象を社会に与える)」と感じて憤る人もいれば、もう一方には「他のジョークと同じように単なる属人的で局所的な冗談に過ぎず他の誰かを間接的に茶化すものではない(特に何の影響も社会に与えない)」として問題視しない人もいるというだけです。これは状況依存のグラデーションなので正解があるわけではありません。問題視する人の方が多いから言わない方がいいと思えば言わなければいいし、問題視する人が少ないから言ってもいいと思えば言えばいいです。

今回に関して大雑把に言えば、ざっくり同性婚があまりにも有り得なさすぎる人かあまりにも当たり前すぎる人は問題視せず、その中間で同性婚は微妙なフェイズだという認識の人が問題視する傾向があるように思います。

特にSNSを見ていると、「エイプリルフールに異性婚をジョークにすること」との比較が一つの試金石になっているような気がします。同性婚が異性婚とは全く異なる完全なフィクションだと思っている派閥にとっては100%ジョークなので問題になりませんし、逆に同性婚を異性婚と全く同じように認識している人も「昔から社会的にありふれた婚姻関係がジョークに使われている」というだけなので問題にしません。「同性婚『だから』ジョークになっている」と感じるためには、同性婚もリアルな関係であるにも関わらず異性婚と異なる不当な扱いを受けているという認識の前提が必要です。

補足520:特にエイプリルフール同性婚反対派の人がした「エイプリルフールで同性婚ネタを楽しんでいる人はジョークに使われているのが異性婚でも同じように楽しむのか?(いやしない、茶化してよいのは同性婚だけだからだ)」というツイートが多く賛同されているのは僕にとっては意外でした。異性婚でも同じように楽しむんじゃね?

 

936.これはお題箱に対するメタみたいになってますが、LWさんに度々「お絵描きや音楽やりませんか?」というお題が来るのは、学習能力と言語化がずば抜けている人による習熟過程のレポートが期待されているのではないかと思います。
ただ裏返せば、絵も音楽も複数人からそれらが期待されるほどには理論化も言語化もガバいというか、これって職人集団のお役立ち知識の延長じゃない?みたいな部分が結構あります。特に音楽。この概念の判別って個々人のお気持ちレベルじゃんってのが初心者向けから平気な顔で出てきます。
ですから「マジで暇になったらやるかも」という回答は真っ当だと思います。1ファンの私としては、LWさんに宝くじが当たるのを祈っています。

ありがとうございます、確かにそんな気はしますね。就活もほとんど全ての人がやっているはずなのに一回適当にやっただけの知見を言語化したらめちゃめちゃ伸びたし、そういう需要があるのはわかります。

ただ消費コンテンツとかもそうですが、僕はそういう事柄については人に無償で頼まれても自分からやりたいと思わない限りは動かないタイプなのでまあという感じではあります。

 

937.カードゲーマーだった頃の男の半生も聞きたいです

それはあんまりないですね……

もともとバチバチにCS出まくる方ではなくて、カードゲーマーとしてもブログを書く方がメインでした。15年前くらい前までよく書いていた遊戯王のブログも消していないので読みたければ探してみてください。

ネットの知り合いは遊戯王で記事を書いているうちにけっこう増えたものの、本格的にリアルでの交友に繋がるようになってきたのはMtGのリミテッドをやり始めた頃からのような気がします(タルキール覇王譚以降なのでそれも10年前くらい)。

 

938.フィクションに励まされたり勇気もらったりした経験が全然思い当たらないんですけど、LWさんはそういうのありますか?

思い出せないだけかもしれませんが、あまり思い出せません。フィクションの範疇として好きだったり元気になれたりすることはけっこうありますが、リアルでの糧みたいな文脈で励まされたり勇気をもらったりみたいなことはあまり記憶にありません。

 

939.LWさーん。おすすめ映画教えてー!

加齢の影響でハードルが上がってきたのとナンバリング系は勧めにくいので3年前くらいに聞かれたときとあまり変わっていませんが、ファニーゲーム、トーキングヘッド、巨神兵東京に現る、悦楽共犯者、田園に死すあたりです。

 

940.人生(将来)の不確実性と向き合うこととその意義について、なにか思うことがあれば教えてほしいです。

大抵の人生はデフォで不確実でよくわからないので特に向き合うという感じでもなくて、望むと望まざるとに関わらずもうその渦中に飲み込まれてしまっています。ただ事前に正解がわからないとしても後から振り返ったら勝手に正解になっていることはよくあって、結局のところ「ゲームでも勉強でもナンパでもとにかく目の前にあることを真剣にやれ、何をしてもいいから手抜きや冷笑だけはするな、何でもやらないよりはやる方を選べ」みたいなよくある話に着地してきます。

そういう感覚になってきたのはそろそろ人生の収穫期に入ってきたという加齢の影響でもあります。ゲームとか受験とか昔は「これ意味あんのかな?」と内心では思いつつやっていたことが全部実ってきて「これ昔やってよかったな」ってなるフェイズがいずれ来ます。ただそのタイムラグが平気で15年とか20年あるのが人生の度し難さでもあって、またジジイみたいなことを言ってしまった……

 

941.NIKKEのキャラデザ評価回(2023/04/08)やブルアカのヘイローについての言及(2023/09/05)を読んだのですが、他ゲームやアニメなどで「これよく思いついたな〜」と思う美少女キャラがいれば教えていただきたいです。ビジュアル以外の文脈も大歓迎です。(例えば、性格設定がすごい、ヒロインとしてすごい、二次創作適性がすごい、属性の成長余地がすごい、など)

まだ書いてなくてパッと思い付くところだと、原神の胡桃(フータオ)と崩壊スターレイルのトパーズはかなりの傑作キャラクターだと思います。

胡桃(フータオ)

トパーズ

すごいポイントは職業設定で、フータオが「葬儀屋」、トパーズが「戦略投資家」です。PVがわかりやすいので今ここで見てください(どちらも2分弱)。

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もともと大陸系ソシャゲは学園や戦闘組織の内部役職に留まらない一般的な職業を担っている美少女キャラが登場しやすい傾向がありますが、その中でも特に完成度が高いのがこの二人です。最大のポイントは、彼女らの職業人としての描かれ方に社会的なアクチュアリティが強く伴っていることです。

ゲームキャラに職業を紐づけること自体はソシャゲが生まれる遥か以前から行われてきたことですが、どちらかというと能力を示すための属性的な設定として扱われることの方が多かったように思います。

例えば、もっと月並みなソシャゲならフータオは「ネクロマンサー」、トパーズは「行商人」だったはずです。そして彼女らはそういうジョブに由来する能力を持っているところに設定の力点がある、つまりネクロマンサーのフータオは蘇生スキルを、行商人のトパーズはドロップ増加スキルを持っていたはずです。それは社会的な職業というよりはゲームシステムとしてのジョブの描き方で、リアルには存在しないファンタジージョブの方が収まりがよいのはそのためでもあります。

しかし翻って、実際には彼女らは「葬儀屋」と「戦略投資家」という実在するシリアスな職業を与えられています。リアルな職業は彼女らのキャラクターに対してゲーム的なスキルというよりは業務内容や職務規範に由来する人格を与え、それはPV内でも一貫して強調されています。更に言うと、原神や崩壊スターレイルは最初から葬式や投資をテーマにした作品では全くなく、あくまでも作品内に存在しうる職能の一つとしてそうした社会活動が営まれているにすぎません。職業人としてのキャラクターたちが世界の社会システムや経済システムを描く窓口になることで、実際に彼女たちのような社会人によって構成されている世界を細部まで描くことにも繋がります。

フータオもトパーズも美少女キャラクターであるにも関わらずそういう「ゲーム的なジョブ属性」とは似て否なる「リアルな社会的職業」を有しているのが衝撃的で、一定掘り尽くされたと思っていた美少女キャラクターのキャラ設定にまだそんな描き方が残っていることに感心しました。「ネクロマンサー」や「行商人」のようにリアルで遭遇しないファンタジージョブでもなく、かといって「音楽家」や「漫画家」のように最初からフィクションと親和性の高いクリエイティブ系の職能ではなく、「教授」や「医者」のようにテンプレートな類型が確立している仕事でもなく、リアルな社会をきちんと支えているが属性としてあまり扱われてこなかったシリアスな職業としての「葬儀屋」と「戦略投資家」です。

僕も最近チャリを漕いでるときとかにフータオとかトパーズみたいなリアル路線の職業人キャラをよく考えていて、例えば「気象予報士」あたりはどうでしょうか。

ファンタジーの発想だとついついワンピースのナミみたいに「天気を操る能力」を与えたくなってしまいますが、フータオとトパーズの秀逸なリアリティを踏まえるならばそれは良くない方向性でしょう。何故なら気象予報士のリアルな職能と責任は「天気の予想を的中させること」にあるはずで、自ら天気を制御できるのであればむしろ的中の意義は小さくなってしまうからです。あくまでも天気そのものはアンコントローラブルという前提の下、それを言い当てることに社会的な意義があり、かつ、キャラクター自身もそれに価値や誇りを見出して内面化しているような造形が必要です。

【ギリ原神にいそうな気象予報士キャラ(仮)】

概要:天候変化が極めて激しい地域で唯一の気象予報士を営む24歳女性。

背景:その地域では昔から嵐による出漁中の溺死や日照りによる不作での餓死が絶えなかったが、彼女が気象予報士に就任してからは死亡率が大きく低下した。一度も外すことなく天候を当てて的確な対策を立て続けることで町の人々からの信頼を得て、今では信仰に近い慕われ方をしている。

性格:自らの判断が大勢の生死を分けるという責任感を強く持ち、特に空模様には常に気を配っている(フィールドの立ちモーションで首が少しだけ上向きになっている)。いつも自信ありげな断言調で喋るが、それは予報を信じてもらうための見せかけが身体に沁みついたもの。実際にはいつか予報を外すことを心から恐れて毎晩のように悪夢を見ている。自分と同じように大勢の命を救う医者や薬師には敬意を払って交流する一方、他人の運命を無責任に語る占い師を嫌っている。

戦闘:天気を操るかのように空気中の光や水を操作して攻撃するが、それは彼女にしかわからない難解な気象条件をクリアしたときに限ってごく局所的な天候操作もどきを行えるだけ。予報を根底から覆して大勢を死の運命から救うほどの力はないという限界を示すものでもあり(そういう悲しい過去エピソードがある)、内心では常に歯痒さを抱いている。

 

 

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24/4/10 東大卒無職のTwitter就活記

インターネットへの就活完了報告

無職の再就活が無事に終わりました。

三ヶ月前くらいにTwitterとブログに雇用募集を出して50社近くから声をかけてもらって、最終的には条件や環境が非常に良くキャリアイメージもマッチしている大手でデータサイエンティストとして働くことになりました。

年収も前職から50%くらい増えたし非常に良い結果で終われたということで、報告がてら顛末を書いておきます。雇用募集ツイートを拡散して頂いたインターネットの皆さん(特にTwitter就活に協力的なエンジニア界隈)や声をかけて頂いた方々はありがとうございました。

(雇用募集ツイート↓)

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何故Twitter就活を選択したのか?

雇用募集ツイートは300RTくらいされて反響が色々あったのですが、その中でも特に多かったものの一つが「何故このスペックで正規のエントリー経路ではなくTwitter就活をしているのか」という疑問です。

正しい違和感

これは鋭い指摘で、実は正規ルートのエントリーではなくTwitter就活をしなければいけない理由がかなりちゃんとありました。

『追放されたチート付与魔術師は気ままなセカンドライフを謳歌する。 ~俺は武器だけじゃなく、あらゆるものに『強化ポイント』を付与できるし、俺の意思でいつでも効果を解除できるけど、残った人たち大丈夫?~』第38話より

 

正攻法の就活は通らない!

Twitter就活を選択した理由はシンプルで、正攻法の就活は通らないことをもう既に確認していたからです。

実はTwitter就活を始める前に三ヶ月ほどビズリーチとエージェントを使って就活していたのですが、これが驚くほど振るいませんでした。半分くらいは書類選考落ち、その後も一次面接くらいは抜けますが二次面接あたりで弾かれるという具合です。15社のうち内定に至ったのは1社のみで(それも最終的には折り合わずこちらからdecline)、一般に内定率7%という数値の評価には諸説あるにせよ、ツイートのスペックからすると信じられないほど内定率が低いと言っても驕りにはならないだろうと思います。

とはいえ書類選考が通らない理由には心当たりしかなくて、それは「履歴書が雑魚すぎる」ということに尽きます。もちろん学歴や資格はツイート通りなので一定優れていますが、それを覆すほど人生の歩み方が地雷っぽすぎることがネックになっていました。具体的に言うと僕は浪人留年退学無職を全部やっていて、もともと新卒の時点で26歳学部卒というなかなかヤバい状態でした。更に新卒で入った会社は3年弱だけ働いて退職し、挙句の果てにそこから1年少し無職の空白期間を経て現在に至ります。

そういう生き方自体は概ね自分で胸を張って選択したものですし、面接で聞かれれば「私は常に有意義な生き方をしてきました」と堂々と説明しています。とはいえ、そういう有様を外から客観的に見たときは「大量の資格を持つスキルフルな30歳東大卒」と見せかけて実は「ほんのちょっとしか働いたことない30歳無職」でもあるという、両極端な性質を併せ持つ怪しすぎる人材になっていました。

そういう履歴書が実際に企業側からはどう見えていて強みや弱みがどこにあるのかについては、選考を進めてエージェントや企業からフィードバックを受けていく中でだんだん把握できてきました。

まず人事からの第一印象はかなり悪いです。履歴書を見たときの評価は「学歴や資格や学習能力から窺えるポテンシャルは高いが、短い社歴と直近の無職歴によって定着性や実務経験への懸念が大きい、ハイリスクハイリターンなギャンブル人材」というところでしょう。せめて二十代中盤くらいの新卒か第二新卒ならかなり欲しいですが、三十歳ともなるとリスクの方が気になってきます。一般的に言って事業はギャンブルではないので、こういうヤバそうなやつを的確に弾くのが人事の仕事ですらあります。

またマネージャーや役員クラスからの心象もだいぶ悪そうでした。組織内でも大局的な視点を持たなければならない立場からすると、「どこかで活躍しそうなポテンシャルは一定あるとしても、それが長期的な事業計画上でどこなのかという具体的なイメージが持ちにくい人材」は中途で入れて会社を支えていく仲間としては魅力に欠けます。

一方、明確に評価される強みももちろんあり、主に現場ポジションからの評判はかなり良い傾向にありました。現場の担当者は長期的な定着性や組織内の立ち位置というよりはシンプルに「現場で使えそうかどうか」をチェックするため、学歴と資格から確定しているポテンシャルや学習意欲がそのまま高く評価されるからです。

特に「データ分析に興味を持ってデータサイエンス資格を取ることにしたが、いま国内に十個近くあってどれを取ればいいのかわからなかったので全部取った」という脳筋ムーブ(筋脳ムーブ?)は面接で喋るたびにかなりウケていました。これはいま特定の何かに詳しいだけではなく学習能力そのものが優れていることの証明でもあり、「今後も業務で必要な知識は即座に習得可能」というのは現場では最強クラスの能力です。「技能についてはどうせ問題ないので質問を省略します」と言われることも多く、口頭試問系の質問を受けたことは就活全体を通して一回もありません。

また、僕は新卒の頃はコミュニケーション能力が著しく低く、面接の質問に対して期待される答えを全然返していなかった自覚があるのですが、そのあたりは一度社会に出たおかげで完全に改善されていたのは幸いでした。ありがたいことにフィードバックのほぼ全てに「受け答えが高速かつ的確で地頭は明確に良い」という感じの評価が含まれており、知力だけでなくコミュニケーションを含めても能力的には問題なかろうと判断されていたと思います(あくまでもそれを覆すだけの経歴のヤバさが足を引っ張る形)。このあたりはずっと個人ゼミを主催していたおかげでもあって、周囲の皆さんには感謝してもし切れないところです。

 

正攻法を捨ててTwitter就活へ

改めて整理すると、僕のステータスは「ポテンシャルはかなり強いが、履歴書がかなり弱い」というところです。こういう人が正規ルートでエントリーしたときの問題は、選考が根本的に敗者復活戦みたいになってしまうことです。

ビズリーチやエージェントや企業HPからの正規エントリーだとどうしても最初に履歴書を送ることになるので、「履歴書から受ける経歴の印象は悪いが、それを補うだけの要素があれば採用してもよい」というゲームになってしまいます。加点評価と言えば聞こえはいいものの、他の転職者がゼロからスタートしているところを大マイナスからスタートしてゼロに近付けていく作業をやらされるのは非常に不利です。

理想を言えば、逆の順序が望ましいのです。つまり最初に学歴と資格だけ見せて「この人は能力が高すぎるので是非採用したい」というファーストインプレッションを持ってもらって、そのあとで履歴書を送ってからでも「多少は経歴の懸念があるようだが目を瞑ってもよい」という判断で耐えるのが理想です。

ここに来て、一般志願者とは別枠で履歴書よりも先に学歴と資格だけを見せられる就活方法としてTwitter就活が浮上してきます。冒頭に置いた雇用募集ツイートがまさにそうで、初手で強みである学歴と資格だけをぶつけられるために第一印象は相当に良いことが期待されます。

また「そもそもTwitterでスカウトを行う組織は最初からマッチ率が高いだろう」という見込もあります。Twitterで就活するような素性の見えないやつに声をかける時点で志望者が正規ルートできちんと応募してくるような人間かどうかは特に気にしていない、つまり能力やポテンシャルがあるなら貪欲に採用したい思想のはずだからです。

更に言えば「さすがにTwitterでスカウトした相手を書類選考では落とさないだろう」という下心もありました。新卒ならともかく中途採用でこちらから声をかけた以上は門前払いするのは信義にもとるし、選考に通すくらいはするのが人情というものです。書類選考が第一関門になっていた僕にとってそこをパスして一旦面接に持ち込める意義は非常に大きく、実際、正規ルートでの就活では半数近くが書類選考落ちだったのに対して、Twitter就活で書類選考落ちになった組織は一つもありません。

あとTwitter就活でクリアしなければならない現実的な課題は「バズをどう確保するか」です。ここまで書いてきたように「正規の応募ルートではどうにもならない」という前提があってTwitter就活に賭けているので、初手に打つ雇用募集ツイートに冗談抜きで人生がかかっています。より多くスカウトをもらうためには可能な限りインプレッションを稼がないといけないが、かといって真面目な雇用募集なのでコラ画像みたいなネタ要素を入れることもできないという非常に難しいマーケティングでした。

最終的に拡散用フックとして作っておいたのが「希望 年収400万~」という記載です。バズにも色々なパターンがありますが、「何か一言いいたくなるツイート」は拡散力が高いツイート典型の一つです(何か一言いうためには引用RTかRTをしなければならないため)。実際、雇用募集ツイートに対して最も多かった反響は「このスペックで400万は信じがたい」系であり、そのおかげで面白味のないTwitter就活ツイートにしては画期的なペースで拡散することができました。

補足519:念のため書いておくと「希望 年収400万円~」という記載自体は嘘ではありません。現実的に就業を検討可能な最低ラインはそこで、天職にエンカウントした場合はその年収でも働くつもりでカジュアル面談を実際に受けていました。ただ、そうはいっても客観的に見てカタログスペックに対して著しく安いだろうという自覚くらいはあったということです。

その反応が欲しかった

結果としてTwitter就活は大当たりでした。意図通りにバズったツイートのおかげで50社近くからスカウトを頂き、事業内容などの時点でどうしてもミスマッチだったごく一部を除いてほとんどの組織とカジュアル面談をしました。

ただエージェントがいないので、膨大な組織から同時発生するスケジュールを全て自分で管理しなければなりません。進捗管理シートを作って全部のメッセージを並行で読みながら空いている日時を整理して面接日時候補を送って確定させて返信して面接して、朝から晩までメッセージを読んだり返したりしながら1日5~6社くらいのペースで面談し続ける日が続きました。「こんなんもう仕事だろ」と思いつつ、幸いにもダブルブッキングやすっぽかしのようなエラーは一件も起こさずに乗り切りました(ただ対面面接で乗り換えをミスって遅刻したことが2回あってその節はすいませんでした……)。

最終的にこちらからdeclineせずに最後まで進んだ選考のうち(つまり内定or不採用の結論が出た選考のうち)、ビズリーチやエージェントでは内定率が7%程度だったのに対し、Twitter就活での内定率は57%程度でした

 

就活を完走した感想

経緯については以上で、あと全体の感想を書いて終わります。

 

中途就活は楽しい

まず全体を通して就活は概ね楽しかったです。

新卒就活では働いたこともないのに何を言えばいいかよくわからず御多分に漏れず非常に苦しい思いをしていたのですが、中途ともなると職歴に紐付いた自分の軸が社会の中ではっきり形成されているので迷うことがありません。普通にやれることや普通にやりたいことを普通に喋るだけなので会社のキャリア面談とかと変わらなくて、過剰に身構えたり対策したりする必要がないのがとても楽です(注:ちょっとはある)。

また正規のエントリーと違って、Twitter就活だと先に声をかけた企業側から志願者に対して雇用したい理由や想定職務を説明する義務があるため、そこで事業について踏み込んだ話を聞けるのが非常に面白かったです。もう新卒ではなく社会人同士で話も通じるし、IR資料とか会社ブログで公にはなかなか書けないことも含めてAI時代の認識や本当に直面している困りごとや事業の展望などが本音ベースでいくらでも聞けます。

そういうカジュアル面談を面倒に感じる人もいるかもしれませんが、僕はもともと人の研究とか仕事の話を聞くのが好きでそのためだけのLT会を主催したことすらあるので願ったり叶ったりでした。事業内容を頭に入れたその場で「この事業って初期投資大きそうですけどもう黒転してるんですか?」とか「僕が昨日話した競合も同じようなことやってますけどどこで差別化できるんですか?」とか踏み込んで聞きまくったことも一度や二度ではなく、知的好奇心がめちゃめちゃ満たされる良い機会でした。

 

体概念を理解せよ

面接の基本的な考え方については自分で書いた自分の記事にかなり助けられました。この記事はなんかお題箱で聞かれたので答えただけなのですが、たまたま本格的に就活に入る前に言語化しておいて良かったと思います。

saize-lw.hatenablog.com

内容は全て書いてある通りで付け足すこともありませんが、この記事自体が2023年のはてなブログ全体で7番目に読まれた有名就活記事なので人事の方は既読だったりもして、特技の話とかで出動させるとたまに話のタネになってくれたりもしました。

 

中途は柔軟であれ

新卒とは異なる中途に特有の事情として、面接での受け答えはあまりはっきりさせ過ぎずに柔軟に喋った方が良いと思いました。

例えば「このような状況ではどういう方法を用いるのがよいと思いますか」というような想定解のないケース質問に対して、僕は最初は「ちゃんと意見を持ってはっきり答える人材の方が印象が良いだろう」と思って「そういう状況では~~をするのが良いです。何故なら~~」という一つの結論を出して論拠を説明するような答え方をしていました。

ただ有能なエージェントから「自分の考えに固執する印象を与えているようだ」というフィードバックを受けて「なるほどな」と思いました。確かに新卒レベルであれば意見を持っていない人とか何を言っているのかわからない人よりは意見を一つ持ってはっきり述べる人の方がよいのですが、中途であれば意見を持っていることは当たり前で、その上で色々な条件を勘案して落としどころを考えるワンランク上の能力が必要です。僕はなまじ論拠付けや反論の口先が回るので「この案を通す」と一度決めたら押し通すように喋ることもできてしまって、それは新卒ならいいけど中途ではちょっとね……ということのようでした。

だからそれ以降は論拠や状況を整理しつつも柔らかく複数案を挙げるように答え方を修正しました。上のようなケース質問では「全体的に工数と進捗次第ではあって、大抵は~~なのでAが有効だと思いますが、もしそれで~~ならBした方がいいかもしれなくて、Cはかなりいまいちですが強いて言えば~~が~~なら検討する価値くらいはあるかもですね」という感じです。

 

中途面接はミーティングみたいな感じでOK

そういう経緯もあって、中途面接は新卒採用と比べると一問一答の質疑応答というよりは実際のミーティングを見据えたコミュニケーションに近いという風に認識を改めました。よって必要があればレスポンスを往復させたり質問への確認を挟んだりしながら、なるべく意図を共有したフレキシブルな会話をするように心がけました。

例えば、質問の意図を汲んだ上でそれでもなおズレた回答をしたいことがたまにあります。実際によくあったのは「今後使っていきたい技術や技法は何か?」という質問で、僕の回答というか思想は「技術は目的ではなく手段なのでそのときのタスクに応じて最適なものを選ぶのがベストであり、技術の方からスタートしてこれを使いたいという考え方はしない」ですが、それは「何を使いたいのか?」という質問とは直接噛み合っていないのでそのまま答えると会話が上手くできない人に見えてしまいます。かといって「~~を使いたいです」とか思ってもいないことを無理に答えても他のスタンスと一貫しなくなって歪んでくるジレンマがあって、可能なら自分の考えをちゃんと伝えたいところです。

こういうときは答え始める前に「少し前提を崩してしまうのですが」という前置きや「その点については~~なので~~という方向で答えてもよろしいでしょうか」という確認を使うことで相手の期待とこちらの答えをアジャストさせていきます。そういうクッションを使うのはミーティングなら当たり前ですが、面接でもしっかりコミュニケーションを取りながら対話でクリアするのが良いと感じます。

また、こういう考え方は喋った後のフォローにも有効です。質問に対して答えたあとに少し答えの着地点がズレてしまったと感じたり、向こうの意図に完全に沿った答えかどうか自信がなかったりする場合は「つい勢いあまって~~まで喋ってしまいましたが、一旦以上です」とか「一旦は~~の想定で答えましたが、別の角度からということであれば仰って頂ければ補足いたします」みたいな言い方で〆ることで期待をズラさずに会話を続行することができます。

 

 

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24/4/8 【第16回サイゼミ】訂正可能性の哲学について

第16回サイゼミ

2024年4月8日に埼玉県の行田でブロッコリーマンが経営するカフェのスペースを借りて第16回サイゼミを催した(参加13人)。都内から埼玉の北端まで2時間くらいかかるのでだいぶ小旅行感があり、ついでに現地の蕎麦やフライを楽しんでいる人が多かった。

テーマは最近出版された東浩紀『訂正可能性の哲学』について。2年半前くらいに第11回サイゼミでやった『観光客の哲学』の続編でもある。書籍の内容は要約しない前提で主に俺が思ったことについて書く。

saize-lw.hatenablog.com

また、俺は『訂正可能性の哲学』だけでなく実践編と位置付けられている『訂正する力』と東がデータサイエンスパートで参照している『数学破壊兵器』も読んでいる。落合陽一の『デジタルネイチャー』やルソー全般(『人間不平等起源論』など)を読んできている人もいた。

補足514:『あなたを支配し、社会を破壊する、AI・ビッグデータの罠』の原題は"weapons of math destruction(数学破壊兵器)"であり、"weapons of mass destruction(大量破壊兵器)"とかけたオシャレなタイトルなのだが、和訳版では三面記事のようなダサいタイトルにされてしまった。どうにもダサいので、東に倣って以後も『数学破壊兵器』と表記する。

 

俺の感想

訂正可能性自体はかなり良い

訂正可能性という概念自体はとても良かったと思う。当たり前と言えば当たり前だが、誰かがきちんと言葉にする価値が高いタイプの言説だ。

家族や観光客や言語ゲームや固有名など様々な概念を総動員して説明に努めているが、個人的には自然科学における反証可能性との対応と、批評という営みとのアナロジーが最も納得しやすかった。

唯一解に辿り着こうとするのはナンセンスなので漸近的にアップデートできれば良しというのは大抵の実践において妥当な態度だし、既存の知見をアクロバティックに再解釈して現状に対して有効な打ち手となる解釈を無理やり引き出すのは東自身が得意としているやり方でもあり、彼の哲学の集大成と位置付けるのも頷ける。

また問題意識として、いまどき開放性と閉鎖性の二項対立は失効しているということにも同意できる。いまや飲み会で喋れば周囲数十メートル、discordで発言すれば親しい国内の友人数百キロメートル、SNSで外国語を使って発信すれば地球の裏側までというように発言の範囲が可変になる時代だ。

グローバリゼーションで繋がってしまった世界の中でもはや開放された先の外部など無いに等しく、それより動的にスケールできる連帯の感覚をどうマネジメントするのかという方が本質。連帯範囲がすぐに変動する状況で一貫性を堅持しようとする方がナンセンスであり、この範囲ではこれ、その範囲ではそれと逐次訂正していく方がむしろ健全な態度だと常々思っている。

 

説得力と実現手段は怪しめ……

一方で、抽象的な理論立てとしては優れる代わりに具体的な説得力が薄弱なきらいはある。

比喩が巧みなのでつい頷いてしまいそうになるが、冷静に考えると訂正可能性を提示する議論はかなり抽象的なレベルに留まっている。ウィトゲンシュタインやクリプキから引っ張ってきているアナロジーはもちろん、一見すると身近に思える「家族」や「観光客」も日常的な対象というよりは哲学的なイメージに過ぎない。よって「実際のところ、訂正可能性があると具体的には何がどういう風に嬉しいのか」という説得には改めて現実との接点を持たせなければならない。

訂正可能性の有用性を示すための最大仮想敵として「人工知能民主主義」が措定されているが、これははっきり言って藁人形とのシャドーボクシングとしか思えなかった。これは俺の主観も混じっていることを承知であえて言うが、カーツワイルのシンギュラリティ論なんて良くてSF文学、悪くて情報商材くらいのものだ。最初から最後まで人文系とビジネス書の内輪ネタという認識で、「理工系から新しい物語が台頭してきた」という東の評は過大評価にも程がある。

確かにAIについての理念的な極論として必要な物語ではあるが、切実な人工知能開発の現場がそんなものを目指しているわけがないし、映画のプロットを論駁したところで現実に生まれる説得力は特にない。最大限好意的に見れば「情報社会が行きつくかもしれない一つの未来に対する警鐘」くらいに理解できなくもないが、それでも『観光客の哲学』と同様に理系トピックの理解に乏しく、特にビッグデータ分析の解釈が根本的に怪しいということをまた後で詳しく書く。

補足515:『訂正する力』まで読むと、本当はコロナ禍での人々の空気感に対して問題意識を持っていただけなのに間違えて情報技術を仮想敵にしてしまったのでは? と感じる。

更に言えば、結局肝心なところでは「人間の主体性や例外性」に至上の価値を与えるいかにも現代的な哲学者らしい愛着を無根拠で盾にするところがやや鼻につく。「人間は満足した豚ではいけない」という前提をインテリは自明にしていることが多いが、俺は加齢の影響で確かにそこにある大衆の幸福を破棄することには説明が必要だと感じるようになった。言い換えると、漫然と怠惰に生きている大勢の幸福を犠牲にしてまで例外的な主体性を擁立しようとするのはかなり反社会的な提言であるようにも感じる。

また、「現実的に訂正可能性をどのように運用するのか」という具体的な手段が不明瞭であることも気になった。訂正可能性を意識するシステムや人々が存在することと、実際に何をどのように訂正していくのかという方向性はまた別の話だ。「実は坂上田村麻呂は黒人だった」などという無秩序な訂正を繰り返しても仕方ないわけで、陰謀論や歴史修正主義に陥らないためにはそれなりの議論が追加で要求されるように思われる。最終章ではアメリカ統治を参照しながら「喧騒」というものが支持されているが、それは頓挫した1970年前後の学生運動や無益なお祭りと化したハッシュタグデモと何が違うのかがよくわからなかった。

 

だが、『訂正する力』でフォローが効いている

ただ、いま書いた不満のうちで理系パートへのもの以外は『訂正する力』でかなりフォローされて概ねクリアな回答が挙げられている。

全体として、『訂正する力』では『訂正可能性の哲学』の理系パートが削除されると共に、冗長な割には得るものが少なかった『新エロイーズ』の「訂正可能性批評」もオミットされている。個人的には『訂正可能性の哲学』から悪い部分を弾いて良い部分を追加した完全版が『訂正する力』という印象で、第二部で変に議論をこねくり回して迷走してしまった『訂正可能性の哲学』に比べ、『訂正する力』は問題意識の原動力と実体験に基づいた熱いハートがストレートに伝わってくる。

まず具体的な説得力については、いかにも新書らしい軽やかな筆致で地に足の着いた日本社会の様々な問題点が挙げられている。全体的にはネットの空気感とネット化した実社会みたいなところが中心で、キャンセルカルチャーや炎上や老いのような現代的なトピックには頷ける(少なくとも『訂正可能性の哲学』で人工知能民主主義を仮想敵にしていた論旨よりはよほど良い)。

特に中盤でしれっと出てくる、世間で本当に通用する言説は「実存・時事・理論」の三要素を持っているという理屈には唸らされた。『訂正する力』には全て揃っているが『訂正可能性の哲学』は理論に偏重しているので魅力を欠くという納得いく説明を東自身がしてくれている。最初からこれを出してくれ!

具体的にどのような手段が可能なのかについても、東自身が辿ってきたゲンロンカフェでの事例を元にしてコミュニティ運営上での訂正可能性の力が明確に示されている。強いて言えば規模感の問題、つまり小規模な身内コミュニティで有益だった考え方が国政シーンでそのまま通用するのかという疑問はあるものの、明確な成功事例があることは説得力を大きく増す。

 

ビッグデータ分析は訂正不可能ではない

シンギュラリティ論を真に受けていることへの不満は既に書いたが、コロナ禍でのパニックを切り口にした情報技術批判については大枠で同意するし、批判的に検討されて然るべきだと思う。個人的には疫学や通信のようなテクニカルな事柄に関してはこれからも不断にアップデートされ続けると信じているが、かといって社会実装したときに理想通りに上手く動くわけではないというのは一つの学びだ。

ただそれを踏まえても、ビッグデータ分析を批判する第七章については適切でない記述があまりにも多い。

補足516:「ビッグデータ」というワード自体は特に学術的なものではないし、「既存のシステムでは記録や分析ができないほど巨大なデータ群(224ページ)」という東の認識で問題ないので以後もそれを踏襲する。ただ基本的には別にビッグデータだからといって統計分析の理論的に全く異なることが起きるわけではないのだが、ビッグデータに絞って目の敵にしている東がその認識を正しく持っているのかどうかはやや疑わしい。データサイエンスの手法は対象が数十人のクラスルームだろうと数十億人の地球人口だろうと全く同じように適用できる(もちろんサーバー負荷や計算量は桁違いなので技術的には色々と変わってくる)。

ビッグデータ分析批判において東が参照したオニールの『数学破壊兵器』も読んだが、そこで批判されているのはあくまでも「悪いビッグデータ分析モデル」に過ぎない。ビッグデータ分析モデルにも良いものと悪いものがあり、それは精度や社会的悪性という観点から明確に区別できるので、悪いビッグデータ分析ではなく良いビッグデータ分析を行いましょうという論旨だ。もともとビッグデータ分析全体への本質的な批判には当たらないのだが、東は悪いビッグデータ分析モデルへの批判のみをチェリーピッキングしてビッグデータ分析全般の批判に繋げているように感じる。

例えば一部の悪いモデルを全てのモデルと混同した結果発せられた、不可解な文章が下記である。東はこの文章を書いていて論理的におかしいと思わなかったのだろうか?

あるひとの資産状況をビッグデータ分析によって明らかにするとは、(中略)じつは当人の資産そのものを調べることを意味しない。(中略)一般にそのようなセンシティブな情報は厳重に守られている。だからビッグデータの分析者は、(中略)類似した生活を送っている人々の資産状況と照合し、数学的なモデルをつくって目的の人物の資産状況を推測する。

(『訂正可能性の哲学』228ページ、太字は引用に伴って付与)

確かにデータ分析において、当該個人の資産状況そのものではなく類似した生活を送っている人々の資産状況と照合して推測することは大いに有り得る。だが、それは東自身が正しく指摘しているように「そのようなセンシティブな情報は厳重に守られている」からなのだ。

そしてセンシティブな情報が厳重に守られているかどうかは、データがビッグであるかスモールであるかは特に関係がない。ビッグデータでもセンシティブな情報が取れることがあれば、逆にスモールデータでセンシティブな情報が取れないこともあるだろう。よってこの段落における「ビッグデータ」という単語は全て「センシティブなデータを含まないデータ」に置き換えるべきで、「ビッグデータ」というワードで語る意味がわからない。

好意的に読めば、恐らく東は「大量のデータがある状況では、取得できないセンシティブデータについても推測が効くようになるため、類似データによる分析が横行する」という認識の下で「ビッグデータ分析≒代理データ分析」というイメージを持っているのだろう。確かにそういう傾向はあるかもしれないが、別に論理的に正しいわけではなく運用の問題に過ぎない。少なくともSF的な未来像まで踏まえてビッグデータの本性をそのように語る以下の段落は明らかに言い過ぎである。

ビッグデータ分析は、個人を対象とした予測はできず、群れを対象とした予測しか提供することができない。

ビッグデータ分析は、本性上、例外をつねに群れの一部として取り込み、その例外性を消去してしまうことを意味している。

(『訂正可能性の哲学』231ページ、太字は引用に伴って付与)

具体的な例を挙げれば、まさしく人工知能民主主義のような統治の局面においてはこの問題は勝手にクリアされるだろう。確かに企業活動においてはセンシティブな個人情報を見ることができないため代理データを使わずにはいられないが、ビッグデータ分析が覇権を握る世界では筒抜けになった個人情報をそのまま使えばよいだけだ(プライバシー上の問題が大いにあるとは俺も思うが、それはまた別の話題である)。

なお「群れの一部として取り込む」というのはある意味では統計学の本質なのでどの粒度で読むべきかは難しいところだが、少なくとも東自身が「個人を見る分析」として認めているFICOと同程度には間違いなく可能である。例えば犯罪可能性を見たければ人種や出身地を見る前にその人の犯罪履歴を見ればよい。それがFICOスコアと同様に個人に紐づいた合理的で透明な予測であることには東も同意するだろう。

補足517:厳密に言えば、FICOも評価関数からフィードバックを回すのであれば普通に代理データを利用した分析ではあって、「どのくらい代理データに頼るか」という程度問題に過ぎない。ただ回帰分析であれば個人を見る分析・クラスタリングであれば群れを見る分析みたいなイメージは一定わからないのでもないので、東の記述をそのまま尊重してそのように書いている。ちなみに東はFICOを古典的なスコアリングとしてビッグデータ分析と対比させているが、FICOだって大規模に運用するならばビッグデータ分析になるだろうし、ビッグデータを扱うからといってFICO的な分析ができないわけではない(『数学破壊兵器』で対比されているのはFICOとe-スコアであり、FICOとビッグデータ分析ではない)。

補足518:個人情報を正しく使った結果として偏見が助長されて悪い未来に向かう可能性は大いにある。例えば過去に軽犯罪を犯した個人が今後に本格的な犯罪を犯す確率はそれなりに高いと思われるが、それを受けて「一度軽犯罪を犯した者は永遠に犯罪者予備軍として監視する」という方針を立ててしまえば、結局は治安が悪く軽犯罪でもしなければ生きていられない地域の出身者を差別することになるだろう。しかし、そうした背景を認識した上で逆に全体の犯罪を抑止するために軽犯罪率の高い地域の治安や教育の向上にリソースを割いていくような非差別的で「正しい」方針も有り得る。分析結果の運用は分析そのものとは別の意志に委ねられており、やはり本性上で偏見を助長し続けるわけではない。これは『数学破壊兵器』でも主張されていることだ。

何にせよ、「ビッグデータ分析は代理データを用いるため訂正可能性を持たない」という東の批判は本質的なものではない。乱暴に設計されてPDCAがちゃんと回っていない悪いモデルは現実を直視しないので本来は訂正すべき状況でも訂正が機能しないというだけの話だ。きちんと現実を反映し透明性の高い健全なモデルにおいては訂正可能性は機能する。

例えば東は「貧困層の出身者がどれだけ頑張って稼いでも貧困層と見做される状況は変わらない(訂正されない)」という事例を挙げているが、それは現実を直視しない低クオリティなモデルを使っているに過ぎない。きちんと現実を見るモデリングであれば、「こいつは貧困の民かと思っていたら実は稼ぐ能力があった」「ここは貧困地域かと思っていたらきちんと稼ぐやつが生まれるポテンシャルがあった」と遡行的な訂正が働く余地は十分にある。

そもそも個人について何らかの予測を行う以上、データサイエンティストにとってもその予測は合致しているに越したことはない(例外者とやらの需要とデータサイエンティスト側の意志は実はそんなに矛盾していない)。例外性をきちんと検出する異常検出や、対象のデータ傾向そのものが変わった場合にモデルをアジャストするデータドリフトの理論も立派に存在する。

とはいえ、ここで東が仮想敵にしているのが「人工知能民主主義」というSFであることがまた正面からの批判を難しくする。上記のような健全なモデリングを行い続けるためには、現実問題として倫理的な規範をきちんと備えた質の高いデータサイエンティストが不断にモデルを更新し続ける必要がある。だから人間の手が一切入らない完全自動化システムであれば確かにモデルが改善されずにディストピアと化す可能性はそれなりにあり、もし仮に東が現実的な統治ではなくアニメの話をしているのであれば彼のビッグデータ分析批判はそれなりには正当なものになる。

結局、ビッグデータ分析にも人間の介入は必須であるというところで東とオニールの意見が異なるわけではない。だがそれは東が言うようにビッグデータ分析には本性上の悪性と限界があるからではなく、ビッグデータ分析には良い使い方と悪い使い方があるのでそのポテンシャルを引き出すには人の手が必要というだけだ。

オニールは適切なフィードバックを与えることや人間の価値観を反映することによる改善策をはっきりと提案しており、特に医者の「ヒポクラテスの誓い」になぞらえてデータサイエンティストの倫理規範を制定するという提案には首がもげるまで頷ける(実際、データサイエンティスト検定などでは分析者が持つべき規範意識がそれなりに言語化されたりもしている)。

 

会で出たトピック

サイゼミで出た話の中で俺が「おお」と思ったトピックについて。

 

クワス算はアナロジーか?(第二章)

東がたびたび持ち出す「家族的類似」や「固有名」や「クワス算」といった分析哲学用語は単なるアナロジーなのか、それとも本質的に論と接続するのかについて。

俺はそれらは単に訂正可能性や家族概念と挙動が似ている概念をいくつか箪笥から持ち出してきて質の高い比喩として使っているだけで、別にカードゲームのルールでも何でも構わないものと思って読んでいた。しかし「言語運用上で本質的にクワス算が避けられないという立場を取るならば、コミュニケーション自体が訂正可能性を本質的に内包していることになる(訂正可能性論の本性上で有用性を主張できる)」という意見があり、そちらの方が正しい読みっぽいと思った。言い換えると、ここでクワス算などの話を挟むことによって、訂正可能性の議論全体において想定する視点を「実はこう思っている」という内面的な整合性よりも「外からはこう見える」という外面的な見え方にシフトするとも言える。

なおプロゲーマーから「カードゲームのルールはここ20年くらいでクワス算とは逆向きの方向に進んできている」という与太話があり、それはなかなか面白かった。特に遊戯王などの古参ホビーカードゲームで顕著だが、初期はそもそもルールが曖昧な中で「こういう風に見立てる」という見え方を重視するパフォーマンスとしての側面が大きく、ルール適用は言ったもんがちという状況があった(「68+57は5かもしれない」と大声で言ったやつが強い)。だがデジタル化や競技化に伴ってルール整備が進むにつれて整合したルール文書から演繹的に裁定が下される方向にシフトしていき、内在的なルールが厳密に運営されるようになっている(「68+57=125」を証明する公理がルールブックに記載されているので覆せない)。

ここからTRPGなどにまで射程を広げて、「内面的な整合性と外面的な見えのどちらに力点があるのか」という視点から、そこで行われている言語のやり取りに焦点を当ててルール運用を調べることでクワス算の実践を見出すというのもなかなか面白そうだ。

 

実際の観光客は実際の誤配をもたらすか?(第三章)

東が理論の中核に置いている「観光客」や「家族」は現実のそれらを直接指しているというよりは高度に抽象化されたイメージではないか。つまり実際に観光客の誘致政策とかを推し進めたところで自治体運営などが上手くいくわけではないのでは(ということには東も同意するのでは)と俺は思っていたのだが、観光地でバリスタをしている人から「いや実際に観光客は誤配する」という反論があってそうなんだと思った。

東の論ではあまり触れられていない点として、観光客は地元のしがらみから解放されているために本音を喋りやすいので(会社の悪口や偏った政治思想をどれだけ喋ってもその場限りで被害が返ってこないので)、比較的ラディカルなことを言うインセンティブがあるらしい。それによって地元の有様などに対して正直ベースの新たな視座が提供されるというのは現実的にも有り得そうだ。

 

ローティの偶然性はロールズの偶然性と逆?(第四章)

ローティや東が想定する偶然性は「今ここでこのポジションに生まれてしまったことの偶然性」だが、同様に出生の必然性を否定する立場を取っていると見做せるロールズの無知のヴェール論においては、「まだどのポジションに生まれてくるのか全くわからない」という本質的に無知な状況を扱っている。

つまり時系列で言えば、ロールズが出生前、間に生誕を挟んで、ローティや東が出生後という順序になる。ロールズは生まれる前のポジションに関する予測(の失敗)として事前の思考実験を扱うのに対し、ローティや東は生まれてしまったあとの介入(の失敗)として事後的な実感を扱っている。

これによって偶然性に対するスタンスが大筋では類似しながらも細部は微妙に分かれてきており、ロールズの論では完全にゼロベースでフラットな正義へと繋がるのに対して、ローティや東の論では再帰的に拡大する余地はありながらも相対的に保守に寄った連帯に近付く。

 

制約条件としての一般意志(第六章)

元々東のルソー解釈を読んでいて不明瞭だったのは、一般意志が中身の充填されない高度に形式的なものとしてしか語られないことである。

つまり途中までは「(特殊意志の集まりである)全体意志とルソーの言う一般意志は内容的に異なっている」という具体的な違いに言及していながら、結局のところ「ルソーの一般意志は社会が成立してしまったあとに遡行的に見出される」という形式的な過程についてしか語られないため、問いと答えが対応していないというか、誤魔化された感を抱いていた。少なくとも見かけ上は一般意志のように挙動できるものとして「統計」と「無意識」の二つが挙げられているが、それはいわば一般意志の失敗ケースであって、成功ケースではどのような中身が充填されるのかはルソーも東も語っていない。

ただ、会の中で「一般意志とは理論内容というよりは制約条件ではないか」という指摘があり、それは確かに納得できた。俺は理系なのでシャノンの情報理論や熱力学の基本法則などを思い出すと非常に理解しやすい。そういう分野では「この状況での伝達効率は理論上でMAX80%までは出ることはわかっているが、最大効率の具体的な達成手段はまだ全然わからない」というところからスタートし、応用系の工学者などが頑張って伝達効率を50%→60%→70%→78%→79.9%(この辺が理論天井なのでそろそろ研究をやめる)という具合に上げていくという状況が割とよくある。一般意志もそのように示された条件に過ぎず、中身がどう充填されるのかは様々なケースを個別検討すればよいし、理想例が出ないとしても訂正し続けることに意味があるということでアナロジカルに了解できる。

 

参加者のレポ

他の人のが更新されたら随時更新

mypace1991.hatenablog.com

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room-shiki.hatenablog.com

24/4/6 CROSS GEAR攻略(3/4):戦略解説(バースト&ダンス編)

前回の続きです。

saize-lw.hatenablog.com

  • 第一回:各キャラクター解説
  • 第二回:戦略解説(除去編)
  • 第三回:戦略解説(バースト&ダンス編) ←この記事
  • 第四回:各デッキ解説

の予定です。

購入リンク(ノンアフィ)↓

キャラクター画像・カード画像について

この記事で使用しているキャラクター画像・カード画像はDRIVE GAMES様の御厚意で提供して頂いたものであり、転載や再配布を禁止します。

バーストについて

CROSS GEARはバーストが強い。

あらゆるカードが2マナあれば速攻付きで走れるため最終盤の本体火力が異常に高く、迂闊にガードを下げた瞬間に10点以上のライフが消し飛ぶことはザラだ。よって中盤以降は返しのターンにライフがどのくらい削られそうなのかを常に考えておく必要がある。

とはいえ大前提として、自ターンでそのまま勝ち切れるなら返しのバーストを考える必要はない。当たり前の話ではあるが、正しい思考の順序として、見えない相手のリーサルをケアするより見える自分のリーサルを組む方が優先ということはいくら強調してもしすぎることはない。返しを警戒して盤面を構築するステップに進むのは自分ターンではリーサルが出せないことを確認してからだ。

返しを警戒するにあたり、本来考えるべきことはゲームエンドまでのライフプランである。このターンにはまだ勝ちきれないとして、次のターンには勝てるのか。次のターンに勝つためには相手の回復も考慮して今どのくらい削っておけばよいのか。逆に自分は次の返しや次の次の返しで何点くらい削られると想定すべきなのか。

とはいえ、数ターンがかりのライフプランを考えるのはあまりにも複雑で難しすぎる。なのでそれは後続の研究に譲るとして、この記事ではもっと基本的なライフ管理として「とりあえず返しで死なない」ことに重点を置いて考えを整理しておきたい。まずは1ターンを考えられるようになれば複数ターンにも勘が働くようになっていくだろう。

また、返しで相手が出すバーストの点数は相手が返しで使えるブロッカーの除去手段と不可分でもある。立っているブロッカーを排除しなければダメージが通らないからだ。これは実戦上でリーサルを考えるにあたって火力だけが争点であることはそれほどないとも言い換えられ、結局のところ自分が返しに備えてすべき判断のほとんどは「どのくらいのパワーのブロッカーをどれだけ置いておくべきか」に帰着される。

よって、相手の返しを考えるにあたって、とりあえずは「自分が立てたブロッカーをどかすのに相手が何マナ必要か考える→余ったマナで出せる点数を考える」という順序で進めるのがバースト管理をする際の一つの指針になる。例えば返しで相手が使えるマナが8マナだとする。自分がブロッカーを2体立てたとして、相手の除去は1体あたり2マナで計4マナかかるとしよう。バーストに使えるマナは残り8-4=4マナで、例えばパワー3が2枚走ってくれば6点くらいは出る、という概算が可能になる。

ちなみに、このゲームはバーストが強いが故に却って自分ターンに相手ライフを無理に詰めすぎない方が良いことが多い。つまり変に相手のライフを詰めるくらいならブロッカーを構えておいた方が良いことが多いということだ。言い換えると、他のゲームではよくある「リーサルは無いが相手のライフを詰められるだけ詰めておく」「相手ライフを残り1まで詰めてターンを返す」という動きがCROSS GEARでは大抵かなり弱い。どうせ返しで死ななければ次の自分ターンで5点以上はバーストを飛ばせるので、そのとき相手残りライフが1だろうが5だろうが勝敗には関係ないからだ。

 

キャラ対策

最初はマナ数に応じた除去や火力の最大出力を詰めた一覧を作ろうかと思ったがあまりにも複雑すぎたので諦め、各キャラにおいて特に火力が出やすいパターンや意識しておくべきコツについて記載する。

対面のバースト管理難易度はアリア>カノン=リーリア>シャルロット>シャロン>ルシアという印象。

 

アリア

明らかにバースト管理が一番難しい対面。

アリアのリーサル性能は突出しており、はっきり言って中盤以降にアリア側が理想手札ならどうやっても死んでいることも多い。見えないリーサルをチラつかせて相手に過剰な防衛を強いること自体がアリアの明確な強みでもあり、「どこまで割り切るか」という手札読みまで含めたリスク管理を要求してくるのがなおさら話を難しくする。

どのカードも終盤の削りが強すぎる。①のマナアンタップは言わずもがな、②は4マナで5点とアタック並の水準でブロッカーを無視した本体火力を飛ばせる(パワー2とパワー3が殴る水準)。極めつけに③は2マナ6点という超効率を誇り、アリア側の手札に③が2枚重なっているだけで4マナもあれば12点抜ける想定をしなければならない。

ただ、アリアはブロッカーを突破すること自体は苦手ではないが、それほどマナ効率はよくない火力を愚直に打ち込むことしかできないため、ブロッカーを並べて応対するのはそれなりに有効(本体火力を盤面に吸わせるイメージ)。その際にパワー3以下のみを並べても③の全体火力に落とされるため、1体はパワー4以上がいる状態が望ましい。②も単独で5点を飛ばせるとはいえ、攻撃が必須なので横のアーツでブロックしたりすれば意外と綺麗に処理されないことが多い。

また、GEARLINKの要求値がいちいち大きいことも弱み。ちゃんと表マナの枚数を数えると①のマナアンタップと②の本体火力は同時に使えないようなことも多いので、無駄な警戒をしないようによく見ておこう。

 

シャルロット

バースト管理がだいぶ簡単な対面。

ブロッカーを立てて返しのリーサルをケアする局面では、シャルロット最強除去である②のタップキルが一切機能しないので無視してよいのが癒しポイント(代わりに5点回復するのでこちら側のリーサル計算がズレやすい)。

アンタップしているブロッカーを唯一処理できるのは③だが、挙動が鈍重な上に複数処理が苦手なためにブロッカーを乗り越えてのバーストはそれほど伸びない。前回も書いたが再掲すると、パワー3の状態で格闘するための必要マナが召喚+攻撃+GEARLINKで3マナ、連続攻撃するなら+2マナ、DRIVEするなら+1マナというように増えていく。ブロッカーを2体もなぎ倒すためにはそれだけで6マナ近くを消費するし、ブロッカーのパワーが高ければ相打ち処理になってしまう。

シャルロットのバースト手段として①の撤退時アンタップからの連続攻撃もあるが、召喚→撤退→GEARLINK→攻撃で4マナ消費するのでやはり相当に鈍重だ。ただコンボのポテンシャルはそこそこ高く、カノン③やシャロン③(墓地20枚以上)のように極端に打点の高いものと複合すると累計6マナ程度で20点近く出すことがある。

 

リーリア

バースト管理がそこそこ難しい対面。

リーサル間際の行動バリエーションが多いのでいちいち対応を考えさせられるのが厄介で、①の回復でこちらのリーサルプランをズラすこともできる多才ぶりを見せる。

まず②の4点が盤面にも本体にも飛ぶ。①②がコンボすれば即座に2マナで4点飛ぶが、実はただ殴るだけでもブロックしなければ2点、ブロックすれば4点、殴って飛ばせば6点というかなり嫌なクロックを刻める。更に言えばただ棒立ちしているだけでもこちらが殴った瞬間に4点を本体に飛ばされるので、【退場】という使いにくそうな見た目に反して削り性能はかなり高め。

また、③の布告除去も動きが独特であるために何をデコイにしてどうやってブロックするかを念入りに考えなければならないのが悩ましい。特にリーリア対面では適当にパワーの低いチャンプブロッカーを1体立てておくスタイルはほとんど機能しないことに注意。弱いブロッカーは③が殴りながらほぼ無料で処理して本体に攻撃を通してしまうからだ。

 

カノン

バースト管理がかなり難しい対面。

まず何よりも③の除去効率とダメージ効率が良すぎる。3マナもあればドライブでブロッカーを除去した上で7点くらいは平気で走ってくるため、生半可なブロックはすぐに突破されてしまう。カノン単独では複数ブロッカーの面処理はあまり得意ではないが、リーリア②やルシア①など相方の死亡時効果が絡むと突破力は更に上がる。

②はいかにもフィニッシャーらしい見た目をしているが、カタログスペックだけで言えばバースト効率自体は実はそれほど良くない。3マナ払ってパワーを3上げるにしても、普通に2マナで3点を走らせるよりマナ効率が悪い。よって単独性能というよりはコンボやアンブロ押し込みの警戒がメインとなり、例えばカノン②とアリア③の相性は非常に良い。

また、②と③のリーサル性能が絶妙に噛み合っていていちいちブロック判断が難しいのがカノンの厄介ポイントでもある。例えばこちらがパワー2くらいの適当なチャンプブロッカーを構えているとき、カノン側がパワー3くらいで殴ってきたときはあまりブロックしたくない。それよりはパワー7くらいの③が後続で走ってくるのを止めたいからだ。しかしそのアタックを通したあとにパワーの高い③が②でアンブロ付与されたためにブロックできず、結局はブロッカーが全く機能しないままダメージを重ねられるというのはよくある展開だ。どっちに転んでも②や③を持っているかどうかで裏目が生じてしまう。

 

シャロン

バースト管理がだいぶ簡単な対面。

基本的に考えるべきは②の3点火力と③の殴りバーストのみ。終盤になればパワー4以上を置いて②をケアできるシーンも多いほか、墓地枚数が返しのターンで20枚を超えそうかどうかは常に確認しておこう。

シャロン対面では墓地が溜まる前に勝っておくのが理想だが、20枚を超えそうな場合は終盤のブロッカーは③の9点突撃を止めることが最大の責務と心得たい。安いアタックをチャンプで止めた挙句にパワー9の③が走ってくるのを止められないようでは笑えない。

 

ルシア

バースト管理に特殊な対応が必要な対面。

基本的には除去もバーストもかなり弱い。能動的に打てる除去は①の3マナ3点くらいしかなく、③からのバーストが高そうで実はそれほど高くない。確かに攻撃時の自己バフで7点くらいは出ることがあるが、召喚+攻撃+GEARLINKで4マナも消費して他の行動ができないためにマナ効率はだいぶ悪い。

ただし、②へのドライブを繰り返してマナを何度も回収するコンボターンに入ったときはCROSS GEARでも随一のバースト火力が飛んでくる(通称:ダンス)。ルシアのダンスは最低でも11点+α、フルに踊られれば理論値で30点近くは飛ぶポテンシャルがあり、ブロッカーがいなければほぼ確実に即死すると言って過言ではない。

ダンスの動きは極めて難解だがこれだけは覚えて帰ってほしいのは、ダンスを耐えるには「パワー5以上のブロッカー」が明確な鍵になることだ。つまりルシア対面でリーサルを取れないうちにマナと手札を溜め込まれてしまって返しでダンスが始まりそうだったら、とりあえずパワー5以上のブロッカーを立てておけば即死する確率は大きく低下する。その理由は以下のダンス解説で詳述している。

 

ルシアのダンスについて

ルシアはCROSS GEARで最も特殊な動きをするキャラだ。

試合のどこかで一度だけ②にドライブしまくるチェインコンボを走ることができ、マナを無視して超展開した上で相手のライフを消し飛ばすか最強の盤面を作って返すビッグターンが発生する(通称:ダンス)。ルシアは原則としてダンスを目指すキャラであり、序盤は①を立てて凌ぎながら積極的にドローして手札とマナを限界まで溜め込み、これ以上はライフが保たないと判断したラストターンに踊り始めるのが基本的なプレイ方針になる。

そしてダンスの手順は極めて難解だ。手順には必ず途中のドローが不確定要素として絡む上に一度踊り始めたらもう止まれず(ターンを返したら②が除去されて勝ち手段が無くなるため)、ドローを見ながらアドリブで踊り続ける必要がある。ダンスの目的や勝ち手段については事前にしっかり把握しておく必要があり、ここに全て記載する。

 

ダンスの基本目標

結論から書くと、ダンスの基本的な目的は「概ね0マナの5+6=11打点」を通すことである。これをどう通すか考えながらダンスをデザインすべきだし、これが通らないなら踊るべきでないことが多い(終着点が弱すぎるため)。

まずは11打点の内訳を確認しておこう。②に3回目のドライブをした時点でアタックして5点、ここに4回目のドライブをしてオーバードライブでアンタップ速攻の追加6点。これで合計11点だ。

この動きには何マナ必要かを求めるために、まずは②にドライブしたときのマナ収支を考えていこう。②にドライブするには、手札から②をドライブする以外にも③の登場時GEARLINKで手札を裏向きでドライブする方法がある。前者では1マナ払ってドライブしたあとにタップ状態の裏マナが2枚アンタップで返ってくるので差し引き1マナ得。後者では1マナ払って③を召喚しGEARLINKで2マナ払ってドライブしたあとタップ状態の裏マナが2枚アンタップで返ってくるので差し引き1マナ損。結局、②でドライブしたら+1マナ、③でドライブしたら-1マナの収支になる。

これを用いれば、②で4回ドライブしながら2回殴って11点を出すために必要なマナ数を求められる。

②に4回ドライブするためには②と③が合計5枚必要だが、理想的には全て②であるときが最も効率がよい。このとき、まず②の本体を唱えるのに1マナ払う。更に②を1回ドライブするごとに1マナ得するので、4回ドライブすると4マナ得している。ただし3回ドライブした時点でアタックするために1マナ使うので、-1+4-1=2より差し引き2マナ得になる。

続いて、②が4枚と③が1枚という内訳で踊るケースも考える。まず②の本体を唱えるのに1マナ払う。②で3回ドライブする際に3マナ得し、③で1回ドライブする際に1マナ損。3回ドライブしたときのアタックに1マナ使用。-1+3-1-1=0より、総マナ消費は実質0となる。同様に計算して、②が3枚と③が2枚という内訳でダンスした場合は総マナ消費は2となる。

なお、②が2枚以下で踊るのはだいぶ厳しい。もともとマナ効率が悪い上に③を3回以上出さなければならない都合で場を空けるための撤退コストまでかかってくるからだ。とはいえ完走は不可能ではないし、どうせ死ぬ前には踊らなければならないので不幸にも②がデッキボトムに固まっているとしても踊らない選択肢はない。

結局、ルシアのダンスはマナ消費が-2~+2くらいの範囲で11打点が出せる。これが冒頭の「概ね0マナの11打点」の意味だ。実際には横も殴れるので11点+αとなり、ダンスターンではこれを現実的に狙うバーストラインとして踊り始めることになる。

ちなみに②に6回ドライブするとフルアンタップが誘発するが、これは要求が高すぎるロマン枠であり、よほど余裕があるか運が良ければ狙う程度でよい(シャロン③の特殊勝利と同じ立ち位置)。一応これが通った場合はまず3ドライブ時にアタックして5点、4ドライブ時にオーバードライブでアンタップして速攻6点、更に6ドライブ時に速攻8点という②単独で5+6+8=19点のバーストに加え、横のアーツも2回殴れるため20~30点程度は飛ぶようになる。

とはいえ、6回ドライブするためには②と③が合計7枚必要であり、マナ効率も考えると②を5枚引くことがほとんどマストだ。ダンスで山札を掘り切ることは稀なので、②が5枚も集まるのは相当ドローがよくて手札に吸いついて来た場合に限られる。ちなみにダンスを始める前に山を掘りすぎているとダンス途中のドローでライブラリアウトして負けることがあるので注意。

 

ダンスのデザイン

ここまでの話を踏まえて最も簡単な勝ちパターンを考えるなら、例えば相手の場が空でライフ11、自分の手札がルシア②×4枚とルシア③×1枚であれば、上記の手順で踊ることでオーバードライブ込みの11点を通して勝ちが確定する。

しかし実際には相手の場は空ではないし、相手ライフは12点以上あるだろうし、自分の手札は綺麗に揃っていない。よって、11打点を無料で出しつつ余ったマナで他の雑務をこなして②が駆け抜ける花道を敷いてやるというダンスのデザイン作業が必要になる。

ダンスのデザインにおいて考慮すべき事柄は主に5つある。すなわちⅠ.追加ドロー、Ⅱ.ブロッカー排除、Ⅲ.追加アタック、Ⅳ.裏マナ確保、Ⅴ.撤退である。

踊り始めた時点ではこれらの実行計画が完全に立っていることはまずなく、ダンス過程でドローを見ながらアドリブで計画を組み上げていく必要がある。デザイン事項のそれぞれについて、ダンスを始める時点で考えておくべき事柄をそれぞれ詳述する。

Ⅰ.追加ドロー

CROSS GEARには5枚の手札制限があるため、ルシアが踊り始めるまでに溜め込んでおける手札はそう多くない。現実的にはデザイン含めてダンスの完遂に必要なパーツが揃っていない手札で見切り発車することが多く、足りないパーツは道中のドローで補っていくことになる。ダンス中に必ず行うドライブで必要パーツを引き込めればいいが、思うように引けない場合は途中でマナを捻ってドローするしかない。

また地味に忘れやすいが、③のGEALINK効果を使う場合は手札から裏向きに重ねる無駄カードが必要なことに注意。手札にあるカードが全てダンス完遂に必要な場合は重ねる用の手札をドローで引き込むこともある。

Ⅱ.ブロッカー排除

当然ながら、11打点を通すためには相手のブロッカーを排除する必要がある。

特に問題になるのは、相手の場にパワー5以上のブロッカーが立っているケースだ。パワー5以上のブロッカーがいるとルシア②が3回ドライブした際の5点が殴れなくなり火力が大幅に低下してしまう。ルシア自身は除去に長けるキャラではないため、相方の力も借りながら何とかしてダンス途中で排除しなければならない。どんな手順でどんな除去を飛ばすことになりそうかは踊り始める前から意識しておこう。

逆に、パワー5未満のブロッカーしかいない場合は必ずしも全て丁寧に除去する必要はない。上から叩く攻撃を繰り返して圧し潰せることも多いからだ。横の打点も込みで何回殴れそうかを確認しつつ、必要なら除去を撃つくらいでいいだろう。

ダンス中の除去としてはルシア①を3マナ3点火力として使うことも多い。効率が良いわけではないが、ルシアが能動的に打てる唯一の除去であることに加えて、リーリア②やシャロン①を後腐れなく排除出来たりと追放が詰めに役立つシーンは意外と多い。

Ⅲ.追加アタック

相手のブロッカーが多い場合やライフが12点以上ある場合は、②が出せる11点では足りないため横のアーツにも攻撃に参加してもらう必要がある。

最も簡単なのはダンス中に②へのドライブ用に出した③にそのまま殴ってもらうことで、攻撃時GEARLINKでそこそこ打点が出る上に裏マナも確保できて相性が良い。というより、ダンス時にはルシアの②と③が盤面を埋めていることが多いため、他のアーツを出すには撤退も込みで支払いが嵩んでマナがだいぶシビアになってしまう。

Ⅳ.裏マナ供給

ルシア②がマナをアンタップするためには必ず裏マナが必要であり、4回ドライブするなら必要な裏マナは8個となる。

③が絡むとマナは勝手に裏返るためあまり意識しなくても達成できることも多いが、完走までには追加で何マナ裏返す必要があるか、それはどうやって達成しそうかはダンスを始める前に把握しておいた方がいい。

ちなみに②が対象にする裏マナは2枚固定なので1枚だけ裏マナがあってもアンタップできない。またレアケースとして、ダンスの最後の最後で特にマナの還付が必要ない場合は裏マナがない状態で②をドライブする選択肢も一応はある。

Ⅴ.撤退

ダンス途中に盤面が埋まってしまった場合は自らコストを払って撤退させなければならない。

ダンスを完遂するには③を2体場に出さなければいけないことも多く、そうなるとダンスしている②を含めて盤面が埋まってしまうため、ダンス中の盤面は割とシビアだ。ダンス開始時に無駄なアーツが場にいると大抵は途中で撤退コストがかかってしまうので、直前のターンにチャンプブロックでも何でもいいのでどかしておいて空の場で踊り始めた方がいい。

最もよくあるのは追加アタックするアーツを出す場所を空けたい場合で、盤面を圧迫している③を撤退させて別のアーツを出すには撤退+召喚で2マナかかることを覚えておきたい(割と重い)。

 

ダンス対策

以上を踏まえて、ルシア対面でのダンス対策についても書いておく。

まず何よりもなるべく早く勝つことが望ましい。ダンスが始まらない中盤までは普段よりガードを下げて強く殴って構わない。ルシアは差し返しが苦手なキャラなので手痛い反撃を食らうこともあまりないだろう。

早く勝ちたいのは、ダンスまでの猶予ターンを与えたくないからだ。ルシアのダンスまでに1ターン多く与えるということは、ルシアにダンス用のマナ2つと手札1枚を多く与えることとイコールである。ここまで長々書いてきたようにルシアがダンスを完遂するためにはアドリブで色々なデザイン作業が必要であり、マナと手札が増えればそれらをクリアしやすくなってしまう。ちなみに体感としては6~7マナで踊り始めるのはややしんどく、8マナあれば概ね安定して踊れ、9~10マナあれば十分すぎる。

ただしルシアが8マナに到達する頃までに詰め切ることが出来なかった場合は、一転してダンスに備えてガードを固める必要が生じる。既に書いた通り、この際にはパワー5以上のブロッカーを立てておくことが一つの目標になる。その目的は3回ドライブした②の5点アタックを止めて11打点の目を潰すことなので、パワー6くらいのやつが殴ってきてもブロックを我慢してスルーした方がいい。

またパワー4以下のブロッカーしか用意できない場合でも、ブロッカーがいればいるだけルシア側のダンスデザインのハードルを上げられるため、アタック後のアーツを撤退させるなど多少無理してでもブロッカーを並べておくことが望ましい。

24/4/1 お題箱回151:DLsiteの表現規制回避etc

お題箱回151

925.dlsite発端の、ひよこババア等の言い換えについてどう思われますか?

この件ですね。よく頑張っていると思います。

字面だけ見るとふざけているだけに勘違いしている人が一定数いますが、これはオタクの悪ふざけや思想的な抵抗ではありません。デジタルコンテンツ販売サイトとして必要なアクセシビリティを確保するための措置です。

DLsiteでは膨大な量のコンテンツ全てにその属性を示す大量のタグが付いていて、ユーザーはそれを参照して作品の検索や購入前の吟味を行います。だから例えば「ロリ」という単語が使えなくなったからといって単純に「ロリ」タグを全て消してしまうとユーザーが非常に困るので、あくまでもサイトの利便性を維持するために公式側で対応表を用意して一括置換処理を行う必要があったということです。

ちなみに露骨な表現規制ということに思うところがあるオタクも多いようですが、国家絡みではなく企業同士のバトルであれば問題ないだろうと思います。クレカ会社側にはサービス提供事業としての立場や思想があって、嫌なら使わなければいいだけの話です。DLsiteもクレカ決済を廃止するのはダメージが大きいので利便性を損ねない範囲で相手の条件を呑んで食い下がれるラインを探すというだけで、いずれにせよシンプルにビジネスの話です。

また「一般用語を隠語として使うのはゾーニング的に問題がある」「特に『痴漢→秘密さわさわ』のような置き換えは性的行為や犯罪行為の矮小化に繋がる」という意見も散見されますが、個人的には別にそんなことはないだろうと思います。DLsiteなんて所詮はオタク専用のアダルトサイトなので、そんなタグの表記如きで社会にインパクトがあると考えるのは自意識過剰でしょう。実際、AVではピエロ田のロリ系レーベルが「ミニマム」から「ひよこ」に言い換えられた経緯が既にありますが、そんなことは誰も気にしていません。

ただ置き換えのワードチョイスについては若干納得していないところもあって、当初は「ロリ」を「ひよこ」で言い換えていたのに(批判を受けて?)「つるぺた」に変更したのは明確に悪手だと思います。一般的につるぺたというのは語源から言っても単に「つるつるぺたぺた」した身体的な特徴と解されているはずで、ロリだからといってつるぺたとは限らないし(反例:ロリ巨乳)、つるぺただからといってロリとは限りません(反例:貧体お姉さん)。これは別に僕がロリ巨乳好きだから文句を付けているわけではなくて、今回の言い換えで達成すべきことは「タグやキーワードによる検索機能を維持すること」だったはずで、言い換え前後で集合の外延がズレてくると言い換える意味もなくなってくるので、そこはちゃんとやってほしいです。

 

926.lwさんの記事やツイートを見ていると対人ゲー上位は全員戦闘民族みたいな印象を受けますが、lwさんの周りで非戦闘民族の対人ゲー上位の人はいますか?あるいは知っていますか?

いないわけではありません。そういう人々はクラスタを構成しているというよりは外れ値として稀にいるくらいの感覚なので傾向論みたいな話で言及することはあまりないだけです。

例えば発言とか態度が全然戦闘民族のそれではないのにしれっと強くてラダー上位にコンスタントに入っている人とか(alfort)、一つのゲームを徹底して極めるというよりは次々に乗り換えながらその都度上位を目指す遊び方をする人がいます(hakuyu)。

 

927.実験しない理系分野の人って、研究室で何してるんですか?1日中実験してる系の研究室だったので想像つきません。何をしたら論文になるんですか?

分野によって色々あると思いますが、僕が所属していた応用物理近辺では先行研究の論文や専門書を読んだり、紙とペンで数式と格闘したり、コンピュータでシミュレーションを走らせたりします。研究自体は一人でもできますが、研究室ではディスカッションや情報交換やアウトプットをします。

論文としては理論方面では条件込みで新しい手法や定理を思い付いたり、応用方面では特定の領域に理論をアジャストしていい結果が出たりすれば成立します。個人的には純粋に理論的な内容だけで新規性を出すのはちょっとしんどく感じたので、工学的に新しい分野に適用した場合の定式化や挙動の把握などをメインにやっていました。

 

928.おすすめの二人用ボードゲームを教えてほしいです。
なるべくルールはシンプルな方が嬉しいです。
クロスギア以外でお願いします。

基本的に二人だったらカードゲームをプレイする人生だったので、二人用ボードゲームは全然思いつかないですね……パッと思い出せるのは「バトルライン」とか「アルゴ」あたりですが、めちゃめちゃハマったわけでもないので他にもっといいものがあるかもしれません。

 

929.イラスト練習しませんか? 真面目にやればすぐ神絵師になれると思いますが

自分でも恐らく練習効率は良い方だろうとは思いますが、すぐと言っても一日のほとんどを投下する期間が一年以上は必要そうですし、Xに流れているイラストとかコミッションで満足できてしまうので多分やらないと思います。宝くじ当てたとか老後とかでマジで暇になったらワンチャンやるかもくらいです。

 

930.人生プランに子育てはありますか?
20年のスパンで不確定要素が多いため難易度が非常に高いと思うのですがパンピーが無難にこなせてるのが不思議です

現状ではありません。何があっても絶対にやらないという信条があるわけではないですが、特にやる動機がないです。

人生は一回性だし目的が決まっているわけでもないので、ゲームなどに比べて難易度とか無難にこなすみたいな世界観で見るものでもないような気もします。子供の人生も自分の人生も同じで、無限にある不確定要素の中でどれかが正解であるわけではなく、一応死なずに継続している限りはどのルートを通った結果も個性として処理されていくだけです。

 

931.少し前ですが、魔法学院スクロマンスとストリクスヘイヴンもモチーフ被ってますね。
ブリザードとウィザーズが裏で示し合わせて意図的に被らせてるのでしょうかね?それとも本当に偶然?

これの話ですね。

確かにそこも被りますね。ハースストーン側が1~2年くらい先行しているパターンが多く、追っているとしたらMtG側でしょうか。

既存製品がある方が作りやすいのはわかりますし、ゲームのモチーフはある程度は共有物というか別にパクってもそれほど罪が重いわけでもないので、ウィザーズかブリザードからぶっちゃけトークが無い限りは真相が明らかになる日も来ないでしょう。ちなみに僕もソシャゲプランナー時代にMtGのあるセットと全く同じテーマの月例イベントを開催したことがあります(けっこう評判よかった)。

 

932.センシティブな話題なので無理に答えて頂かなくても結構なのですが、LWさんはうつ病期間中に脳の機能が低下/変質していると感じるような出来事はありましたか。

めっちゃあります。というか脳の機能が低下/変質していると感じない鬱病は鬱病ではなく、主観的には必要条件のようなものだと思います。

気力が失せていて特に何もできなかっただけなのでエピソードなどはあまりないですが、回復期にピクミンをやったら普通に楽しめて感動したことは今でもよく覚えています。

 

933.LWさんにとって仕事とはなんでしょうか。
私にとっては、仕事とはお金を得るための手段や道具といったものでしかないのですが、この考えはよくないですかね?

ざっくり自己実現手段です。個人の力で出来ることなんてタカが知れているので集まらないとできないことってけっこうたくさんあって、それは経営者サイドも同じです。経営者と個人がそれぞれやりたいことが噛み合って需給がバランスした結果として仕事が成立している状態が理想だと思います。

お金を得るための手段や道具と考えるのも全然いいと思います。ただ仕事をお金を得るためのコストとすると、コストは支払わないに越したことがない(働かないに越したことはない)みたいな話になってしまうのは大丈夫なのかなとは感じます。というのも一切働かなくても金には困らない人って世の中にけっこうたくさんいるので、そういう人たちの下位互換みたいな人生や暮らしになってしまうのが精神的にかなり良くない気がするのですが、その辺を上手く割り切れているなら別に良いと思います。

 

934.何かをやり始めるとき目的から考えて一番効率のいい方法を選んでいるんですけど、やりはじめてから目的を考える事ってありますか?

けっこうあると思います。理想的には常に目的から逆算するのがいいですが、現実そうもいかないことが稀によくあります。

例えば取り組む対象が全くの初見で事前に方法を考えるのが難しいとき、作業の全貌が全然見えていなくてとりあえず進めてからでないと目的が把握できないとき、気分的にとりあえず手を物理的に動かすところから作業をスタートしたいとき、作業するHPは残ってるけど頭を使うMPは残ってないとき、どの方法を取ってもどうせ効率はあまり変わらなさそうなので考える労力を節約したいときなどがそうです。

 

 

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